第2000回の定期演奏会ということで、ファン投票で選ばれたマーラー交響曲第8番の一本勝負。久しぶりに満員となったNHKホールは、開演前から熱気で一杯、トイレも長蛇の列でした。
この曲の生演奏に接するのは3度目。まだ、この大曲を自分の中で消化しきれないところ多々あり、苦手意識もあるのですが、この日の演奏は節目の演奏会に相応しい気合入った素晴らし演奏で、初めて自分なりにしっかり聴けた満足感の高いものとなりました。
2000回というN響史に残る演奏会ということもあるのでしょうか。演奏開始から、団員さん達の緊張感と集中力に満ちた「気」が3階席にも伝わってきました。そして、ルイージさんの創る音楽は第1部から引き締まったもので、大舞台での大ホームランを狙いに行ったものとは異なった印象。それが、「一千人の交響曲」としては小ぶりの合唱陣ともマッチし、オーケストラと合唱団の調和が非常に均整取れて聴こえます。
とりわけ、第2部はオーケストラと合唱の美しさが引き立ってました。中盤、「マリア崇拝の博士と合唱」に続いて、管弦楽、ハルモニウム、ハープらで歌われる旋律の美しいこと。そして、そこに合唱が入ってくる神々しさは、失神ものでした。
独唱陣はオーケストラの後ろ、合唱陣の前に陣取っているためか、歌声が3階席までは届きにくいところがあります。ただ、演奏自体が締まって抑制された感じでしたので、逆に独唱陣も音楽全体に浮いた感じではなく、良く統合されている印象。唯一の日本人ソリストの三宅さんがステージ上に見えないので、どこで歌うのだろうとキョロキョロしていたら、NHKホールの特有の右側壁のパイプオルガン席に登場し、気高いまでに美しい栄光の聖母を歌い上げてくれました。
全体的に非常に抑えられた厳しい音楽だったので、フィナーレでの高揚感は抑えられていたエネルギーが放出され、神秘的で昇天のラストでした。キリスト教には無縁の私にも、熱いものが胸にこみ上げます。
会場からは熱狂的な拍手が寄せられました。ルイージさんは何度も呼び出され、オケがステージから去ったあとも、独唱陣と一緒に、そして最後の最後はマロさんと二人で登場し、会場の拍手に応えてくれました。
私自身は第何回の定演まで楽しむことができるでしょうか。是非、今回の2000回を機に、N響はルイージさんと更なる高みを目指してほしいと思います。しっかりその成長を見守りたいし、応援していきたい。
第2000回 定期公演 Aプログラム
2023年12月17日 (日) 開演 2:00pm
NHKホール
曲目
マーラー/交響曲 第8番 変ホ長調 「一千人の交響曲」(ファン投票選出曲)
指揮 : ファビオ・ルイージ
ソプラノ : ジャクリン・ワーグナー
ソプラノ : ヴァレンティーナ・ファルカシュ
ソプラノ : 三宅理恵
アルト : オレシア・ペトロヴァ
アルト : カトリオーナ・モリソン
テノール : ミヒャエル・シャーデ
バリトン : ルーク・ストリフ
バス : ダーヴィッド・シュテフェンス
合唱 : 新国立劇場合唱団
児童合唱 : NHK東京児童合唱団
Subscription Concerts 2023-2024Program A
No. 2000 Subscription (Program A)
Sunday, December 17, 2023 2:00pm [ Doors Open 1:00pm ]
NHK Hall
Program
Mahler / Symphony No. 8 E-flat Major, Symphonie der Tausend (Symphony of a Thousand)
Artists
Conductor: Fabio Luisi
Soprano: Jacquelyn Wagner*
Soprano: Valentina Farcas
Soprano: Rie Miyake
Alto: Olesya Petrova
Alto: Catriona Morison
Tenor: Michael Schade
Baritone: Luke Sutliff
Bass: David Steffens
Chorus: New National Theatre Chorus
Children Chorus: NHK Tokyo Children Chorus