その後の『ロンドン テムズ川便り』

ことの起こりはロンドン滞在記。帰国後の今は音楽、美術、本、旅行などについての個人的覚書。Since 2008

2023年大晦日

2023-12-31 08:59:50 | 日記 (2012.8~)

いよいよ2023年もあと数時間となりました。

今年1年、幣ブログに立ち寄って頂いた皆様、ありがとうございました。

私自身は、公私にわたりいろいろ難題多き1年で、正直かなり疲れた1年でありました。そうした中で、音楽や演劇の鑑賞やスポーツやらでなんとかバランスとってきました。とりわけ、今年秋に20年以上ぶりに訪れた米国東海岸の旅行は、短期でありながらも私自身の過去と現在・未来をつなぐ一生の記念になるもので、無理を通して行って良かったです。やりたいことは迷わずやっておこう、そんなことを意識する年頃になってきました。

来年もよろしくお願いいたします。良いお年をお迎えください。

 

※仕事納めの後の、今年ラストの皇居ランにて 12月28日
↓ 実際はもっと暗かったのですが、明るく写ってます。







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感想書き逃し・・・東京芸術劇場マエストロシリーズ 井上道義&読売日本交響楽団

2023-12-30 08:55:52 | 演奏会・オペラ・バレエ・演劇(2012.8~)

(11月の演奏会。今さらですが、感想です)

来年の引退を宣言しているミッキーのマーラー、それも「復活」とあれば行かないわけにはいかない。私としては稀な、特上の席を購入して、サントリーホールへ。

並々ならぬ決意を感じるオーラ一杯の指揮姿。体のどこが悪いのかは、傍目には微塵も見せない。気持ち入った熱演なのだが、音楽自体は抑制的で厳しさに溢れるものだった。読響もミッキーに前のめりで応える。

独唱のお二人も素晴らしい。私にとって初顔のメゾソプラノの林眞暎さんは、やや硬質、透明感ある歌唱。新国立合唱団は相変わらず、素晴らしいパフォーマンス。

抑制された音楽が、最終楽章で一気に爆発する。高揚した気持ちの中、フィナーレは涙なしには聴かれない。

ホール一杯の大拍手に包まれて、カーテンコールでは演奏では見せなかった体痛そうな素振りもあった。一方で、バレエの回転も見せるなどミッキーらしいお茶目さも満載。元気いっぱい貰い、記憶に残る演奏会となった。

次のミッキーは2月のN響でショスタコーヴィチ。こちらも聴き逃がせない。

 

2023 11.18〈土〉14:00  東京芸術劇場

指揮=井上道義
ソプラノ=髙橋絵理
メゾソプラノ:林 眞暎※
合唱=新国立劇場合唱団

マーラー:交響曲 第2番 ハ短調「復活」

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来る大統領選の参考図書に最適:渡辺靖『アメリカとは何か 自画像と世界観をめぐる相剋』(岩波新書、2022)

2023-12-27 08:33:24 | 

2022年の米国中間選挙にあたって、アフタートランプの状況理解のために購入したが、積読状態になっていた。来年の大統領選挙も近づいてきたこともあり、引っ張り出して読んでみた。現在の米国政治状況について理論的かつ事例も含めて、非常に分かりやすく記述されている。

トランプ大統領誕生以来、私の理解の範囲を超えているアメリカの分断。バイデン大統領に代わって、やっと悪夢は去ったのかと思いきや、再びトランプの復帰も十分あり得るのが今の状況だ。一体、米国はどうなってしまったのか?どうなって行くのか?

本書はその米国の政治状況を理論的にはノーランチャートのフレームワーク(米国の政治的イデオロギーを整理する際によく用いられる座標図)を使い、政治学者など専門家の分析等も含めて、具体的に説明してくれるので、頭の整理に最適だ。将来的な、楽観シナリオ、悲観シナリオについても触れている。トランプ現象は当初私が感じていたような一時的な現象では無くて、現在の米国社会が抱える構造的な課題が背景にあるということがわかる。

私にとって衝撃だったのは、2021年の国会議事堂襲撃事件について、ABCニュースの世論調査では「民主党支持者の96%が「民主主義への脅威」と捉える一方で、共和党支持者では45%であり、52%では「民主主義の防守」と前向きな評価をしている」(pp152-153)という。同じ事象でも全く別のものに見えている。

最終章の「アフター・ナショナリズム」の視座も興味深かった。政治学者サミュエル・ゴールドマンの著書を引用し、「米国は常に分断状況にあり、単一のアイデンティティを拒んできたとし、第2次大戦前後の国民的結束はあくまで例外であり、現在はむしろ「歴史的な平均値」に戻りつつあるという」と紹介する。あくまでも一つの見方ではあるが、自分の米国像の立ち位置にも気づかされる。

いずれにせよ、米国の問題は米国だけに留まらない。米国が望むと望まざると、日本はもちろんのこと、世界に大きな影響を与える。冷静にその行方を見つめたい。

来る米国大統領選挙に関心のある方には、強くお勧めできる1冊。

 

【目次】

はしがき――「ノースカロライナ州カリタックのPM」の不満
第1章 自画像をめぐる攻防
 1 米国という実験
 2 米国流「リベラル」の誕生
 3 米国流「保守」の逆襲
 4 オバマとトランプをつなぐもの
 5 ペイリオコンと右派ポピュリズム
 6 民主社会主義と左派ポピュリズム
 7 異彩を放つリバタリアン
 8 トライバリズムの時代
第2章 ラディカル・アメリカ
 1 コロナ禍の政治学
 2 先鋭化する陰謀論
 3 BLM運動をめぐる攻防
 4 キャンセル文化とウォーク文化
 5 過激化する対立
 6 人種をめぐる駆け引き
第3章 米国モデル再考
 1 米国例外主義
 2 古典的帝国としての米国
 3 ダブルスタンダードと反米主義
 4 リベラル国際秩序
 5 権威主義国家による挑戦
 6 リベラル疲れ
第4章 分裂する世界認識
 1 パラレルワールド
 2 権威主義が見る世界
 3 民主社会主義が見る世界
 4 リバタリアンが見る世界
 5 リトレンチメント論争
 6 漂流する共和党
 7 中国問題
 8 アフガン撤退の意味
第5章 分断社会の行く末
 1 強まる遠心力
 2 楽観的シナリオ
 3 反動と障壁
 4 悲観的シナリオ
 5 アフター・ナショナリズム
 6 新たなリスク
 7 デジタル・レーニン主義
 8 問われるメタ・ソフトパワー

あとがき
索 引

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山岸 俊男『日本の「安心」はなぜ、消えたのか  社会心理学から見た現代日本の問題点』 (集英社、2008)

2023-12-25 07:24:22 | 

前エントリーでメモった山岸俊男『安心社会と信頼社会』が、20年以上前の書籍なのに私にはとっても新鮮な視点であったので、同著者の本をもう1冊読んでみた。『安心社会と信頼社会』のフレームワークに拠りつつ、現代日本社会・日本人の具体的な課題について、エッセイ風に考察したものである。いじめ、企業の不祥事、「日本人」気質等がトピックとして取り上げられる。

より具体的に筆者の考え方を理解するのに助けになる1冊で、ここでも目から鱗が落ちる箇所が多数あった。

例えば、いじめ問題の解決には、クラス内の傍観者の数が「臨界質量」(実験・理論では40%)に達するかどうかが大切。いじめをする子供が、いじめを続けても直接するなどで制止されるなど、いじめを続けるメリットがなくなる状態にすることでいじめを続けなくなる。また、いじめを止めようとする子供もその数が臨界質量(クラスの40%)に達しないと、自分まで被害者になるから、制止することはやめる。なので、質量が高いいじめ初期の段階で制止するかがポイント。更に如何にそうした中で、「熱血先生」は臨界質量を下げる役割を果たすので、先生の役割も大切だ。というようなことが書いてある(第八章)。一般論ではよく聞くいじめ対策であるが、実験や理論的に説明をされると、納得感が違ってくる。

全体を通じて筆者の論旨は、「利己主義」は人間には免れないので、人間性に反したモラルの押し付けは却ってモラルの崩壊を招くというものだ。最終章では、人間性に反したモラルとして「武士道」が取り上げられる。

倫理的な行動や利他的な行動は、それを支える社会の仕組み(例えば、農村のような集団主義社会、ケイレツ、終身雇用、年功序列等)があって成り立つものであって、それがなくなる(例えば、グローバルスタンダードの普及)と維持することは困難。そして、「モラルに従った行動をすれば、結局は自分の利益になるのだよ」という利益の相互性を強調する商人道よりも、理性による倫理行動を追求するモラルの体系である武士道を強制することで社会を維持していくのは、大きな心理的、経済的なコストを必要とし無理がある。と主張する。(昔、受けたリーダーシップ研修には、新渡戸水戸部稲造の『武士道』を読んで、武士道精神を理解し、実践すべしなんてものもあったが・・・(^^;))

個人的には、「サピエンス全史」で書かれていたような、実体のない理想・理念を追いかけられたからこそ人類の発展はあったという歴史の見立てにも大いに首肯するところではあるが、人間は理想だけでは食っていけないし、日々のミクロの行動は相当利己的であるのも大いに納得だ。「利益の相互性」対「理性による倫理」、今後も意識していきたい思考の枠組みである。

 

目次

第一章 「心がけ」では何も変わらない!
第二章 「日本人らしさ」という幻想
第三章 日本人の正体は「個人主義者」だった!?
第四章 日本人は正直者か?
第五章 なぜ、日本の企業は嘘をつくのか
第六章 信じる者はトクをする?
第七章 なぜ若者たちは空気を読むのか
第八章 「臨界質量」が、いじめを解決する
第九章 信頼社会の作り方
第十章 武士道精神が日本のモラルを破壊する

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山岸俊男『安心社会から信頼社会へ―日本型システムの行方』 (中公新書、1999)

2023-12-23 07:26:43 | 

日本人の行動や社会を社会心理学の観点から実験・分析した一冊。筆者はすでに他界されておられるようだが、北大で社会心理学を専門とされた教授をされていた方。

アプローチはアカデミックだが、一般読者向けにわかりやすく記述されている。目から鱗が落ちる知見がいくつも披露されており、日本人としての自分自身の思考や行動を顧みる機会として貴重な読書体験だった。

筆者は、日本人が集団志向で思考したり行動するのは、個人よりも集団を大切に思ってやっているわけではない。むしろ欧米に比べて、他人を信頼しない度合いは高いという、常識を覆す実験結果が示される。そして、その原因は日本人の特色というよりも、日本社会の仕組みに要因があると言う。

「日本人の集団主義文化は個々の日本人の心内部に存在するというよりは、むしろ日本社会の「構造」の中に存在」している。つまり、「集団主義的な」日本社会で人々が集団のために自己の利益を犠牲にするような行動をとるのは、人々が自分の利益よりも集団の利益を優先する心の性質をもっているからというよりは、人々が集団の利益に反するように行動するのを妨げるような社会のしくみ、とくに相互監視と相互規制の仕組みが存在しているから」(p.45)

コロナ禍における、自主的な行動規制などは、まさにこの社会のしくみ(相互監視と相互規制)が集団での自主行動規制を生んだと言えるだろう。

そして、筆者は、日本人の他者への信頼度が低いのは、集団主義社会による関係の安定性の中で(筆者はこのような社会を「安心社会」と呼ぶ)、日本人には相手を信頼する必要性低く、一般的信頼を育つ土壌が無かったからだという。信頼がないというよりも、信頼を必要とする環境になかったということだ。

「集団主義社会では、集団の内部にとどまっている限り安心して暮らすことができます。しかし・・・・集団主義的な行動原理は、実は、集団の枠を超えて人々を広く結びつけるのに必要な一般的信頼を育成するための土壌を破壊してしまう可能性があります」(p.52)

おお、なるほどと、膝を打つ説明だ。

また、筆者は安心社会と信頼社会のそれぞれにおいて、人間に必要とされる知性として「地図型知性」と「ヘッドライト型知性」という概念を提示します。

「関係性検知を核とした社会的知性(地図型知性)は、関係による行動の拘束が大きな集団主義社会においてとくに適応的な役割を果たすだろう・・・集団主義社会の最も重要な特徴は『内集団ひいき』の期待にあります。」(p.199)

「相手の立場に身を置いて相手の行動を推測する能力を核とする社会的知性を、ヘッドライト型(社会的)知性と呼ぶ・・・必要になるのは地図の範囲を超えて社会的世界をナビゲートする場合・・・特徴はその携帯性にあります。」(pp.204‐205)

集団主義社会において地図型知性が求められるという指摘には、思い当たること多い。わが身を振り返ると、会社での会話、飲み会の会話などは、多くが人と人との関係性検知のための会話ばかりではないか。そうした会話を通じて、人間関係の地図を私たちは作っているということのようだ。

信頼社会においては、相手の立場に身を置く「ヘッドライト型知性」(暗闇をヘッドライトをもとに道を進んでいくためのスキルといったイメージ)が求められるという指摘についても自身の欧州での駐在経験を顧みると納得感高い。赴任当初は、外国人部下をなかなか信頼できず、マイクロマネジメントに走る傾向があった。安心社会で地図型知性を身に着けた私は、ヘッドライト型知性が弱いために、気心知れた日本人部下には丸投げするくせに、安心社会の外では外国人部下を信頼して、任せるということが、できなかったのである。

筆者の持論は、日本の「安心社会」を成り立たせていた条件が、環境変化により維持困難になり、これからは信頼社会を築いていく必要があるというものである。そして、日本人はヘッドライト型の知性を身に着けていくのが大切ということだ。本書を、イギリス駐在前に読んでいれば、もう少し自分のマネジメントスタイルも変わっていたかもしれない。

学び、気づきの多い一冊であった。

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一ノ瀬 俊也『日本軍と日本兵 米軍報告書は語る』 (講談社現代新書、2014)

2023-12-20 14:37:35 | 

 

「日本陸軍とはいかなる軍隊だったのか」について、太平洋戦争において日本陸軍と戦った米陸軍の内部広報誌”Intelligence Bulletin”を紐解き、明らかにした一冊。米軍の内部広報誌という性格上、公平性・客観性には一定の留保が付くものの、戦争前線における日本軍の姿をリアリティを持って知ることができる。

日本の歴史家や作家の著作、また映像などによって、日本軍の非合理的で精神主義な思考や作戦は多々指摘されているところではあるが、米軍からの描写や分析に触れることで、違った角度で知ることができる。犠牲となった兵士たちに思いを寄せると、胸が痛み、読み続けるのが辛かった。

劣悪な傷病者への扱い、捕虜兵から見透ける前線兵士の士気、陸軍の面子に拘った玉砕戦などなど、本は付箋紙とアンダーラインで一杯になったが、本稿に書き残すには重く辛い。

本書では、日本軍をステレオタイプ的な精神主義組織と見做すのではなく、作戦のミクロレベルでの合理性や、白兵突撃一本やりではない作戦や、戦争後期後半には「バンザイ攻撃」も変更になったこと等も具体的に紹介する。一方で、日本兵個人の特徴として、「予想していなかったことに直面するとパニックに陥る、射撃が下手である。自分で物を考えず、「自分で」となると何も考えられなくなる」という日本サイドからは見えにくい米軍サイドの見立てを紹介するなど、新しい知見を提供している。

現代の社会・企業生活に依然残る日本人としての特質も感じる。単に過去の「組織と人間」の事例とするだけでなく、教訓として何を学ぶか。それが読者に問われる一冊だ。

 

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N響 第2000回 定期公演 指揮ファビオ・ルイージ: マーラー 交響曲 第8番 変ホ長調 「一千人の交響曲」

2023-12-18 07:00:32 | 演奏会・オペラ・バレエ・演劇(2012.8~)

第2000回の定期演奏会ということで、ファン投票で選ばれたマーラー交響曲第8番の一本勝負。久しぶりに満員となったNHKホールは、開演前から熱気で一杯、トイレも長蛇の列でした。

この曲の生演奏に接するのは3度目。まだ、この大曲を自分の中で消化しきれないところ多々あり、苦手意識もあるのですが、この日の演奏は節目の演奏会に相応しい気合入った素晴らし演奏で、初めて自分なりにしっかり聴けた満足感の高いものとなりました。

2000回というN響史に残る演奏会ということもあるのでしょうか。演奏開始から、団員さん達の緊張感と集中力に満ちた「気」が3階席にも伝わってきました。そして、ルイージさんの創る音楽は第1部から引き締まったもので、大舞台での大ホームランを狙いに行ったものとは異なった印象。それが、「一千人の交響曲」としては小ぶりの合唱陣ともマッチし、オーケストラと合唱団の調和が非常に均整取れて聴こえます。

とりわけ、第2部はオーケストラと合唱の美しさが引き立ってました。中盤、「マリア崇拝の博士と合唱」に続いて、管弦楽、ハルモニウム、ハープらで歌われる旋律の美しいこと。そして、そこに合唱が入ってくる神々しさは、失神ものでした。

独唱陣はオーケストラの後ろ、合唱陣の前に陣取っているためか、歌声が3階席までは届きにくいところがあります。ただ、演奏自体が締まって抑制された感じでしたので、逆に独唱陣も音楽全体に浮いた感じではなく、良く統合されている印象。唯一の日本人ソリストの三宅さんがステージ上に見えないので、どこで歌うのだろうとキョロキョロしていたら、NHKホールの特有の右側壁のパイプオルガン席に登場し、気高いまでに美しい栄光の聖母を歌い上げてくれました。

全体的に非常に抑えられた厳しい音楽だったので、フィナーレでの高揚感は抑えられていたエネルギーが放出され、神秘的で昇天のラストでした。キリスト教には無縁の私にも、熱いものが胸にこみ上げます。

会場からは熱狂的な拍手が寄せられました。ルイージさんは何度も呼び出され、オケがステージから去ったあとも、独唱陣と一緒に、そして最後の最後はマロさんと二人で登場し、会場の拍手に応えてくれました。

私自身は第何回の定演まで楽しむことができるでしょうか。是非、今回の2000回を機に、N響はルイージさんと更なる高みを目指してほしいと思います。しっかりその成長を見守りたいし、応援していきたい。

第2000回 定期公演 Aプログラム
2023年12月17日 (日) 開演 2:00pm
NHKホール

曲目
マーラー/交響曲 第8番 変ホ長調 「一千人の交響曲」(ファン投票選出曲)

指揮 : ファビオ・ルイージ

ソプラノ : ジャクリン・ワーグナー
ソプラノ : ヴァレンティーナ・ファルカシュ
ソプラノ : 三宅理恵
アルト : オレシア・ペトロヴァ
アルト : カトリオーナ・モリソン
テノール : ミヒャエル・シャーデ
バリトン : ルーク・ストリフ
バス : ダーヴィッド・シュテフェンス

合唱 : 新国立劇場合唱団
児童合唱 : NHK東京児童合唱団

Subscription Concerts 2023-2024Program A
No. 2000 Subscription (Program A)

Sunday, December 17, 2023 2:00pm [ Doors Open 1:00pm ]
NHK Hall

Program
Mahler / Symphony No. 8 E-flat Major, Symphonie der Tausend (Symphony of a Thousand)

Artists
Conductor: Fabio Luisi

Soprano: Jacquelyn Wagner*
Soprano: Valentina Farcas
Soprano: Rie Miyake
Alto: Olesya Petrova
Alto: Catriona Morison
Tenor: Michael Schade
Baritone: Luke Sutliff
Bass: David Steffens

Chorus: New National Theatre Chorus
Children Chorus: NHK Tokyo Children Chorus

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中根千枝(構成=現代新書編集部)『タテ社会と現代日本』講談社現代新書、2019

2023-12-16 10:38:57 | 

講談社新書歴代第2位の発刊数(第1位は渡部昇一『知的生産の方法』)を上げている『タテ社会の人間関係』の続編として、タテ社会の枠組みを活用して現代日本を読み解く一冊。(筆者自身が書いているように、筆者は「タテ社会」という言葉は使っておらず、日本の組織の特徴を「場の共通性に根差したタテ関係が強い小集団」にあると言っているのを、編集側が「タテ社会」という言葉でまとめている)

2匹目のドジョウ感満載であるが、1967年発刊の前著の分析枠組みは今も色あせておらず、前著の復習や理解を深めるのに役立つ(ただ、全体の半分近くが前著の元論文がそのまま掲載されているだけなのは、どうかと思う)。日本を取り巻く環境は大きく変わりつつも、タテ関係の小集団によるデメリットが、長時間労働やいじめと言った現代の社会問題の背景の一つにもなっていることが理解できる。

改めて、デジタル化はグローバルゼーションで日本を取り巻く内外の環境は大きく変わっているが、根っこの特徴はまだまだ根づよく残存していることに気づかされる。

初めて中根さんの本に触れる方は、まず原著『タテ社会の人間関係』を読むのをお勧めしたい。本書は余裕があればで良いかな。

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岡本隆司『中国史とつなげて学ぶ日本全史』東洋経済新報社、2021

2023-12-14 07:30:02 | 

古代から近現代までの日本史を中国との関係で鷲つかみする一冊。書き下ろし形式のエッセイ風の文章なので、大雑把な議論ではあるものの読み易い。

古代から日本が中国の影響を深く受けて来たことは周知だが、改めて日本の歴史を中国・東アジアとの関係の中で概観することで、日本国や日本人の特徴や日中の複雑な関係が理解できる。

古代~平安時代は中国のコピーの時代。そして平安~鎌倉はアジアシステムから離脱し、土着化・土俗化や政治体制の多元化(朝廷と幕府)が起こる。室町~戦国になると、中国や欧州の変革の影響も受けながら、日本の社会構造が大きく変化(地方の経済的独立、生活の拠点が山間部から平野部へ移行、支配体制の入れ替わり等)し、「日本全体の身体の入れ替わり」が起こる。江戸前期(開幕~元禄・享保)時代には都市化や「鎖国」により国家意識が明確に芽生えてくる。享保~開国前夜は、享保の脱中国化が進み、「鎖国」が本格化し、国学が編み出され日本が「凝集」していくという。本格的に日本・日本人のアイデンティティが模索される時期だ。

本書の後半、近代以降は記述もより詳細になる。ねじれた日中関係は入り組んでいて複雑だが、記述も好奇心を刺激される。

例えば、辛亥革命という近代中国を大きく転換させた歴史的事件があったが、本件には明治維新を経験した日本が強い影響を与えていた。

「もともとネーション・ステート(国民国家)」というものに縁のなかった、別個のシステムだった大陸や半島に、国民国家のシステムやノウハウが日本から持ち込まれたことが、今日まで続く構図の原点です。・・・日本という存在があったがために、今日の中国の体制はある。」(pp.248-250)

日中関係史というと、とかく日本が中国から受けた影響が中心となりがちだが、片方向ではなく双方向の関係性をより認識できる。

また、日本の特徴を「凝集」、「一体化」に見出し、それをアジア・太平洋戦争など日本の対外進出の破綻要因としているのも納得だ。

「日本と中国の根本的な違いとして、(官と民が)凝集した日本と官民乖離の中国」がある(p.176)

「日本という存在に特別の価値をもたせ、それを押し付けることでしかアジア各国と渡り合うことができなかった。その尊大な姿勢が、必然的に「皇国」をも「大日本帝国」をも破局に導いたのでしょう。・・・根本的なアイデンティティ、それに基づくアジア各国との接し方に破綻の根源があったことは間違いありません」 (pp.232-233)

教科書的な出来事中心の歴史とは違った視点で、テーマをもって振り返ることで、普段知っているつもりになっていたことがより立体的に見えてくる。勉強になりました。

 

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すばらしいアリス・紗良・オットのピアノ:F.ルイージ、N響、リストピアノ協奏曲第1番ほか

2023-12-08 07:30:34 | 演奏会・オペラ・バレエ・演劇(2012.8~)
 
12月のルイージ、N響の2本目はサントリーホールのBプログラム。Cプロに続いて、Bプロも初日に振替えです。

プログラムは、ハイドン、リスト、レーガーというあまりお目にかからない組み合わせです。どれも聴きごたえ満載でしたが、2曲目のアリス・紗良・オットによるリストのピアノ協奏曲1番が取りわけ印象的でした。

アリス・紗良・オットさんの演奏は、過去に1度触れたことは記憶にあるのですが、失礼ながらあまり良く覚えてませんでした。今回のリストのピアノ協奏曲第1番での演奏は、「一途な姿勢でこれほど多彩な音を放つピアニストなんだ!」と強いインパクトを与えてくれるものでした。
 
紅のドレスでステージに現れた紗良さん。華奢な体躯で、可憐さを匂わせながらも、舞台を支配する独特のオーラ・雰囲気を醸し出しています。第1楽章は力強い打鍵で、激しく情熱的な音色がホール一杯に響きます。第2楽章は柔らかく、優しい。木管とのやりとりも息があってうっとり。そして、第3,4楽章と進むにつれて、さらに憑かれたようにアリスさんはピアノに向かい、激流とも言える演奏となりました。
 
14歳に初めてオーケストラと共演したのがこの曲だったとアンコール前に一言ありましたが、個人の気持ちがとりわけ入った演奏に感じられたのも納得です。ルイージ、N響もアリスさんの熱演に応えるように、前のめりでの演奏でした。
 
終演後はもちろん大拍手。ステージを小走りに行き来するアリスさんが実にチャーミング。人気あるのも納得ですが、人気以上の実力を感じた演奏でした。

アンコールはサティのグノシエンヌ 第1番。激しかったリストとは真逆の静逸な音楽に心が洗われる時間でした。

冒頭のハイドンは、端正で折り目正しい正統派の演奏に聞こえました。N響の美しいアンサンブルが耳に優しいです。

メインのルーガーは全く初めて聞く曲でしたが、モーツァルトのモチーフが姿・形を変えて何度も現れ面白い。音楽的なユニークさや価値は私には分かりかねますが楽しめました。
 
いよいよ来週は第2000回記念の定期演奏会。まさに祝祭曲であるマーラーの交響曲第8番です。否が応でも期待で胸膨らみます。
 
 
 

第1999回 定期公演 Bプログラム
2023年12月6日 (水) 開演 7:00pm
サントリーホール

曲目
ハイドン/交響曲 第100番 ト長調 Hob.I-100 「軍隊」
リスト/ピアノ協奏曲 第1番 変ホ長調
レーガー/モーツァルトの主題による変奏曲とフーガ 作品132

指揮 : ファビオ・ルイージ
ピアノ : アリス・紗良・オット

No. 1999 Subscription (Program B)

Wednesday, December 8, 2023 7:00pm
Suntory Hall

Program
Haydn / Symphony No. 100 G Major Hob. I-100, Military
Liszt / Piano Concerto No. 1 E-flat Major
Reger / Variations and Fugue on a Theme by Mozart Op. 132

Conductor : Fabio Luisi
Piano : Alice-Sara Ott

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網野善彦『日本の歴史を読みなおす(全)』 (ちくま学芸文庫、2005)

2023-12-06 07:36:52 | 

いよいよ12月に入り、本年の書き漏れ・残しのエントリーをとりあえずアップしておかないと・・・とのプレッシャー。今年後半は例年以上に読書に時間を割いているのだが、なかなか備忘メモを書く時間が取れず、これから順不動でやっつけの雑な読書記録をアップしたい。

まずは10月に読んだ「日本の歴史をよみなおす(全)」。

中世を日本史の大きな転換点として捉え、貨幣、差別、女性、天皇、荘園、農村などなどのテーマを取り上げ、日本の社会史を描く。数十年前に元版を読んだが、その後続編が刊行され、更に2つをまとめたものが全編として文庫化されている。その文庫版を読んだ。読んだはずの前編もすっかり忘れていた。歴史学的には古典の部類に入るのかもしれないが、私には、日本や日本人を考えるうえで、目から鱗がおちる指摘が満載で超おすすめの一冊である。

目から鱗の一例は、私たちが一般に想定する「百姓」=「農民」の先入観の誤りだ。奥能登地方の家に残された江戸時代の史料を読み解き、「百姓は決して農民と同じ意味ではなく、農業以外の生業を主とした人々-非農業民を数多く含んでいる」ことを示す。百姓とは「百の姓を持つ一般の人民という意味以上のものでもそれ以下のものでもない」のだ。そうした思い込みを捨てて史料にあたり、「日本の社会を農民とともに非農業民まで広く視野に入れて見直すことで、今までとは違った日本の社会・歴史が見えてくる」という(pp254-268)。常識、既定の認知の枠組みを疑う大切さに気付かされる。

また、日本人は、上からの権力に弱く、本音と建て前を使い分けると言われる。その「お上に弱い日本」、「本音と建て前」の使い分けの起源も興味深い指摘だった。「(公)文書の世界での均質性は、明らかに上からかぶさってくる国家の力があり、それに対応しようとする下の姿勢が一方にある。そうした姿勢が、古代以来きわめて根深く日本の社会にある。・・・・表の世界と裏の世界を区別し、表ではこの均質性に対応しようとする姿勢が、室町期以降とくに顕著になってくる。もともとそれが律令国家から端を発している」(pp45-46)。よく言えば、外来の律令をうまく国内で適応させるための術だったことが推察されるが、本音と建前の使い分けは、なんと古代にまで遡るのだ。

偶然だが、この秋、東京国立博物館で開催された「やまと絵」展では、本書で中世の庶民(特に被差別階級)の実態として詳細に解説された「一遍聖絵」が展示されていた。本書とリアル史料としての「一遍聖絵」を合わせ読み/見ることで、より立体的に古代~中世の転換期の庶民の生活様式が垣間見えた。

 

【目次】

日本の歴史をよみなおす

文字について
貨幣と商業・金融
畏怖と賤視
女性をめぐって
天皇と「日本」の国号

続・日本の歴史をよみなおす

日本の社会は農業社会か
海からみた日本列島
荘園・公領の世界
悪党・海賊と商人・金融業者
日本の社会を考えなおす

 

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晩秋の武蔵野 野川・武蔵野公園ラン

2023-12-04 07:34:20 | 日記 (2012.8~)

本格的な冬到来の前に、最後の秋を味わいに野川・武蔵野公園へジョギング。

野川を上って、公園入り。まだ昼下がりですが、陽は低く武蔵野の林を照らします。



銀杏の大木の葉もすっかり黄色に染まっています。

 

そのまま野川公園から隣接の武蔵野公園へ。ススキの絨毯も最終段階でした。空の青とのコントラストが美しい。

 

柿をつつく野鳥。メジロのようにも見えましたが、ちょっと遠いので確証得られず。



武蔵野公園を周回し、再び野川公園へ戻ります。林の横から通る光の筋で、林が光り輝きます。

 

別の銀杏の大木が見事な黄色の葉をつけていました。

 

バーベキュー場ではゆったりバーベキューを楽しむグループがいくつか。

 

この時季の武蔵野、華やかな紅葉と落葉の寂しさのバランスが何とも言えない風情を醸し出します。ジョギングには最高のコースです。

 

2023年12月3日

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N響/ファビオ・ルイージ: ベルリオーズ<幻想交響曲>ほか

2023-12-03 07:22:51 | 演奏会・オペラ・バレエ・演劇(2012.8~)

早くも師走。年末の第9は行かない予定なので、今年の演奏会はN響定期の3プログラムを残すのみとなりました。

Cプロは振替で初日に。始まりはフンパーディンクの歌劇「ヘンゼルとグレーテル」前奏曲から。このオペラ、ロンドンで何度か観劇し、音楽も美しくとっても好きなオペラなのですが、不思議なほど日本では上演が無いですね。前奏曲はオペラ全体を見渡す構成で、このオペラの楽しさやファンタジックな雰囲気が伝わります。いつかルイージがこのオペラをやって欲しい~。

メインはベルリオーズの幻想交響曲。2019年12月のN響Cプロでディエゴ・マテウス指揮で聴いて以来、4年ぶりです。N響の幻想交響曲と言えば、デュトアの香り高い演奏が今でも記憶に焼き付いていますが、この日のルイージの「幻想」もエッジの効いた痺れる演奏でした。

第2楽章以降、強弱、緩急が豊かで、テンポも目まぐるしく変化します。イングリッシュホルン、オーボエ、クラリネット等、各パートのソロも聴きごたえありますし、合奏も充実。香りというよりも、ドラマを目前にしているような劇的な演奏でした。

観衆からはブラボーも各所から飛び出す大きな拍手に包まれ、私も精一杯の拍手を送りました。残り2つのプログラムも楽しみです。

 

定期公演 2023-2024シーズンCプログラム
第1998回 定期公演 Cプログラム

2023年12月1日(金) 開演 7:30pm(休憩なし) [ 開場 6:30pm ]

NHKホール

フンパーディンク/歌劇「ヘンゼルとグレーテル」前奏曲
ベルリオーズ/幻想交響曲 作品14

指揮:ファビオ・ルイージ

No. 1998 Subscription (Program C)
Friday, December 1, 2023 7:30pm [ Doors Open 6:30pm ]

NHK Hall

Humperdinck / Hänsel und Gretel, opera—Prelude (Hansel and Gretel)
Berlioz / Symphonie fantastique, Op. 14 (Fantastical Symphony)

*This concert will have a duration of 60 to 80 minutes without an interval.

Conductor: Fabio Luisi

 

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