その後の『ロンドン テムズ川便り』

ことの起こりはロンドン滞在記。帰国後の今は音楽、美術、本、旅行などについての個人的覚書。Since 2008

3年ぶりのイギリス訪問(4) 《ミュージカル ”ビリー・エリオット” ”レ・ミゼラブル”》

2015-08-23 22:12:02 | ミュージカル、演劇 (in 欧州)
 ロンドンの夜と言えば、ウエスト・エンドのミュージカルやお芝居。ミュージカルは、3年前には無かった「ベッカムに恋して」「チャーリーとチョコレート工場」「レット・イット・ビー」などの作品が追加されており、どれを見に行くかが難しいのですが、やっぱり大好きな「ビリー・エリオット」と「レ・ミゼラブル」は外せません。

【ビリー・エリオット】


 ビリー・エリオットはチケットの当日券安売りショップTKTSで60ポンドの席を47ポンドで購入。注目のビリー役は、、NatSweeny君と言う、今年7月からレギュラー入りしたばかりの少年でした。ベースとなる分野は体操のようで、バレエシーンではまだこなれた踊りとは言えない硬さが感じられました。が、アクロバット系のシーンでは見事な身のこなしです。デビューしたてなので、小柄で舞台映えという意味ではまだもう一歩かな。文字通り、これからの成長が楽しみなビリー君です。

 他の主なキャストは概ね変更ありませんが、お婆ちゃん役が変わっていました。スタート以来勤めてきたAnn Emeryさんは昨年の舞台実写版の映画”Billy Elliot Live"には出演されてましたが、1930年生まれの80歳台半ばですからご勇退されたようです。新しい方も違和感なく演じていましたが、お婆ちゃんと言えばAnn Emeryさんだったので、ちょっと、寂しい感じ。

   
《ポスターいろいろ》


【レ・ミゼラブル】


 こちらは売切れに備えて、日本でネット予約して行きました。TKTSでは取り扱っていなかったので正解だったようです。早くから予約したおかげで前から10列目ぐらい。劇場内はビリー・エリオットに比べると、ずっと大人の雰囲気です。



 キャストは私が見た3年前からは殆ど変ってました。いずれも非常にレベルの高い歌唱と演技で、本作品は4回目の観劇でしたが、これまでで一番の感動。特に、ジャン・ヴァルジャン役は、ジャベール役に比して、不満が残った時が多かったのですが、今回のPeter Lockyerさんは今まででベスト。あと、フォンティーヌ役がアジア系(フィリッピン)の役者さんだったので少々びっくり。映画版のアン・ハサウェイの演技があまりにも印象的で残像が強く、見た目の違和感が拭えませんでしたが、伸びのある歌声は素晴らしかったです。

 多少、演出も変わったような気がしましたが、重厚で感動的な舞台は25年以上のロングランが続いているのも頷けます。

 
 他にも行きたい舞台はいろいろあったのですが、今回のミュージカルは結局この2本で我慢。円安のせいで、以前より随分高額になった気がしますが、劇場の雰囲気と公演レベルは間違いなくロンドンならではです。

 
(レ・ミゼラブルのキャスト)
Jean Valjean Peter Lockyer
Javert Jeremy Secomb
Fantine Rachelle Ann Go
Thénardier Phil Daniels
Madame Thénardier Katy Secombe
Eponine Carrie Hope Fletcher
Cosette Zoë Doano
Enjolras Bradley Jaden
Marius Rob Houchen.


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My last musical in London/  Thriller Live (スリラー・ライブ)

2012-08-16 08:36:45 | ミュージカル、演劇 (in 欧州)


 ロンドンで最後のミュージカルとして、マイケル・ジャクソン、ジャクソン5の歌と踊りの舞台Thriller Live (スリラー・ライブ)を観に行きました。このミュージカルは、ロンドンのミュージカルの中では珍しく、日曜日の夜公演があるのです。ホントは、Queenの"We will rock you"に行きたかったのですが、こちらはマチネのため断念。(帰任前の週末の日中帯は何かと忙しいんです)

 舞台は特にストーリーがあるわけではなく、マイケルジャクソンの少年時から全盛時の曲を次から次へと、パフォーマーたちが歌と踊りで披露します。ミュージカルというよりショーですね。I Want You Back, ABC, Can You Feel It, Off The Wall, , The Way You Make Me Feel, Smooth Criminal, Beat It, Billie Jean, Dirty Diana, They Don’t care About Us, Thrillerなど。マイケル・ジャクソンの大ファンというわけではありませんでしたが、いずれも耳馴染みのある曲ばかりです。

 とにかく、パフォーマーたちの、歌とダンス、凄い運動量に圧倒されます。この日も、いつも通りTKTSで当日の半額チケットなのですが、席は前から4列目ですごい迫力でした。汗が飛んできそうな距離で、実際に飛んでは来ませんでしたが、肌の汗の粒はははっきりと見えるほどです。 子役の子の歌唱は、声の伸びとかがもうひとつでしたが、ほかの大人たちは皆上手。特に唯一の女性ボーカルの声量と音域の広さはスゴいものでした。

 理屈なしに楽しめるミュージカル(ショー)なので、よっぽどマイケル・ジャクソンが嫌いな人を除いては、すべての人にお薦めできます。

 ※公式HPはこちら→

 2012.7.29 @Lyric Theatre

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ミュージカル CHICAGO (シカゴ)

2012-08-13 22:07:22 | ミュージカル、演劇 (in 欧州)
 帰国してもう1週間になりました。この東京のうだるような暑さに強制適応させられて、もう既に、ロンドン生活は遠い過去になりつつあります。

 2か月前のことですが、気にはなっていたが、まだ見ていなかったミュージカル「シカゴ」を見に行きました。勝手な先入観で、SEXと犯罪を描く大人向けシリアス・ミュージカルかと思ったら、確かに大人向けではあるのの、思っていたよりずっと笑いのある楽しいミュージカルでした。



 舞台は、ジャズオーケストラがステージ後方のひな段に並んで演奏し、劇がステージ前方で進行する「8時だヨ全員集合」形式です。セットらしいセットは殆どなくて、セクシーな躍りと歌で魅せるミュージカル。

 TKTSで定額の半額以下の29ポンドで当日券を買ったのですが、なんと最前列!!!網タイツのお姉さんのダンスがかぶりつきで鑑賞できて大満足でした。(我ながら中年根性丸出しで恥ずかしい・・・)

 ドロシー役とヴェルマ役の主役級の2人がとっても良かったです。ドロシー役はとってもチャーミングだったし、ヴェルマ役のダンスと歌は迫力満点。グループの躍りや振り付けが非常にテンポ良く、飽きさせません。出演者のダンスの切れ味が良く、見入ってしまいます。12名で構成されるジャズバンドの演奏も良くて、音楽、躍り、歌が上手く組み合わさった良くできたミュージカルです。あと、アメリカ英語のお陰か、台詞が殆どわかったのも嬉しかったです。

 リーピターになるほどではありませんが、十分楽しめる内容でした。このミュージカル、ロンドンでは秋で終了という話を聞きました。一度は見に行く価値があると思います。聞いた話では、米倉涼子さんがドロシー役をニューヨークのブロードウエイでやるそうです。失礼ながら、どこまでできるのか、少し不安ですが、頑張ってほしいです。

 2012.6.16 @Garrick Theatre
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ケンブリッジ・シアター/ マチルダ (ロイヤル・シェイクスピア・カンパニー)

2012-07-18 00:33:47 | ミュージカル、演劇 (in 欧州)
 ※昨日、ロンドンから戻りました。とりあえず、書きたまっているものをリリース。

 今年、ローレンス・オリビエ賞を総なめにした『マチルダ』を見に行ってきました。ミュージカルはTKTSで半額にならないと行かない私なのですが、マチルダはまだTKTSにチケットが廻ってこないほどの人気で、Webで見ても週末は数週間先で無いと取れません。私は偶然、前週末に劇場近くを通ったので、BOXオフィスに寄ったら、たまたま1枚だけリターンのチケットがあるということでした(でも、その後、ウインブルドン男子決勝にアンディ・マリーがでることになり、かなり後悔)。





 日曜日のマチネと言うことで7割がたはマチルダぐらいの子供(小学校1年生)を連れた家族づれでした。私のようなおじさんが一人で見に来ているのはまれで、完全に浮いています。ケンブリッジシアターは3層構造ですが、とてもこじんまりした劇場で、ステージなんぞは日本の小学校の体育館のステージの方がよっぽど大きいぐらいです。



このマチルダは、児童文学家ロアルド・ダール(「チャーリーとチョコレート工場」もこの人の作品)の原作で、イギリスの子供ならだれでもが読む児童文学だそうです。ストーリーは極めて優秀な女の子をめぐるお話です。

 ミュージカルのほうですが、さすがオリバー賞を総なめにするだけあって、すぐれものです。これは良く言われることですが、子供たちの演技や踊りや歌がうまいこと。よくまあ、こんな小さな子どもたちがここまで出来るものだと感心します。明るく、時々ドキドキ、そしてハッピーエンドのストーリーも、音楽に乗ってこれぞミュージカルと言う雰囲気で好感が持てます。プロダクションも派手な仕掛けはあまりありませんが、とても美しく楽しめました。

 ただ、ただ・・・、私には「ちょっと、これはお子ちゃま向けだなあ~」という感想が立ってしまいました。登場人物が、良いひとと悪いひとに完全に色分けされて、極めてシンプル。子供が主人公という意味ではビリー・エリオットもそうですが、ビリーにある現代社会の矛盾、大人の世界と子供の世界の葛藤というようなことはあまり描かれていません。また、子供向け童話が原作と言う意味では、「チャーリーとチョコレート工場」(映画を言っています)もそうですが、あの映画には、大人社会や子供の身勝手さへの強烈な皮肉が込められていましたが、このマチルダにはありません。完全懲悪的な極めて分かりやすい人物類型とストーリーです。

(本日のキャスト)




 まあ、これはミュージカルに何を求めるかだけの話なので、完全に個人の好みの問題です。ミュージカルとしてはとっても良く出来ていますので、興味のある方はまず1回は是非見て欲しいです。


 2012年7月8日
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Ninagawa Company/ Cymbeline (蜷川幸雄演出/ シンベリン(シェイクスピア))@バービカンシアター

2012-05-30 01:23:50 | ミュージカル、演劇 (in 欧州)
 蜷川幸雄さん演出のシェイクスピア劇『シンベリン』のロンドン公演初日を観てきました。非常に充実した、グイグイ引き込まれる舞台で、あっという間の3時間半でした。以下、手短に感想を。

 最も印象に残ったのは、俳優陣の熱演です。中でも、MVPはやはり大竹しのぶさんでしょう。この方、もう50歳台半ばのはずなのですが、とてもそうは見えないです。王女イモージェンを、小気味良いセリフ回し、テンポよい動作で、美貌、知性、品格を備える王女を見事に演じていました。(くどいですが)50歳台の人が若い女性を演じる違和感が全くと言っていいほど無く、観ていて華があるというか、非常に惹きつけられます。特に、後半の変装した男性役などははまり役で、男性と女性の声の使い分けなど、コミカルかつ素晴らしかった。

 また、ポステュマスを演じ、大竹さんとペアを組んだ阿部寛さんも存在感溢れる演技だったです。ホント、格好いいですね、この人。でも、この公演を盛り上げたのは、この2人を支える脇役陣です。特に、シンベリン役の吉田鋼太郎さん、クロートンの勝村政信さん、ベレーリアスの佐川哲郎さん、ピザーニオ大石継太さんが印象的でした。いずれも骨太の演技で、とっても安定した舞台になっていたと思います。

 実は、舞台が始まった冒頭は、非常に早い台詞回しが落ち着かなくて、舞台全体が地に足がついていないような印象を受けたのですが、舞台設定がイタリアに移ったあたりぐらいから落ち着いてきました。それからは、ぐーっと舞台に引き付ける磁力を持った舞台でした。

 演出も好みでした。平安絵巻の屏風のような立てを置いたり、どこかの惑星を模したような背景カーテンも、時に日本的な雰囲気を加えたり、観る者の意識を地球レベルまで引き上げて観させるような意図が感じられます。ただ、これが理解できないと本演出がわかったことにはならないのでしょうが、幾つかの場面で東日本大地震を一つのメタファーで使っているところがあります。例えば、戦シーンでは、津波とおもわれる波の音や赤ん坊が泣き叫ぶ声などが効果音として使われたり、ラストシーンでは、舞台上の木が、津波を生き残った「希望の杉」を模したもになったりするのですが、正直この劇の文脈と東日本大震災との関連性や意味合いは私には良くわかりませんでした。

 あと、これはこのお芝居に限ったことではないのですが、やはりシェイクスピア劇の日本語公演というのは、難しいなあと思いました。私は、日本語によるシェイクスピア劇の公演は初めてで、シンベリンも英語でも日本語でも読んだことはないですが、日本語で100%内容が分かるというメリットは素晴らしい一方で、やはりシェイクスピアの英語の音や韻を通じたリズム感は失われてしまいます。時折、台詞回しがつらそうに見えるは、言葉の問題としかいいようがないかと思います。ストーリーはシェイクスピアだが果たして、これはシェイクピア劇と言えるのか?というのは、ちょっと考えてしまいます。

 ただ、全体を通じて印象的で、良い公演です。ロンドンに来て以来、シェイクスピア劇は10本近く見ているのですが、この蜷川版も十分トップクラスで通用すると思います。英人にはどう写ったでしょうか?明日以降の新聞レヴューが楽しみです。

 蛇足ですが、大竹しのぶさんや阿部寛さんが出演するということもあってか、会場は半分近くが日本人と思しき人でした。

(舞台開始前。何故か、楽屋を模した舞台で、俳優さん達がウロウロしている)


(カーテンコール)





Cymbeline
Ninagawa Company
29 May 2012 - 2 June 2012 / 19:15
Barbican Theatre

In Japanese with English surtitles

Directed by Yukio Ninagawa
Cast includes Hiroshi Abe and Shinobu Otake

Presented by the Barbican in association with Thelma Holt, Saitama Arts Foundation and HoriPro Inc

ANA (All Nippon Airlines) Ninagawa Company's offical airline




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ミュージカル ”レ・ミゼラブル” (クイーンズ・シアター)

2012-04-14 18:47:06 | ミュージカル、演劇 (in 欧州)
 初日以外は天気が悪く全く冴えないイースター連休だったが、幸運にも連休最終日に「レ・ミゼラブル」のチケットをTKTSで36ポンド(定価65ポンド)で入手。渡英して最初に見たミュージカルを3年ぶりに見に行くことができた。




 
 改めて25年のロングランは伊達ではないと納得した。テンポの速いストーリー展開・迫力満点の音楽、派手な仕掛けは無いが十分に雰囲気を伝える演出が非常に良く出来ていて、3時間近い上演時間があっという間に終わってしまった。

 出演者の中では、Javert役のFraserFantine の歌唱が圧倒的にすばらしく、歌では主役Jean Valjean役の David Shannonの上を行っていた。伸びる高音と圧倒的な声量はマイクなしで聴きたいと思うほど。David Shannonも演技はすばらしく、歌も良い。
 女性陣は、Carolineの SheenThénardierはとっても美形だが歌は可も無く不可もなく、CosetteのLisa-Anne Woodは今ひとつ存在感が薄かった。Eponine役のAlexia Khadimeのコブシの効いた歌唱は、どっかで聴いた覚えがあると思ったが、2年前に見た「Wicked」西の魔女エルファバ役だった。彼女は演技も溌剌として、私的にはとっても好み。





 クイーンズシアターは、他のミュージカルの劇場に比較して、こじんまりしている気がするが、舞台と観客席がとても近く、アットホームな雰囲気を醸し出している。好感度の高い劇場である。

 天気に恵まれない連休だったが、締めくくりはとっても良かった。


Cast

Jean Valjean David Shannon
Javert Hadley FraserFantine
Caroline SheenThénardier
Cameron BlakelyMadame
Thénardier Katy Secombe
Eponine Alexia Khadime
Cosette Lisa-Anne Wood
Enjolras Liam Tamne
Marius Craig MatherEnsemble

Creatives

Producer Cameron Mackintosh
Author/Dramatist Alain Boublil
Book & Music Claude-Michel Schönberg
Lyricist Herbert Kretzmer
Adapation & Direction Trevor Nunn
Adapation & Direction John Caird
Production Designer John Napier
Lighting Designer David Hersey
Costume Designer Andreane Neofitou
Musical Staging Kate Flatt
Sound Designer Mick Potter
Sound Designer Andrew Bruce
Orchestrations John Cameron
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SOHO THEATRE/ THE BEE

2012-02-05 23:02:36 | ミュージカル、演劇 (in 欧州)
守屋さんに紹介頂いた野田秀樹の芝居「THE BEE」を観に行きました。野田氏が英語で書き下ろし(元ネタは筒井康孝の小説とのこと)、2006年にロンドンで初演されたお芝居だそうです。今回はそのリバイバルで、ニューヨーク、ロンドン、日本とワールドツアーを組んでいます。

会場は、SOHOエリアの北辺にあるSOHOシアター。初めての訪問だが、高校の小視聴覚教室程度の大きさの100名程度収容の小劇場。舞台が手の届くようなところにあり、舞台と観客が一体となるようなシアターです。開演前には満員で、熱気むんむん。観衆は95%は非日本人で、日本人っぽい人は数人見かける程度でほとんどが西洋人でした。

簡単に筋を紹介すると、平凡なサラリーマンは、帰宅途中に脱獄した殺人犯に妻子が拉致され、人質にとられていることを知る。拉致犯の妻に夫の説得を依頼に行ったサラリーマンは、逆にその妻と子供を人質にとって立てこもる。そして、お互いの人質の妻子をターゲットにした残酷な報復の連鎖が始まっていく・・・・

報復の連鎖をテーマにした、笑うに笑えないブラックユーモア満載の風刺劇です。前半の急テンポと後半の一転したスローモーションのようなペース展開や各俳優の特徴的な身裁きが、見るものの集中を舞台から一瞬たりとも離さない、そんなお芝居でした。

野田さんを含めて4名しか出演していませんが、サラリーマン役のキャサリン・ハンターを除いては、一人が何役もこなします。キャサリンハンター(女優さんの男性役)はオリバー賞の受賞暦がある有名な俳優さんらしいですが、さすがと思わせる大きな存在感でした。平凡なサラリーマンから残酷な復讐鬼へ徐々に変化していくさまが素晴らしい。最後には、残虐行為でさえ、ルーティン化すると淡々と日常のなかに溶け込んでしまう様子は、背筋が寒くなるほどの演技でした。また、脱獄囚の妻役を演じる野田さんも、侵入者であったはずのサラリーマンを、いつの間にか夫のように受け入れてしまっている、その変化が興味深かったです。野田さんの英語が上手なのにも驚きました。

タイトルのBEEは文字通り蜂なのですが、何の隠喩だかは良く分かりませんでした。平凡なサラリーマンが蜂の飛ぶ音を聞いて、発作を起こすシーンが2回ほどあるのですが、この報復劇と蜂がどう結びつくのかはわかりません。攻撃する側とされる側の間で、復讐の連鎖が始まった時の左右対称性(やっていることはどちらも同じ)の隠喩のようでもあります。

復讐の連鎖なので当然ハッピーエンドでは終わりません。なので、行き場のないやりきれなさは残る複雑な演劇でありますが、完成度の高いお芝居だと思うので、興味のガル方は足を運ばれることをお奨めいたします。ロンドンでは2月11日までです。

From SOHO Theatre HP


The Bee
By Hideki Noda and Colin Teevan
Tue 24 Jan - Sat 11 Feb 2012
Soho Theatre

Cast
Ido Kathryn Hunter
Anchoku, Ogoro, Ogoro's Son, Reporter Glyn Pritchard
Dodoyama, King of Chefs, Reporter Clive Mendus
Ogoro’s Wife, Reporter Hideki Noda

Company
Director Hideki Noda (Director)
Designer Miriam Buether
Lighting Designer (Original) Rick Fisher
Lighting Designer (Tour) Christoph Wagner
Sound Designer Paul Arditti
Production Manager Nick Ferguson
Technical Stage Manager Nick Hill
Deputy Stage Manager Rebecca James
Assistant Stage Manager Kate Wilson
Sound Engineer Chris Reid
Costume Supervisor Chris Cahill
Props Supervisor Sarah Buik
Assistant to the Director Ragga Dahl Johansen
Artist Coordinator Susan Momoko Hingley Set Build Capital Scenery
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社会派ミュージカル ビリー・エリオット

2012-01-10 00:31:41 | ミュージカル、演劇 (in 欧州)
 連続のビリー・エリオットネタになります。

 このミュージカルは、一面では子供を主役にした成長物語ではありますが、決して子供向けミュージカルではありません。むしろ、民営化や小さな政府を推進し、ストライキなどの労働運動に強硬姿勢を取ったサッチャー政権と、その負の直接的影響を受けた炭坑労働者たちとの対立を描いた社会派ミュージカルです。

 今回、ビリーエリオットの中で歌われる幾つかの歌詞を読んで、改めてこのミュージカルの社会性や過激さを発見し驚きました。(ミュージカル・ビリーエリオットのサウンドトラックの歌詞は、以下のサイトで紹介されています。こちら→)いくつかのさわりを、私のつたない逐語訳付きでご紹介します。


 まずは、本ミュージカルでメロディが何度も流れ、一つのテーマソング的な歌であるSolidarity (歌はYouTubeでこちらから。曲は1:40から始まり、断続的に続きます→)。タイトルからして「団結」ですから凄いのですが、歌の一部は、私も若かりし頃メーデーで歌ったことがあるような労働ソング。

 例えば、サビとして、何度も繰り返されるコーラスの歌詞は・・・
Solidarity, solidarity,               (団結!、団結!)
Solidarity forever.                 (いつまでも、団結だ!)
We're proud to be working class,       (オイラ達は誇りある労働者階級だ)
Solidarity forever.                 (いつまでも、団結!)
歌の後半に、子供コーラスもこれを歌うのが何ともユーモラス。

 更に、冒頭で歌われる、ストライキを監視する警官たちとストライキ中の炭坑夫の間で交わされるやりとりは・・・
<警官たち>
Oi Geordie (おい、ジョーディー(舞台の北イングランドのタイン川流域の人達のこと))
Wanna see something (何か見たいんだろう)
You've never seen before (まだ見たことないぜ)
And that's just off the overtime (ただの残業カットだけどな)
Wanna see some more? (もっと何かみたいのか?)
<炭鉱夫たち>
You think yer smart ya cockney shite (自分のこと賢いと思ってんじゃねえだろうな、このコックニー(生粋のロンドン人(江戸っ子のロンドン版?))のクソったれ)
You wanna be suspicious (そんなに疑り深くなりたいのか)
When you were on the picket line (おまえらがピケのラインで監視してた時)
We went and fucked yer missus (俺らはおまえらのカミサンとやってきたんだぜ)
All of us at once (俺らいっぺんにな)

 これが子供向きのミュージカルであるわけがありません・・・。


 続いてもう一つ紹介したいのは、第2幕冒頭の、村の仲間が集まったクリスマス・パティーでのコーラスです。タイトルは、"Merry Christmas Maggie Thatcher“ (メリー・クリスマス、マギー・サッチャー)"。(メギーはマーガレット・サッチャー首相の愛称?)(歌はYouTubeでこちらから→

 この曲のサビとして、何度も繰り返されるコーラスの歌詞は・・・
So merry Christmas Maggie Thatcher (メリー・クリスマス、マギー・サッチャー)
May God's love be with you       (あんたに神の愛があらんことを)
We all sing together in one breath   (おいらたちは声を揃えて歌うぜ)
Merry Christmas Maggie Thatcher   (メリー・クリスマス、マギー・サッチャー)
We all celebrate today           (みんな、今日はお祝いだ)
'Cause it's one day closer to your death (だって、あんたがくたばるのに1日近づくからな)

 これも子供たちも揃って大合唱なのですが、「まだ存命であり、功績もあるサッチャー元首相をここまで言うか???寅さんがタコ社長に『お前なんか、早くくたばっちまえ』というのとはわけが違うんだけど・・・」という私の驚きは、日本人感覚なのでしょうか?

 さび以外も過激な歌詞が続きます。例えば・・・
And they've brought their fascist boot boys (そして連中は子飼いのファシスト少年団をつれてきた)
And they've brought the boys in blue (ブルーの服(サッチャー首相が好んで青色のスーツを着ていたのをもじっている)を着せてな)
And the whole Trade Union Congress (そして、産業組合議会も)
Will be at the party too         (パーティーにいるだろう)
And they'll all hold hands together    (手を取り合って)
All standing in a line          (一列になって)
'Cause they're privatising Santa   (だって、連中はサンタも民営化してるんだから)

 もちろんこういった闘争ソングだけでなく、このミュージカルには、亡きお母さんがビリーに宛てた手紙の歌やビリーのバレエに対する思いを歌った歌など、しんみり、じっくり味わう曲も沢山入っています。

 ただ、こういった当時の社会情勢や一つ一つの歌詞に込められた背景を紐解いていくと、多分に商業目的のところはあるのかもしれませんが、このミュージカルのメッセージがより明確になったり、サッチャーと同じように緊縮財政を強行している現Cameronの政策との関連性も見えたりして、このミュージカルがより多層的に楽しめます。ここに紹介したのは、その極々一部ですので、是非、歌詞を通じて読んで頂くと、よりその強烈さを感じることが出来ると思います。

 ビリー・エリオットを見に行かれる方は、是非、これらの歌詞を読まれてから行かれることをおすすめします。楽しみ方が増えるのは間違いありません。


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新春 ビリー・エリオット祭り

2012-01-07 21:17:45 | ミュージカル、演劇 (in 欧州)
 この年末年始は体調を崩して寝込んだことに加えて、その他のアクシデントも加わり、近年まれに見る最低の年末年始だったのですが、唯一の救いが、訪英してくれた家族と出かけたミュージカル「ビリー・エリオット(Billy Elliot)」。

 ご存知の方も多いと思いますが、2000年の映画「Billy Elliot(日本語タイトルは「リトルダンサー」)をミュージカル化したもので、ロンドンでは2005年からのロングランです。1980年代(サッチャー政権期)のイングランド北部の炭坑村で炭坑夫として働く父と兄を持つビリーが、村のバレエ教室に偶然参加したことがきっかけに、バレエに目覚めるものの、経済的困難、炭坑の労働争議、階級対立と言った厳しい環境の中、家族や周囲のサポートを受け、ロイヤルバレエスクールのオーディションに合格するという物語です。

 今回は家族のリクエストもあり、1回分はチケットを購入していたのですが、家族ともども私としても2年ぶりに見たこのミュージカルに嵌ってしまい、5日で3回も足を運ぶというお祭りとなりました。

 笑いあり、涙ありのストーリー展開、エルトン・ジョンの音楽の馴染みやすさ、効果的な演出等、優れたところが数多いこのミュージカルですが、今回の発見は主役ビリー・エリオット役やビリーの親友マイケル役の子役たちの個性の際立ち方。ビリーもマイケルも4名でローテーションを組んでいるようなのですが、その日の子役によって舞台の印象が大きく変わるのです。

 例えば、私が観た3回のうちの2回のビリーを演じたRyan Collinson君は体操レッスンの経験はあってもクラシックバレエや舞台演技の経験は無し。ですので、バレエのシーンは正直、観ていてハラハラするぐらい不安定なところもあるのですが、しぐさ、表情の少年っぽさが絶妙で、バレエは駄目でもタップダンスやモダンダンス的な場面や、空中宙返り等のキレは抜群。溌剌とした舞台を見せてくれました。一方で、1回観たAdam Vesperman 君はバレエの基礎が出来ているようで、バレエの回転シーンなどは惚れ惚れする程、軸のぶれない綺麗な踊りで、腕や足の動きがなんとも優雅です。

 驚いたのはこの2名の個性を活かしてなのか、2幕のオーディションシーンで踊るソロのダンスでは、ベースの音楽は同じなのですが、Adam君には白鳥の湖のメロディがバックに被せられた編曲がしてあり、バレエ的なダンスを中心に組み立てられているのに対して、Ryan君は白鳥の湖は被せられず、徹底してストリートダンス的なダンスでダイナミックに魅せます。どっちが良いということなく、ただその子役たちの個性とその舞台印象に与えるインパクトの大きさに感動しました。そして、ビリーの親友マイケル役は3名の舞台を観ましたが、これも各人大きく個性の異なるものでした。

 ロンドンのブロガーの方々の記事の中で、バレエの記事を書いてらっしゃる方が、ダンサーによって、同じ作品でも如何に舞台が変わるかということをご紹介されているのを良く目にしますが、実感として分かったような気がしました。

 かなり沈んだ1年のスタートだったのですが、なんとか、このミュージカルからもらった元気で、この1年頑張ろうと思わせてくれたビリー君たちに感謝です。

 ※公式ホームページはこちら→

※カーテンコールより






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ロイヤル・シェイクスピア・カンパニー 「真夏の夜の夢」 (A Midsummer Night's Dream)

2011-10-12 23:43:41 | ミュージカル、演劇 (in 欧州)
 今年新装したストラッドフォード・アポン・エイボンのロイヤル・シェイクスピア・シアターで『真夏の世の夢』を観ました。エイボン川沿いに建つレンガの劇場は、ロンドンから100マイル(160キロ)離れた人口10万人ちょっとの町の劇場とは思えないほど、立派なものです。ストラッドフォード・アポン・エイボン訪問をこの劇場の開館を待っていた甲斐がありました。

(外観の写真を撮り忘れたので、劇場についてのWikiはこちら→

(こちらは劇場内の通路)


 「真夏の夜の夢」はシェイクスピアの中でもかなり好きな作品で、こちらでブリテンのオペラ版を観ましたが、演劇は高校の演劇鑑賞教室で見て以来(何年ぶり???)ですので、とっても楽しみにしていました。「真夏の夜の夢」を狙ってこの日を選んだのです。

 1か月前に劇場に電話したところ、「もうRestricted Viewの席しかない」ということで、2階席正面やや右側ではありますが、目の前に柱が立ち、確かに少々見にくいものでした。ただ、劇場は観客と舞台がとても近く出来ており、2階席からは手が届きそうな感じ。持参したオペラグラスも全く不要でした。Restricted Viewとは言え、これで12ポンドというのは有り難いです。

(開演前の舞台)


 さて、肝心の芝居の方ですが、残念ながら私の好みでは在りませんでした。現代風の演出そのものは他のシェイクスピア劇でも観てきたので気にならないのですが、主な舞台である森のイメージが違いました。「ヘンゼルとグレーテル」の神秘的で吸い込まれるような森の空間をイメージする私の勝手な思いと、現代風の無機質な森の舞台設定が違っていて、最後まで馴染めませんでした。若者4名のやりとりも極端にドタバタだし、好きなキャラクターのパックも目立ったところがなくがっかり。ただ、会場は逆に凄い盛り上がりで、隣に座っていたツイードのジャケットを着たいかにも英国人(と思われる)初老のおじいさんは、品良く、ずっと笑いずめでした。う~ん、私が分かってないだけなのかしら。

 ということで、コンテンツの満足度はイマイチでしたが、観客を含めた劇場の雰囲気は素晴らしいです。ロンドンのグローブ座と比べると、観光客が多いのは同じとしても、英国人比率はこちらのがかなり高そうですし、室内と言うこともあって、照明や音響もいろいろ工夫が施されていました。





 また、違う作品も観てみたいものです。

 ※ロイヤルシェイクスピアカンパニー(RSC)のホームページ→


A Midsummer Night's Dream
Royal Shakespeare Theatre
1 October 2011

Director – Nancy Meckler
Designer – Katrina Lindsay
Lighting – Wolfgang Göbbel
Composer - Keith Clouston

Arsher Ali – Puck
Maya Barcot – Fairy
Lucy Briggs-Owen – Helena
Christopher Chilton – Fairy
Kammy Darweish – Egeus
Imogen Doel - Fairy
Christopher Godwin – Quince
Michael Grady-Hall – Flute
Alex Hassell – Demetrius
Felix Hayes – Snug
Matti Houghton – Hermia
Lanre Malaolu – Fairy
Nathaniel Martello-White – Lysander
Theo Ogundipe - Fairy
Pippa Nixon – Hippolyta/Titania
Chiké Okonkwo – Snout
Timothy Speyer – Starveling
Jo Stone-Fewings – Theseus/Oberon
Amanda Wilkin – Fairy
Marc Wootton - Bottom

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グローブ座 『フォースタス博士』 (Doctor Faustus)

2011-10-05 22:14:37 | ミュージカル、演劇 (in 欧州)
 グローブ座に、クリストファー・マーロウの戯曲『フォースタス博士』(Doctor Faustus)を見に行く。

 恥ずかしながらこの舞台を見るまでは、クリストファー・マーロウという16世紀のイギリスの戯曲家は知らなかったし、ゲーテ以前にファウスト博士伝説を元にした戯曲があったことも知らなかった。てっきり、ゲーテの『ファウスト』をいじったものをやるのかと思って出かけたのである。開演前にプログラムを読んで、初めてこれが、謎の人生を送ったクリストファー・マーロウという人(Wikiはこちら→)による「ファウスト」なのだと知った次第である。

 筋は、悪魔と魂を売る契約することは似ているが、善天使や悪天使が出てきたり、ローマ教皇を笑いものにするところなどは、オペラやゲーテ(読書は、まだ第3幕の途中でストップ中)とは違っている。(Wikiはこちら→
 正直、大筋は分かるものの細かいところになると台詞が聞き取れない芝居は、観ていてつらかった。ファフォースタス博士のPaul Hiltonと、メフィストフェレスのArthur Darvillの2人の役者さんがしっかりしていて舞台にはとっても安定感があったし、演出も奇をてらったところは無く、シンプルな中に観る者の想像力をかきたてるようなところがあり、好みだった。しかし、台詞が分からないのはつらいなあ~。せめて字幕があれば良いんだけど。

 なので、自分としては自分の英語力に対する劣等感が先に立ってしまい、芝居は2の次と言う、ちょっと後味の悪い観劇となってしまった。

 ※今回初めてグローブ座の2階席に陣取ったが、舞台全体が見渡せてとっても良かった。



2011年9月18日

Doctor Faustus
A terrifying exploration of the human and the divine.

Written by Christopher Marlowe

CREATIVES
Director: Matthew Dunster
Designer: Paul Wills
Composer: Jules Maxwell
Puppet Director: Steve Tiplady
Choreographer: Georgina Lamb
Magic Consultant: Richard Pinner

CAST
Charlotte Broom
Bad Angel/Alexander's Paramour

Michael Camp
Duke/Frederick/First Student/Cardinal of Padua/Covetousness

Richard Clews
Dick/First Scholar/Friear Sandelo/Envy

Nigel Cooke
Lucifer/Pope Adrian/Horse Courser

Jonathan Cullen
Valdes/Pope Bruno/Carter/Gluttony

Arthur Darvill
Mephistopheles

Robert Goodale
Raymond/Old Man/Cornelius/Nan Spit

Paul Hilton
Doctor Faustus

Sarita Piotrowski
Helen/Pride

Will Mannering
Benvolio/Second Scholar/Third Student/Cardinal of France

Pearce Quigley
Robin/Alexander

Iris Roberts
Hostess/Lechery

Beatriz Romilly
Good Angel/Duke's Servant

Felix Scott
Wagner/Emperor Charles/Wrath

Jade Williams
Duchess/Sloth

Chinna Wodu
Beelzebub/Martino/Second Student/Archbishop of Rheims

Musical Director
Genevieve Wilkins

Musicians
Stephen Hiscock
Harry Napier
Jez Wiles
Paul Johnson

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シェイクスピア・グローブ座 『お気に召すまま』

2011-08-11 01:45:57 | ミュージカル、演劇 (in 欧州)
 シェイクスピア・グローブ座へ「お気に召すまま」を見に行きました。「お気に召すまま」は、一度は見てみたいと思っていた作品です。

 脚本を読んだ時から(日本語ですが・・・)、舞台では、男装役で活躍する追放された公爵の娘ロザリンドがどんな人がどんな演技をしてくれるのかが楽しみで一杯でした。

 夏休み真っ盛りのグローブ座は観光客を中心に今日も満員で、いつもながらですが、観客の期待感が劇場から溢れるばかりに満ちていて、自然と気持ちが高揚します。この劇場の持つ魔力にはいつも驚かせられます。

 

 そして、期待のロザリンドですが、Jo Herbertという女優さんでしたが、美眉秀麗な美男女優さんでした。演技のほうも、ちょっとやりすぎではと思うほど男っぽくて力強い演技でした。個人的にはちょっと力強すぎて、もう少し繊細なところがあってもいいのではとも思いましたが、こちらの方が原作に忠実なのかもしれません。仲の良い従姉妹(?)で現公爵の娘シーリア役のBeth Parkとのコンビも非常に息があっていて、見ていてとても楽しいものでした。

(目の前に柱があってみにくい席でしたが、奥の山高帽を被ったのがJo Herbert)


(中央がJo HerbertとBeth Park)


 後半、陽が落ちると、劇場はグーッと冷えてきて、毛布がないと寒いぐらいですが、ハッピーエンドの結末は心を暖かくするのに十分でした。





18:30, 7th August 2011
As You Like It

Written by William Shakespeare

Creatives
Director: James Dacre
Designer: Hannah Clark
Composer: Olly Fox

Cast
Gunnar Cauthery: Orlando
Gregory Gudgeon: Touchstone
Jo Herbert: Rosalind
Ben Lamb: Silvius/Charles
John O'Mahony : Duke Frederick/Duke Senior
William Oxborrow: Oliver/Corin
Emma Pallant: Phebe/Jacques
Beth Park: Celia

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グローブ座/ ハムレット

2011-05-13 06:36:24 | ミュージカル、演劇 (in 欧州)
 先日の連休最終日、グローブ座に「ハムレット」を見に行きました。

(グローブ座外観)


 グローブ座は昨年は初めて訪れ、昔ながらの芝居小屋的な雰囲気に魅了されました。まだ5月頭の半分野外の劇場はまだ肌寒さを感じさせるものでしたが、シーズンの幕開け間もないフレッシュな雰囲気が漂っていました。



(開始直前)


 「ハムレット」は一度は観たいと思っていたシェイクスピアの作品なので、とても楽しみにしました。一応、戯曲の方もこの間読み返してみたので、読んだ印象と芝居がどう違うのかも興味深いものでした。

 見終わってみて、今回の「ハムレット」は私がイメージしていたよりも随分ソフトタッチなハムレットでした。シェイクスピアノ悲劇の代表作でもありますから、冬に見た「リア王」のような、真っ暗やみの重厚な悲劇を予想していたので意表を突かれた感じです。

 衣装も地味目で、王や王妃も王族と言うより、農民のボスのような衣装でした。ハムレットに至っては途中でTシャツ姿になってしまったし。あたりまえですが、きっと、「ハムレット」にも重め、軽め、いろんな演出ががあるのでしょう。グローブ座は半分屋外で17世紀の劇場を再現しているので、大がかりな演出はできないのかもしれず、重くない軽めの演出の方が適しているのかもしれません。

 ハムレットはJoshua McGuireという若手の俳優さん。まさに悩める好青年と言う感じでしたが、演技の方はちょっと、一本調子な感じがしました。私の個人的な注目であったオーフェリアは、Jade Anoukaという若い黒人の俳優さんで、これまた意表をつかれましたが、気品ある演技で、とっても良かった。歌があんまり上手でなかったけど・・・。



(ハムレットのJoshua McGuire)



 やっぱり脚本を読んでいるだけでは分からない部分がいくつかあって、舞台を観て分かるところも多いことに気付きます。例えば、オーフェリアの歌なんかは、脚本では歌の歌詞しか書いてありませんが、芝居ではその歌のリズムとか、色彩、情感が良く分かります。(最も、その歌もイギリス人ならみんな知っている類の歌なのかもしれませんが)。

 また、違った演出の「ハムレット」も見てみたいです。





2011.5.2

Hamlet

Written by William Shakespeare

Creatives
Director Dominic Dromgoole
Designer Jonathan Fensom
Composer Laura Forrest-Hay

Cast
Jade Anouka/ Ophelia
Simon Armstrong Claudius / Ghost
John Bett Polonius
Amanda Hadingue/ Gertrude
Tom Lawrence Rosencrantz / Fortinbras / Osric
Joshua McGuire/ Hamlet
Ian Midlane/ Horatio
Alex Warren Laertes / Guildenstern

コメント (2)
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ロイヤル・シェイクスピア・カンパニー/ リア王

2011-02-04 23:50:49 | ミュージカル、演劇 (in 欧州)
自分としては、ラウンドハウスでのロイヤル・シェイクスピア・カンパニー(RSC)、ロンドン公演の3回目の観劇。「リア王」にチャレンジ。

強烈な芝居だった。先日、原作を読んでその絶望的なストーリーに、重く沈んだ気持ちになったばかりだが、芝居には、さらに哀れ感が加わり、救いようのない気持ちに陥れられる。人間の欲、愚かさ、狂気を嫌と言うほど見せつけられた3時間半。

主役のリア王のGreg Hicksの演技が素晴らしい。一幕での威厳ある王と、3幕以降の狂った老人との落差を見事に演じきっていた。この舞台に一貫して流れる緊張感はこの人の演技によるところが大きい。

リア王以外でも、目をえぐりとられる悲劇のグロスター公役のGeoffrey Freshwater、そしてそのグロスター公の息子でありながら弟の策略にはめらられ父から勘当され、狂人の振りをして人目を欺くエドガー役のCharles Aitkenが血気迫る熱演で素晴らしい。2人がリアを支えていた。

また舞台の重量感は演出によるところも大きいと感じた。特に第3幕前半リアが娘の屋敷から追い出され、嵐の中をさ迷うシーンは舞台中央に、踏み台程度のお立ち台の上にリアを乗せ、天井から雨を降らせると言う設定で、簡単ながら、照明のあて方も素晴らしく、白糸のような雨の線が白く光り、足元では跳ね上がり、情感豊かな、印象的な場面だった。

それにしてもこの芝居は重すぎる。緊張しながら第4幕までは頑張ったが、第5幕には完全にガス欠のエネルギー切れ。全く芝居についていけなくなってしまった。ワグナーのオペラを見る気合と体力がいる。

そして、改めてこの戯曲、芝居の奥深さに参ってしまった。原作をしっかり英語で読み込んで、違った演出、俳優でも見てみたいものである。



Cast:
Charles Aitken - Edgar
Adam Burton - Knight/Messenger/Captain
Brian Doherty - King of France
Darrell D'Silva - Kent
Phillip Edgerley - Knight/Doctor/Servant/Albany's Officer
Geoffrey Freshwater - Gloucester
James Gale - Lear's Gentleman
Paul Hamilton - Knight/Cornwall's Servant
Greg Hicks - King Lear
Sophie Russell - Fool
Kelly Hunter - Goneril
Ansu Kabia - Burgundy/Herald/British Soldier
Tunji Kasim - Edmund
John Mackay - Albany
Sandy Neilson - Knight
Sophie Russell - Nurse 2
Peter Shorey - Knight/Curan/French Soldier
Clarence Smith - Cornwall
Katy Stephens - Regan
James Tucker - Oswald
Hannah Young - Nurse
Samantha Young - Cordelia
Larrington Walker - Knight/Old Man

Creative Team:
Director DAVID FARR
Designer JON BAUSOR
Lighting JON CLARK
Music KEITH CLOUSTON
Sound CHRISTOPHER SHUTT
Movement ANN YEE
Fights KATE WATERS

Running time:
3 hours 20 minutes including one interval of 20 minutes
In repertoire: 21 January – 4 February 2011


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ロイヤル・シェイクスピア・カンパニー 『ジュリアス・シーザー』 (RSC: JuliusCaesar)

2011-01-07 23:42:20 | ミュージカル、演劇 (in 欧州)
 前回の『アントニーとクレオパトラ』(こちら→)に続いて、ロイヤル・シェイクスピア・カンパニーのロンドン公演をラウンド・ハウスに観に行きました。今回もローマものの『ジュリアス・シーザー』です。(HPはこちら→)

 つい今しがた観劇から帰って来たのですが、いまだ胸の高まりが治まらないほど、圧倒された舞台でした。私のこれまでの経験では、オペラ、コンサートに較べると、演劇を観て胸の高まりが治まらないという経験はあまりなかったのですが、今回は完全にやられました。

 まずは、出演者の熱演ぶり。特に、主人公とも言えるブルータス役のSam Troughtonが初めから最後まで血気迫る演技。まさに「高潔の士」ブルータスの見本を演じてくれた。4幕のキャシアスとの口論から友情の確認までの一連の場面などはジーンときました。あと、アントニー役のDarrell D'Silvaも癖のある大人のアントニーを上手く演じていて、青いブルータスとの好対照が上手く出ていました。

 舞台は、「アントニーとクレオパトラ」同様、特にハコモノは殆どないのですが、舞台の背景に映像を織り込み、終始、照明を落とした暗い舞台だったので、戦場やもともとの場面の凄惨さの雰囲気が上手く出ていました。また、戦闘シーンでの雄たけびの声、鉾と盾がぶつかる金属音などの音が舞台の迫力を倍増させていました。

 特に前半は、シーザーの暗殺の陰謀から、暗殺、そして有名なブルータスとアントニーの演説シーンまで、山場が続きとおしの1幕から3幕まで1時間45分ぐらいを一気に見せてくれるので、緊張感をもって見守る場面が続きます。前半見ただけで、「もう今夜は十分楽しませてもらいました」と帰っても良いぐらいでした。

 ラストシーンのブルータスの自死のシーンは、家来に殺させるのではなく、シーザーの亡霊が出てきてブルータスに止めをさすという設定になっていたのが、オリジナルと多少違う点でしたが、場、台詞は脚本をほぼ忠実に追っています。

 今日は満員。演目のせいか、今日の観衆は子供を連れた親子づれから若い学生風の人たち、ビジネスマン・ウーマン、ご年配の方々と、本当に幅広い世代が集まっていたのが印象的でした。英国の演劇文化の幅広さ、深さを感じました。

 月並みですが、いやー、よかったです。

※ラウンドハウスのBarコーナー


※カーテンコール(写真はぶれぶれですが、雰囲気だけでも)
  



RSC “JuliusCaesar”

7 February 2011
Round House

Cast
Joseph Arkley - Remus/Artemidorus/Octavius
Adam Burton - Cimber/Titinius
Brian Doherty - Decius Brutus/Poet
Darrell D'Silva - Mark Antony
Noma Dumezweni - Calphurnia
Phillip Edgerley - Flavius/Popilius/Antony's Servant/Volumnius
James Gale - Cicero/Caesar's Servant/Lepidus/Dardanius
Gruffudd Glyn - Cinna, the Conspirator/Young Cato
Paul Hamilton - Caius Ligarius/Messala
Greg Hicks - Julius Caesar
Tunji Kasim - Romulus/Lucius
John Mackay - Cassius
Patrick Romer - Murullus/Publius/Cinna, the Poet/Clitus
David Rubin - Trebonius/Lucilius
Oliver Ryan - Casca/Pindarus
Simone Saunders - Calphurnia's Servant
Sam Troughton - Marcus Brutus
Larrington Walker - Soothsayer/Octavius' Servant/Strato
Kirsty Woodward - Priestess
Hannah Young - Portia
Samantha Young - Soothsayer's Acolyte

Creative team
Director - Lucy Bailey
Set and Video Designer - William Dudley
Costume Designer - Fotini Dimou
Lighting – Oliver Fenwick
Movement – Sarah Dowling
Music - Django Bates
Sound – Fergus O'Hare
Associate Designer – Nathalie Maury
Fights – Philip d'Orleans
Video System Design – Alan Cox
Video Production – Tim Baxter


コメント (4)
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