その後の『ロンドン テムズ川便り』

ことの起こりはロンドン滞在記。帰国後の今は音楽、美術、本、旅行などについての個人的覚書。Since 2008

祝田 秀全 『歴史が面白くなる東大のディープな世界史』

2014-12-30 17:27:27 | 


代ゼミ講師の筆者が、東大の世界史の入試問題をベースにして世界史を解説した本です。

いや~、とにかく驚きました。「東大の受験生って、こんな難しい世界史の問題を解いているんだ~」と。日本の知識偏重の教育や入試問題が、世界の教育先進国と比べて遅れているというような論調をよく目にしますが、ここに掲載されている入試問題って、質的に世界でもトップレベルにあるんではないか?単に知識があれば解けるわけではなく、歴史全体を俯瞰する力と文章力がないととても解答できない問題ばかりです。

例えば、問題①として挙げられている2001年度の問題。
「輝かしい古代文明を建設したエジプトは、その後も、連綿として5000年の歴史を営んできた。その歴史は、豊かな国土を舞台とするもののであるが、とりわけ近隣や遠方から到来して深い刻印を残した政治勢力と、これに対するエジプト側の主体的な対応との関わりを抜きにしては、語ることができない。
こうした事情に注意を向け、
(1)エジプトに到来した側の関心や、進出にいたった背景
(2)進出をうけたエジプト側がとった政策や行動
の両方の側面を考えながら、エジプトが文明の発祥以来、いかなる歴史的展開をとげてきたかを概観せよ。解答は、解答欄の(イ)を使用して18行(540字)以内とし、下記の語句を必ず一回は用いたうえで、その語句の部分に下線を付せ。

アクティウムの海戦、イスラム教、オスマン帝国、サラディン、ナイル川、ナセル、ナポレオン、ムハンマド・アリー」

古代から現代までを貫く、すごいスケール感ですよね。いいおじさんとなった私にも、知的に面白く、ワクワクする問題です。「東大、東大って、なんぼのもんじゃい」と思っていたのですが、こうした問題群を読んで、「東大って、やっぱり伊達じゃないのね」と納得。

難点は、問題の面白さや質の高さに比較して、筆者の解説の記述は必ずしも分かりやすいとは言えず質的にも高いとは言えないところが散見されるところでしょうか。以前、東大を含めた国公立大学の世界史の入試問題を集めて解説した津野田 興一氏による『やりなおし高校世界史: 考えるための入試問題8問』(ちくま新書)を読みましたが、記述は津野田氏の方が世界史理解により役立つものだったと思います。

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新国立バレエ/ シンデレラ @新国立劇場オペラパレス

2014-12-29 13:25:40 | 演奏会・オペラ・バレエ・演劇(2012.8~)


日本で年末と言えば第九に行くのが相場なのかもしれませんが、どこも割高の演奏会料金にどうも気が向かず、代わりにと言っては失礼ですが、一昨年も行った新国立劇場へシンデレラを見に行きました。この演目は踊りもさることながら、美しくかつ緊張感があるプロコフィエフの音楽が大好きです。

この公演でシンデレラを踊ったのは米沢唯さん。とっても可憐で踊りも優美でした。安定していてかつ演技も上手で非の打ち所がない感じ。観ている方も自然と優雅で幸せな気分になります。シンデレラに加えて、仙女の堀口純さんの艶やかな踊りと道化の奥村康祐さんのメリハリ効いた動きの良さも印象的でした。

今回の演出は一昨年末と同様、アシュトン版。私はこの版しか観たことないので比較はできないのですが、何度見ても想像力を掻き立てられる、美しい舞台です。

必ずしも満足では無かったのはオーケストラ。音は良く鳴っていたと思うのですが、総じて大雑把な印象で、全体としての統一感・バランスや繊細さにはもう一歩との感想を持ちました。

クリスマスシーズンと言うこともあってか、会場は子供連れの家族が多く、熱気に包まれていました。拍手の反応も良く舞台と一体になって盛り上がった、とっても気持ちの良い公演でした。第九も良いですが、年末の「シンデレラ」はほのぼのと1年を締めてくれます。


《ツリーを前に写真を取る家族連れ》



芸術監督:大原永子
Artistic Director : Ohara Noriko
音楽:セルゲイ・プロコフィエフ
Music : Sergei Prokofiev
振付:フレデリック・アシュトン
Choreography : Sir Frederick Ashton
監修・演出:ウェンディ・エリス・サムス
Production Directed and Supervised by : Wendy Ellis Somes
装置・衣裳:デヴィッド・ウォーカー
Designs : David Walker
照明:沢田祐二
Lighting : Sawada Yuji
指揮:マーティン・イェーツ
Conductor : Martin Yates
管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団
Orchestra : Tokyo Philharmonic Orchestra

シンデレラ:米沢 唯
王子:菅野英男
義理の姉たち:古川和則, 高橋一輝
仙女:堀口 純
春の精:柴山紗帆
夏の精:飯野萌子
秋の精:五月女 遥
冬の精:細田千晶
道化:奥村康祐

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三澤洋史 『オペラ座のお仕事――世界最高の舞台をつくる』

2014-12-27 09:53:48 | 


新国立劇場の合唱指揮者三澤洋史さんがオペラの舞台裏を語ったエッセイ。読んでいて「へえ~、そうなんだ」と思うような裏話にあふれていて内容的に面白い上に、文章も読みやすいので、あっという間に読めてしまいます。

新国立劇場の合唱団の素晴らしさはどのオペラ公演でも際立っていて、欧州から帰国以来「日本にもこんな素晴らしい合唱団があるんだ」ととっても驚きでした。本書を読んで「こんな人がリーダーをやっていたのね」と妙に納得。

個人的に興味を引いたのは、稽古における指揮者と合唱指揮者のぶつかり合い(リッカルド・フリッツァとのやりとり)や、作品の中で合唱団をどう活かしていくかという合唱指揮者の工夫、そして一度見たことはあるけれどその良さが分からなかった「ピーター・グライムズ」の劇音楽の説明など。どのエピソードも興味深く、次回以降のオペラ鑑賞でも活かして行けそうです。

ちょっと残念だったのは、きっともっとネタはあると思うし、一つ一つのエピソードももっと深い話があると想像するのですが、題材を絞って内容も軽めに仕上げた感があるところでしょうか。だから気軽にページをめくれるという利点もあるのですが、私としては「もっと広く、もっと深く知りたい!」と思うところがありました。

オペラを観る人はその内幕劇として、観ることが無かった人にも「へえ~、オペラって面白そうだなって」思える良書です。

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NHK趣味Do楽 「3か月でフルマラソン めざせ!サブ4」

2014-12-23 13:44:34 | 


現在、毎週月曜日夜にEテレで放映中のNHK趣味Do楽 「3か月でフルマラソン めざせサブ4!」。昨夜の第8回では、これまで金コーチの指導を受けていた内藤大助さんと金田朋子さんがいびがわマラソンを走りました。金田さんの感動のゴールシーンでは、観ているほうも涙、涙。顔が青白くなっていたから、相当辛かったんだと思います。

これはそのTV番組のテキスト。番組の金コーチのアドバイスがしっかりまとめられています。2010年に一度だけサブ4を達成したものの、その後奮わない私のマラソンに活を入れる最適の一冊です。これを見ていて、やっぱり根本的に練習量が足りないことを実感。

このテキスト自体非常に良くできているのですが、今回は改めてTV(映像)の影響力の大きさに気づかされます。番組放映中のこの2か月、私の練習量も番組の内藤さん、金田さんに合わせるように増えていってます。人をその気にさせる映像の力ってすごい。この勢いを持続させ、2か月後に迫った東京マラソンで何とかサブ4を達成するぞ!

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N響 12月定期Cプロ/ 指揮:シャルル・デュトワ/ ドヴォルザーク/交響曲 第9番 ほか

2014-12-19 00:14:23 | 演奏会・オペラ・バレエ・演劇(2012.8~)
 一週間遅れですが、先週聞きに行ったN響の12月定期Cプログラムの模様を簡単に。

 この日のプログラムは???。「武満、ベルグは良いけど、その後が何故、ドヴォルザークの交響曲第9番?選曲の狙いは何なのだろうか?「新世界から」なら別にデュトワさんでなくてもいいのでは?」などなどとぶつぶつ呟きながら、NHKホールへ。ホールに入ると入口がなんか物々しい雰囲気。誰かVIPでも鑑賞に来るのかと思って暫し立ち止まっていたら、何と皇太子殿下がお見えになりました。

 冒頭の武満さんの曲は初めてでしたが、自分自身、流して聴いてしまい、特に取りたてての感想はなし。すいません。

 続くベルグのヴァイオリン協奏曲は、お母さんが日本人のアラベラ・美歩・シュタインバッハーさんがソリスト。写真では妖麗な雰囲気がありますが、ステージに現われた彼女は青のドレスでむしろ清楚かつエレガントなイメージ。演奏は奇をてらわない正攻法の演奏でした。ヴァイオリンの音は大きくはないけど、一つ一つの音が丁寧な感じ。この曲は、ベルグが18歳で他界したマノン・グロピウス(アルマ・マーラーと彼女の2人目の夫ワルター・グロピウスとの娘)を追悼したものですが、ベルグの想いが胸に伝わってくるような純粋な音楽でした。ただ、オーケストラとのコラボという意味では?マーク。N響の演奏がずいぶん緩く聴こえたのは気のせいでしょうか?

 休憩後の「新世界より」はN響らしい横綱演奏。第2楽章の池田昭子さんによるイングリッシュ・ホルンのソロは惚れ惚れする美しさ。全体としてはアクセントがしっかりついた見通しの良い音楽でした。

 この秋のN響定演は、私にとって熱かった公演が続いたのですが、この日は特に不満はないものの熱いところまでは至りませんでした。殿下はどうお感じになられたのでしょうか?



〈アラベラ・美歩・シュタインバッハーさんのアンコール曲〉


第1797回 定期公演 Cプログラム
2014年12月12日
NHKホール


武満 徹/弦楽のためのレクイエム(1957)
ベルク/ヴァイオリン協奏曲「ある天使の思い出のために」
ドヴォルザーク/交響曲 第9番 ホ短調 作品95「新世界から」

指揮:シャルル・デュトワ
ヴァイオリン:アラベラ・美歩・シュタインバッハー


No.1797 Subscription (Program C)
Friday, December 12, 2014
NHK Hall

Toru Takemitsu / Requiem for strings(1957)
Berg / Violin Concerto
Dvořák / Symphony No.9 e minor op.95 “From the new world”


Charles Dutoit, conductor
abella Miho Steinbacher, violin


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パーヴォ・ヤルヴィ指揮/ ドイツ・カンマー・フィルハーモニー管弦楽団/ ブラームス交響曲第4番ほか

2014-12-15 21:42:28 | 演奏会・オペラ・バレエ・演劇(2012.8~)


 私にとっては、今年最後となるオーケストラの演奏会。ドイツ・カンマ―・フィルの来日公演最終日です。この楽団の正式名はDie Deutsche Kammerphilharmonie Bremen、文字通り訳すと「ブレーメン・ドイツ室内フィルハーモニー」となります。プログラムの日本語表示では「ドイツ・カンマー・フィルハーモニー管弦楽団」。何故ブレーメンを入れないのか不思議ですが、ブレーメンに本拠を置く室内楽団です。

 今回は「ブラームス・シンフォニック・クロノロジー」と題し、交響曲のチクルスをはじめとしたブラームス・プログラムで、ツイッタ―上でもかなりの評判になっていました。この日は、シリーズ最終日と言うこともあってか、会場のオペラシティコンサートホールは期待感の混じった熱気でむんむん。私的にも、初めて聞く外オケである上に、来季よりN響の常任指揮者となるヤルヴィさんの指揮を初めて体験すること、大好きなヴァイオリニストであるクリスティアン・テツラフも登場することの3つも期待が重なり、気合を入れて臨みました。

 ブラームス「悲劇的序曲」で始まったこの日の演奏。久しぶりに体験するブルドーザーのような音塊に仰天しました。日本のお行儀のよいアンサンブルにすっかり慣れっこになってしまった私の耳には、コンサートしょっぱなからかなり衝撃的。コントラバスは4名しかいないのに、室内楽団のイメージとは全く異なる、粗削りで勢いのある演奏に先制パンチを食った感じ。

 続いては、テツラフ兄妹(どっちが年上かは知りませんが)のソリによる、ブラームス「ヴァイオリンとチェロのための二重協奏曲」。ターニャさんのチェロも美しかったですが、ここはやはりクリスティアンのヴァイオリンでしょう。優雅でありながらキレがある演奏はいつも惚れ惚れするばかり。オケとの息もぴったり合っていました。更に、圧巻だったのはアンコールのコーダイの「ヴァイオリンとチェロのための二重奏曲」。テツラフ君の技と紡がれる美音に、ただただ陶酔です。

 休憩後は、いよいよチクルス最後の交響曲第4番。ぼんやりモードで入った第一楽章冒頭でしたが、段々と興が乗ってきると雪だるま式に音が大きくなります。調和の美しさとか、整ったアンサンブルというのとは全く無縁の演奏で、個性と個性がぶつかり合う、まさに音の格闘技。これは人によって好き嫌いが分かれるかもしれません。ベルリンフィルとかウィーンフィルとかだと、この激しさの上に更に洗練さが乗っかるのですが、このオケは洗練さを求めることはしない様子です。指揮のヤルヴィさんも大きなジェスチャーでスケール大きく、ガンガンに鳴らさせます。第3楽章では指揮台上でジャンプまでしていました。聴く方も力が入りっぱなしですから、第四楽章が終わった時にはヘトヘト。でも、こういう演奏って、日本のオケにはなかなかないんですよね。普段は聴けないものを聴けた満足感で一杯です。

 アンコールでは、鳴り止まない拍手に応えて3曲もご披露してくれました。ブラームスの4番の余韻が残る中でのアンコールと言うのもなかなか難しいものがあると思うのですが、最後の最後はこの日唯一のブラームスでない曲、シベリウスの「悲しきワルツ」で後味良く〆て頂きました。


 各演奏後、ホールは聴衆からの大拍手で包まれました。オーケストラが退場した後も拍手は続き、ヤルヴィさんの一般参賀。同じブラームスでも、まるで違う演奏を聴かせてくれるこうしたオーケストラの来日はとっても刺激になります。

 一方で、私的には来年秋からのN響との組み合わせは、はたしてどうなるのか、期待と不安が入り混じる感想を持ちました。ヤルヴィさんがこのカンマ―・フィルをどう育ててきたかは知りませんが、カンマ―・フィルとは対極にあるようなN響を来年、どう導いていくのか?新たな境地を開いてくれるのかもしれないし、水と油だったら・・・などと頭をよぎります。まあ、お互いプロフェッショナルなのだから、素人のつまらん勘繰りを超えたものを聴かせてくれるのでしょう、と期待したいです。来年以降の大きな楽しみの一つとなりました。


パーヴォ・ヤルヴィ指揮/ ドイツ・カンマー・フィルハーモニー管弦楽団
ブラームス・シンフォニック・クロノロジー


[出演]
指揮:パーヴォ・ヤルヴィ
ヴァイオリン:クリスティアン・テツラフ
チェロ:ターニャ・テツラフ
ドイツ・カンマー・フィルハーモニー管弦楽団

12/14[日]15:00
ブラームス:

•悲劇的序曲 op.81 
•ヴァイオリンとチェロのための二重協奏曲 イ短調 op.102 
(ヴァイオリン:クリスティアン・テツラフ、チェロ:ターニャ・テツラフ)
•交響曲第4番 ホ短調 op.98 


[ソリストアンコール]クリスティアン・テツラフ(Vn)、ターニャ・テツラフ(Vc)
・コダーイ:ヴァイオリンとチェロのための二重奏曲 op.7より 第3楽章

[オーケストラアンコール]
・ブラームス:ハンガリー舞曲 第3番 ヘ長調
・ブラームス:ハンガリー舞曲 第10番 ヘ長調
・シベリウス:悲しきワルツ



Paavo Järvi
Die Deutsche Kammerphilharmonie Bremen
"Brahms Symphonic Chronology" [4]

[Artist]
Paavo Järvi (Cond), Christian Tetzlaff (Vn), Tanja Tetzlaff (Vc), Die Deutsche Kammerphilharmonie Bremen
[Program]
Brahms
Tragic Overture, op.81
Double Concerto in A minor for Violin, Cello and Orchestra, op.102
Symphony No.4 in E minor, op.98




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都響 「作曲家の肖像」シリーズVol.100《シベリウス》/ 指揮 大野和士

2014-12-13 21:50:52 | 演奏会・オペラ・バレエ・演劇(2012.8~)


 来年度から音楽監督に就任する大野和士さんと都響のシベリウス・プログラム。とっても楽しみにしていました。大野さんは私がロンドン在住中、隣国ベルギーの首都ブリュッセルのモネ歌劇場の音楽監督として活躍されていました。一度だけ、ロンドン・フィルハーモニックで「ダフニスとクロエ」の第一・第二組曲を振った時に聴きに行っています。(その時は、パンフにKazushi Onoってあったので、小野和志って誰だろう?と思っていたら、ステージに現れたのは大野和士さんでした)

 ファンファーレに相応しいスケールの大きな演奏だった「レンミンカイネンの帰郷」に続いたのは、ヴァイオリン協奏曲。私にはお初のヴァイオリンの三浦文彰さんは、「世界最難関と言われている」(プログラムより)ハノーヴァー国際コンクールで2009年に16歳という史上最年少で優勝した逸材です。ステージに現れた三浦さんは小柄で精悍な外見の若者でしたが、髭を生やしてちょっと不思議な雰囲気も醸し出していました。演奏のほうは、非常に素直で、変なアクセントをつけずストレートで美しい音です。丁寧に紡がれる、真っ直ぐな音は耳をそばだてて聴いてしまいます。ちょっと残念だったのは、音は美しいのだけど、それ以上の奏者のメッセージとか、強い想いのようなものが弱かった気がしました。もっと、エッジを立てて、三浦さんの個性を打ち出しても良いと思います。今後、大きく成長されることを期待したいです。

 休憩後の交響曲第5番は生で聴くのは初めての曲。大野さんはスケール感たっぷりに、豪快に音楽を作っていました。私自身、最近、N響のコンサートばかり続いているので、都響の音がとっても新鮮に響きます。金管セクションの音がとっても目立つなあ~。もっともこれはオケというより、ホールの違いなのかもしれませんが・・・。いずれにしても、爽快感一杯で大満足。

 音楽監督になったら大野さんはどう都響を作っていくのでしょうか?来年も作曲家の肖像シリーズは継続しましたので、これからの変化が楽しみです。



「作曲家の肖像」シリーズVol.100《シベリウス》

日時:2014年12月13日(土)14:00開演(13:20開場)
場所:東京芸術劇場コンサートホール

出演者
指揮/大野和士
ヴァイオリン/三浦文彰

曲目
〈シベリウス〉
レンミンカイネンの帰郷 op.22-4
ヴァイオリン協奏曲 ニ短調 op.47
 ※アンコール
 J.S. バッハ:無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第2番 イ短調 BWV 1003よりアンダンテ
交響曲第5番 変ホ長調 op.82

"Portrait of Composers" Series Vol.100 <Sibelius>
Date: Sat. 13. December 2014, 14:00 (13:20)
Hall: Tokyo Metropolitan Theatre seat
Artists
ONO Kazushi, Conductor
MIURA Fumiaki, violin

Program
<Sibelius>
Lemminkäinen's Return, op.22-4
Violin Concerto in D minor, op.47
Sibelius: Symphony No.5 in E-flat major, op.82

※Today's Encore(12/13up)
J.S.Bach:Violin Sonata No. 2 in A Minor, BWV 1003: Andante

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「ビリー・エリオット ミュージカル・ライブ / リトル・ダンサー」 @日劇シネマ

2014-12-11 20:52:37 | 演奏会・オペラ・バレエ・演劇(2012.8~)


 「ビリー・エリオット」ファンの一人として、このミュージカル・ライブの日本上映は待ちに待った企画でした。上映期間一週間の限定ロードショー。この予定を最優先して、週末に銀座まで出かけました。

 「ビリー・エリオット」はこのブログでも何回かに紹介しているのですが、イングランド北部の炭鉱町に住む炭鉱夫一家の少年がロイヤルバレエスクールに入学するまでを描いたミュージカルです。映画(邦題は「リトルダンサー」)をミュージカル化したものですが、エルトン・ジョンの音楽が素晴らしく、ロンドンでは来年で10年になるロングランを続けています。

 私がこのミュージカルが好きなのは、いろんなタイプのエルトン・ジョンの音楽が楽しめることに加え、少年の成長物語であり、家族愛を描くヒューマン・ドラマでもあり、炭鉱夫のストライキを背景にした社会派ドラマであるという深いドラマであること。主人公ビリーが見せる時に激しく、時に美しい踊り。出演する少年・少女たちのかわいらしい演技。そして、イギリスらしいユーモア。これらが綺麗に融合され、一つの公演として昇華されていることにあります。見れば見るほど、聴けば聴くほどに、その良さに気づかされます。

 今回も改めて、このミュージカルの良さを堪能しました。特に、今回は日本語字幕が付くので、今まで聞き取れていなかった北部イングランド訛りの英語(例えば、お金は「マネー」でなくて「モネー」)の意味が分かって、嬉しかった。細かいところではありますが、「こんなことを言っていたのね」と分かったところが数多しです。

 劇場版の実写版なので、カメラワークが舞台の雰囲気をさらに盛り上げます。劇場では分からないような役者さんの表情や、お婆ちゃん役のシワ(出演のアン・エメリーさんは80歳以上との噂)なんが大スクリーンにアップで映されるものだから、生ではないのだけど生では味わえない迫力やディテールを感じることができます。ただ、逆に前半のビリーのアングリー・ダンスの場面や、後半の成長したビリーと一緒に白鳥の湖を踊るシーンとかは、もっとカメラを引いて撮るところがあっても良いのにと思いました。アップで追うあまり、迫力はあるのだけど、ビリー君がどんなにステージ上を動き回っているかが伝えきれていない感があったからです。

 マニアの間では、主役のビリー君の違い(たいていロンドンでは3-4名のビリー君がローテーションで廻している)に注目が集まるようですが、今回のビリー君は、私が見た中(過去3名のビリー君歴)では最も精悍かつ愛くるしい、「ビリー」らしいビリーだったと思います。正直、バレエやダンスは他にもっと上手なビリー君が居ると思うのですが、持つ雰囲気や演技は素晴らしかったです。

 公演前にビリー君によるバックステージツアーがあったのも良かったし、今回のフィルム化に企画のため、最後のアンコールで過去のビリー君たち20名以上がステージに現われて踊るところなどは圧巻でした。

 いつか日本でこのミュージカルをやってくれないか切に願います。



監督スティーブン・ダルドリー
脚本リー・ホール
音楽監督エルトン・ジョンキャスト

エリオット・ハンナ: ビリー・エリオット
ラシー・ヘンズホール: ウィルキンソン先生
デカ・ウォームズリー: ジャッキー・エリオット
リアム・ムーア: 大人のビリー・エリオット
アン・エメリー: ビリーの祖母

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N響12月定期Aプロ ドビュッシー/歌劇「ペレアスとメリザンド」/指揮 シャルル・デュトワ

2014-12-08 21:27:01 | 演奏会・オペラ・バレエ・演劇(2012.8~)


 年末の第九公演に行かない私には、このデュトワさん指揮・N響によるドビュッシー「ペレアスとメリザンド」(演奏会方式)が今月の目玉公演です。この作品は過去に一度だけバスティーユのパリ・オペラ座で観たことがあります(フィリップ・ジョルダン指揮)が、その時はフランス語公演にフランス語字幕でしたので、美しい音楽と舞台には魅入られましたが、筋・場面が分からずかなり苦しみました。

 今回は日本語字幕付きで内容がしっかり分かる上に、素晴らしい歌手陣と繊細なN響の演奏により、オペラ座に引けを取らないハイレベルなパフォーマンスを堪能しました。

 主要歌手陣を全て外国人で固めたソリストたちの歌唱が、さすがワールドクラスという感じの素晴らしさ。特にメリザンド役のカレン・ヴルチさんの美しく透明感あるソプラノとゴロー役のヴァンサン・ル・テクシエさんの安定感あり響くバリトンのコントラストが印象的。赤の映えるドレスですらっとしたカレン・ヴルチさんには耳だけでなく目も奪われました。また、イニョルド役のカトゥーナ・ガデリアさんが当たり役。癖がなく、ストレートで美しいソプラノは子供のイニョルドのイメージともぴったり。強いドラマ性というよりは音楽や歌で聞かせるこの作品を、私が最後まで飽きることなくステージへの集中力を保てたのは、実力派の歌手陣によるところが大きいです。

 N響の演奏も秀逸でした。デュトワさんの棒について、派手なところはないけどもしっかりと聴かせる音楽でした。私自身、ドビュッシーの音楽に詳しいわけではありませんが、明らかに先月のイタリアプログラムや先々月のドイツものとは違う、色香艶の漂う演奏です。加えて、歌手陣と弦・管のバランスが素晴らしかったことにも感心しました。

 オペラグラスから覗いたN響の皆さんの表情はいつもより硬めに見えました。デュトワさんの指示が厳しいのか、初共演の歌手陣とのコラボに気をかけているのか、私には見当が付きませんが、そんな厳しい表情も、良い意味で音楽の緊張感を高めているような気がしました。

 意外と客席に空席があったのは意外だったし、勿体ないと思いました。でも、終演後の拍手は割れんばかしの大きなものでしたし、デュトワさんにもエネルギーを使い切った表情の中に満足げな表情が覗いていました。出演者それぞれのプロの仕事を見せてくれた演奏会でした。


※自分の記録用:帰宅後に2012年3月に観劇したパリ・オペラ座公演の出演者を調べてみたら、ペレアス役のステファーヌ・デグー、ゴロー役のヴァンサン・ル・テクシエ、アルケル役のフランツ・ヨーゼフ・ゼーリヒは全く同じ配役で出演してた。


第1796回 定期公演 Aプログラム


2014年12月5日

NHKホール

ドビュッシー/歌劇「ペレアスとメリザンド」(演奏会形式)


指揮:シャルル・デュトワ

ペレアス:ステファーヌ・デグー
ゴロー:ヴァンサン・ル・テクシエ
アルケル:フランツ・ヨーゼフ・ゼーリヒ
イニョルド:カトゥーナ・ガデリア
医師:デーヴィッド・ウィルソン・ジョンソン
メリザンド:カレン・ヴルチ
ジュヌヴィエーヴ:ナタリー・シュトゥッツマン
合唱:東京音楽大学



No.1796 Subscription (Program A)

December 5, 2014
NHK Hall

Debussy / “Pelléas et Mélisande”, drame lyrique(concert style)

Charles Dutoit, conductor

Stéphane Degout, Pelléas
Vincent Le Texier, Golaud
Franz-Josef Selig, Arkel
Khatouna Gadelia, Le petit Yniold
David Wilson-Johnson, Un médecin
Karen Vourc’h, Mélisande
Nathalie Stutzmann, Geneviève

Tokyo College of Music, chorus
コメント (2)
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チューリヒ美術館展 @国立新美術館

2014-12-07 07:41:24 | 美術展(2012.8~)


 チューリヒには2011年11月にロンドンからの週末1泊旅行で一度訪れたことがあります。その際にチューリッヒ美術館にも足を運びました。西欧の美術館ではどうしてもルネッサンス期を中心とする中世美術のコレクションが膨大で、それらに目を奪われがちですが、チューリッヒ美術館は近代絵画の充実したコレクションが新鮮でした。


《2011年11月訪問時の美術館外観》

 本展覧会はその同館ならではの印象派から現代にいたるまでの名画を揃え、西洋近代絵画史を概観する展覧会です。モネ、セザンヌ、ルソー、ドガ、クレー、ムンク、ピカソ、ミロ、ダリ、マグリット・・・、意地悪くいえば、名作つまみ食い的な趣もあるのですが、美術史の教科書に必ず出てくるような画家たちの作品をコンパクトに通しで見る機会はなかなかないと思います。

 私のお気に入り3点は以下のとおりでした。ちょっと画像ファイルの取込み元の違いでサイズがあってませんが、ご容赦を。

 入館して最初のコーナーがセガンティーニ。つかみとしては私には最高でした。今年5月に大原美術館で見た《アルプスの真昼》が今でも記憶に残りますが、この絵も繊細な色使いと精緻なタッチが印象的でした。

ジョバンニ・セガンティーニ 《虚栄(ヴァ二タス)》 77*124

 シャガールの絵や版画は何枚も見たり、頻繁に見ると飽きがちなのですが、たまに見ると良いですね。この絵は、シャガールが亡き妻との日々を思い出して描いたものらしいのですが、シャガールらしいほのぼのとした夢想的な世界の中で、画家の愛する妻への暖かい想い出が滲み出ています。

マルク・シャガール 《婚礼の光》123*120

 表現主義のコーナーにベックマンの作品が数点展示されていました。こちらは、楽屋で出番を待つ女優さんたちを描いたこの作品には、力強い線と肉感あふれる人物から強烈な迫力を感じました。

マックス・ベックマン 《女優たち》160*120


 まあ、いつものことですが会期末の訪問でしたので、12月15日までの開催です。


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ウフィツィ美術館展 @東京都美術館

2014-12-04 20:36:20 | 美術展(2012.8~)


 いつも通り会期終了が迫ったこの時期に、ウフィツィ美術館展を見に東京都美術館を訪れました。ウフィツィ美術館には2010年5月にロンドンからの週末フィレンツェ旅行の時に訪れたことがあります。フィレンツェの中でも一際印象に残ったこの美術館の展覧会が日本で行われるなんて、日本の展覧会市場ってホントにすごい吸引力ですね。(ちなみに、今回初めて知ったのですが、「ウフィツィ」とはイタリア語のUfficio(英語のオフィス)から来ているとのことです)


《2010年5月訪問時のウフィツィ美術館の様子》

 流石に、超有名な《春》と《ヴィーナスの誕生》来日していませんが、サンドロ・ボッティチェリの《パラスとケンタウロス》を目玉作品として、イタリア・ルネッサンス期の作品が集まっています。

 これだけまとまってルネッサンス期の作品を鑑賞するのは久しぶりだったので、興奮してしまいました。鮮やかな色合い、細部に至るまで丁寧で明確な描写、安定感があって迫力ある構図、イエス・キリストの受難や聖母子像、受胎告知といった定番ではあるけど神聖なテーマに、強烈に惹きつけられ、一枚一枚に見入ってしまいます。展示作品は75点なのでそう多くはないのですが、重厚な作品群の前に立つと鑑賞に時間もかかるし、かなり疲れます。

 フィレンツェでは教会にあるフレスコ画の独特の温かみある絵に痛く感動したのですが、フレスコ画も何枚かあったのは驚きでしたし、嬉しかった。

 目玉のボルティテェリの作品群には、丸みを帯びた肉体表現や、放心したような独特の人物の表情など、独特の個性が感じられます。《パラスとケンタウロス》は、現地で一度見ているはずなのですが、《ヴィーナスの誕生》の隣にあったせいか、上の写真には写っているのですが、記憶には残っていませんでした。改めて観ると、その描写や含意など作品が放つ魅力に引き付けられます。

 この手の展覧会にしては不思議に空いていて、ゆっくり見られたのも良かったです。当地よりも部屋の照明をぐっと落とした暗めの空間の中で、絵にスポットライトが当たる様は、絵が光を放っているようにも見えて神秘的で神々しい雰囲気を醸し出していました。出口近くで上映していたウフィツィ美術館の紹介ビデオも現地の雰囲気を知るのに良かったと思います。

 12月14日日曜日までです!


サンドロ・ボッティチェリ 《東方三博士の礼拝》


ドメニコ・ギルランダイオ 《聖ヤコブス、聖ステファヌス、聖ペテロ》
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第3回富士山マラソン@河口湖 に出走し、ボロボロ

2014-12-01 22:15:02 | ロードレース参戦 (in 欧州、日本)
 一昨年にこれまでの河口湖マラソンを衣替えした第1回の大会では、大会事務局の駐車場不備等で、約5000人が走れなかったという日本の市民マラソン史に悪名を残すことになった富士山マラソン。私も当時、中央高速道路河口湖インター前で2時間近く渋滞にはまり、5000名の一人に名を連ねました。その時は後日、大会本部からエントリー料が全額返金されたのですが、「もうこんな運営がなっとらん大会は二度と参加しまい」と決意。が、昨年の第2回大会はスタート時間も遅らせて公共交通機関でのアクセスも可能とするなど改善が図られスムーズな運営になったと聞いたことや、私が15年程前に初めてフルマラソンを走って以来お世話になった河口湖マラソンのご縁から、第3回大会の今回は職場の仲間たちを誘って、参加することにしました。

 確かに運営は随分安定した印象を持ちました。今回は東京から列車で行ったのですが、通勤列車並みの富士急行線のランナー・ラッシュには閉口したものの十分スタートに間に合うように到着できますし、スタートエリアの地理的な狭さからスタート前の混雑はある程度しょうがないと思います。天気も恵まれ、紅葉も終わりかかった晩秋の富士五湖エリアの景色を見ながら、フルマラソンならでは緊張感も盛り上がります。


《さわやかな空気が東京とは全然違う》

 有森裕子さん、瀬古俊彦さん、サンプラザ中野くんさん、AKB48から二人など、かなりの豪華メンバーが揃ったスタートラインからスタート。前半は多少のアップダウンは有りますが、順調でした。5キロ点では有森裕子さんとハイタッチで、元気を貰いました。スタート直後から、雲が出てきて来て、紅葉の輝きはちょっとくすんでしまいましたが、よしよしという感じです。ハーフを2時間2分、寒いのでどうしてもトイレが近くなり、そのロスタイムも考えれば、予定通り。


《さあ、いよいよスタート》

 事前にパンフレットで河口湖を過ぎて西湖に向かう途中になる21キロ地点過ぎからこの大会の最大の難所があることは知っていました。1キロ半ぐらいの距離で高低差80メートルを一気に上るのです。これが予想を大幅に上回る厳しさ。500メートル近くは走ったものの、足がピクピク痙攣し始めて、その後は競歩。そして、西湖に辿り着いて急坂は終わったものの、既に足に疲労が襲い、普通に走るのもままらない有様。体が疲れ切って動けないというフルマラソンの特有の症状と言うよりは、まだ走りたいんだけど足がついてこないという、もどかしさ。


《まだまだ元気だった10k過ぎの河口湖大橋》

 この後は、20キロ近く。ただ、惰性で走ったり、歩いたりの繰り返し。西湖は河口湖に比べるとぐっと閑静で人気も無く、晩秋と言うよりも初冬の雰囲気満載だったのですが、そんな雰囲気を味わう余裕は全くありません。途中で、メイドさんのコスチュームを着た可愛い女の子2人組にもさっと抜かれ、更にどうみても70歳は優に超えているお婆ちゃんに抜かれ、驚くやら情けないやら・・・

 河口湖に戻ってくると人が増えて、声援が背中を押してくれるたのですが、もうここまで来ると体全体の体力消耗もピークに達して、自分では進んでいるのかどうかも良く分からないぐらい。結局、タイムは4時間37分58秒(手持ち時計)で、過去10年最低の昨秋の湘南国際マラソンよりは数分良いものの、ダメダメの結果となりました。あの坂にやられたという感じで、来年また走ったとしてもどう走れば良いのか見当がつかない。ちょっと、私には身の丈を過ぎた大会だったのかもしれません。

 来年2月末の東京マラソンに当選しているので、あと3か月で立て直しでリベンジを図りたいと思います。

 2014年11月30日

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