その後の『ロンドン テムズ川便り』

ことの起こりはロンドン滞在記。帰国後の今は音楽、美術、本、旅行などについての個人的覚書。Since 2008

第7回水戸黄門漫遊マラソン・完走記

2022-10-30 22:41:56 | ロードレース参戦 (in 欧州、日本)

素晴らしい秋晴れの下、水戸黄門漫遊マラソンに出走しました。前日に水戸入りしていたので、スタート時間の1時間前にホテルを出て、余裕をもってスタートラインに並びます。


<スタートに並ぶ前にストレッチなど>

4月の長野マラソン以来の大規模レースですが、多くのランナー達が集まる興奮や谷口博美さん、増田明美さんと言った伝説のランナーがスタート櫓に上るなど、独特の盛り上がりで、自然と気持ちが高揚します。


<総参加ランナー約8000名>


<写りが小さいですが、増田明美さん・谷口博美さん>

今回のレースは9月に痛めた脚が完治しておらず、参加するかどうか最後まで迷ったのですが、1週前になって、タイムは気にせず、完走を目標に走ることにしました。8月に購入したスマートウオッチでペースや心拍数が分かるので、前半はとにかくキロ5分30秒のペースを上げずに、体力を温存して後半戦に持ち込むというシンプルなレースプランで臨みます。

スタートから25キロ地点まで、5キロのラップは27分30秒±10秒でプラン通りの走りが出来ました。15キロぐらいまでは、自然とペースが上がる傾向があるので、心拍数を見ながら、意識的にペースダウンを心がけます。また、気温が18℃くらいまで上がってくるとのことだったので、給水所では必ずスポーツドリンクや水を取りました。ペース配分と給水が上手く作用したのか、前半戦はほぼ思い通りの走り。


<8キロぐらい。茨城県庁前の通り>


<ハーフ折り返し直後>

気になったのは、スマートウオッチのキロ毎のアラームと実際のレースの距離表示板が100mぐらいずれている(スマートウオッチの方が早い)。遠回りをして走っているのか?、GPSってそういうものなのか?原因はまた調べてみようと思いますが、走っていて手元の時計上は20k走っている報せがあるのに、20kの表示はずっと先に見えるというのは、精神的に良くありません。

25キロ過ぎると流石にペースが少しずづ落ち始めますが、大崩れすることなく持ちこたえました。そして、私にとってこの大会の難所は32キロからの最後の10キロ。千波湖の外周は坂は無いし、応援も大きく、紅葉もきれいなのですが、湖の反対岸で先行ランナーたちが見えるのがそこまでの遠い距離を実感させ辛い。そして、その後のアップダウンも普通なら大したことないのですが、35キロ以上を走った脚には相当きつい。過去2回の出走ではここらで脚が攣ったり、動かなくなるのですが、今回は前半でエネルギーの無駄使いを防いだせいか、辛いことは辛いのですが、脚が痙攣したり、止まることなく、最後まで走り抜けました。タイムは3時間57分台。


<秋真っただ中の千波湖畔>


<4時間のペーサーにゴール直前で追いつかれ焦った>


<ゴール!>

この大会、運営もしっかりしていますし、何より沿道の応援が背中を押してくれます。給水所のボランティアの方々、オフィス単位での職場応援、地域コミュニティでの応援、一般市民の方の応援、ほぼ途切れることなく声援を送ってくれます。感染防止対策か、今年は少年野球チームとかの子供たちをあまり見かけなかった気がしましたが、ラスト2キロでの長いトンネル内での中学生(?)の応援は、本当に元気を貰えます。


<単調なトンネル内のコースが若い応援のおかげでハッスルコースとなる>

天気の良さも後押ししてましたが、私としても新しい走り方(ペース配分)を試し、私なりに満足する結果が出て、新しい走りの世界が多少見えた気がした大会となりました。

2022年10月30日


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N響定期Bプログラム 指揮:ヘルベルト・ブロムシュテット/ニルセン交響曲第3番ほか

2022-10-28 07:23:47 | 演奏会・オペラ・バレエ・演劇(2012.8~)

10月のブロムシュテット祭りもいよいよ最終日。最後のプログラムはグリーグ、ニルセンの北欧プログラム。北欧出身のブロム翁ならではの選曲に期待が更に膨らみます。

前半のグリーグのピアノ協奏曲は超有名曲ですが、実演に接した記憶は20年以上前に1度きり(記録も無いので正確性も危い)。今回のピアノ独奏、ムストネンさんを聴くのも初めてです。打鍵が強い個性的な演奏でした。

サントリーホールのステージ後ろのP席からのピアノ曲は、屋根(ふた)に音が遮られる感じがして、聴くのに苦手意識があります。そのせいなのか、ムストネンさんの演奏との相性なのか分かりませんが、音楽自体は馴染みがあるはずなのに「あれ、こんな曲だっけ???」と感じながら、没入できないままに終わってしまいました。

しかし後半のニルセン交響曲第3番では大逆転。今年のブロム翁祭りの締めくくりに相応しい熱の入った素晴らしい演奏を堪能しました。厚い弦のアンサンブル、美しい木管の調べ、突き抜ける金管が組み合わされ、ブロム翁の指揮の元、開放的で、清らかで、透明感ある音楽が創られました。

特に、第2楽章はバリトン、ソプラノが加わり、盛田麻央さん、青山 貴さんの美声が合奏の中に絶妙に溶け込んで、美しさが極められた感じがしました。そして、第4楽章では、ステージはブロム翁と楽員さんたちの思いが最高潮に達する「気」がひしひしと伝わってくる特別な空間となっていました。その場でこの音楽を聴く機会を得た自分の幸運に自然と感謝の気持ちが湧くほどです。

終演後は当然ながら暖かく大きな拍手が寄せられました。「ありがとう」「お疲れ様でした」「来年もまた是非、元気な姿を見せてください」・・・、そんな気持ちが一杯詰まった拍手。N響を聴き始めて四半世紀になりますが、私の記憶では、この一ヶ月は特別な、将来、伝説となりうる一月だったと思います。

 

定期公演 2022-2023シリーズBプログラム
第1967回 定期公演 Bプログラム

2022年10月27日(木)開演 7:00pm [ 開場 6:20pm ]
サントリーホール

指揮:ヘルベルト・ブロムシュテット
ピアノ:オリ・ムストネン

ソプラノ:盛田麻央
バリトン:青山 貴

グリーグ/ピアノ協奏曲 イ短調 作品16
ニルセン/交響曲 第3番 作品27「広がり」

 

No. 1967 Subscription (Program B)
Thursday, October 27, 2022 7:00pm [ 6:20pm ]
Suntory Hall

Conductor: Herbert Blomstedt
Piano: Olli Mustonen

Soprano: Mao Morita*
Bariton: Takashi Aoyama*

Grieg / Piano Concerto A Minor Op.16
Nielsen / Symphony No. 3 Op. 27, Sinfonia espansiva*


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N響定期10月Cプロ 指揮:ヘルベルト・ブロムシュテット/シューベルト・プログラム

2022-10-23 20:12:59 | 演奏会・オペラ・バレエ・演劇(2012.8~)

前週のマーラー9番の余韻が残る中、今月のブロムシュテットシリーズの第2弾。

16歳、21歳の時に作曲された若きシューベルトの交響曲2曲(1,6番)のプログラム。演奏機会が多いとは言えない楽曲と思うが、私もいずれも初めて聴く曲。95歳のブロム翁がどんな想いで選曲したのか聞いてみたいと思った。

N響は2曲とも伸びやかで瑞々しい演奏。私も体の力を抜いてリラックスして音楽を楽しんだ。翁が紡ぐ音楽は、気取りが無く、透明感あって、すーっと体に染み込んでくる。心なしか、N響メンバーの表情も前週よりはリラックスした感じに見える。

先週から続いて聴いている私には、プログラム的にバランスが取れている感じがするが、このプログラムだけを聴く人にはちょっと物足りないと感じた方もいるかもしれない。

この日も熱いソロカーテンコールで、白井コンマスに連れられてブロム翁が拍手に応えてくれる。いよいよBプロを残すのみとなって、すでに寂しい気分だ。

第1966回 定期公演 Cプログラム
2022年10月22日(土)開演 2:00pm(休憩なし) [ 開場 1:00pm ]
NHKホール

指揮:ヘルベルト・ブロムシュテット

曲目:
シューベルト/交響曲 第1番 ニ長調 D. 82
シューベルト/交響曲 第6番 ハ長調 D. 589

 

No. 1966 Subscription (Program C)
Saturday, October 22, 2022 2:00pm [ 1:00pm ]
NHK Hall

Conductor: Herbert Blomstedt

Program:
Schubert / Symphony No. 1 D Major D. 82
Schubert / Symphony No. 6 C Major D. 589


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これはお勧め!: 小川さやか『チョンキンマンションのボスは知っている アングラ経済の人類学』(春秋社、2019)

2022-10-20 08:05:30 | 

30年以上前の大学生時の一人旅で、中国本土から日本への帰路の途中、香港に立ち寄りチョンキンマンション(重慶大廈)に宿を取った。正体不明の店、人、安宿などが入り乱れた高層多層の雑居ビルであり、香港を訪れる世界中のバックパッカーの聖地である。泊まった安宿ドミトリーは思いのほか清潔だったが、「火事があったら間違いなく死ぬな」と思ったことだけは今でも強烈に覚えている。

本書は、日本の文化人類学・アフリカ学を研究する大学教授(女性)が、中国・アフリカ間のインフォーマル経済の研究のために香港の滞在経験をベースに書いたエッセイである。タンザニア人の「チョンキンマンションのボス」と称される人物と出会い、彼や彼を取り巻くアフリカ人との交流を通じ、「フィールドワーク」的に、彼らの交易の仕組み、移民者・滞在者たちの相互支援ネットワーク、男女関係、母国との関係、人生設計が観察され、考察される。

現地の怪しさが肌感覚で残っている私としては、よくぞここまでチョッキンマンションを結節点とする在香港タンザニア人のコミュニティに入り込めるものだと筆者の行動力やコミュニケーション力に感心するとともに、その観察眼や分析に脱帽する。ノンフィクッション・ライターやジャーナリストが書く読み物のように、エキサイティングでページをめくる手が止まらない。

一方で、学者さんならではの切り口やライティングスタイルは、変に盛ったところがなく感じられ、とっても信頼して読める安心感がある。(天邪鬼な私は、ノンフィクション系読み物は、いつも「盛り」が気になってしょうがない。)

内容はネタバレになるので是非、本書を読んで欲しい。自分がそこそこ経験を積んだと思っているグローバルビジネスも、人間の経済社会のほんの一形態に過ぎないことが良く分かる。全く異なる世界で、経験のない社会の論理を疑似体験し、視野が広がる感覚が味わえる。人間の逞しさ・したたかさ、コミュニティの柔軟さ、社会の複雑さを知ることもできるし、自分たちの価値観も客観視できる。

「香港人も働き者だが、彼らは儲けが少ないことに怒り、日本人は真面目に働かないことに怒る。(中略)俺たちは真面目に働くために香港に来たわけではなく、新しい人生を探しに香港に来たんだ」(pp236‐237)。世界的に見れば、安定・安全・安心の国で生活する我々とは異なった彼らの生活や人生を本書で楽しんで欲しい。

 

【目次】
序 章 「ボス」との出会い
第1章 チョンキンマンションのタンザニア人たち
第2章 「ついで」が構築するセーフティネット
第3章 ブローカーとしての仕事
第4章 シェアリング経済を支える「TRUST」
第5章 裏切りと助けあいの間で
第6章 愛と友情の秘訣は「金儲け」
最終章 チョンキンマンションのボスは知っている


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ブロムシュテットに感謝、感謝、感謝: N響定期Aプロ、ヘルベルト・ブロムシュテット指揮、マーラー交響曲第9番 @NHKホール

2022-10-16 19:32:45 | 演奏会・オペラ・バレエ・演劇(2012.8~)

ファンが固唾を飲んで、ブロムシュテット翁の来日実現の報せを待ちわびた先週。きっと、水曜日の郷古さんのツイートが初報だったのでは。それでも公式発表が気になっていた人も多いと思う。が、皆の心配などまるでよそ事のように、演奏会は予定通り実現した。それでも、「この目・耳で確かめるまでは・・・」と思っていた人たちの気持ちが一杯籠った、翁がマロさんのエスコートで現れた時の大拍手だった。

マーラーの交響曲第9番の一本勝負。翁は椅子に座っての指揮。ステージ、聴衆が一体となったような緊張感で始まった。冒頭いきなり「おっと~」と思うような金管のずっこけがあったものの、まるで何もなかったように、高い集中度が保たれて、気持ちの入った演奏が展開された。

この楽曲について語る知識も技能も持ち合わせてない私だが、翁が振るマーラー9番は純度高い、透明感あふれる音楽に聴こえた。そして、何よりも翁の棒に応えようとするN響奏者の真剣度と情熱が発せられる音が塊で飛んでくる。フルート、ファゴット、オーボエ、ホルンなどの個人技や弦のアンサンブル、素晴らしいところを取り上げればきりがないのだが、この日は、なによりもN響のチーム力が前面に出ていた演奏だった。

とりわけ、第4楽章は圧倒的だった。私は深い森林の奧に湧いた透明な泉を覗くような感覚だった。水面に自己の内外面が反射し、自分に跳ね返り、色んな想いが脳裏に行き来した。目頭が熱くなる。

曲が終わって暫くの静寂の後、堰を切ったように大拍手が沸き上がる。舞台袖に下がれないので、翁は椅子に座ったままで、楽員を賞賛し、聴衆の拍手に応える。マロさんにエスコートされて退場するものの、拍手は収まらない。私自身、言葉無い感動で一杯の中、拍手をずーっと続けたいが、これ以上翁を呼び出して負担かけて良いものか。こんな時はどうすればよいのか、迷う気持ちのままでいるなかで、過去数十年見たことのないほど多数の聴衆のスタンディングオベーションが見える。マロさん、郷古さんに付き添われて2度に渡るソロ・コールとなった。

正直、演奏についてはいつまで記憶に残るかはわからない。でも、今日の、指揮者、演奏者、聴衆が一体となって、過ごしたこの1時間半の音楽空間・体験は、終生忘れることは無いだろう。

定期公演 2022-2023シリーズAプログラム
第1965回 定期公演 Aプログラム
2022年10月16日(日)開演 2:00pm(休憩なし) [ 開場 1:00pm ]

NHKホール

指揮:ヘルベルト・ブロムシュテット

曲目:マーラー/交響曲 第9番 ニ長調

 

Subscription Concerts 2022-2023Program A
No. 1965 Subscription (Program A)

Sunday, October 16, 2022 2:00pm [ 1:00pm ]
NHK Hall

Conductor: Herbert Blomstedt

Program
Mahler / Symphony No. 9 D Major


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新国立オペラ ヘンデル「ジュリオ・チューザレ」(指揮:リナルド・アレッサンドリーニ、演出・衣裳:ロラン・ペリー)

2022-10-12 12:05:18 | 演奏会・オペラ・バレエ・演劇(2012.8~)

今年3月にアントネッロによる「ジュリオ・チューザレ」(指揮:濱田芳通)を体験ばかりだが、このバロック・オペラの名作を1年に2度も観れるとは、なんとも恵まれた1年である。

前回は川口リリアホールという中規模ホールであったが、今回は新国立劇場のオペラハウスという大箱。違った形でこのオペラの面白さ、素晴らしさを味合わせてくれた公演だった。

歌手陣ではクレオパトラを演じた森谷真理さんの声量と美しさが両立した歌唱力と迫真の演技力による存在感が圧倒的だった。華があり、クレオパトラにぴったりだった。ニレーノ役のカウンタテナー村松稔之さんの歌唱と演技も舞台を盛り上げた。この2名の主従コンビが軸になっていたと感じる。コルネーリア役の加納悦子さんをはじめ、他の日本人歌手陣も安定の歌唱だった。題名役のマリアンネ・ベアーテ・キーランドさんは、デリケートな声で時折ハッとするような美声が聴きとれたが、私が陣取った4階席には声が届かないことが多く、その真価は分かりにくかった。男装姿が美男で、まさにシーザーの彫像のように秀麗であったのが印象的。

ピットに入ったのはリナルド・アレッサンドリーニ指揮の東フィル。東フィルに古楽器部隊があるのかと驚いたが、後から知ったところによると通奏低音に応援部隊が加わっていたとのこと。リナルド・アレッサンドリーニさんは初めて接する指揮者だったが、モンテヴェルディの全作ティクルスも指揮されるなど古楽の経験豊かな方で、オケからこの音楽の美しさを存分に引き出していてうっとりだった。

舞台が、現代の博物館の倉庫に見立てた、読み替え演出。美術品や展示物、そして場が、ストーリーにうまく絡み、効果的に活用されていてセンスある演出だった。

4時間半の上演時間は長いが、長さを感じさせない。充実した音楽・観劇体験であった。

 

ゲオルク・フリードリヒ・ヘンデル
ジュリオ・チェーザレ<新制作>
Giulio Cesare / Georg Friedrich Händel

全3幕〈イタリア語上演/日本語及び英語字幕付〉

令和4年度(第77回)文化庁芸術祭主催公演

公演:2022年10月5日[水] 17:00

予定上演時間:約4時間25分(第1幕90分 休憩25分 第2幕60分 休憩30分 第3幕60分)

 

スタッフ
【指 揮】リナルド・アレッサンドリーニ
【演出・衣裳】ロラン・ペリー
【美 術】シャンタル・トマ
【照 明】ジョエル・アダム
【ドラマトゥルク】アガテ・メリナン
【演出補】ローリー・フェルドマン
【舞台監督】髙橋尚史

キャスト
【ジュリオ・チェーザレ】マリアンネ・ベアーテ・キーランド
【クーリオ】駒田敏章
【コルネーリア】加納悦子
【セスト】金子美香
【クレオパトラ】森谷真理
【トロメーオ】藤木大地
【アキッラ】ヴィタリ・ユシュマノフ
【ニレーノ】村松稔之

【合唱指揮】冨平恭平
【合 唱】新国立劇場合唱団
【管弦楽】東京フィルハーモニー交響楽団                                                                                                                                          


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ロンドン交響楽団、最高! ラトル、ロンドン響/ブルックナー 交響曲第7番ほか

2022-10-08 20:18:56 | 演奏会・オペラ・バレエ・演劇(2012.8~)

待ちに待ったラトル指揮のロンドン交響楽団(LSO)の演奏会に出かけました。

期待を大きく上回る、記憶に残る演奏会でした。2008‐2012年のロンドン駐在時に30を超えるLSOの公演に接してきました(当時の音楽監督はゲルギエフ)が、過去に聴いた中でも、有数の感激の演奏会だったと断言します。

今回は2015年のハイティンクとの来日以来のLSO。見知った奏者さんたちが懐かしいとともに、リッキー・ジャーヴェイスを格好良くした感じのコンマスさんなど、(私には)新顔さんも居て時の流れを感じるものでした。

冒頭のベルリオーズの序曲「海賊」とドビュッシーの「リア王」は、私は初体験の楽曲です。ラトルは舞台袖に下がることなく、多少の間を置いてから2曲が演奏されました。「海賊」はこの日のエキサイティングな演奏会を予感させるメリハリ効いたエキサイティングな演奏で、ワクワク感が高まります。リア王は、私の最も好きなシェイクスピア作品であることもあり、2曲のみの抜粋なのが残念でした。

そして、前半戦の愁眉はラヴェルのラ・ヴァルス。変幻自在に音楽が動く、夢心地の異次元空間でした。私にはこの曲はデュトワ/N響の印象が強いのですが、デュトワのふかふかソファに横になるような感覚の音楽とはかなり趣が異なる演奏です。各パートから発出される音はとってもクリアでシャープ。とりわけ金管陣のホールを突き抜けるような音が印象的です。それでいて、作品の持つ気品と茶めっ気が併存している。新しく聴いたラ・ヴァルスでした。

そして、後半のブルックナーの交響曲第7番も、オケの個々の技量の巧さと強さ、そしてそれらが高次元で統合されたアンサンブルで、圧倒的な演奏。ラトルさんのブルックナーは明確で、構造がはっきりしていて、精神や宗教性よりも音楽性が強調されたものに聴こえます。

ラ・ヴァラスの時にも感じたことですが、LSOの音が、私が記憶しているものよりも、ずっとデリケートで、シルクのような柔らかく繊細なものに感じられたのはサプライズでした。よりベルリン・フィルやコンセルトヘボウの演奏に感じる感覚に近いもので、これはやっぱりラトル影響なのかな?

何名かのツイッターでのフォロワーさんも書いておられましたが、日本のオーケストラも随分力をつけてきたと思うのですが、地力の違いを見せつけられたというのが、私も感じたところです。サッカーで言うと、やっぱりワールドカップには出ているものの、予選リーグと決勝トーナメントの違いがあるなあと思ってしまいました。

終演後は熱狂の拍手。ブラボー禁止のはずですが、何人から興奮のブラボーが出ているのも聞こえてきました。気持ちは大いにわかりましたね。

下世話な話ですが、高額な海外オケの来日公演はやっかみ半分で無視してきている私でしたが、今回は前代未聞の2万円を超える金額を払ってチケット(それでも3階席)を入手。その価値は十二分にあったと認めざるを得ない、最高の2時間でした。

日程:2022年10月07日 (金)19:00 開演 (開場18:00)
会場:東京芸術劇場コンサートホール
曲目:
ベルリオーズ/序曲『海賊』作品21
ドビュッシー/劇音楽『リア王』から「ファンファーレ」、「リア王の眠り」
ラヴェル/ラ・ヴァルス
ブルックナー/交響曲第7番 ホ長調 WAB107(B-G.コールス校訂版)
出演:
サー・サイモン・ラトル(指揮)
ロンドン交響楽団(管弦楽)

London Symphony Orchestra
2022.10.07 Fri.19:00
Concert Hall

Program
Berlioz: Overture "Le corsaire", Op.21
Debussy: King Lear pieces, "Fanfare", "Le sommeil de Lear"
Ravel: La Valse, Poème choréographique pour orchestre
Bruckner: Symphony No.7 in E major, WAB 107

Artists
Sir Simon Rattle, Conductor
London Symphony Orchestra


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出張先で気仙沼のサンマ漁師さんに突撃インタビュー @釧路

2022-10-02 08:38:31 | 旅行 日本

出張で釧路へ。滞在時間は20時間ほどだったのですが、仕事以外でのちょっとした出来事がありました。朝食後、せっかく釧路に来たのだからと、チェックアウト迄の時間で釧路川沿いを散策。釧路は3回目ですが、過去に目にしたことない、多数の漁船が停泊していて、実に壮観でした。

船にはそれぞれの地元が書かれていますが、パッと見ただけで、愛媛、境港、気仙沼、八戸、いわき・・・と全国各地の港から集まってきているのが分かります。「お~、さすが釧路。でも何でこんなに・・・?」と興味津々で川岸から眺めていると、船の中で一夜を明かしたと思われる漁師さんたちが、一人、二人と陸に上がってきます。ここで聞かずは、一生の損と、勇気を出して、一人の漁師さん(推定年齢63歳)に突撃。

(以下、R:漁師さん、I:わたし)

I:おはようございま~す。ちょっと良いですか。この船って、何獲るんですか?

R:サンマだよ。でもだめだね。獲れねえ。

I:サンマですか。なんかサンマ獲れなくなってるってききますけど、そうなんですね。

R:全然だめだよ。昔はちょっと道東に行けば獲れたんだけど、もう全然獲れないよ。もう、何百キロって行っても取れるか、どうか分かんねえよ。もう2,3日沖でてるけど、200カイリやらで公海が狭いから、ロシアの領海だって通んなきゃいけないんだよ。いつ捕まるか分からないよ。

I:怖いですね。そういえば、ロシアとの漁業協定の話もニュースに出てましたね。

R:昔は、漁業権買ってたけど、それも買ってねえからな。

I:それって、やっぱりウクライナの戦争の影響ですか?

R:ん?それとは関係ないよ。権利買ったって、獲れっかどうか分かんねえからね。

I:そんな状態なんですね。

R:もう温暖化ってやつどうにかして欲しいよ。もう、サンマ追かっけて日本列島分ぐらい移動しているよ。油代だけで大変だよ。完全な赤字操業だよ。

I:失礼ですが、親父さんは、どこからいらしたんですか?

R:気仙沼だ。(スーツ姿の私を見て)お兄さんはここの人?

I:東京から仕事でちょっと用があって来てるんです。すごい漁船がたくさん集まってて、壮観ですね。かっこいい~、と思って散歩してました。

R:そうだろ。もう全国から集まってるからな。あっちのでかいやつ(船)は、底引き網漁だな。きっとイワシ獲ってるはずだよ。ほら、向こう岸に見えるの(船)あるだろう。あれは、調査船だよ。

I:そうなんですね。この船(おじさんが出てきた船)のあれはライト?

R:そうだよ。あれはぱあーと羽みたいに開くのよ。群れが見つかったら、照らすんだ。

I:群れが見つかると良いですね。

R:もうホント温暖化どうにかして欲しいよ。

I:昨日、仕事先の人と食事したら、ここあたりでもブリが釣れるって言ってたんで、ちょっと私も驚きました。

R:そうだろ。気仙沼だって伊勢海老が取れるぞ~

I:伊勢海老ですか~。親父さんは、しばらく釧路に居るんですか?

R:分かんねえけど、何日かはいるんじゃねえかな。

I:いろいろ教えてもらってありがとうございました。お気をつけて、お仕事なさってください。

R:おー、ありがとな~。

ということで、5分程度の歓談でしたが、釧路ならではの実に楽しい会話でした。

余談ですが、同じ船から出てきた若手漁師さん二人(30歳代前半にお見受け)は、ゴルフバックを持っていて、地元の人らしき人がバンでピックアップ。そっか、停泊中は若手漁師はゴルフに行くのか~と、こちらも妙に納得。

こういう出会いや社会勉強はリモート会議じゃ、あり得ないんだよね~。

2022年9月30日


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