その後の『ロンドン テムズ川便り』

ことの起こりはロンドン滞在記。帰国後の今は音楽、美術、本、旅行などについての個人的覚書。Since 2008

演劇「イロアセル」(作・演出 倉持 裕)@新国立劇場 小劇場

2021-11-29 07:30:53 | 演奏会・オペラ・バレエ・演劇(2012.8~)


新国立劇場のフルオーディション企画は「かもめ」と「反応工程」を観劇してきたが、いずれも印象に残る舞台だった。今回は新国立劇場として4つめのフルオーディション企画の公演。企画に魅かれて、中身も良く分かってないまま劇場を訪れた。

ストーリーはとてもユニーク。とある島の住民たちの言葉にはそれぞれ固有の色がついていて、それが空を舞いあがり漂う。誰が何を発言したかが住民たちに共有されるので、隠し事はできない。ある日、島の丘に刑務所が設置され、島外から囚人と看守がやって来るが、なぜかそこだけは言葉に色がつかない。島民たちは囚人を訪れて胸の内を明かす。そんな村人の思いを囚人が代弁して公開したことで、事件が起こっていく・・・。特異な状況を設定したブラックコメディだ。

匿名性ある言葉(囚人と話すときの無色透明の言葉)と匿名性のない言葉(色がついて全ての島民に公開される言葉)が対比されるが、そこに優劣はついていない。また、匿名性のない世界においても誹謗中傷の対象となりうるナラという登場人物の存在も意味深である。

正直言うと、なかなか難しい作品だと感じた。一度見ただけでは、作・演出を手掛けた倉持裕さんの意図をどこまで読み取れたかは、甚だ自信ない。匿名性が幅を利かせる日本のネット世界において、言葉の暴力が社会問題化しているだけに、現代社会のテーマとして考える価値は大きいと思うのだが、それがシャープに訴求出来ていたかというと疑問符がついた(私だけかな?)。例えば、後半の囚人に対する憎悪、看守の官僚的行動などなど、色んな解釈が可能で、それこそこの作品の狙ったとこかもしれないのだが、腹落ち感がもう一つ。

囚人役の箱田暁史さんの飄々とした演技が好感度高い。物語のシリヤスさ、ブラックさを和ませて、柔らかく不思議な舞台の雰囲気を作っていた。看守役伊藤正之さんとのコンビもユーモラス。その他のオーディションで選ばれた役者さんたちも熱量高かった。

2時間10分、休憩なし。時間を忘れるほど舞台から目が離せなかったが、観劇後には微妙な不完全燃焼感が残った。

2021年11月11日~28日

スタッフ
【作・演出】倉持 裕
【美術】中根聡子
【照明】杉本公亮
【映像】横山 翼
【音響】高塩 顕
【音楽】田中 馨
【衣裳】太田雅公
【ヘアメイク】川端富生
【振付】小野寺修二
【演出助手】川名幸宏
【舞台監督】橋本加奈子

キャスト
伊藤正之、東風万智子、高木 稟、永岡 佑、永田 凜、西ノ園達大、箱田暁史、福原稚菜、山崎清介、山下容莉枝



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N響 11⽉B定期、指揮:ファビオ・ルイージ、チャイコフスキー 交響曲 第5番ほか

2021-11-28 07:30:00 | 演奏会・オペラ・バレエ・演劇(2012.8~)


11月のルイージ・N響2本目。Bプログラムの2日目を聴きにサントリーホールへ。

前半はパガニーニのヴァイオリン協奏曲第一番。曲も独奏のデゴさんも実演に接するのは初めてです。デゴさんは、すらっとした長身・美形で、とっても舞台映えする方。

パガニーニというとヴァイオリンのテクニックを屈指した音楽との印象が立っていましたが、ロッシーニのオペラを想起させる馴染みやすいドラマチックな曲でとっても新鮮でした。ヴァイオリンの演奏テクニックについては語る経験も知識もありませんが、デゴ嬢が明らかに難しそうな曲を難なく演奏しているように見えるのが驚きです。

後半はチャイコフスキー交響曲第5番。久しぶりに実演に接しましたが、熱く集中した演奏でした。ルイージさんは暗譜で指揮棒なしでオーケストラと正対。大きくメリハリを付けて音楽を創っていこうとするのに、N響がくらいついて行く様子がP席からは良く分かります。N響らしい美しい弦のアンサンブルがあれば、要所要所で輝く管の個人技。そして、それらがホール空間の中で融合して化学反応が起きているのが見えます。そんな空気の中に浸る満足感は、何物にも替え難い貴重な時間でした。

終演後は観衆から大きな拍手。一般参賀付きのルイージへの賞賛は、これからのこのコンビへの期待感も含まれているように思えます。

既に、相互の信頼も築かれていて、演奏レベルも相当に達していると思われるルイージとN響コンビですが、むしろ完成度高すぎて、これからの伸び代がどのくらいあるのか心配になるぐらいです。パーヴォさんが就任されたころは、N響の大きな変身・変態を期待させるものでしたが(結果としては、新しい領域を開拓してくれたものの、(コロナもあって)大きくトランスフォームしたとまでは至らなかったのでは、というのが個人的感想ですが・・・)、このコンビは更にこれからどんな成長をしていくのか・・・良く分からない不安感と同時に期待感があります。楽しみなシーズンがこれからも続きそうです。



第1944回 定期公演 Bプログラム
2021年11月25日(木)7:00pm
サントリーホール

指揮:ファビオ・ルイージ
ヴァイオリン:フランチェスカ・デゴ

パガニーニ/ヴァイオリン協奏曲 第1番 ニ長調 作品6
チャイコフスキー/交響曲 第5番 ホ短調 作品64

【本公演のアンコール曲】コリリャーノ/レッド・ヴァイオリン・カプリス ― 第4変奏、第5変奏(ヴァイオリン:フランチェスカ・デゴ)

No. 1944 Subscription (Program B)
Thursday, November 25, 2021 7:00p.m. (Doors open at 6:20p.m.)
Suntory Hall

Fabio Luisi, conductor
Francesca Dego, violin

Paganini / Violin Concerto No. 1 D Major Op. 6
Tchaikovsky / Symphony No. 5 E Minor Op. 64

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まもなく会期終了のためお見逃しなく: 「動物の絵 日本とヨーロッパ ふしぎ・かわいい・へそまがり」展(後期展示)@府中市美術館

2021-11-25 07:30:25 | 美術展(2012.8~)


 会期前半に一度訪れた美術展ですが、見応えたっぷりだったのと、後期は展示がかなり入れ替わるので、再度訪問。中世以後の日本と欧州における動物の絵を観賞することで、人間と動物との向き合い方、考え方が浮かび上がる展覧会です。

 日本画は相当数の作品が入れ替わっていて、2度目であっても、とっても新鮮に観ることが出来ました。和洋の作品が並ぶと、自然、和の作品により共感する自分に気付くのも面白い感覚です。おおらかで、緩くて、暖かい絵が多い日本の動物の絵を見ていると、「共生」の発想は日本のがずっと先輩なのがわかります。
 
 前期のチケットで入場料が半額になるのも嬉しいです。今週末までの会期ですので、時間のある方はお見逃しなく。

 絵を見たあとは、府中の森公園を散策。青空に輝くように映える紅葉が見事でした。

2021.11.23 訪問








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秋深き武蔵野路(その2) @武蔵野公園、野川公園

2021-11-23 07:44:19 | 日記 (2012.8~)
 前週に続き、武蔵野・野川公園へジョギング。前週は陽の光が刺してましたが、この日は今にも雨が降り出しそうな曇り空。紅葉は、曇り空では映えないのかと思いきや、曇り空には曇り空なりで別の美しさがあることに気付かされます。武蔵野の秋はいろんな顔がありますね。


《武蔵野公園 一週間で紅葉もさらに進んでいました》


《武蔵野公園 ススキ野原が美しい》


《野川公園》

2021年11月20日 撮影

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道志渓谷ドライブ

2021-11-22 23:00:27 | 旅行 日本

今年は例年より遅めの11月の山中湖保養。

一般道の道志みち(国道413号)を通って行きました。

いずれもピンボケですが、道路沿いの展望所からの風景です。

 












2010年11月20日


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N響新時代の前奏曲 11月C定期 指揮:ファビオ・ルイージ/ブルックナー交響曲第4番

2021-11-20 07:26:01 | 演奏会・オペラ・バレエ・演劇(2012.8~)
来シーズンより常任指揮者のポストに就くファビオ・ルイージさんのお披露目的公演。現職パーヴォさんが同様の立ち位置だった2015年2月のマーラーの交響曲第1番の演奏が、今でも記憶に残る壮絶なものだったので、自然、今回の演奏会にも期待感が高まります。

この日はCプロなので、ブルックナー交響曲第4番の一本勝負。この曲は何故かご縁に恵まれず、実演に接するのは2回目。個人的にはブルックナーには苦手意識があるのですが、とってもスマートな印象があるルイージさんのブルックナーって、ちょっと想像が難しく、更にワクワク度がアップ。

そして、演奏は期待に違わぬ素晴らしいもので、今後のN響新時代を予感させました。曲の解釈等は私には分かりませんが、ルイージさんから引き出されるN響の音は、雄弁で熱く美しい。ブルックナーというとどうしても武骨で硬くて重いけど神聖というイメージがありますが、芸劇の3階席に届く音は、香るような豊かで柔らかい音色。こういうブルックナーもあるだと驚きでした。

パーヴォさんは機能的な美しさが引き立ちますが、ルイージさんは見通しの良さや機能的な美しさも持ちつつ、ドラマティックというか、人の気持ちにより訴えるような+αを感じます。何か、パーヴォさんが引き上げたN響を更に異次元に持っていてくれるような、そんな予感がします。

オケも大活躍。管楽器の響き、弦の重層的なアンサンブル、気合入ったN響の演奏はいつも嬉しいです。個人的な印象ですが、前のめりではあるものの、パーヴォさんのお披露目マーラー演奏の時ほどの張り詰めた緊張感は、団員さんの表情から読み取れなかった気がします。これは良い意味でルイージさんと相互の信頼関係が既に構築されているということなのだろうか?などと勝手なことを考えました。

終演後は、当然、会場から大拍手。私の斜め前方の殿方は、終わるや否や立ち上がって熱烈拍手を送っていました。さあ、来週のチャイコフスキーも楽しみです。



第1943回 定期公演 池袋Cプログラム
2021年11月19日(金)開演 7:30pm(休憩なし)
東京芸術劇場 コンサートホール

指揮:ファビオ・ルイージ

ブルックナー/交響曲 第4番 変ホ長調 「ロマンチック」

No. 1943 Subscription (Ikebukuro Program C)
Friday November 19, 2021 7:30p.m.
Tokyo Metropolitan Theatre

Fabio Luisi, conductor

Bruckner / Symphony No. 4 E-flat Major "Romantische"


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秋深き武蔵野路 @都立武蔵野・野川公園

2021-11-18 08:20:43 | 日記 (2012.8~)
 東京の秋も終盤。少しずつ冬が近づいているのが感じさせる毎日です。

 新緑時と並んで、1年で最もジョギングが気持ちよい季節。武蔵野の秋を感じるのには最適だと思っている武蔵野公園・野川公園周辺を走りました。朝、8時半前後、陽が上りはじめ、木々の葉が黄金色に輝くゴールデンタイムです。

 数枚スナップを撮りましたので、アップします。


《武蔵野公園 紅葉と草と青空のコントラストが美しい》


《武蔵野公園 陽に照らされ輝くススキが秋》


《野川公園 野川に反射する朝日が眩しい》

2021年11月14日

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N響11月A定期、沼尻竜典 指揮/フランツ・シュミット交響曲第2番ほか

2021-11-15 07:30:14 | 演奏会・オペラ・バレエ・演劇(2012.8~)
来シーズンから首席指揮者に就任するファビオ・ルイージさんのお披露目演奏会のはずが、コロナの入国待機により、沼尻さんが代役でご登壇。プログラムは当初予定通りです。

冒頭の「魔弾の射手」序曲は、「さすが欧州の歌劇場でキャリアを積んだ沼尻さん」と思わせる納得のスタート。このオペラを観たのは一度しかないですが、オペラのシーンや物語が目に浮かぶ演奏でした。

続いてはリストのピアノ協奏曲 第2番。ピアノ独奏のアレッサンドロ・タヴェルナという方は初めて聴く方でしたが、優しい美しい音色が魅力でした。私的に嬉しかったのは、アンコールで弾かれた「フリードリヒ・グルダ 弾け、ピアノよ、弾け 練習曲 ー 第6番」。ジャズそのもので、リストとは全く違った趣で、力強い打鍵が胸に響きます。最近すっかりご無沙汰ですが、またジャズのライブに行きたくなりました。

休憩後のシュミットの交響曲第2番。こちらは情報量多すぎて、私にはちょっと難しすぎ。パーツ・パーツで美しい旋律があるのですが、全体としては私の理解を超えた音楽でコメントできません。N響は前のめりの熱演でしたが、ごめんなさい、ついて行けませんでした。

芸劇を出るともう池袋の町は夕暮れの中。そういえば、この時期は代々木公園の紅葉が毎年楽しみだったのだがなあ~とNHKホール前の風景が思い出されました。ホール自体は、芸劇で嬉しいですが、あの落ち葉を踏みしめながら、余韻に浸りながら原宿駅に向かう道のりも懐かしい。


第1942回 定期公演 池袋Aプログラム
2021年11月14日(日)開演 2:00pm

東京芸術劇場 コンサートホール

指揮:沼尻竜典
ピアノ:アレッサンドロ・タヴェルナ

ウェーバー/歌劇「魔弾の射手」序曲
リスト/ピアノ協奏曲 第2番 イ長調
(アンコール:フリードリヒ・グルダ 弾け、ピアノよ、弾け 練習曲 ー 第6番)
フランツ・シュミット/交響曲 第2番 変ホ長調

No. 1942 Subscription (Ikebukuro Program A)
Sunday, November 14, 2021 2:00p.m.

Tokyo Metropolitan Theatre

Ryusuke Numajiri, conductor
Alessandro Taverna, piano

Weber / "Der Freischütz," opera Op. 77 − Overture
Liszt / Piano Concerto No. 2 A Major
Franz Schmidt / Symphony No. 2 E-flat Major

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高橋浩一 『無敗営業 チーム戦略 オンラインとリアル ハイブリッドで勝つ』日経BP、2020

2021-11-11 07:30:29 | 


どこの会社の営業担当も似たようなものだっただろうと想像するが、コロナ禍の中、オンライン営業と(対面の)リアル営業の双方を活用し、何とか売り上げを維持しようと苦しんできた。そんな中で、「オンラインとリアル ハイブリッドで勝つ」というサブタイトルは、そんな私にどんぴしゃりで、即ポチ購入となった。そして、十分に期待に応えてくれる内容だった。あらゆる営業担当、営業マネジャーにお勧めできる。

筆者は、「ハイブリッド営業」では対面営業とオンライン営業の夫々の良さを活かし、使い分けるのが大切と説く。お客様と歩調を合わせながら、一歩一歩前に進む二人三脚で進めるのが基本なのだ。オンライン営業ではあえてプレゼンをぶつ切りにして、お客様が質問しやすく、納得感が高まるように進める。プレゼン資料もあえて表紙をつけず、お客様と共同作用で創り上げていくようなプロセスを踏んでいくのが良いという。実践的なアドバイスだ。

また各章のまとめとしてアクションリストがついており具体的なのも良い。しかも、営業トップ、チームリーダー、メンバー、企画チームと各人の役割に応じてリスト化されていることはなお嬉しい。一例としては、「二人三脚」営業(第3章)にしても、事業トップのアクションは「ハイブリッド営業を言語化し、全社に伝える」ことであるし、営業マネジャーにとっては「提案活動の回転が上がるよう、対面とオンラインの使い分けについて具体的指示を出す」ことであり、営業担当には「お客様接点が増えるように、2つのやり方を組み合わせ、電話・資料・メールの内容を工夫する」ことであり、企画担当にとっては「成果を上げているメンバーのやり方を水平展開する」ことになる。

それ以外にも、営業活動の「見える化」、営業の型を身につけさせるためのグー・チョキ・パー(グー:具体的な営業シーンのサンプル、チョキ:チェックポイントを抑えているか、パー:パーフォーマンス確認)のサイクルを回すセールス・イネーブルメント、PM(パフォーマンス/メンテナンス)の最適バランスを考えたコミュニケーションのノウハウなど、日々の業務で参考になるアドバイスは多かった。何度も読み返して、営業活動・マネジメントのフレームワークとして活用できる一冊だ。

【はじめに】
【第1章】強い営業チームに欠かせない 4つのキーワード
【第2章】オンライン商談は「段取り」と「納得感」で決まる
【第3章】ハイブリッド営業の勝ちパターンは「二人三脚」
【第4章】活動プロセスの実態は「フェーズ」と「行動の量・質」で見る
【第5章】「仕組み」を使ってプロセスマネジメントを推進する
【第6章】人が育つ仕組みを作るセールス・イネーブルメント
【第7章】PM理論でコミュニケーションのバランスを整える
【第8章】これから営業チームはどうなるか
【おわりに】~営業は「知的創造活動」の時代へ~

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勝間和代 『勝間式生き方の知見―お金と幸せを同時に手に入れる55の方法』(KADOKAWA, 2021)

2021-11-01 07:13:22 | 


私もそれなりに年齢を重ねてきて、こうした自己啓発本を読んで心酔するほどの影響を受けることは無くなってきた。ただ、自らの日々の実践や経験から来るノウハウと照らし合わせるチェックリストとして読んだり、実行はしていても自分の中で言語化できてなかったことが、他人により言語化されているのを認識するのは、とっても有用だ。なので、時折こうした本を手に取ってみる。

本書はSNS上の誰か(忘れてしまった)のオススメ。自己革新、コミュニケーション、思考法、仕事術、お金、健康、幸福といったテーマで、自己啓発本の「女王」である勝間さんなりの経験や世の研究に基づく知見が披露される。

私なりに一番の「なるほど」はレジリエンス(ストレスやショックを受けた状況にもうまく適合し、心身の健康を維持する力や回復する力)についての記述だった。とかく、私のような昭和的サラリーマンの残党は、苦境に対する処し方は、個人の心の持ち方や強さに目が行きがちで、「強い奴」「弱い奴」みたいな見方をする。

勝間さんは、「まず、家庭や友人関係、学校、会社などの環境を変えることに注力した方が良い」と言う。「助けてくれる人や組織、地域、自治体などのコミュニティのサポートを確保できていると心理的安全性が高まって、平常心を取り戻しやすく、回復をはやめる」からである。(p142)

そして、環境の整え方として、1)困ったときに困ったと言える、2)何があってもこの人たちだけは助けてくれるというという存在を持つ、3)トラブルを吸収して跳ね返せるだけのお金や時間のリソースを持つ、といったことが示される。他にも環境を変えるやり方は様々な方法があると思うが、意識してそうした見方を身に着けたい。

言語化の観点からは、「早めに行動するほど時間価値は高まる」「仕事選びは将来性のある方にBETし続ける」「虫の知らせを聞き逃さない(予感・直観を大切にする)」などは、自らの経験と照りあわせて大いに首肯できるアドバイスだ。

どちらかと言えば、20代、30代向けのハウツー本であると思うが、いろんな知恵が散りばめられているので、読む人夫々が、共鳴できるところを取り入れれば良いと思う。

目次
第1章 新しい可能性に投資しよう―自己革新の知見
第2章 自分も相手も気持ちよく―コミュニケーションの知見
第3章 メンタルブロックを外そう―コントロール思考の知見
第4章 短時間労働で成果は出せる―仕事の知見
第5章 収入に上限はない―お金の知見
第6章 体力はお金より仕事より大事―人生百年時代の知見
第7章 完璧を目指さない―幸福度アップの知見

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