その後の『ロンドン テムズ川便り』

ことの起こりはロンドン滞在記。帰国後の今は音楽、美術、本、旅行などについての個人的覚書。Since 2008

N響10月B定期/指揮:ヘルベルト・ブロムシュテット/ベートーヴェン 交響曲 第6番 他

2018-10-29 07:30:00 | 演奏会・オペラ・バレエ・演劇(2012.8~)


私のブロムシュテット祭り、最終回です。サントリーホールの定期演奏会を一回券でゲット。同じN響の定期演奏会でもサントリーホールの演奏会は私にとっては、アウェイ感満載です。

前半のベートーヴェン交響曲第6番は、期待通り優しく、暖かい「田園」で涙ものでした。ブロム翁が紡ぐ音楽はどうしてこうも純度が高く、清廉なのでしょう。N響も冒頭にオーボエのソロのずっこけはあったものの、指揮棒に応える音は福よかで切れもある。サントリーホールの中で、様々な音が溶けあい、聴衆に降りかかってきます(この感覚はNHKホールにはないですね)。実に幸福な時間で、終盤に入ると、このまま終わらないでくれ~と祈るような気持ちで聴いていました。

後半のステンハンマルは初めてでしたが、聴きやすく楽しめました。北欧的な雰囲気も取り入れた、構造がしっかりした印象の音楽でした。

終演後は相変わらずの大きな拍手。拍手したいのはやまやまなのですが、NHKホールに比べて狭く、出入口から指揮台までは数段の上り下りがあるステージで、何度もブロムシュテットさんを呼び戻すのもちょっと申し訳ない感じもしますし、段差につまずきはしないか気が気ではありませんでした。

ブロム翁には、10月に3つのプログラムで素晴らしい音楽と大きな感動をありがとうございましたと心から申し上げたい。来季の来日も楽しみにしていますので、是非、ご健康第一でお願いしますね!



第1896回 定期公演 Bプログラム
2018年10月24日(水) 7:00pm
サントリーホール

ベートーヴェン/交響曲 第6番 ヘ長調 作品68「田園」
ステンハンマル/交響曲 第2番 ト短調 作品34
指揮:ヘルベルト・ブロムシュテット

No.1896 Subscription (Program B)
Wednesday, October 24, 2018
Suntory Hall

Beethoven / Symphony No.6 F major op.68 “Pastorale”
Stenhammar / Symphony No.2 g minor op.34
Herbert Blomstedt, conductor

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N響10月C定期/指揮:ヘルベルト・ブロムシュテット/マーラー 交響曲 第1番 ニ長調「巨人」 他

2018-10-22 07:30:00 | 演奏会・オペラ・バレエ・演劇(2012.8~)


先週末に引き続きのブロムシュテッドさん、N響の演奏会。今回はハイドンとマーラーの取り合わせ。今回は振替なのでどんな席になるかおっかなびっくりだったのですが,3階の指定席から丁度一列前の席。ラッキーです。

平日の夜のためか会場は満員にまで至りませんでしたが、9割は入っています。相変わらず、ブロム翁を迎える拍手は大きい。

やはり圧巻は後半のマーラー交響曲第一番。もう多くの人がツイートでコメントがアップされていましたが、若さに溢れた瑞々しい演奏でした。この曲、ここ数年で、パーヴォの就任前のお披露目会とも言えた中での歴史の残る熱い演奏やファビオ・ルイージによる劇的な陰影の濃い演奏があったのですが、更にそれらとは異なるアプローチでかつ過去の名演を上書きするような印象的な演奏となりました。

前半はかなりハイペースに聴こえました。テンポよくキビキビとして無駄がない。いつものことですが、音楽がありのまま、自然に鳴っているという感覚。91歳になったというブロム翁には、老練とか老成という言葉は全く無縁のようです。日本酒で言えば、お米を削りに削った大吟醸そのもの。

N響陣も金管、木管、弦それぞれが、ブロムシュテッドの棒に応えます。楽団員の皆さんの集中力が舞台から3階までビンビンに伝わってきて、聴いている私も背筋が伸びる。フィナーレの金管の咆哮には一週間の仕事のストレスが一気に飛び散りました。

前半のハイドンのロンドン交響曲も、古典的な美しい交響曲で、この種の音楽はN響の精緻なアンサンブルがフィットしますね。

この日も一般参賀つき。演奏の余韻に浸りながらホールを後にしましたが、夜の演奏会は代々木公園が静かなのが嬉しいですね。


《一般参賀》

第1895回 定期公演 Cプログラム
2018年10月19日(金)7:00pm
NHKホール

ハイドン/交響曲 第104番 ニ長調 Hob.I‒104「ロンドン」
マーラー/交響曲 第1番 ニ長調「巨人」

指揮:ヘルベルト・ブロムシュテット

No.1895 Subscription (Program C)
Friday, October 19, 2018 7:00p.m.
NHK Hall

Haydn / Symphony No.104 D major Hob.I-104 “Londoner”
Mahler / Symphony No.1 D major “Titan”

Herbert Blomstedt, conductor



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アルトゥール・レブランク弦楽四重奏団 Quatuor Arthur-Lablanc @東京文化会館小ホール

2018-10-21 08:00:00 | 演奏会・オペラ・バレエ・演劇(2012.8~)


 知人のお誘いで、カナダの本拠を置くアルトゥール・レブランク弦楽四重奏団の来日公演に足を運びました。アルトゥール・レブランクというカナダで活躍したヴァイオリニストの名を継いで1988年に結成された楽団で、今年は30周年にあたるとのこと。カナダをベースに活動されている小林響さんがリーダーを務めてらっしゃるようです。

 演目は凝ったもので、私にはどれも初めて聴く曲でした。いずれも力の籠った演奏で、弦楽四重奏の丁々発止のやり取りが楽しめます。私には、特に後半のピアノ(植田克己さん)も加えたフランクのピアノ五重奏曲が迫力、厚みがある音楽が良かった。スケール大きく、複雑に展開する音楽はオケのピアノ協奏曲を聴いているかのようでした。

 普段なかなか弦楽四重奏とかは聴く機会がないのですが、こじんまりしたホールでアットホームな雰囲気で聴く演奏会も良さを認識しました。

2018.10/20(土)14:00 東京文化会館(小)
アルトゥール・レブランク弦楽四重奏団 Quatuor Arthur-Lablanc

ベートーヴェン:弦楽四重奏曲 第11番 ヘ短調 作品95『セリオーソ』
モラヴェッツ:弦楽四重奏曲 第5番(1991)『W.A.モーツァルトへの礼賛』
フランク:ピアノ五重奏曲 ヘ短調


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N響10月A定期 指揮:ヘルベルト・ブロムシュテット /ブルックナー 交響曲 第9番 ニ短調

2018-10-18 07:30:00 | 演奏会・オペラ・バレエ・演劇(2012.8~)

《少しずつ葉の色が変化してきました》

4月に振ったばかりのブロム翁が登壇。今の日本で、指揮者を迎える拍手の大きさと暖かさにおいて彼の右出る人を私は知りません。

後半のブルックナーの9番は圧巻の演奏でした。ブロムシュテッドさんが紡ぐ音楽は瑞々しく明瞭。メッセージとか技巧とは無縁で、締まった筋肉質の音楽は、ただただ音楽の持つ美しさを引き出してくれます。とりわけ、第3楽章のアダージョでは、人の悲しみを全て引き受けてしまったような音楽に強く胸打たれ、涙が出そうになりました。クロージング部分では、フライング拍手が一旦は起こりつつも、もう一度沈黙の時間に引き戻して終わり。このブルックナー9番は、私のブル9歴の中(そんなに聴き込んでるわけではありませんが)では特に記憶に残る演奏となりそうです。

演奏後の鳴りやまない拍手により一般参賀までついた聴衆の反応に、皆の思いが込められていると思います。

前半のモーツァルト交響曲第38番「プラハ」はモーツァルトの長調の音楽らしい華やかで暖かい演奏でした。シンプルではあるけど芳醇な香りがする音楽です。N響メンバーの管と弦のコントラストや掛け合いの楽しさもあります。プログラムでは28分のはずなのですが、40分近くかけた演奏としたところは、繰り返しにやや冗長な印象はありましたが、こんなに美しいモーツァルトの交響曲を聴ける身の幸せをつくづく感じさせてくれる時間でした。

今月はA,B,Cプロにフル参加予定です。


《一般参賀に応えるブロム翁》


第1894回 定期公演 Aプログラム
2018年10月14日(日)
開場 2:00pm 開演 3:00pm
NHKホール

モーツァルト/交響曲 第38番 ニ長調 K.504「プラハ」
ブルックナー/交響曲 第9番 ニ短調(コールス校訂版)

指揮:ヘルベルト・ブロムシュテット



No.1894 Subscription (Program A)
Sunday, October 14, 2018
3:00p.m. (doors open at 2:00p.m.)
NHK Hall

Mozart / Symphony No.38 D major K.504 “Prague”
Bruckner / Symphony No.9 d minor (Ed. by Cohrs)

Herbert Blomstedt, conductor

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東野圭吾 『手紙』(文春文庫、2006) 

2018-10-14 07:44:50 | 


 強盗殺人で服役中の兄を持つ弟が、周囲からの意識的、無意識的の差別を受けながら、自分なりに受け止め、消化していく過程が描かれる。読み易いが、味わい深い物語だった。

 立場、考え、行動は異なるものの、各登場人物の本音の行動が描かれる。机上の「道徳」は通用せず、人間社会から差別が無くなることもない。そんな中で、主人公たちの生き方の選択肢はどうあるべきなのか?リアリティに富む問題設定だと思った。

 こういう良質の小説はありがたい。通勤時間にスマートフォンをいじらずに済む。

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これは必見! 没後50年 藤田嗣治展 @東京都美術館

2018-10-11 07:30:00 | 美術展(2012.8~)


藤田嗣治の作品は、これまで府中美術館での個展や多くの藤田作品を有する箱根ポーラ美術館の企画展などで見てきたが、これまでに覚えがない程の大きなスケールでの回顧展で、世界の美術館から集めた100点以上の作品により藤田の一生を追う企画である。

「風景画」「肖像画」「裸婦」「宗教画」と絵のテーマも幅広く、年代によって画風も変化するので飽きることがない。彼独特の「乳白色の下地」の裸婦もいくつも展示されている。キュビズムなど当時のパリの画壇の影響も受けながら、独自のスタイルを作り上げた力量は流石。イラストのように見える絵も一枚一枚が強力な引力を発している。


《タピスリーの裸婦》

20世紀の前半という時代に、ロイド眼鏡で、ピアスをしておかっぱ頭のスタイルは、パリと言えども相当目立っただろうし、逆に日本では受け入れられなかっただろう。パリの自由な雰囲気に触れた彼が日本に戻って、第2次世界大戦中には戦争画を描いていたというのは、その心中いかほどのものであったのだろうか。

非常に力の籠った見ごたえある回顧展だった。残念ながら、東京開催は終わってしまったが、10月19日~12月16日で京都国立近代美術館で開催するので、まだの方には強くお勧めしたい。
コメント (2)
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米澤穂信 『満願』 新潮社 2014

2018-10-10 07:30:00 | 


家人が読んでいたのを横から拝借。表題作を初め、6つの短編ミステリーを集めたもの。米沢氏の小説は初体験。最近、この中のいくつかの作品がNHKでドラマ化されたらしい。

複雑な人間心理や行動をえぐるような其々の物語は、短編とは言えとても読みごたえがあった。描写も洗練されており、イメージが明確に瞼に浮かび、作品としてどれも質が高く、味わい深い。個人的には「満願」「関守」「夜警」が好み。

ただ、複雑な人間心理を拠り所にしているため、私のような単純な人間には、殺人の動機に感情移入できないところはいくつかあった。これで人を殺すか、ここまでやるかって思ってしまう点はある。

それを差し置いても、おすすめであることは間違いない。これらの作品がどう映像化されたのか、NHKオンデマンドで見てみたいところ。


<目次>
夜警
死人宿
柘榴
万灯
関守
満願



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空いている京都!:東寺

2018-10-05 06:30:00 | 旅行 日本
 京都シリーズも最終回。今回の京都観光のメインは実は東寺でした。駅の近くにありながら、まだ未踏の地であったのと、昨年、空海や密教美術関連の本を少し読んだ中で、まさに東寺こそが曼荼羅芸術の聖地であることを知ったためです。(きっと、知識としてはあったのだろうけど、自分のアンテナには全く引っかかってなかったんですね。)その念願の東寺に。

 東寺の前に、チェックアウトしたホテルから京都駅に向かう途中に見かけたレトロな建物。大学のキャンパスのようですが、どこだろうと思ってちょっと立ち寄ってみたら、なんと龍谷大学でした。その洒落た佇まいに思わずシャッターを。





 京都駅のロッカーに荷物を預け、東寺に。別名、教王護国寺。嵯峨天皇より空海(弘法大師)に下賜されたお寺であり、真言宗全体の総本山であります。まずは、金堂へ。優しい表情の薬師如来像にその右左に日光菩薩と月光(がっこう)菩薩。自然と胸打つものが感じられます。これがオーラというものなのでしょう。


《金堂》


《中は撮影禁止なので、Wikiから拝借。薬師如来像》

 続いて隣の講堂へ。ここには真言密教の大日如来が安置されています。図面で見る曼荼羅が彫像によって、立体的に安置されている講堂は、まさに密教の聖地中の聖地と言えます。



 講堂を出ると、東寺のランドマークである五重塔へ。今まで見た五重塔の中でも群を抜いて大きいと思ったら、後で解説を読んだら、それもそのはず日本一の五重塔とのことでした。





 東寺の後、セット券でついていた当時に隣接している東寺塔頭 観智院なるとことに足を運びました。全く予備知識なしに訪れたのですが、ダイナミックな曼荼羅彫像たちが林立する東寺とは全く異なる落ち着いたお屋敷で、趣の異なった雰囲気を楽しめました。


《観智院》

 夕方からN響定演があるのでお昼前に切り上げ東京へ。数か所の京都観光でしたが、想定外に空いていて、落ち着いた京都を十二分に楽しむことができ、大満足でした。

 2018年9月16日

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空いている京都!:早朝観光ジョグ(清水寺~建仁寺~西本願寺)

2018-10-03 07:40:25 | 旅行 日本
 恒例の旅先での朝ランニングです。6:30に西本願寺近くに取った宿を出発。まずは、清水寺を目指します。なるべくメインストリートは避け、裏の道を走るようにします。風情のあるつくりの家々を見かけながら走るのは、京都の趣を全身で感じることできます。インバウンド需要のせいか、以前に比べると小洒落たゲストハウスが目につきました。

 清水寺の坂を一気に駆け抜け、7:00前に寺門へ到着。6:00から開門しているので、私的にはちょっと出遅れ感があるのですが、拝観券を購入して境内へ。私のジョギング・ウエア姿を見た券売りのお坊さんが、「お寺の中は走らないでくださいね」と。「はい、走りません」。有名な清水の舞台付近は修理中で、お寺自体はいつもの絵になる光景ではありませんでしたが、京都の町を見下ろすここからの眺めは最高です。









 清水寺を離れると、散策時で有名な産寧坂、二寧坂をかけ抜けます。このあたり、日中帯は観光客で一杯の賑わいのはずですが、さすがにまだ7:00過ぎの時間では、人の姿はまばら。お店は開店前ですが、落ち着いたしっとりした雰囲気が味わえます。そして、石堀小路。この辺は人生合計すると4,5度は来ているはずですが、この小路はあまり記憶にありません。これまた京都っぽい。











 何となく勢いに任せて走っていると、祇園の花見小路を抜けて、建仁寺に。以前、建仁寺の法堂の天井画「双龍図」を見ましたが、あれは凄かった。


《花見小路:人がいないので華やかさには欠けますが・・・》


《建仁寺入り口》


《建仁寺 法堂》

 ランドマーク的な寺社仏閣も面白いですが、京都には私が東京では普段あまり目にしないような職種のお店を見るのも興味深いです。この朝、走っているだけで見たのは、茶筒屋さん、漆屋さん、製菓原材料店、金庫店、紙屋さん(これは東京にもあるか)などなど。





 ようやくホテル近くに戻ってきたので、ダメ押しは、西本願寺。ロンドンのキューガーデンで見た唐門の本物が見たかったのですが修繕中でした。それでも、境内は広く、国宝の阿弥陀堂と御影堂は壮観です。





 ホテルに戻ったのは8:10.スマフォのヘルスメーターだと走行距離は14K。観光、朝ジョギングは普段走らない人は朝Walkingで全然OKと思いますが、「空いてる京都」を味わえる最高の贅沢で、お勧めです。

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