その後の『ロンドン テムズ川便り』

ことの起こりはロンドン滞在記。帰国後の今は音楽、美術、本、旅行などについての個人的覚書。Since 2008

ニール マクレガー (東郷 えりか 訳) 『100のモノが語る世界の歴史2: 帝国の興亡』 (筑摩選書)

2012-08-30 22:44:02 | 


 以前の記事でご紹介した 『100のモノが語る世界の歴史』シリーズの第2巻です。本巻では、紀元前300年から紀元後1500年までのモノ35品が解説されています。第1巻同様、大英博物館長のニール マクレガー氏の解説は、淡々とした語り口であるにもかかわらず、読者の想像力を掻き立てるところがあります。

 この巻の私のお気に入りは、以下の2品。

 <ウオッレンカップ> 作品解説→




 西暦10年ごろにパレスティナで作られた銀の器。成熟した男性と若い男性の性行為と2人の美しい若い男性の性行為が描かれた銀器は、その趣味がない私が見ても官能的です。さらにこの銀皿をリアルにしているのは、この写真には写っていませんが、その2人の行為をドア越しに覗き見している少年が描いてあることです(本には写真が掲載されています)。この皿がどんな機会に、どのように使われたかは、観る者の想像に任されますが、それだけで一つの短編小説ができそうです。

 <多羅菩薩> 作品解説→


 西暦800年頃にスリランカで作られたとみられる菩薩像。これはただただ美しいです。エロチックでありながら、優しい母のように観る者を見つめてくれます。大英博物館ではアジア、中国の部屋の入り口近く中央の、一番といっても良いほど好位置に置かれているのも、無条件で納得します。



 補足ですが、今更のようにこの100のモノが語るシリーズの特集サイトが大英博物館のHPにあることに気づきました。BBCラジオでのシリーズ放送も聞くことができます(英語ですが・・・)。これは面白いかも、、、、


 サイトはこちら→


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「ドビュッシー、音楽と美術」展/ ブリヂストン美術館

2012-08-26 09:39:00 | 美術展(2012.8~)


 ブリヂストン美術館で開催中の「ドビュッシー、音楽と美術」展を訪れました。「ドビュッシーと印象派や象徴派、さらにはジャポニスム等の関係に焦点をあて、19世紀フランス美術の新たな魅力をご紹介する」(展覧会HPより)もので、パリのオルセー美術館、オランジュリー美術館との共同企画です。

 実は、今年3月にパリのオペラ・バスティーユに「ペレアスとメリザンド (Pelléas et Mélisande) 」を見に行った際に、オランジュリー美術館に立ち寄ったのですが、その時、丁度この企画展をやっていました。ただ、生憎、時間の関係でゆっくりと見ることができず非常に残念だったのですが、今回、同企画の展覧会が東京で開催されていることを知り、狂喜したわけです。


(こちらは2012年3月訪問のオランジュリー美術館)

 半年前は駆け足で眺めただけなので記憶が定かでないのですが、展覧会の構成・展示品は、パリとほぼ同じような記憶があります。ドビッシーが交流したり、影響を受けた人々・画家と関連した絵画や工芸品が展示されています。ドニ、ルロール、ドガ、ルノアールなどなどの作品です。オルセーやオランジェリーからの海を渡ってきた作品に加えて、ブリヂストン美術館所蔵の関連作品が展示されています。(展覧会のHPはこちら→

 私が一番好きだったのは、エドワード・バーン・ジョーンズの「王女サプラ」。物思いにふけりながら本を読む美女と美しい色遣いに見とれていました。オランジュリーでは、ダンテ・ガブリエル・ロセッティの絵があった記憶があるのですが、今回は習作だけが飾ってありました。(あと、エドモンド・レイトンの「ペレアスとメリザンド」の絵もあった気がするのですが、これは記憶違いかもしれません。)


(エドワード・バーン・ジョーンズの「王女サプラ」)

 音楽、美術、文学等の一連の芸術活動が、相互に与えた影響の一例を見るのに、とても面白い企画展であり、お勧めです。金曜日は夜8時までやってます。(金曜夜は空いていて、とってもゆっくり鑑賞することができました)


 2012年8月23日 訪問
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佐渡裕 『僕はいかにして指揮者になったのか』 (新潮文庫)

2012-08-24 22:12:38 | 


 佐渡裕さんのコンサートにはまだ行ったことがありません。でも、以前TVに出演していたのを観て、話し方や内容の破天荒ぶりがとても印象的でしたし、その後、観たベルリンフィルを指揮しているのをYOU TUBEで見て、その凄まじいほどの情熱的な指揮ぶりに驚嘆しました。本書は、その佐渡氏による半生記です。

 読み始めたら止まりません。どこから来るのか分からない強い自信を持ちながらも必ずしも成功ばかりでなかった一流指揮者への道のり、師事するバーンスタインや小澤征司との交流、加えて、文章自体が「春の祭典」のようにリズムがあり、筆者の音楽に対する熱く強い情熱に溢れた本書は、クラシック音楽が好きだろうと、そうでなかろうと、読むものを惹きつけて止まない魅力にあふれています。

 1,2時間で読めますので、夏の旅行のお供に最適です。

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映画 カストラート (監督 ジェラール・コルビオ)

2012-08-22 21:23:03 | 映画
 1994年製作のイタリア映画。岡田暁生氏の西洋音楽史の本で紹介されていたので見てみました。バロック時代のカストラート歌手ファリネッリの生涯を描いた伝記映画です。

 それにしても勝手というか残酷というか、少年を去勢してまで、美声を保たせるというのはどういうことなのでしょうか?現代の常識の中に生きる者には、なかなか理解しずらいですが、本映画はそうした時代背景をうまく描写しており、見るものをバロック時代の音楽環境を理解させてくれます。映画のストーリーも、兄弟愛、音楽への情熱、才能への嫉妬、男女愛など、多視点で描かれており飽きさせません。ロンドンを舞台にヘンデルとの確執を描く場面もあり、18世紀のロンド音楽界事情の理解も深まります。

 物語としても教養としても面白い一本です。 




出演
ステファノ・ディオニジ (Farinelli)
エンリコ・ロ・ヴェルソ (Riccardo Broschi)
エルザ・ジルベルスタイン (Alexandra)
カロリーヌ・セリエ (Margarerth Hunter)
ジェローン・クラッペ (Haendel)
ジャック・ブーデ (Phillipe V)
オメロ・アントヌッティ (Porpora)
マリアンヌ・バスレー (Comiesse Mauer)
Derek LeeRagin (カウンター・テノール歌手(声))
Ewa Mallas Godlewska (ソプラノ歌手(声))

スタッフ
監督 ジェラール・コルビオ
脚本 アンドリー・コルビオ
ジェラール・コルビオ
脚色 マルセル・ボーリュー
製作 ヴェラ・ベルモン
撮影 ウォルター・ヴァンデン・エンデ
美術 ジャンニ・クァランタ
音楽監督 クリストフ・ルセ
編集 ジョエル・アッシュ
衣裳デザイン オルガ・ベルルーティ
字幕 寺尾次郎
字幕監修 吉岡芳子
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マウリッツハイス美術館展/ 東京都美術館

2012-08-20 22:19:21 | 美術展(2012.8~)
 ヨーロッパではかなりの美術館を巡りましたが、2010年の夏に訪れたオランダのハーグにあるマウリッツハイス美術館は中でも大いに気に入った美術館でした。個人邸宅を美術館にしたアットホームな雰囲気、多すぎず、質の高い展示作品、世界有数の名画がまるで自分の家ででも見るように、静かな環境の中でゆっくりと鑑賞できるのです。


(2010年8月11日訪問)

 そのマウリッツハイス美術館の展覧会が東京都美術館で開催中ということで、早速行ってきました。目玉は日本に居る人ならいたるところでポスターが掲示してある、フェルメールの「真珠の耳飾りの少女」です。



 お盆で空いているかなあと思った自分が甘かったです。夕方が空いているということで午後3:30頃に到着したのですが、まだ50メートルぐらいの入場待ちの列が出来ていて、入場まで並ぶこと20分。欧州との比較で、東京をああだこうだ言うのは控えたいと思っていますが、このアクセス・ハードルの高さには、ちょっとゲンなりでした。



 当然、中も相当混み合っていて、「真珠の耳飾りの少女」を目前で鑑賞したい人は更に絵の前に20メートル近くの列が出来ています。しかも、絵の前では立ち止まり禁止。ゆっくりと鑑賞することはまかりならず、一瞬見たら流れに沿ってさようならです。これでは逆にもったいないので、私は列には並ばず、列の数メートル後ろから、ゆっくりと眺めるだけにとどめました。

 展示作品はなかなかの粒ぞろいです。「真珠の耳飾りの少女」以外にも初期のフェルメール作品、レンブラントの自画像を初めとした作品群、スターン、ハンスといった代表的オランダ画家の作品が並んでいます。私のようなオランダ絵画好きにはたまりません。

 混み方は人口の多い日本(東京)の場合、ある程度致し方ないと思います。でも、こんな欧州の名美術館の主要作品を観れる東京が、世界有数の美術都市であることは間違いないと思いました。



 @東京都美術館 2012年8月13日訪問
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日帰り温泉 箱根湯本 天山温泉郷

2012-08-19 21:24:49 | 日記 (2012.8~)
 ※ブログタイトル変えてみました。

 東京に戻って、翌日月曜日からの一週間の仕事は、結構しんどかったですが、翌週はお盆でお休みだったので、ゆっくり出来ました。

 荷物の整理、部屋の掃除、市役所への届け出、実家訪問等で、遠出する準備や余裕はなかったのですが、やっぱり「日本に帰ったらまずは温泉!」ということで、一日、箱根湯元の日帰り温泉施設、天山温泉郷を訪ねました。

(玄関)


 天山温泉郷は以前から私のお気に入りの温泉で、箱根湯元駅から旅館循環バス(100円)で10分ほどの近さにもかかわらず、とっても静かで、くつろげます。温泉は源泉掛け流しで、木に囲まれた露天風呂は、これぞ日本の温泉という感じです。

(中庭)


 休憩室や食事処(正直、食事は安くない割に、味はいまいち)もあり、入湯料1200円でかなりゆっくりできます。別棟にある広間は、仮眠用の簡易マットがいくつも引かれ、横になれます。寝転んでいると、蝉の鳴き声、渓流のせせらぎ、風鈴の音が耳に入ってきます。イギリスではまったく聞くことのできなかった音たちでした。

(広間から)


 「う~ん、日本もいいなあ」って、しみじみと思える時間でした。

 ※天山温泉郷のホームページはこちら→
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The last day in London (ロンドン最後の日)

2012-08-17 20:17:30 | ロンドン日記 (日常)
 早いものでもうすぐ帰国して2週間。いつまでもロンドンのことをだらだら書いていても、金魚の糞のようなので、そろそろ一旦区切りをつけたいと思います。

 というわけで、これも自分の記憶の記録用なのですが、ロンドンでの最後の一日。

【ラスト・ジョッグ】
 とうとう最後の日の朝。やっぱり、「最後にもう一走りせねばなるまい」、そう思い、もう何回走ったか数えきれないぐらい走ったハイドパーク、ケンジントン・ガーデンズのお決まりコースを1周。丁度、この日、数時間後にオリンピック女子トライアスロン競技が行われるハイドパークには、練習中の選手や観客たちが集まり始めていました。

(最初の1年はこのアングルが定点観測地点でした)


(トライアスロンのサイクリング、ランのコース)
 

(トライアスロンの水泳コース。あの池がオリンピックコースとは信じらん・・・)
 

【インベントリー・チェック】
 フラット(アパート)の最後の退室検査。もう、引っ越しも終えて、入居時のままの殺風景に逆戻りとなりましたが、2年半お世話になった、ロンドン2つめのこの部屋ともお別れかと思うと、結構しんみりします。



【大英博物館/ナショナルギャラリーへ】
 引っ越しの際、部屋には、大量のユーロ・コインや大陸旅行に行った際のコイン・紙幣(ポーランド、チェコ、ハンガリー、トルコとかのお金)が残っていました。真面目に数えたら、何と50ユーロ以上。コインは両替レートも悪いらしいし、何しろ重いので、日本に持って帰るのもばからしい。

で、思いついたのは、お世話になった大英博物館とナショナルギャラリーへの恩返し寄付。博物館、美術館のお賽銭箱にじゃらじゃらコインをまとめて入れるのは、すごい快感です。廻りの人に、「こいつ、何やってんだ。狂ってんじゃないのか?」とちらちら見られるのも、変な快感。子供がじーっと、コインを投げ込む私を見つめているのも印象的でした。

 とにかく、イギリスの殆どの美術館、博物館が無料という方針には本当に感心したし、恩恵を得ました。是非、これだけはどんなに財政難になっても続けてほしい。クラシックコンサートの寄付が削られてチケットが高くなろうとも、この無料施策だけは辞めないでほしいです。この程度の寄付では、何の足しにもならないでしょうが、感謝の気持ちとして、受け取りください。

(延べ20回近く通った大英博物館)


(奥に隠れてますが、寄付したコインの一部)
 

【ザ・ラスト・ビアー】
 やっぱり、最後はパブでビールで締め。セルフリッジ・デパートの裏(北)側を5分程度歩いたところにある、Tudor Rose。市街の喧騒から離れてゆっくりくつろぐのにお薦めのパブです(昼しか行ったことありませんが・・・)。ロンドン最後のビールはやっぱり、London Prideしかないでしょう~。

 


 Bye-Bye, London !!!! Thanks a lot!!!!!

2012.8.4

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My last musical in London/  Thriller Live (スリラー・ライブ)

2012-08-16 08:36:45 | ミュージカル、演劇 (in 欧州)


 ロンドンで最後のミュージカルとして、マイケル・ジャクソン、ジャクソン5の歌と踊りの舞台Thriller Live (スリラー・ライブ)を観に行きました。このミュージカルは、ロンドンのミュージカルの中では珍しく、日曜日の夜公演があるのです。ホントは、Queenの"We will rock you"に行きたかったのですが、こちらはマチネのため断念。(帰任前の週末の日中帯は何かと忙しいんです)

 舞台は特にストーリーがあるわけではなく、マイケルジャクソンの少年時から全盛時の曲を次から次へと、パフォーマーたちが歌と踊りで披露します。ミュージカルというよりショーですね。I Want You Back, ABC, Can You Feel It, Off The Wall, , The Way You Make Me Feel, Smooth Criminal, Beat It, Billie Jean, Dirty Diana, They Don’t care About Us, Thrillerなど。マイケル・ジャクソンの大ファンというわけではありませんでしたが、いずれも耳馴染みのある曲ばかりです。

 とにかく、パフォーマーたちの、歌とダンス、凄い運動量に圧倒されます。この日も、いつも通りTKTSで当日の半額チケットなのですが、席は前から4列目ですごい迫力でした。汗が飛んできそうな距離で、実際に飛んでは来ませんでしたが、肌の汗の粒はははっきりと見えるほどです。 子役の子の歌唱は、声の伸びとかがもうひとつでしたが、ほかの大人たちは皆上手。特に唯一の女性ボーカルの声量と音域の広さはスゴいものでした。

 理屈なしに楽しめるミュージカル(ショー)なので、よっぽどマイケル・ジャクソンが嫌いな人を除いては、すべての人にお薦めできます。

 ※公式HPはこちら→

 2012.7.29 @Lyric Theatre

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ミュージカル CHICAGO (シカゴ)

2012-08-13 22:07:22 | ミュージカル、演劇 (in 欧州)
 帰国してもう1週間になりました。この東京のうだるような暑さに強制適応させられて、もう既に、ロンドン生活は遠い過去になりつつあります。

 2か月前のことですが、気にはなっていたが、まだ見ていなかったミュージカル「シカゴ」を見に行きました。勝手な先入観で、SEXと犯罪を描く大人向けシリアス・ミュージカルかと思ったら、確かに大人向けではあるのの、思っていたよりずっと笑いのある楽しいミュージカルでした。



 舞台は、ジャズオーケストラがステージ後方のひな段に並んで演奏し、劇がステージ前方で進行する「8時だヨ全員集合」形式です。セットらしいセットは殆どなくて、セクシーな躍りと歌で魅せるミュージカル。

 TKTSで定額の半額以下の29ポンドで当日券を買ったのですが、なんと最前列!!!網タイツのお姉さんのダンスがかぶりつきで鑑賞できて大満足でした。(我ながら中年根性丸出しで恥ずかしい・・・)

 ドロシー役とヴェルマ役の主役級の2人がとっても良かったです。ドロシー役はとってもチャーミングだったし、ヴェルマ役のダンスと歌は迫力満点。グループの躍りや振り付けが非常にテンポ良く、飽きさせません。出演者のダンスの切れ味が良く、見入ってしまいます。12名で構成されるジャズバンドの演奏も良くて、音楽、躍り、歌が上手く組み合わさった良くできたミュージカルです。あと、アメリカ英語のお陰か、台詞が殆どわかったのも嬉しかったです。

 リーピターになるほどではありませんが、十分楽しめる内容でした。このミュージカル、ロンドンでは秋で終了という話を聞きました。一度は見に行く価値があると思います。聞いた話では、米倉涼子さんがドロシー役をニューヨークのブロードウエイでやるそうです。失礼ながら、どこまでできるのか、少し不安ですが、頑張ってほしいです。

 2012.6.16 @Garrick Theatre
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マイ・ラスト・プロムス~ バレンボイム指揮/ ベートーベン・チクルス

2012-08-12 19:55:21 | コンサート (in 欧州)
 私にとっては、今シーズンでプロムスも何と4年目。夕陽に照らされるロイヤル・アルバート・ホールを見ていると、想えば、随分(ロンドンに)居たもんだと、私なりの感慨に浸ってしまいます。

(ロイヤル・アルバート・ホール)


(ホール内正面)


 今シーズン予約したチケットは7月の3枚。いずれも、バレンボイム指揮ウェスト=イースタン・ディヴァン管弦楽団の演奏によるベートーベン・チクルス。21日に3番、4番、23日に5番、6番、27日に9番を聴きました(21日、23日はベートーベンの交響曲の間にピエール・ブーレーズの曲が挟まれています)。ウェスト=イースタン・ディヴァン管弦楽団は、イスラエルとアラブ諸国出身の若き音楽家達を中心に結成(なかには若くない人もいます)されている楽団で、2年前のプロムスで、同じくバレンボイムの指揮で『フィデリオ』(演奏会方式)を聴きました。

(開演前のチューニング)


(会場は満員)


 3つのコンサートで、一番印象的だったのは、私にとって本当の最後のプロムスでもあり、オリンピックの開会記念となったベートーベン交響曲第9番の演奏会です。演奏はオーソドックスなものでしたが、若い人の集中力を感じる演奏でした。こういう演奏を聴いていると、上手い下手もさることながら、演奏会の感動度は団員さんの気合が、感動度に大きく影響するということが良く分かります。

 加えて、第4楽章のパーペのバリトン独唱で始まる合唱部が素晴らしかったです。あの大きなアルバートホールの隅々に響き、壁にまで染み渡るような美声に背筋が伸びます。そして、National Youth Choir of Great Britainの若い大合唱団のコーラスが圧倒的。若い人らしい爽やかなで張りのある歌唱で、魂が洗われました。私の最後のプロムスとして思い残すことのないコンサートでした。

(独唱陣)


(バレンボイム先生)


(スタンディング・オベーションの聴衆)


(コーラスも素晴らしかった)


 3回の演奏会を通した印象は、バレンボイム先生のリーダーシップ。ウェスト=イースタン・ディヴァン管弦楽団の演奏そのものは、私には、正直、さほど特筆すべきものは無かったように感じられました。(ただ、それはアルバートホールの大ホール故のことかもしれません。)バレンボイム先生が、若い楽団を、ハンカチで大汗を拭きながら、激しく指揮棒を振って音楽を創り上げる姿が目に残りました。


 毎年、夏のロンドンで2か月に渡って毎日、80近くのクラシックコンサートが行われるプロムス。このお祭り雰囲気とプログラムの多彩さ、そして出演のオケの国際性、本当に楽しませてもらいました。心からサンキューと言いたい気分です。 

 

Prom 18: Beethoven Cycle – Symphony No. 9, 'Choral'
Friday 27 July
6.30pm – c. 7.55pm
Royal Albert Hall
Choral music and opera, Classical for starters, Proms on TV

Beethoven
Symphony No. 9 in D minor, 'Choral' (77 mins)

Anna Samuil soprano
Waltraud Meier mezzo-soprano
Michael König Tenor
René Pape bass

National Youth Choir of Great Britain
West–Eastern Divan Orchestra
Daniel Barenboim conductor


© BBC/Chris Christodoulou


Prom 12: Beethoven Cycle – Symphonies Nos. 5 & 6
Monday 23 July
7.30pm – c. 9.45pm
Royal Albert Hall
Classical for starters, Proms on TV

Beethoven
Symphony No. 6 in F major 'Pastoral' (40 mins)
Pierre Boulez
Mémoriale ('… explosante-fixe …' Originel) (8 mins)
Pierre Boulez
Messagesquisse (8 mins)
INTERVAL
Beethoven
Symphony No. 5 in C minor (30 mins)

Guy Eshed flute
Hassan Moataz El Molla cello, Proms debut artist
West–Eastern Divan Orchestra
Daniel Barenboim conductor


Prom 10: Beethoven Cycle – Symphonies Nos. 3 & 4
Saturday 21 July
7.30pm – c. 9.55pm
Royal Albert Hall
Classical for starters, Proms on TV

Beethoven
Symphony No. 4 in B flat major (35 mins)
Pierre Boulez
Dialogue de l'ombre double (20 mins)
INTERVAL
Beethoven
Symphony No. 3 in E flat major, 'Eroica' (50 mins)

Jussef Eisa clarinet, Proms debut artist
IRCAM live electronics
West–Eastern Divan Orchestra
Daniel Barenboim conductor

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オリンピック下のロンドンの風景

2012-08-11 21:05:26 | ロンドン日記 (日常)
 ロンドン・オリンピックも明日で終わりですが、終わらないうちにポツポツ撮ったロンドンの写真を、私自身の記憶の記録としてアップしておきたいと思います。

 テレビでも散々放映されていると思いますが、リージェント・ストリートの万国旗。なかなか壮観でした。

 



 ピカデリー・サーカスからレスター・スクエアへ向かう道にはロンドン・オリンピックのペナント


 こちらもおなじみの五輪が吊るされたタワーブリッジ。


 市庁舎前は聖火リレーの中継点に。


 街なかにある公衆電話ボックスもオリンピックスポンサーのブリティッシュ・テレコムのポスターが。



 最後は、オリンピック前・中に掲示されたポスター。

(交通機関の混雑防止のためのWalkingキャンペーン)


(混雑スポットあり)


(駅情報に注意しましょう。地下鉄の駅によっては、出口は解放するけど、入り口は閉鎖する駅もありました)


(結局、効果がありすぎたのでは?と思われた在宅勤務推奨キャンペーン。おかげでロンドン地下鉄結構空いてました)


(移動には時間の余裕を持って~)


(道路規制情報を確認しましょう)


 なかなか面白いポスターたちです。イギリスはこの手のアイキャッチ、デザインが上手ですね。
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ロンドンの中華料理/ ROYAL CHINA (皇朝)

2012-08-10 21:31:49 | レストラン・パブ (in 欧州)
 何故、もっと早くから行かなかったのか?知ってはいたけど、なかなか足を運ぶ機会が無くて、初めて訪れたのが帰国1ケ月前。あまりの手軽さと美味しさに、その後2回、計1ケ月で3回も通ってしまった飲茶やです。



 エビ餃子、小龍包、エビの腸粉、ちまき、揚げベトナム風春巻き、野菜の餃子・・・いろいろ食べましたが、どれも美味しいです。どれも一皿3つ程度入って、3~4ポンド。日本人の口に合うさっぱりした味付けです。

 店内もシックで、サービスの人の感じも良いです。中華街の汚い中華料理屋とは段違いです。

(店内の雰囲気)


 行列が出来るという話も聞いたことがありますが、私が行った3回は行列までは出来ていませんでした。ただ、殆ど満員の混みようでした。飲茶はお昼時のみで、夜は通常の中華料理屋さんになるようなので、ご注意ください。


(住所)
Royal China (Baker Street)
24-26 Baker Street, London W1M 1AB

http://www.royalchinagroup.co.uk/
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映画 「わが母の記」/ 監督 原田 眞人

2012-08-09 01:29:58 | 映画
 飛行機の中で観た映画。井上靖の自伝的小説「わが母の記」の映画化。幼少期に離れて暮らした母(樹木希林)と子(役所広司)であったが、作家として成功した子が、父の死後、痴ほう症が進む母を看護をする中で、母の自分に対する愛を見つけていくヒューマンドラマ。

 日本の原風景的な伊豆湯ヶ島の美しい映像、樹木希林、役所広司、宮崎あおいという日本を代表する名俳優達の名演、親子の心理を深堀したストーリーと脚本、間違いなく名作と言って良いと思う。私自身、小学生の時、井上靖が自分の幼少期を描いた『しろばんば』は愛読書の一つだったので、その母、洪作、乳母の3角関係の顛末を描く本映画はしみじみとであるが、楽しめた。

 唯一、違和感があったのは、(これは事実だろうからしょうがないと思うのだが、)井上靖のブルジョア的生活ぶり。家に書生を雇い、母の誕生日にはホテルで一族を集めて、バンドを雇って祝う、母の看病には軽井沢の別荘でお手伝いさん付き・・・その生活は、あまりにも現代の私の生活とかけ離れていて、非常にいい話であるのだが、親近感が湧くことはなかった。まあ、これは半分は私の僻み根性だから、しょうがない・・・


スタッフ
監督 原田眞人
プロデューサー 石塚慶生
原作 井上靖
脚本 原田眞人
撮影 芦澤明子
照明 永田英則
美術 山崎秀満
衣装 宮本まさ江
録音 松本昇和
編集 原田遊人
音楽 富貴晴美

キャスト
役所広司 伊上洪作
樹木希林 八重
宮崎あおい 琴子
南果歩 桑子
キムラ緑子 志賀子

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東京から見るロンドン

2012-08-07 03:57:47 | ロンドン日記 (日常)
 無事、日本に到着しています。多くの人から言われた通り「暑い」です。

 成田空港から自宅に着いたら丁度、ロンドンオリンピックの女子マラソンをやっていました。3年半前のアナログテレビから、液晶のデジタルテレビに変っている自宅のテレビに映るロンドンは、雨こそ降っていたもののロンドンってこんな街だったったっけ?と思うほど、建物の白壁、公園の緑、石畳の道のグレイなどなど、色彩豊かで美しい街並でした。狭く、薄暗く、圧迫感のあるシティの通りでさえ、絵になる歴史あるヨーロッパの道並みに映っていたのには驚きました。まるで、全然、別の街を見ているような、親近感と違和感が入り混じった、とても不思議な気分です。

 マラソン周回コースの多くの部分が、つい1ケ月前に走ったブリティッシュ10kマラソンのコースと被っていたのは、嬉しいものでした。地下鉄ストライキの時に、自宅~会社を走って通勤したコースとも少し被っています。14時間前まで毎日の生活の一部だった街なのに、映った映像に私のリアリティはもう存在しない。これも寂しいような、既に懐かしいものをみるような、複雑な気分でした。

 早速、ネットにも接続してみたのですが、ブログやフェイスブックのロンドンの友人達の書き込み記事が、もう遠い別の世界の事に感じられます。かといって、日本の友人の記事が、自分の世界とも感じられない、宙に浮いたような、地に足がついていない気分です。

 適応プロセスの一部なのだろうと思うのですが、ロンドンの生活で、仕事、オフ問わず、いろんなことに対する自分の投入感が高かった分、反動が少し怖いところであります。まあ、そんなことは言っているのも帰国1,2日のことで、直ぐに押し寄せる現実の中で、新しい出会い、再会に胸躍らせ、再び前のめりになって行くのもきっと間違えがないのですが・・・
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とある職場の風景 ラマダン

2012-08-05 12:10:33 | ロンドン日記 (日常)
 私が日本に帰任することが社内でアナウンスされてから、ありがたいことに、幾人かの人から送別の食事会の誘いを頂きました。バングラディッシュ系英国人の好青年Mくんもその一人です。以前、日本食レストランで馳走したのを、えらく恩義に感じてくれていて、「是非、今度は自分にご馳走させてくれ」と言って誘ってくれました。というわけで、一緒にお昼を食べる約束をしました。

 その当日の朝、申し訳なさそうに、彼が私のところにやって来てこう言います。


「何人か、他の人も誘っても良いだろうか?」

「もちろんだよ。多い方が楽しいよ」

「僕は行けるけど、食べられないから・・・」

「????」

「ラマダンがはじまったので日中は飲食できないんだ。あと、ゴメンなさい、ご馳走もできない。今日、財布をどこかで無くしてしまったから・・・」

「そりゃあ、大変だ。かえって悪かったねえ。そんなラマダン中の日を食事の日にしちゃって・・・」

「いや、気がつかなかった僕が不注意だったよ・・・(しょぼん)」


この会話の後、M君の同僚で仲の良いYさんがわたしのところに来て、裏話を教えてくれました。


「実はですね・・・、M君、先週から相当悩んでいたんですよ。『XXさん(私のこと)と食事ができることになったけど、ラマダンが始まるって。。。食べるか、食べまいか・・・。』って。でも、『これが最後の食事になるだろうから』って、昨日は『ラマダンだけど、食べることにした』って言ったんです。
そしたら、今朝、財布なくしちゃったみたいで・・・、『これはラマダン中に食べようとした自分にバチがあたったんだ』、ってまた悩んじゃって。神様をとるか、XXさんをとるかって。で、結局、神様にしたみたい」

「そりゃ、そうだろ。神様相手にどっちにしようか悩まれるなんて、随分、オレも偉くなったんだなあ~(笑)」


笑う話ではないのでしょうが、イスラム教にとってのラマダンの重要性を実感として理解してない日本人の私としては、とっても微笑ましい話であるとおもったのですが、その有り難さは十分に理解できるものでした。


食事会そのものは、M君とわたしのほかに4名が加わって、6名で楽しい時間を過ごすことが出来ました。M君は、水も含めて一切注文なし。サービスの人は、何も注文しないけど、座の中に居るMくんに怪訝なかんじだったし、ラマダン中の人を前に、皆で美味しそうに食事するのは大変、申し訳なかったけど、彼は一切、気にする様子なく、楽しげに会話に加わってくれました。

最後にM君は「Leaving Drink(会社を離れる人が呼びかけるパブでの飲み会)は、日没の8時47分からは飲める(当然、ジュースです)から、その前に終わらいでよ」と言ってくれました。これまた、ありがたいことです。


(後日談)昼食会の翌日、何と、M君の財布がなんと出てきました。地下鉄の遺失物係に、届け出があって連絡が来たとか。既にキャッシュカードは停めていたようですが、M君が嬉しそうに「XXさん、財布出てきたよ」と教えてくれました。「神様が見てたんだね」「きっと、そうだね」って、ウソのようなホントの話と会話です。
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