その後の『ロンドン テムズ川便り』

ことの起こりはロンドン滞在記。帰国後の今は音楽、美術、本、旅行などについての個人的覚書。Since 2008

第1回水戸黄門漫遊マラソンでねばり切れず(1/2)

2016-10-31 22:47:54 | ロードレース参戦 (in 欧州、日本)
今年から始まった水戸黄門漫遊マラソンを走りに水戸まで行ってきました。わが家からは遠いので、今回は前泊。土曜日の夕方5時過ぎに水戸入りして、さっそく前夜祭に。5時というと暗いし、東京より寒いぐらいの気候でしたが、地元の高校生がステージでジャズ演奏をしていて、盛り上がっていました。


《水戸駅の改札出ると激励ボードが。よし、粘るぞ~》


《高校生のジャズ演奏》

今回はマラソン目的ですが、前々から一度聴きたいと思っていた水戸室内管弦楽団の演奏会がこの夜にあることを事前に知り、一度で二度おいしい水戸になっています。マラソン前夜祭の後は、マイ前夜祭ということで、水戸芸術館に向かいました(詳細はまた別エントリーで)。
 
演奏会の後は、景気づけにトンカツを食べに、地元のトンカツ屋に。ここが、家族経営のアットホームな雰囲気の良いトンカツ屋さんで、しかもとっても美味しい。頼んだのはトンカツの中ににんにくスライスが入っている変わり種のトンカツ。翌日のマラソンに向けたパワーアップにぴったり。お店の人もお客さんもみんなで、熱戦の日本シリーズをTV観戦しながら、盛り上がりました。何か水戸っていい感じ。

翌朝はゆっくり6時半に起床。ホテルの朝食を取って、トイレも済ませ8時に出発。スタートが駅近くなので、駅近辺のホテル前泊だと相当ゆっくりできます。曇り空で風も無く、気温も10度前後ということで、マラソンには絶好のコンディション。


《日帰りランナーも続々集合》

 約13000人が走るだけあって、会場周辺は相当混み合っていました。8時30分過ぎにスタートエリアに到着した時はランナー達でごった返していて、タイム別のスタートエリアは名ばかりで、ごっちゃまぜ状態。ハロウィン・シーズンということもあってか、仮装しているランナーもちらほら。


《このバルタン星人、ホントに42キロ走るのかしら?》


《スタート10分前》

9時にいよいよスタート。スタートラインに着くまでに4分ほどかかりましたが、半年ぶりのフルマラソンの始まりです。目標は、今年4月の長野マラソンでしくじったサブ4の再達成。


《いよいよスタート》

スタート後、暫くはランナーでごった返していて、なかなか思うように前進できず、最初の5キロは28分55秒。いきなりの借金スタート(27分30秒/5キロが目標ラップ)でちょっと焦りましたが、「まあここはスロースターㇳでむしろ良し」と言い聞かせました。


《左手は千波湖》


《いよいよ市街地の外へ》

千波湖を過ぎると、真っ直ぐ県道を南進しずいぶん立派な県庁の建物の横を走ります。10kラップが55分47秒、コース幅も広がり、ようやく5キロ26分52秒で走りが落ち着いてきました。その後、10kから30kは淡々と5k26分台のペースで順調に走れました。このレースに向けて、9、10月は月160K程度走ったので、しっかり練習の成果が出ている感じ。ハーフで1時間54分、30k通過が2時間41分30秒と順調にサブ4ペースで刻めました。30kを過ぎると、さすがに脚の疲れを感じ始めましたが、気温も上がることなく、これは行けるのではと、ゴールに向けて逆算を始めます。


《県庁の横です》

(つづく)

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優れもののルポ: 福田ますみ 『モンスターマザー:長野・丸子実業「いじめ自殺事件」教師たちの闘い 』(新潮社、2016年)

2016-10-29 08:00:00 | 
 『赤めだか』の余韻に浸っていたところだったのに、次の一冊の選択を誤った。一気に醒めた。

 長野県佐久市の丸子実業高校バレーボール部員の自殺を巡って、学校側と自殺した生徒の母親側との衝突、裁判の一部始終をレポートしたノン・フィクション。当該生徒の母親が、いじめがあったとしてバレーボール部関係者や校長らを相手取り、刑事告訴及び民事裁判を起こす一方、バレーボール部側も母親を相手に裁判を起こして訴訟合戦となるという異例の事件となった。結果は、概ね母親側の敗訴となるのだが、詳細は本書を読んで頂きたい。

 被害者である自殺した高校生を思うと胸が詰まる。あまりにも不幸な家庭環境に育ち、不運な一生となってしまった。ご冥福を祈るほかない。

 タイトルにある「モンスター・マザー」と聞くと、一般的なクレーマー的な母親をイメージするが、本件の母親はそんなレベルをはるかに超えている。完全な人格障害であり病気としか思えない。生徒たちはもちろんのことだが、こんな人間を相手にせざる負えなかった学校関係者、児童相談所等、運が悪かったというしかない気がする。そのストレスや想像するに余りあるが、屈することなく戦った勇気と行動を讃えたい。

 一方で、本書を読んで腹ただしかったのは、職業的な検証作業を不十分なまま母親を支援した「人権派弁護士」高見澤昭治弁護士や一面的な見方で学校側を糾弾する記事を掲載した鎌田慧氏である。高見澤弁護士は、校長の名誉と社会的信用を棄損したとして、2012年に東京弁護士会により懲戒処分を受けている。が、判決で言い渡された新聞への謝罪文掲載を、「良心に反する」という理由で、今だ履行していないという。判決に従わない弁護士って何なのだろうか。

 鎌田氏の記事やその後の対応にも大いに失望させられる。学生時代、「自動車絶望工場」など彼のルポルタージュを愛読しただけに、本件のついての一方的な記事(Web検索でいくらでも「週刊金曜日」の彼が執筆した記事が出てくるので読める)は呆れるほかない。十分な取材に基づいた記事というなら彼のバランス感覚を疑うし、十分な取材もせずに書いたのなら職業的技能を疑う。もちろん人間だから誤り、失敗はあるだろう。だが、著者が本件についてコメントを鎌田氏に求めたところ、全くのノーコメントだそうである。結局、自分の都合の悪いことは無視するレベルの人なのかもしれない。裏切られた気持ちで一杯だ。今後、彼の書き物を信用する事は無いだろう。自らの誤りを認められない人間に、社会や他者の不正を書く資格は無いと考えるからだ。

 著者が書くように、この手の事件は発生した時は大々的に報道されるが、一旦熱が冷めると、取り上げらる量も質も下がる。丹念に事件を追い続け、こうした一冊の本という形でまとめてレポートしてくれた著者の報道魂に敬意を表したい。極力感情を抑制した冷静な記述は、悪戯に情感に訴える鎌田氏の記事とのギャップが対照的。

 最後に、本書は、私のような一介の読者としてマスコミ情報に触れる立場の者にも警鐘を鳴らしているように読める。とかく、この手の事件が起こると、我々はマスコミの作ったストーリーや図式に乗り、何が起こっているかも理解しないまま「また、学校が隠ぺいしているんだろ」ぐらいに思ってしまうことが多い。注意せねばならない。

 読んだタイミングは個人的に最悪だったが、書籍としては極めて優れものの一冊である。

≪目次≫
はじめに
第1章 家出
第2章 不登校
第3章 悲報
第4章 最後通牒
第5章 対決
第6章 反撃
第7章 悪魔の証明
第8章 判決
第9章 懲戒
終章 加害者は誰だったのか
事件の経過

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本年のマイベスト間違いなし: 立川談春 『赤めだか』 (扶桑社文庫、2015)

2016-10-27 20:00:00 | 


数か月前に、Eテレで落語家・立川談春さんと禅僧・古川周賢さん(東大で哲学の博士号を取得という変わった経歴)の対談番組を見て、ユーモラスな会話の中に道を極めることの厳しさを感じ、背筋が伸びる思いになった。本書は、番組でも一部紹介された、著者の入門から真打昇進に至る過程での、談志師匠との師弟関係における数々のエピソードについて描かれたエッセイである。

気安く読めるし、何より抱腹絶倒の連続。通勤電車の中で読んでいたら、周りにかなり怪しい中年男だと思われた。残念ながら2日で読み終わってしまったが、この2日間ほど通勤時間が楽しかったことはなかった。

人生をかけギリギリの所でサバイバルを試みる落語家の卵の話であり、それも師匠が立川談志ときているので、笑いの逸話の中にも、剃刀の刃を渡るような師弟間の緊張感、コミュニケーションの機微、落語の奥深さ、人の強さ・弱さが隠されている。

談志師匠は、「落語とは、人間の業の肯定である」と言ったそうである。何とも含蓄ある言葉だ。落語については「笑点」をたまに見る程度で、何の知識も嗜みもないが、ちょっと落語の世界を覗いてみたいなという気になった。


【目次】
「これはやめとくか」と談志は云った。
新聞配達少年と修業のカタチ
談志の初稽古、師弟の想い
青天の霹靂、築地魚河岸修業
己の嫉妬と一門の元旦
弟子の食欲とハワイの夜
高田文夫と雪夜の牛丼
生涯一度の寿限無と五万円の大勝負
揺らぐ談志と弟子の罪―立川流後輩達に告ぐ
誰も知らない小さんと談志―小さん、米朝、ふたりの人間国宝

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2週間早すぎた紅葉祭り @山中湖

2016-10-25 08:00:00 | 旅行 日本
 昨年訪れて素晴らしい紅葉のライトアップを堪能したので、今年も秋の山中湖へ出かけました。

 でも、訪れるのが少し早すぎたようです。日程的にも昨年よりも1週間早かった上に、今年は例年よりも2週間ほど紅葉が遅れているとか。所々に赤くなった葉はありましたが、ほぼ緑色の楓のライトアップは残念ながらもう一つ。楓以外で紅葉している木々もあるのですが、ライトは緑の楓の葉に当たるばかり。ライトの当て方次第では、違った楽しみ方もあったかと思いましたが、照明係もそう柔軟にできるわけではなさそうでした。




《かろうじて見つけた紅葉》

 翌日は、天気も良く、お決まりの山中湖一周サイクリング。秋を探して、ゆっくり1時間近くかけて走らせました。


《この時季でまだ富士山が冠雪していないのもめずらしいそうです》


《色づいている葉もあります》


《ススキと富士山》


《黄色の葉》


《山中諏訪神社 ここも2週間後はもっと綺麗なことでしょう》


《小さい秋見つけた》

 紅葉こそ見頃には遠かったですが、秋の人気の少ない山中湖周辺を満喫しました。

 2016年10月22-23日
コメント (2)
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振替席で満喫: N響 10月定期Cプロ/ 指揮:アレクサンドル・ヴェデルニコフ/ チャイコフスキー交響曲第6番「悲愴」ほか

2016-10-23 08:00:00 | 演奏会・オペラ・バレエ・演劇(2012.8~)


 開演前ぎりぎりにNHKホールに駆け込み。今日は振替なので、どんな席になるか楽しみ半分怖さ半分だったのだけど、なんといつもの席から4列も前進した3階のかぶりつき席に狂喜。

 前半はアレクサンドル・クニャーゼフによるドヴォルザークのチェロ協奏曲。好きな曲であるのだが、仕事終わってまだ30分ちょっとしかたってないし、駆け込んだ体に、心地よい音楽と弛緩する体が組み合わさって、完全にあっちの世界に行ってしまいました。ごめんなさい。

 でも、アンコールのバッハの無伴奏チェロ組曲第2番サラバンドは集中して聴きました。情感豊かで胸に深く染み入る演奏です。アンコールとしては長めのこの曲を、遠いかぶりつき席から堪能。チェロの音色というのは、なんて人を落ち着かせてくれるんだろう。

 前半聴けなかったお詫びとアンコールがとっても良かったので、休憩時間にロビーで彼の無伴奏チェロ組曲全集3枚組を購入。家でもしっかり聴きます。

 後半のチャイコフスキーの「悲愴」も素晴らしかった。暗譜と指揮棒なしで、全身でオーケストラに向かい合うヴェデルニコフさんの気迫が背中から伝わってきます。楽員も集中力一杯で気合入ってました。弦のアンサンブル、木管の響き、金管の勢い、それも素晴らしい。私的には、抑制された緊張感一杯の第一楽章前半に痺れたなあ。後半はそれが一気に解放。そして第2楽章以降は一気呵成で。第4楽章のフィナーレの深遠さは表現できないほど。私は、不意に亡き父を思い出してしまいました。一緒に聴いたことは無いけど、この曲が好きだと言っていたなあ~。

 会場からも大きな熱い拍手。2日目に比べると、平均年齢も高めで落ち着いた雰囲気が漂うホールでしたが、終曲後の長い静寂は素晴らしかったし、拍手も暖かく敬意に満ちたもので、一緒に拍手して幸福感を共有している感じが心地良かったです。オペラグラスを持参し忘れたので、表情までは読み取れませんでしたが、ヴェデルニコフさんもとってもご満足の様子で、楽員の皆さんを讃えてました。私的には、先週のハルサイよりもグーです。

 蛇足ですが、終演後の原宿駅も土曜日に比較するとずっと空いていてよかった。



NHK交響楽団 第1845回 定期公演 Cプログラム
2016年10月21日
NHKホール

ドヴォルザーク/チェロ協奏曲 ロ短調 作品104
チャイコフスキー/交響曲 第6番 ロ短調 作品74「悲愴」

指揮:アレクサンドル・ヴェデルニコフ
チェロ:アレクサンドル・クニャーゼフ

No.1845 Subscription (Program C)
Friday, October 21, 2016  7:00p.m.  (doors open at 6:00p.m.)
NHK Hall  

Dvořák / Cello Concerto b minor op.104
Tchaikovsky / Symphony No.6 b minor op.74 “Pathétique”

Alexander Vedernikov, conductor
Alexander Kniazev, cello

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無名アイドルにあって、N響になかったもの: N響 10月定期Aプロ/ 指揮:アレクサンドル・ヴェデルニコフ/ ストラヴィンスキー バレエ音楽「春の祭典」 他

2016-10-17 23:12:52 | 演奏会・オペラ・バレエ・演劇(2012.8~)

《NHKホール前は今日もフェスタ》

 10月のAプロはロシアプログラム。指揮のヴェデルニコフさんは、一昨年の1月以来、2年ぶりです。

 この日、私的にベストだったと思ったのは、前半のグラズノフ/ヴァイオリン協奏曲。ヴァイオリン独奏のグルズマンさんは初めて聴きましたが、力でぐいぐい押すスタイルとは正反対で、曲の抒情性を自然と引き出す音色でした。ロシアの田舎の夕暮れの風景が目に浮かぶような哀愁漂う演奏にうっとり。オケもヴァイオリンを引き立てる滑らかな演奏で、全体の調和が素晴らしい。アンコールではバッハのサラバンドを演奏してくれました。決して大きな音ではないのですが、あの大きなNHKホールが小さく感じるぐらいの豊かな響きが伝わって来て、教会で聴いてるかのような神々しさまで感じるものでした。彼の演奏は一度、小さなリサイタルホールで聴いてみたい。

 後半のストラヴィンスキーのバレエ音楽「春の祭典」は、ロシア出身のヴェデルニコフさんの指揮ということもあり、大いに期待していましたし、最近の好調なN響をそのままで、素晴らしい演奏でした。難しい曲だと思うのですが、アンサンブルは乱れなく、管楽器の音色も聴かせます。が正直ななところを書くと、「何か物足りない」。そんな印象を持った演奏でした。あまりにも端正で、お行儀よく、機能的な演奏で、私がこの曲に求めたい興奮、陶酔、狂気、汗、血が感じられない。綺麗に目の前を流れていく音楽を聴いていて、もっと乱れてくれ!行かせてくれ!と心の中で叫ぶ自分がいました。ただ、終演後にどのツイッターを目に通しても、こんな感想を呟いている人はどこにもいませんでしたので、万年音楽素人の私の妄想の可能性大です。
 
 もしかしたら、NHKホール周辺で開催されていたフェスティバルで踊って歌っていた無名アイドル達のミニコンサートの残像があったのかも。アイドルには全く興味・関心のない私ですが、たまたま早めにホール周辺に到着したので、興味半分で眺めていたのですが、思いのほか強く魅かれるものがありました(ステージ前に陣取って、掛け声かけてる男性陣にはかなり引いたけど)。テープ音楽をバックにしたカラオケで、歌も踊りもプロというにはもう一歩なのですが、彼女たちが放つ無条件の若さ、勢い、エネルギーは眩しいほど(こんなこと書いていること自体が、もうオヤジ丸出しですが)。クラシック音楽のコンサートと無名アイドルのステージを比べること自体、プロのクリケットと少年野球を比べてるようなものだと思いますが、クラシック音楽にもああいう「はじけ」ってあってもいいよねと真面目に思います。特に、この日はハルサイなんだし・・・。

 演奏に文句は全くないのだけど、個人的に十分満足とは言い難い、不思議な思いを持った演奏会でした。


《SPORTS of HEART 2016 @代々木公園野外ステージ》


《納豆フェスタ 特別ステージ》


N響 第1844回 定期公演 Aプログラム

2016年10月16日(日) 開場 2:00pm 開演 3:00pm
NHKホール

チャイコフスキー/スラヴ行進曲 作品31
グラズノフ/ヴァイオリン協奏曲 イ短調 作品82
ストラヴィンスキー/幻想曲「花火」作品4
ストラヴィンスキー/バレエ音楽「春の祭典」


指揮:アレクサンドル・ヴェデルニコフ
ヴァイオリン:ワディム・グルズマン


NHK Symphony Orchestra
No.1844 Subscription (Program A)
Sunday, October 16, 2016 3:00p.m. (doors open at 2:00p.m.)
NHK Hall

Tchaikovsky / Slavonic March op.31
Glazunov / Violin Concerto a minor op.82
Stravinsky / “Feu d’artifice”, fantasy op.4
Stravinsky / “Le sacre du printemps”, ballet

Alexander Vedernikov, conductor
Vadim Gluzman, violin

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東山 彰良 『流』(講談社、2015年)

2016-10-15 07:00:00 | 


新聞で紹介されていたので図書館で予約したのだが、廻ってくるのに半年かかった。直木賞受賞作。

日中戦争、国共内戦を経て、台湾に渡った中国人家族の若者の成長物語。善悪の区分も困難な戦中の混乱期を生き抜いた主人公の祖父が、1975年台湾で何者かに殺され、主人公が犯人の影を追い続けながら、人間的に自立していくプロセスが描かれる。

 いろんな意味合いを持つ物語だ。中国・台湾の歴史を背景に、戦後台湾の混乱や成長期の熱気が伝わってくる。中国人の考え方や価値観も伺われ興味深い。友情や恋愛も織り込まれ、主人公をはじめとした登場人物が何とも個性的だ。

 作品的には、まだまだ完成度は高まるのでは、と思わせるところがあるが、作者の勢いや思いを感じる作品である。

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欧州演奏旅行の大成功を期待! ノット/東響/ブラームス交響曲第1番ほか(東京オペラシティシリーズ 第94回)

2016-10-11 07:30:20 | 演奏会・オペラ・バレエ・演劇(2012.8~)
 この10月に欧州演奏旅行に出かける東響が、現地でのプログラムを事前お披露目です。

 厳粛な「弦楽のためのレクイエム」に続いては、ドビュッシー「海」。この曲は色んなオケや指揮者で何度か聴いています。が、この日は私の体調がイマイチだったせいか、ノットさんの「波」に上手く乗れませんでした。特に、第3楽章などは、過去に聴いたことのないほどの圧倒的な音量で、作曲当時の楽譜の表紙にあったという葛飾北斎の冨嶽三十六景「神奈川沖浪裏」の荒波そのもの。さしずめ、私はほんろうされる小舟といった感じ。遭難したままエンディングとなりました。

 逆に、後半のブラームス交響曲第1番は、スーッと音楽の中に自分が吸い込まれていく感覚で、かつ演奏も素晴らしかった。ノットさんの鬼のような激しい指揮ぶりとオケの皆さんの食らいつくような姿勢が、そのままはっきりと音楽に現れた緊張感あふれる50分でした。

 第1、4楽章の重厚さや豪快さと、第2,3の柔らかさ、優美さのコントラストやバランスが絶妙で、身震いすること数度。特に、第2楽章の木管楽器の美しさや第4楽章のフィナーレなど、いろんな名演に接して来ていますが、この演奏も全く遜色ない、というかマイ名演リストに間違いなくアップされる内容でした。

 終演後、会場は大拍手に包まれ、楽団員さんが解散した後も拍手鳴りやまずで、ノットさんのソロ・カーテンコール付き。

 ある意味、ハイレベルにまとまって完成度の高いN響よりも、完成度は劣るかもしれないけどよりストレートにオーケストラの気持ち、気迫が伝わってくる東響は、逆に欧州でも受けるのではないかと思いました。迫真の演奏と聴衆の大拍手が耳奥に残る中、欧州演奏旅行の大成功を祈念して、ホールを出ました。



《開演前》

東京オペラシティシリーズ 第94回

東京オペラシティコンサートホール
2016年10月09日(日)14:00 開演
出演
指揮:ジョナサン・ノット
曲目
武満徹:弦楽のためのレクイエム
ドビュッシー:海 ~管弦楽のための3つの交響的素描
ブラームス:交響曲 第1番 ハ短調 作品68

Tokyo Opera City Series No.94
Title
Tokyo Opera City Series No.94
Date
Sun.9th October 2016, 2:00p.m.
Hall
Tokyo Opera City Concert Hall
Artist
Conductor = Jonathan Nott
Program
T.Takemitsu : Requiem fpr String Orchestra
C.Debussy : “La Mer” trois esquisses symphoniques pour orchestre
J.Brahms : Symphony No.1 in C minor, op.68

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最高の音楽を最上のホールで! N響90周年&サントリーホール30周年特別公演

2016-10-07 21:00:00 | 演奏会・オペラ・バレエ・演劇(2012.8~)
 N響創立90年を祝い、加えてサントリーホール開館30周年のお祝いを重ねた特別演奏会。A,C定期会員の私には、サントリーホールでのN響体験は滅多にない。しかも曲目はマーラーの交響曲第3番。昨年12月にデュトアさん指揮で素晴らしい演奏を聴かせてもらったばかりだが、パーヴォさんの捌きはどうなるのか、期待は大いに膨らんだ。

 期待通り、パーヴォさんの指揮から生み出される音楽は、いつもながら見通しよく、爽やかで、べとつくことが無い。かといって機械的というわけではなく、精巧な工芸品のよう。

 この日は、金管陣の活躍が目を見張った。トロンボーン、トランペット、ホルンは実に堂々とした演奏だった。第3楽章、ポストホルンの響きは、なんとも牧歌的で郷愁を誘う。

 第4,5楽章でのソリストは横綱の貫録。舞台映えする衣装と体躯が目を引く中、安定したアルトがホールに響き渡る。合唱もしっかり支える。(児童合唱団の中に体調を崩したメンバーがいたらしいが、2階席の最深部の私は全く気が付かなかった)

 そして第6楽章の弦のアンサンブルの美しさも圧倒的。マーラー3番は聞くたびに、この曲が好きになっていく。

 通して感動したのは、サントリーホールの響き。私には年1回あるかないかの、サントリーホール体験(それもその時は大抵P席)なのだが、やっぱりこのホールは素晴らしい。金管ソロの音の余韻にふわっと自分の体が包み込まれる幸福感と言ったら、大袈裟で無く、生きててよかったと思う。NHKホールにも私なりの愛着はあるのだが、この余韻は逆立ちしても敵わない。そんな思いに捕われる箇所が、100分の演奏中に何度もあった。(Bプロが週末なら良いのに・・・)

 そして、最後の最後、ここまで来たらフライングブラボーだけはやめてくれよ~と祈るような気持ちで迎えたエンディング。私としては、もう二息ぐらい余韻に浸っていたかったが、なんとか許容範囲内で1階席からブラボーの声が響き、我に返る。堰を切ったように溢れる拍手に会場は包まれた。

 月並みだが、最高の音楽を最上のホールで聴いたなあ~という深い満足感と余韻一杯で、夜の赤坂から帰路についた。パーヴォさんとなら、N響はもっと高みを目指せるに違いない。

 
《開演前》

N響90周年&サントリーホール30周年 パーヴォ・ヤルヴィ指揮NHK交響楽団特別公演
2016年10月6日
サントリーホール

マーラー/交響曲 第3番 ニ短調

指揮:パーヴォ・ヤルヴィ
メゾ・ソプラノ:ミシェル・デ・ヤング
合唱:東京音楽大学合唱団
児童合唱:NHK東京児童合唱団


NHK SYMPHONY ORCHESTRA 90TH ANNIVERSARY & SUNTORY HALL 30TH ANNIVERSARY
PAAVO JÄRVI CONDUCTS NHK SYMPHONY ORCHESTRA SPECIAL CONCERT

Thursday, October 6, 2016 7:00p.m. (doors open at 6:20p.m.)
Suntory Hall

Mahler / Symphony No.3 D minor

Paavo Järvi, conductor
Michelle De Young, mezzo soprano
Tokyo College of Music Chorus, chorus
NHK Tokyo Children Chorus, children chorus
コメント (2)
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練習レースに最適! ベジタブルマラソン in 彩湖

2016-10-04 00:00:02 | ロードレース参戦 (in 欧州、日本)
 今月末の水戸黄門マラソンに向けた練習として、ハーフマラソンの大会に出てきました。荒川河川敷の調節池「彩湖」のある彩湖グリーンパーク内で行われるベジタブルマラソン in 彩湖です。色んな大会がこの会場で行われているのは知っていますが、実際に走るのは初めてです。天気予報が雨だったのですが、雨にも降られず、多少湿っぽいものの気温20度という絶好のマラソン日和でした。

 都心からも近いですし、埼京線の北戸田駅から大会用のシャトルバスも運行されていてアクセスもとっても便利。参加人数はよくわかりませんが、500名ぐらいでしょうか?公園内のジョギングコースを走るので、ランナー渋滞だと嫌だなあと思いましたが、そんな心配も杞憂でストレスなく走れます。


《ゲストランナーの松本翔さん》


《スタート前》

 コースは彩湖湖畔を4周周回します(1周目は距離調整のため、長めの折り返し走路付き)。大したアップダウンではないですが、周回には3つほどのアップダウンがあり、それなりの変化もあります。4周ぐらいまでなら、飽きることなく、むしろしっかりぺーシングを計算しながら走れるので、いいですね。レースの距離表示は5キロ毎ですが、公園のジョガー用に500メートルづつマークもついているので活用できます。


《1周目の距離調整の折り返し走路》


《彩湖。最近、東京オリンピックの代替会場候補として俄かに知名度上がっているような気が・・・》

 一人で練習するのと、大会で走るのはやっぱり違いますね。自分のペースで走っているようでも、特に前半は周囲のランナーのペースに影響されるし、後半、給水所で水の紙コップを捕まえ損ねたり、練習では経験できない小さなハプニングが起こります。


《彩湖の左手に眺めながら》


《ゴール!》

 タイムはコンディションやコースの走りやすさもあって、ネットで1時間48分台。ハーフで1時間50分を切ったのは記憶が無いので、もしかしたら自己新記録かもしれないです。完走証もすぐに頂けます。

 完走賞は大会の名前通り野菜。じゃがいも、たまねぎ、シメジを持って帰りました。アットホームな雰囲気のこの大会、練習レースとしてとってもお勧めです。

 2016年10月1日 @彩湖グリーンパーク

 
 

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やっぱり凄い、マツーエフ! N響9月定期Cプロ/ 指揮:パーヴォ・ヤルヴィ/ラフマニノフ交響曲第3番ほか

2016-10-02 08:54:27 | 演奏会・オペラ・バレエ・演劇(2012.8~)


 午前中、埼玉県戸田市で行われたベジタブルマラソン in 彩湖というハーフマラソンのレースに出走後、NHKホールへ。この日は、指揮のパーヴォさんはもちろんのこと、ピアノ独奏のデニス・マツーエフさんが注目です。

 そのマツーエフさん、ロンドンでゲルギエフ/LSOとの共演で、シチェドリンのピアノ協奏曲第5番を一度聴いたことがあります。当時の投稿を引用すると、

「続いて2曲目は、シチェドリンのピアノ協奏曲第5番。これもカルメン同様、凄い大熱演だった。正直音楽は良くわからなかった。エネルギー、それも怒りのエネルギーを爆発させたような曲。前から五列目に陣取ったので楽譜が見えるのだが、五線譜におたまじゃくしが引き詰められている真っ黒な楽譜を、独奏者のデニス・マツーエフ(Denis Matsuev)が、凄い勢いで、自分の動態視力では見えないようなスピードで、激しく鍵盤を叩く。ピアノは打楽器なのだ。ピアノが打鍵の強さで上下に揺れ、つっかえ棒が外れやしないかと余計な心配をしてしまうぐらい。曲は全く自分の理解の範疇を超えているものの、その激しさに体が反応し、心臓の鼓動が高まり、脈が早まり、血圧が上がるのがわかる。ドキドキするのだ。猛烈な勢いが最後まで衰えず、逆に加速してフィニッシュ。ブラボーの大きな拍手に包まれる。」(2010年9月25日記事より)


 昨日のマツーエフさん、6年前(もう、あれから6年か~)の記憶そのままでした。相変わらず、激しかったです。あのNHKホールに、あれだけのピアノの音が響くのを聴いたのは初めて。怒涛の30分でした。聴いていて感じたのは、彼のピアノは乱暴という意味の激しさではなくて、曲への思い、表現したいことが、聴いている人の胸に刺さってくる激しさなんですね。とってもLoveを感じる。フィニッシュして、即、パーヴォさんとハグ。気持ちいい~。

 おまけであるはずなのに、主役を食ってしまいかねないほどだったのは、アンケート2曲目。マツ―エフさんの編曲による「A列車で行こう」。聴いたことないはずなのに、知っているような曲だなあ~と思いながら聴いていたのですが、マツ―エフさんのピアノが圧倒的。縦横無尽、三面六臂、自由自在・・・。もう、今日はこれで帰ってもいいや。会場からも大拍手でした。

 前半の興奮が醒めないまま、後半のラフマニノフの交響曲第3番。初めて聴く曲でしたが、聴きやすくリラックスして楽しめました。パーヴォさんは、アクセントを適度につけながら、全体のバランスを崩さない。全くの私見ですが、このパーヴォさんのバランスの良さが、N響とマッチするんですね。N響はもともとバランスの良いオケと思ってますが、パーヴォさんになってから、単にまとまっているという意味でのバランスから、一つ上がって、より表現豊かなレベルでのバランスの良さを感じます。

 レパートリー広くいろいろな音楽を聞かせてくれるパーヴォさんとN響。これからも楽しみです。



第1843回 定期公演 Cプログラム
2016年10月1日(土)

NHKホール
プロコフィエフ/ピアノ協奏曲 第2番 ト短調 作品16
ラフマニノフ/交響曲 第3番 イ短調 作品44

指揮:パーヴォ・ヤルヴィ
ピアノ:デニス・マツーエフ

No.1843 Subscription (Program C)
Saturday, October 1, 2016

NHK Hall
Prokofiev / Piano Concerto No.2 g minor op.16
Rakhmaninov / Symphony No.3 a minor op.44

Paavo Järvi, conductor
Denis Matsuev, piano
コメント (2)
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