Amazonプライムで視聴。タイトルや主演の阿部サダヲのキャラから、どたばた時代劇コメディと思い込んでいたのだが、コメディ要素はあるものの、史実に基づいた「贈与の連鎖」が描かれる美談で、胸熱くなるドラマであった。
江戸時代の藩からの伝馬役の負担に苦しむ仙台藩内吉岡宿の商人・農民(庄屋)たちが、資金を募り・集め、それを藩に貸し出し、その利子で税の一部を免じてもらう計を立て、実現に向け奔走する。官僚主義の壁、周囲の傍観やねたみ、資金調達などなど様々な困難が襲うが、村人たちの知恵と連帯で乗りこえる。私財を投げうって村のために尽くすのは、「利他」/「贈与」の精神そのもので、映画の中でさまざまな「利他」「贈与」の要素が描かれている。
例えば、『世界は贈与でできている』で記された「アンサングヒーロー」。「評価されることも褒められることもなく、人知れず社会の最悪を取り除く人。アンサングヒーローは、想像力を持つ人にしか見えない。アンサングヒーローの仕事にはインセンティブ(報酬)とサンクションが機能しない。アンサングヒーローは自分が差し出す贈与が気づかれなくても構わないと思うことができる。」村人たちからは守銭奴と思われつつも、村のために資金を蓄積することを始めた先代・浅野屋甚内(山崎努)はまさにアンサングヒーローそのものだった。そして、その思いは二人の子、養子に出された長男・穀田屋十三郎(阿部サダヲ)と本家を継いだ次男・浅野屋甚内(妻夫木聡)に引き継がれる。
「利他」「贈与」のケーススタディに最適の作品であるし、そんな難しいことを考えずとも、純粋に人間の強さを感じる良い映画だ。勇気を貰い、人が生きる価値について考えさせられる一本だ。
PS 役者陣も実力者揃い見応えあります。プラスしてサプライズも。ラストシーンで仙台藩主役として羽生結弦選手が登場。
殿、利息でござる!
監督 中村義洋
脚本 中村義洋 鈴木謙一
原作 磯田道史「穀田屋十三郎」(『無私の日本人』所収)
製作 池田史嗣
ナレーター 濱田岳
出演者
阿部サダヲ
瑛太
妻夫木聡
竹内結子
千葉雄大
羽生結弦
松田龍平
草笛光子
山﨑努
音楽 安川午朗