その後の『ロンドン テムズ川便り』

ことの起こりはロンドン滞在記。帰国後の今は音楽、美術、本、旅行などについての個人的覚書。Since 2008

バッハ・コレギウム・ジャパン (BCJ)/ ヨハネ受難曲

2013-03-31 17:52:53 | 演奏会・オペラ・バレエ・演劇(2012.8~)


 聖金曜日に受難曲を聴くという初めての体験でした。2年前にバーミンガム市響、ラトル指揮のマタイ受難曲が衝撃的な体験(こちら→)だったので、この日の鈴木雅明氏の指揮、バッハ・コレギウム・ジャパンによるヨハネ受難曲も大いに期待していました。そして、期待通りの心洗われる演奏会でした。

 特に印象的だったのは、合唱の美しさです。16名の少人数の合唱なのですが、ホールに響く合唱のヴォリュームは大きすぎず、小さすぎずで、ホールの隅々まで響き渡ります。独唱陣もテノールのゲルト・テュルク(福音史家)の安定した朗読とジョアン・ランの透明感のある美しいソプラノに心奪われました。20名ほどのメンバーによる古楽器による演奏も集中力一杯で、鈴木氏の指揮に応えていました。

 クリスチャンではない私には、受難曲は宗教体験というよりも、壮大な歴史劇を観ている感覚です。音楽と合唱に沿って、次々と受難のシーンが瞼の裏に浮かんで来ます。クリスチャンであるなしにかかわらず、このドラマには心奪われるでしょう。終演後の大きな暖かい拍手からも、皆が同じような気持ちに捕らわれていることが分かりました。私も、すばらしい時間を過ごすことができた感謝とわが身の幸を祝福し、大きな拍手を送りました。


 蛇足ではありますが、一言気になったことに苦言を。この日、受難曲の歌詞が入ったプログラムが1500円で販売されていましたが、これは少々やり過ぎではないでしょうか。受難曲は福音史家の朗読や合唱の歌詞が分かってこそだと思います。せっかくの素晴らしい演奏や合唱を、内容を分からずして聴くのは勿体なさ過ぎます。バーミンガム市響の時は有料のプログラムとは別に、歌詞プリントを無料で配布していました。本当は字幕が良いと思うのですが、それが無理ならせめて、歌詞プリントは配布しても良いんではないでしょうか。私はインターネットでコピーした歌詞でしのぎましたが、この点は非常に残念に思った次第です。




受難節コンサート2013|第101回定期演奏会

2013.3.29.[金] —聖金曜日— 19:00開演(18:30開場)
東京オペラシティ コンサートホール タケミツ メモリアル

鈴木雅明(指揮)、バッハコレギウムジャパン(合唱・管弦楽)、
ジョアン・ラン(ソプラノ)、青木洋也(アルト)、
ゲルト・テュルク(テノール/福音史家)、ドミニク・ヴェルナー(バス/イエス)

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酒井譲 『「日本で最も人材を育成する会社」のテキスト』 (光文社新書)

2013-03-29 00:58:05 | 


 分かり易い文章で書かれた「人材育成」の入門書。 タイトルにある「日本で最も人材を育成する会社」というのは筆者が勤めるフリービット社の目標とのこと。

 人材育成について、概念モデルなどの理論と筆者が勤めるフリービット社の実例などの実践が、程よくブレンドされています。一方で、個々のトピックスについての掘り下げは深くないので、実際にこの仕事に就いている人、就いたことのある人には、あまり新しい知見は得られないでしょう。

 私自身、「育成ターゲットの設定」や「教育効果の測定」など、課題の切り口は興味を引かれた一方で、内容は簡単なものだったので、むしろ欲求不満がたまりました。例えば、最終章の「育成プログラムの具体例」。確かに、読書手当、社内ミニブログなど今までの育成本には無い施策が紹介されていますが、「仕掛け」のレヴェルに留まっていて、これらが、会社を強くする本質的な人材育成策とは思えません。もちろん、金科玉条の有効な方法論などあるわけないので、こうした「仕掛け」の組み合わせ、積み重ねが大切なのでしょうけど、私の琴線に触れる分析や指摘は残念ながらあまりありませんでした。

 それだけ、企業の人材育成というのは難しい分野であるということなのかもしれません。悪くはないけど、強くは薦められないという、感じです。


(個人的備忘録)
・バックワード・チェイニング
行動をゴール(営業なら受注後の入金)の経験から初めて、遡って入口(営業ならアポ取り)を経験させる。




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春の平っべたい関東平野を走る ~熊谷さくらマラソン~

2013-03-25 06:25:05 | 日記 (2012.8~)
 半年ぶりにハーフマラソン大会に出場しました。埼玉県北部の熊谷で開催された熊谷さくらマラソンです。


《のぼりが雰囲気を盛り上げます》

 生憎の曇り空でしたが、気温は10℃ちょっとで走るには絶好のコンディションです。失礼ながら、埼玉のローカルレースだと思っていたら、想像以上に大規模な大会で、熊谷の総合運動場を利用しての開会式やイベントも賑わっていました。総勢4000名近くが参加しています。


《スタート地点に集まるランナー達》

 さくらマラソンというレース名のとおり途中荒川の土手沿いの桜並木の中を走り抜けます。今年は開花が早いこともあって、とても美しいです。青空であったらもっと花の色も映えるでしょうが、残念です。


《天気がよければなあ~》


《菜の花も綺麗です》

 この桜並木以外は、熊谷の住宅街や農地を走る平坦なコースで、特筆すべき景観があるわけではありません。ただ、平たい関東平野を実感できるのと、ランナーにとってアップダウンがないのは本当に助かります。こんなに平べったいところを走ったのは、アムステルダム以来だなあ。



 通りでの市民の方(多くはおじいちゃん、おばあちゃんと子供たち)の応援も有り難かったし、町ごとにその祭りの連(?)が囃子で雰囲気を盛り上げてくれました。やっぱり10k以上の距離は、こうした応援があってこそで、ひとりでは走り抜けられません。



 そんなコースや応援が背中を押してくれたのか、自分としてはかなりのオーバーペース。キロ5分30秒を目指して走ったのですが、結局それを上回るペースで、1時間53分47秒でゴールすることができました。来月の出走予定のフルマラソンの練習としてはちょっと早すぎで褒められたものではないですが、ハーフを1時間55分切って走れたことは素直に喜びたいです。



 2013年3月24日
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伊賀 泰代 『採用基準』 ダイヤモンド社

2013-03-22 06:42:49 | 


 タイトルからは、就職活動をする学生向けのノウハウ本かと思わせるところもありますが、内容は優れたリーダーシップ論です。昨年11月に発刊されて以来最近までビジネス書の売り上げで上位をキープしていました。12年間、マッキンゼーの採用マネジャーを務めた筆者の知見が分かりやすく書かれています。私自身参考になる点が多くありましたし、自分のリーダーシップの至らなさに気付かされました。

 以下、幾つか私の備忘用の抜粋・まとめですが、抜粋では本書独特のリズムと考え方が分からないので、是非、手に取って読まれることをお勧めします。一番ドキッときたのは、コラム「保守的な大企業で劣化する人」。。。俺のこと???


(以下、抜粋)
・成果を問う環境でなければリーダーシップは育ちにくい。日本は成果よりも組織の輪が重視されることが多い。「リーダーとは和を尊ぶ人ではなく、成果を出してくれる人」(第3章)

・リーダーでなすべきことは、①目標を掲げる、②先頭を走る、③決める、④伝える、4つの極めてシンプルであるが、重要なこと。(第4章)

・リーダーシップを学ぶための4つの基本動作。①バリューを出す、②ポジションを取る、③自分の仕事のリーダーは自分、④ホワイトボードの前に立つ。
・「できるようになったら、リーダーシップを発揮する」のではなく、「リーダーシップは今すぐ発揮して、出来ない部分については、次回からどう改善すればいいかを学ぶ」。(第5章)

・日本に不足しているのは「リーダーシップ・キャパシティ(日本全体でのリーダーシップの総量)。カリスマリーダーの不在ではなく、リーダーシップを発揮できる人数の少なさ。現状を変えられるのは、神でもスーパースターでもなく、組織のあらゆる場所で、目の前の変革を地道に主導するリーダーシップの総量が、一定以上まで増えること。日本に足りないのは、あらゆる分野で働く、名もない数多くのリーダー。(第6章)

・リーダーシップは、①全ての人が日常的に使えるスキルであり、②訓練を積めば、誰でも学べるスキル。リーダーとは何をすべき人なのか、そのためにどう振舞うべきかを理解し、小さな場面でもそれらを体験して成功体験を積み重ねることにより、ごく普通の人がリーダーとして活躍できるようになる。(第7章)

・リーダーシップを身につけることで、当の個人のキャリアや生き方が変わってくる。①自分が気になっている問題が解決でき、②継続的にリーダーシップを積むことで自分ができることの範囲が広がって行き、自身の成長の実感できる、③自分の仕事やライフスタイル、生き方のポリシーを、既存の組織や団体の器に合わせるのではなく、自分自身が実現したいと考える世界を追求でき、④キャリア意識にも影響を与える。(第8章)

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町田 徹 『JAL再建の真実 』 (講談社現代新書)

2013-03-19 06:30:33 | 


 JAL破綻(2010年1月)したものの2012年3月期の決算では2000億もの営業利益を出し、再上場を果たしたJAL。本書は、破綻の3年前から同社を取材してきた筆者が、破綻前から破綻を経て、復活を遂げるまでのJALの内実をレポートしている。

 私自身、丁度この破綻騒ぎの際は日本に居なかったので、新聞やWebで得ていた断片的な情報を整理したいと思い、本書を手にとって見た。破たん前のJALの「粉飾」決算、経営幹部や労働組合の動き、政治に振り回される再建計画などが、継続的な取材を重ねてきた筆者ならではの臨場感で描かれている。一気に読める。

 一方で、稲盛新会長のもとで急速な回復を遂げた部分については、分析は十分とは言えない。筆者の関心は、ジャーナリストらしく経営論よりも社内外の政治的な駆け引きにあるのだろう。私自身の関心はむしろ企業再建のプロセスにある。JALのケースは、今後まだ予断を許さないものの、ケーススタディとして格好の材料を提供していると思うので、今後、専門家によるレポートを期待したい。

(先日、日経新聞で稲盛氏自身による回想の短期連載があり、これはこれで面白かった。が、大所高所からの稲盛さんの振り返りも良いのだが、そうした稲盛さんの経営方針により具体的に社内で何がどう変わったのか?について知りたいものである。)

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東京シティ・フィル/ 宮本 文昭(指揮)/ ショスタコーヴィチ 交響曲 第5番ほか

2013-03-16 21:05:04 | 演奏会・オペラ・バレエ・演劇(2012.8~)


 東京オペラシティコンサートホールに東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団(TCFO)の定期演奏会に出かけました。昨夏の帰国以来、なるべく多くの在京オーケストラを聴いてみたいと思っていますが、曜日やチケットのアクセスのしやすさなどでどうしても、NHKホールでのN響の演奏会が中心になってしまっています。今回のTCFOは1975年設立と言うことなので、40年近い歴史のあるオーケストラですが、音楽監督であり今回の指揮者である宮本文昭氏も含めて、私は全くの初めてでしたので、非常に楽しみでした。

 始まりは、シベリウスのヴァイオリン協奏曲。ソロの千々岩 英一さんはフランスのパリ管弦楽団の副コンサートマスターとのことですが、この方も私は初めてです。とても力強く、安定感のあるヴァイオリン演奏で始まりました。が、、、正直言うと、この1曲目は私の完全な集中力不足。1週間の仕事の疲れか、昨夜の午前様帰りとなった飲み会のせいか、はたまた朝の10キロジョギングのせいかはわかりませんが、爆睡までは至らずとも、上の空の状態で聴いている感じで、全く持って私が駄目でした。

 大きな拍手に私自身が覚醒され、アンコールの細川俊夫の無伴奏ヴァイオリンのためのエレジーはしっかり聴きました。これは実に素晴らしかったです。現代曲風の音楽で、題名通り、曲全体から物悲しさが漂います。千々岩さんのヴァイオリンも緊張感あふれるものでした。惜しむらくは終了間際に大きなくしゃみをした一人の聴衆。残りのあらゆる聴衆の憎悪の的になっていたに違いありません。

 休憩を挟んで後半はショスタコーヴィチ 交響曲第5番。これが凄まじい演奏でした。宮本氏の指揮姿はお世辞にもスマートとか格好いいとは言えませんが、体全体で音楽を表現し、オーケストラから150%、200%の音を引き出すような精力的な指揮ぶりです。ペース配分は緩急自在。曲の解釈についてコメントするほど私にはこの曲を深く知りませんが、高揚感溢れる弦楽器のアンサンブル、金管・パーカッションの爆発、美しい木管のソロ、純粋に音楽を楽しみました。バランスどうのこうのよりも、「まずはこの音を聴け!」「体で感じろ!」と命令されているのではと思うほどの大音響。コンサートホール全体が音の振動で揺れているのが分かるほどです。日本ではなかなか味わえなかった「オーケストラは格闘技である」という感覚が蘇ってきました。普段、お行儀のよいN響を音が吸い込まれていきそうな大きなNHKホールで聴いている私には、非常に新鮮かつ興奮しまくりでした。終演になったときはもうぐったり。

 この熱い演奏ぶりは、宮本氏の指揮によるものなのか、TCPOの特色なのかとても興味があるところです。きっと前者なのでしょうけど、これからしばらくTCPOを追いかけようかな?と思わせるほどのインパクトがありました。やっぱり東京のオケは数だけ多いわけではないですね。まだまだ新しい発見がありそうで、楽しみです。



2013年3月16日 14:00 東京オペラシティコンサートホール

シベリウス ヴァイオリン協奏曲 ニ短調 作品47
ショスタコーヴィチ 交響曲 第5番 ニ短調 作品47

指揮: 宮本 文昭
ヴァイオリン: 千々岩 英一

東京シティ・フィルハーモニー・オーケストラ


J.Sibelius(1865-1957)
Concerto for Violin and Orchestra in D minor, Op.47
D.Shostakovich(1906-1975)
Symphony No.5 in D minor, Op.47



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片山 杜秀 『未完のファシズム: 「持たざる国」日本の運命』 (新潮選書)

2013-03-11 22:09:18 | 


 「天皇陛下万歳」の精神主義的な玉砕思考がどのように育って行ったのかを、第1次世界大戦時の小川未明や徳富蘇峰の思想に始まり、アジア・太平洋戦争時に至る石原莞爾や中柴末純といった帝国陸軍軍人の思想を辿りながら、探る。2012年5月発刊。平易な口語体で書かれているが、とても読み応えのある一冊だった。

「昭和の軍人たちは何を考え、一九四五年の滅亡へと至ったのか。 天皇陛下万歳! 大正から昭和の敗戦へ――時代が下れば下るほど、近代化が進展すればするほど、日本人はなぜ神がかっていったのか? 皇道派 統制派、世界最終戦論、総力戦体制、そして一億玉砕……。第一次世界大戦に衝撃を受けた軍人たちの戦争哲学を読み解き、近代日本のアイロニカルな運命を一気に描き出す。」(本書の内容紹介より)

 第1次世界大戦を機に、圧倒的な物量戦が戦争の勝敗を決する時代を迎えた中で、当時の軍人たちは、持たざる国である日本が取るべき道を考えた。「強い相手とは戦争はしない」という前提(密教)を置きつつ、殲滅戦思想という顕教を押し出し、「統帥綱領」「戦闘綱要」につなげた荒木貞夫や小畑敏四郎。「持たざる国」を「持てる国」にしようと考え満州に注目した石原莞爾。そして、『明治憲法体制が、軍なら軍、内閣なら内閣、議会なら議会の、強力な意思や明確なヴィジョンの展開・実現を阻む構造を有していた』(p225)と筆者は言う。こうした思想や体制が、未完のファシズムとして、持たざる国である日本を滅亡に導いていったのである。

 アジア・太平洋戦争に至る日本近現代史については、政治史、経済史の切り口で何冊か読んできたが、思想の観点からこの時代を読み解く書は、私には初めてで新鮮だった。思想だけでは世の中動かないだろうし、私自身はその思想(メッセージ)を普及、拡大、浸透させたシステムやメディア、メッセージを受容した国民の方が関心があるが、それにしても、思想が持つ影響力や思想の根っこを探るのは純粋に興味が湧いた。現代の日本の状況に応用できる箇所もある。

 ただ、1度通して読んだだけでは、本書の意味合いが十分に理解できたとは言い難いと思っている。個々の思想については分かった気にはなったものの、その思想間の関連性や思想の受発信の仕方などは詳しく記述されているわけではないので、どうも自分自身の中で落ち着きが悪い。また、思想のコンテンツそのものでも未だ理解できないところがある。『実は玉砕そのものが究極の戦法である。玉砕は「持たざる国」日本の軍隊の極め付きの戦法である』(p282)という中柴末純の論理構成などは、まだ良く分からない。

 似たようなテーマを扱った本を何冊か読んでみて、更に理解を深めたい。賢くなった気になる本である。
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池上彰 『伝える力』

2013-03-07 23:38:51 | 


 人間ドックを受診した際に、待合室に置いてあったので手に取ってみた。検査を待っている間のすきま時間(のべ1時間弱)で手軽に完読できた。

 筆者の池上氏と言えば、出世番組となったNHK「週刊こどもニュース」である。もう10年近く前だと思うが、毎週、子供と一緒に視聴していて、当時から分かり易い説明振りに感心していた。その後、氏はNHKを退職しフリーとなったようだが、最近でも総選挙の速報番組にも起用されるなど、露出度は益々高くなっている気がする。今の世の中、知っているようできちっと知らないことを、腹に落ちるように説明できる人が求められているのであろう。

 本書はその池上氏の分かり易い説明の極意を伝える本かと思いきや、内容は意外とベーシックなコミュニケーション入門書だった。私が実践できているかどうかを棚に上げられるなら、正直、さほど目新しいノウハウはなかった。全く知らない人に説明するつもりで勉強する、聞き上手になる、PCで書いたものは紙に印刷して読み返す、カタカナ言葉の利用は避ける、つかみが大切、謙虚でいる・・・などなどが、筆者の経験をベースに語られる。TVで見る池上氏からも感じることだが、人柄が良い方なのか、文章も非常に嫌みのないものなので、同じ様なことは他のコミュニケーション本に書いてあると思うが、この本は素直に読める。

 強いて薦めるほどではないが、時間があるときや隙間時間に気楽に読むと、改めて新しい発見があるかも・・・

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映画 『スタンド・バイ・ミー』

2013-03-03 08:25:31 | 映画


 家族が借りてきたDVD「スタンド・バイ・ミー」を観ました。私には、学生時代の思い出の一こまに残る大事な映画です。好きな映画でしたので、映画館で封切時に見て以来何回かビデオでも観た記憶があるのですが、今回は間違いなく20年振りぐらいです。

 とても有名な映画ですので、見た方も多いと思いますが、アメリカオレゴン州の片田舎に住む4人の少年たちの死体探しの冒険プロセスを通じて、遭遇する事件ともに、友情、家族への思い、自我の希求等が描かれます。

 改めて観て見ると、やはり良く出来ている映画だと感心します。主役の2人の少年、ウィルを演じるウィル・ウィートン とクリスを演じるリヴァー・フェニックスの演技が特に素晴らしい。少年期から思春期に移るどんな少年も持つであろう不安定な心情を表情豊かに伝えています。また、ストーリー、脚本が良く出来ていて、エピソードの一つ一つが魅力的で、ロードムービーに彩りを加えており、会話は少年らしい無邪気な会話と思春期の大人びたの会話が、良いバランスで組み合わさっています。

 主題歌スタンド・バイ・ミーや流れる50年代のアメリカポップミュージックもシーンにマッチしたもので、映画の時代感を伝えてくれます。良質なアメリカ映画であることを再確認しました。



キャスト - スタンド・バイ・ミー
出演
 ウィル・ウィートン (Gordie_Lachance)
リヴァー・フェニックス (Chris_Chambers)
コリー・フェルドマン (Teddy_Dechamp)
リチャード・ドレイファス (The Writer)
キーファー・サザーランド (Ace_Merrill)
ジョン・キューザック (Denny_Lachance)

スタッフ - スタンド・バイ・ミー
監督 ロブ・ライナー
脚色 レイノルド・ギデオン
ブルース・A・エヴァンス
原作 スティーヴン・キング
製作 アンドリュー・シェインマン
ブルース・A・エヴァンス
レイノルド・ギデオン
撮影 トーマス・デル・ルース
美術 デニス・ワシントン
音楽 ジャック・ニッチェ
編集 Roert Leightom
字幕 菊地浩司
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バッハ・コレギウム・ジャパン/ J.S.バッハ:教会カンタータ・シリーズ Vol.64

2013-03-01 00:01:04 | 演奏会・オペラ・バレエ・演劇(2012.8~)
 日曜日の午前中は、東京マラソンを走る職場の同僚の応援に駆けつけました。雲一つない青空ですが、冷たい強風がランナーには堪えるだろうなあと心配をしつつも、抽選に外れた市民ランナーの私としては、この大歓声の中を走れるランナーたちが何とも羨ましく、眩しい。目がくらむような大勢のランナーの中、目を凝らして同僚を探し、何とか見つけ声をかけることができました。

 そして、午後は東京オペラシティコンサートホールにバッハ・コレギウム・ジャパン(BCJ)のコンサートへ。私にとっては、初じめてのBCJ体験なのですが、偶然にもこのコンサートは、BCJが足掛け18年前かけ、バッハの全カンタータを演奏してきたフィナーレを飾る記念演奏会でした。



 バッハの世界的第一人者である鈴木敏明氏のことは、恥ずかしながら4年ほど前、ロンドン滞在時に知りました。近くの公立図書館でちょくちょくCDを借りていたのですが、バッハの棚にあるCDのかなりが鈴木氏のものでした。そして、CD紹介のコメントには「バッハの第一人者」的なことが書かれており、日本人がバッハの第一人者と言うのは一体どういうことなのか、漠然とした興味に惹かれました。ロンドンにも公演で来られたようなのですが、生憎、私は足を運ぶ機会無く、今回このコンサートを知り、飛びついたわけです。

 そして、演奏会はカンタータ全曲演奏の最終回を飾るにふさわしい、緊張感と暖かい雰囲気が混ざり合った素晴らしいコンサートでした。冒頭のプレリュードとフーガ 変ホ長調は鈴木氏自身のオルガン演奏。私がホール全体を見渡せる1階席最後列に座っていたせいか、まるで木造りのオペラ・シティのコンサートホールが教会そのもので、あたかも礼拝に来たような錯覚に捕らわれほど厳粛な気持ちにさせられます。


《休憩中》

 そして、その後の3つのカンタータは、曲風は其々違いますが、どれも胸を打つ独唱陣と合唱、古楽のアンサンブルが組み合わさって、心の襞にたまった垢が洗い流れるような時間です。天にも昇るような気分とはこのような経験を言うのでしょう。ハナ・ブラシコヴァさんの清らかなソプラノ、ロビン・ブレイズさんの透明感あふれるカウンターテナー、そして素晴らしい合唱陣のハーモニーが印象的でした。昨夏の帰国以来2回ほど合唱の入った曲のコンサートに行きましたが、間違いなく今回の合唱が曲の持つ表情を感じる歌声でした。演奏も集中力に満ちたもので、時に激しく、時に優しく、体に浸みわたります。フルート独奏の穏やかな調べも全身を癒してくれます。

 プログラム最後の曲が終わり、割れんばかりの暖かい拍手が続くと、鈴木氏のあいさつがあり、アンコールで最近亡くなられたバッハ研究者の小林義武氏を偲び、ミサ曲ロ短調の終曲が捧げられました。

 初めてのBCJの演奏会で、こんな良いとこどりをしても良いのかなあ〜と自分の幸運にただただ感謝して、ホールを後にしました。


 蛇足ですが、帰り道に思ったこと。 

 たかだか4年弱の生活体験ですが、イギリス滞在時に教会でバッハを聴いた時を思い出しました。私の感覚だと、バッハの音楽は、教会における礼拝、クリスマス、イースターなどのクリスチャンの宗教生活に密接に結び付いた音楽です。最近は教会に行く人もめっきり減ったという話はイギリスでも良く聞きましたが、それでも、ロンドン、ケンブリッジ、オックスフォードなどのイギリスの教会や、欧州大陸を旅行した際に訪れた教会のミサで聴いたバッハのカンタータは、音楽であると同時にクリスチャンの宗教体験そのものに感じられました。そして、礼拝に来ている地元の老若男女をみて、「この人たちはこの音楽をこうやって子供の時から歌い、聞いているんだなあ、私のような東洋人には絶対感じ取れない何かがDNAの中に刷り込まれているのだろう」と思ったものです。

 そんな中で鈴木氏がこれまでバッハに集中して音楽活動をされ、しかも世界的に評価されていること。そして、それを聴きに来る日本人聴衆者がこれだけいるというのは、一体どう理解すればいいのか。きっと、鈴木氏には凄まじい努力と苦労があったのだと思うし、またそれを受容している日本人にも、西洋のクリスチャンとは違った鋭い感性のDNAが埋め込まれているのだろう。 こんな(欧州から見れば)極東の地で、こんなハイレベルのバッハの演奏会が行われている。ワンダーとしか言いようがありません。



2013年2月24日

バッハ・コレギウム・ジャパン
第100回定期演奏会
[出演]鈴木雅明(Cond)、ハナ・ブラシコヴァ(Sop)、ロビン・ブレイズ(C-Ten)、ゲルト・テュルク(Ten)、ペーター・コーイ(Bas)、バッハ・コレギウム・ジャパン(Cho&Orch)

[曲目]J.S.バッハ:教会カンタータ・シリーズ Vol.64[教会カンタータ・シリーズ完結]
― ライプツィヒ時代1730~40年代のカンタータ 4 ―
《喜べ、贖われた者たちの群れよ》BWV30
《わが魂よ、主を頌めまつれ》BWV69
《いと高きところには栄光神にあれ》BWV191

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