昨年7月以来の新国立劇場でのオペラ観劇。10年近く観てない「セビリアの理髪師」でありワクワク感一杯で出かけたのだが、歌手・合唱・演奏・演出がしっかり噛み合った、期待を大いに上回る素晴らしい舞台だった。
とりわけ歌手陣が出色。主要男性役には4名の外国人歌手を揃えたが、さすが本場モンと思わせるに十分な歌唱と嵌った演技であった。フィガロ役のフローリアン・センペイは太くしっかりしたバリトンで、彼が1幕1場で「町のなんでも屋」を歌い始めると、劇場の雰囲気ががらっと変わって完全にセビリアの街になった。アルマヴィーヴァ伯爵のルネ・バルベラも柔らかく、綺麗で通るテノールでうっとり。海外陣は美声だけでなく、演技も板についた慣れたもので演劇としても十分に楽しめる。
さらに目を引いたのは、ヒロインロージナ役を演じた脇園さん。実力派男性陣に全く引けを取らず堂々と渡り当たっていて、個性でも全く引けをとっていない。溌溂とした演技、芯があって、美しいメゾのおかげで、舞台が生き生きと輝いて見えた。私自身はかなり釘つけだった。初めて拝見する方だったが、今後、要マークである。
指揮のアントネッロ・アッレマンディは以前フランクフルト歌劇場で「チェネレントラ」を振ったのを聴いている。ピットに入った東響との息もぴったりで、ロッシーニの軽快なオペラをそのままに、聴いていて楽しくなる音楽を引き出してくれた。
演出もいい。回転舞台を上手く使い、バルトロの邸宅内が内に外に見えるように、装置が配置され、観ていて面白い。色遣いの派手やかな舞台もこの物語にはマッチする。
イタリアオペラらしい、陽気で軽快な物語は、見ていて幸せになるし、やっぱりオペラって良いなあと思わせてくれた。
2020年2月8日(日)14:00
2019/2020シーズン
オペラ「セビリアの理髪師」/ジョアキーノ・ロッシーニ
Il Barbiere di Siviglia / Gioachino ROSSINI
全2幕〈イタリア語上演/日本語及び英語字幕付〉
オペラパレス
予定上演時間:約3時間10分(第Ⅰ幕100分 休憩30分 第Ⅱ幕60分)
スタッフ
指揮:アントネッロ・アッレマンディ
演出:ヨーゼフ・E.ケップリンガー
美術・衣裳:ハイドルン・シュメルツァー
照明:八木麻紀
キャスト
アルマヴィーヴァ伯爵:ルネ・バルベラ
ロジーナ:脇園 彩
バルトロ:パオロ・ボルドーニャ
フィガロ:フローリアン・センペイ
ドン・バジリオ:マルコ・スポッティ
ベルタ:加納悦子
フィオレッロ:吉川健一
隊長:木幡雅志
アンブロージオ:古川和彦
管弦楽:東京交響楽団
合唱:新国立劇場合唱団
Gioachino Antonio ROSSINI
Opera in 2 Acts
Sung in Italian with English and Japanese surtitles
OPERA PALACE
6 Feb. - 16 Feb., 2020 ( 5 Performances )
CREATIVE TEAM
Conductor: Antonello ALLEMANDI
Production: Josef E. KÖPPLINGER
Set and Costume Design: Heidrun SCHMELZER
Lighting Design: YAGI Maki
CAST
Il Conte d’Almaviva: René BARBERA
Rosina: WAKIZONO Aya
Bartolo: Paolo BORDOGNA
Figaro: Florian SEMPEY
Don Basilio: Marco SPOTTI
Berta: KANOH Etsuko
Fiorello: YOSHIKAWA Kenichi
Orchestra: Tokyo Symphony Orchestra
Chorus: New National Theatre Tokyo Chorus