その後の『ロンドン テムズ川便り』

ことの起こりはロンドン滞在記。帰国後の今は音楽、美術、本、旅行などについての個人的覚書。Since 2008

ジム・ロジャース『危機の時代』(日経BP、2020)

2021-02-27 07:30:14 | 

「伝説の投資家」と言われている(らしい)ジム・ロジャース氏がこれからの世界経済やマネーについて語った一冊。昨今の米国や日本の株価は、私にはバブルとしか思えない。そんな数値をぼんやり眺めつつ、「暴落が近いのか」は気になるので、未来を予測するためのヒントになればと思い手に取った。

外国人著者の著作は、原典のColophon(日本語書籍で言うところの奥付。著者、出版社、出版年等が記されたもの。)を確認するのだが、この書籍はColophonがない。あとがきを読んだら、どうも本書はジム・ロジャース氏へのインタビューを元に、日経BPが書き下した本のようなので、原書はないようである。

原書があろうと無かろうと中身があればよいと思い読み始めた。週刊誌への寄稿記事集のような、軽く読み易いエッセイの集合体である。なので、読みながら思考が深まるタイプの読書にはならなかったが、なるほどそういう見方もあるのかと、新たな視点や気づきを得るところは幾つかあった。

まず筆者は、現状の世界の国々による金融緩和政策で巨大な借金を抱えた世界経済はリーマン以上の経済危機を引き起こすと予言している(本当に知りたいのは「それがいつか」と言うことなのだが、もちろんこんなことは誰にも分からない)。そして深刻な経済対立は戦争を引き起こす可能性も秘めているという。

筆者が見る明るい未来は巨大な資源と国内市場、そして軍事力を有するロシア中国にある。中でも、中国の成長は間違いないとする。今更、ジム・ロジャース氏に言われるまでもないとも感じるが、個人的に興味を引いたのは、教育もアメリカやイギリスに留学するのではなく、世界で一番成長している国、中国で学ぶべきだと言う。アメリカの教育機関の価値劣化について厳しい見方をしているのは意外であった。

更に、筆者はインドと日本には悲観的で厳しい。ともに、規制が厳しく内向きの国だからだ。「日本人は海外への移住を考えろ」とまでアドバイスされているのでとっても残念だ。まあ、「都立高 4割余が地毛証明求める」(2021.2.25 NHKニュース)のような国にロクな未来は訪れないとは思うが、これが自分の国だとは情けない。

肩ひじ張らず、通勤電車や出張途中の新幹線で読むのにお勧め。

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圧倒された4時間! 二期会オペラ/セバスティアン・ヴァイグレ指揮/ワーグナー〈タンホイザー〉 @東京文化会館

2021-02-24 07:33:25 | 演奏会・オペラ・バレエ・演劇(2012.8~)

とっても失礼ながら、オール日本人キャストでここまでのワーグナーオペラを体験できるとは思ってなかった。素晴らしい、感動のタンホイザーだった。

コロナ禍が生んだ不幸中の幸いハプニングと言えるだろう。バイロイト音楽祭でワーグナーを振っていたヴァイグレが、代役指揮として指揮台に上ってくれたのである。ヴァイグレの指揮の元、歌唱・合唱・演奏、それぞれがハイレベルかつ相乗効果を生んだパフォーマンスだった。

日本人歌手陣の健闘は期待を大きく上回るサプライズ。私にはヴォルフラムの清水勇磨さん、エリーザベトの竹多倫子さん、ヴェーヌスの池田香織さんが出色だった。とりわけ3幕は圧巻で、ヴォルフラムの「夕星の歌」、エリザベートの「エリザベートの祈り」は涙もの。そして、池田さんは、私なら「池田さんのヴェ―ヌスブルグに永住したい!」と思わせる魅惑的な役作りと歌唱だった。タンホイザー芹澤佳通さんのテノールは綺麗なのだが、タンホイザーとしては軽めでやや単調に聴こえるところはあった。が、3幕の「ローマ語り」は熱演で胸動かされる。

更に盛り上げたのは合唱陣。美しいハーモニーは、状況の厳粛さや物語の緊張感を高めた。

そして、舞台の主役を奪いかねない活躍だったのがピットに入った読響。ヴァイグレの棒の元、時に繊細、時にスケール感一杯のアンサンブル。こんなタンホイザーはなかなか聴けたものではないと身の幸運を祝った。

演出もセンス良いスマートなもの。舞台上から釣り下がる逆円錐形のオブジェなど意味を解せないところもあったが、物語の流れを妨げることなく、場を効果的に盛り上げた。とりわけ、ヴェ―ヌスブルグの踊り手たちのダンスはとっても艶めかしくてエロチック。思わず、5階席から体を乗り出しそうになった。

終演後は久しく耳にしたことのないような割れんばかりの大拍手。特に、ヴァイグレに対する拍手は凄まじい。ブラボーを叫べないのは何ともフラストレーションが溜まるが、熱烈拍手のカーテンコールは最高だ。一日も早く、ボラボーを叫べる日が戻って来て欲しい思いつつ、手が痛くなるまで叩き続けた。

 

タンホイザー〈新制作〉

オペラ全3幕
日本語字幕付き原語(ドイツ語)上演
台本・作曲:リヒャルト・ワーグナー
(パリ版準拠(一部ドレスデン版を使用)にて上演)

会場: 東京文化会館 大ホール
公演日:2021年2月21日(日) 14:00

スタッフ
指揮:セバスティアン・ヴァイグレ
原演出:キース・ウォーナー
演出補:ドロテア・キルシュバウム
   
装置:ボリス・クドルチカ
衣裳:カスパー・グラーナー
照明:ジョン・ビショップ
映像:ミコワイ・モレンダ
   
合唱指揮:三澤洋史
演出助手:島田彌六
舞台監督:幸泉浩司
公演監督:佐々木典子


キャスト

ヘルマン:長谷川 顯
タンホイザー:芹澤佳通
ヴォルフラム:清水勇磨
ヴァルター:高野二郎
ビーテロルフ:近藤 圭
ハインリヒ:高柳 圭
ラインマル:金子慧一
エリーザベト:竹多倫子
ヴェーヌス:池田香織
牧童:牧野元美
4人の小姓:横森由衣、金治久美子、実川裕紀、長田惟子
 
合唱:二期会合唱団
管弦楽:読売日本交響楽団


TANNHÄUSER [New Production]
Opera in three acts
Sung in the original (German) language with Japanese supertitles
Libretto and Music by RICHARD WAGNER
An original production of Opéra national du Rhin

SUN. 21. 14:00 February 2021
at Tokyo Bunka Kaikan (Japan)

STAFF
Conductor: Sebastian WEIGLE
Original Stage Director: Keith WARNER
Associate Stage Director : Dorothea KIRSCHBAUM
     
Set Designer: Boris KUDLIČKA
Costume Designer: Kaspar GLARNER
Lighting Designer: John BISHOP
Video Designer:  Mikolaj MOLENDA
     
Chorus Master: Hirofumi MISAWA
Assistant Stage Director: Miroku SHIMADA
     
Stage Manager: Hiroshi KOIZUMI
Production Director: Noriko SASAKI

CAST
Hermann: Akira HASEGAWA
Tannhäuser: Yoshimichi SERIZAWA
Wolfram von Eschenbach: Yuma SHIMIZU
Walther von der Vogelweide: Jiro TAKANO
Biterolf: Kei KONDO
Heinrich der Schreiber: Kei TAKAYANAGI
Reinmar von Zweter: Keiichi KANEKO
Elisabeth: Michiko TAKEDA
Venus: Kaori IKEDA, 
Ein junger Hirt: Motomi MAKINO
Vier Edelknaben: Yui YOKOMORI, Kumiko KANAJI, Yuki JITSUKAWA, Yuiko OSADA

Chorus: Nikikai Chorus Group
Orchestra: Yomiuri Nippon Symphony Orchestra

 

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N響 2⽉公演、下野竜也 指揮、シューマン 交響曲 第4番ほか @サントリーホール

2021-02-20 07:30:03 | 演奏会・オペラ・バレエ・演劇(2012.8~)

N響2月公演の第3ラウンドは、サントリーホールにて下野竜也さんの指揮によるドイツプログラム。最近、ステージ周りの安席の良さに気づいた私は、今回はステージ後方のP席。手が届きそうなところにホルン隊の皆さまがいらっしゃいます。

「メッシーナの花嫁」序曲に続いては、ベートーヴェンのピアノ協奏曲第5番。ピアノは高名な日本人ピアニスト清水和音さんですが、実演で聴くのは初めてです。普段のNHKホール3階席からはピアニストの指遣いは遠くとても目にする機会はないのですが、P席からだとその軽快で優しいタッチが良く分かります。清水さんの「皇帝」は、この音楽の美しさが引き立つ王道の演奏でした。

後半はシューマンの交響曲第4番。昨年の9月も下野さん、N響で聴いています。耳に優しい親しみある音楽です。ホルン隊のすぐ後ろにいる私は、下野さんとも目が合ってんではないかと思うほどなのですが、ホルンが活躍するこの楽曲では、楽器を持たない6番目のホルン奏者のような気分で聴いていました。活力あふれる音楽で、近づきつつある春の訪れを感じるようです。下野さんは相変わらずスタンドプレイ無しの実直な指揮ぶりが好感持てます。終演後は会場から大きな拍手を浴びていました。

東京での「定期」演奏会は、3月はお休みです。4月のプログラムが未だ発表されてないのが気になるところですが、コロナ禍ではありながら実に気持ちの良く、熱い演奏会が続いたこの半年間の雰囲気そのままで、定常運転に戻れることを祈るばかりです。

 

NHK交響楽団 2⽉公演 サントリーホール
2021年2月18日(木)6:00pm

サントリーホール 

指揮:下野竜也
ピアノ:清水和音

シューマン/序曲「メッシーナの花嫁」作品100
ベートーヴェン/ピアノ協奏曲 第5番 変ホ長調 作品73「皇帝」
シューマン/交響曲 第3番 変ホ長調 作品97「ライン」

NHK Symphony Orchestra February Concerts at Tokyo Suntory Hall
Thursday, February 18, 2021 6:00p.m.

Suntory Hall

Tatsuya Shimono, conductor
Kazune Shimizu, piano

Schumann / "Die Braut von Messina," overture Op. 100
Beethoven / Piano Concerto No. 5 E-flat Major Op. 73 "Emperor"
Schumann / Symphony No. 3 E-flat Major Op. 97 "Rheinische"

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With/After コロナにおける音楽を考える:岡田暁生『音楽の危機《第九》が歌えなくなった日』中公新書、2020

2021-02-18 07:30:00 | 

コロナ禍を契機として、「音楽と近代社会のありよう」について考察する一冊。「これまで社会は、音楽について何を自明とみなしてきたか」と「音楽の中に示唆されている、いろんな社会モデルを読み解く」という2点に焦点が当てて、筆者の考えが展開される。あとがきに「思考実験」という言葉が使われているが、コロナ危機を通じて、音楽の意味合い、クラシック音楽の未来を読者にも考えさせる。普段、現実の世界でぐちゃぐちゃになっている私には、久しぶりに学生に戻った感覚で、コロナという未曽有の事件・現象を通じて社会・文化を考える香り高い読書体験であった。

前半部分は、コロナ影響を通じてこんな思考ができるのかと驚きの連続であった。

例えば、「文化(音楽などの芸術)」も「風俗(娯楽・遊興・芸能など)」ともに文化人類学的には「聖(宗教的なもの)と俗(日常的なもの)」の「聖」である宗教的儀礼にに由来する同根であること。そして、近代社会が「文化」と「風俗」を二分化したのだが、今回コロナはこれらを一括りに不要不急のものとして中止・自粛を余儀なくされた。これはすなわち、コロナ禍が近代社会の前提を揺さぶり、文化の立ち位置に再考を促していることに他ならない、と言う。

また、「芸術」も「芸能・風俗・遊興」も、コロナでは避けなくてはいけない三密を前提にした緊密な共同体を作り出す仕掛けであり、それが「文化」の究極的な本質であること。すなわち「文化」とは、人がある密閉された空間に集まって発行した猥雑な空気が、蒸留されエッセンスになるプロセスであり、コロナは三密禁止により、文化にとって不可欠な発酵作用に対してダメ―ジを与えたことが指摘される。

更に、ベートーヴェンの第9交響曲は近代の物語としての「右肩上がりの時間」を体現したアイコンであり、第9が歌えなくなったコロナ禍は近代の世界観を揺さぶり「近代とは何だったのか」を再吟味を迫っている。コロナが終息しても、第9が象徴する「勝利宣言」の音楽をコロナ前と同じ気持ちで歌うことができるのか、と問いかける。

コロナ禍で、N響の演奏会が数は少ないが熱心なファン中心の集中度の高い演奏会になって、コロナも悪いことばかりでないなと単純に捉えていた私の浅い思考が恥かしくなる。

後半はポスト・コロナでの新しい時間モデルや新たな音楽のありようが考察される。コロナ以前からの課題であった「右肩上がりの時間の呪縛」からの脱皮が、コロナの「どう進むか検討もつかない時間」は従来の因習の縛りから自由になれるチャンスであり、音楽についても近代の目的論的な時間図式を抜本的に組み立てなおす絶好の機会だと言う。未来に向けた考察は、必ずしも歴史解釈、解説のような筆者ならではの切れ味は感じられなかったところはあるが、「思考実験」として読者がどう考えるかが問われる気がした。

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N響 2⽉公演、熊倉優 指揮、イザベル・ファウストVn シマノフスキ/ヴァイオリン協奏曲第1番ほか

2021-02-15 07:30:00 | 演奏会・オペラ・バレエ・演劇(2012.8~)

N響2月公演の2つめ。11月に続いての熊倉さんの指揮で、チェコ・ポーランドの東欧プログラム。

今回はオケの後ろ側の席に陣取ったので、オケの一員気分で熊倉さんの表情が良く分かります。前回NHKホールの時にはやや硬さも感じられた熊倉さんですが、今回は舞台慣れした感じで、冒頭の「売られた花嫁」の舞曲から伸び伸びと活気ある音楽を聴かせてくれました。

圧巻は2曲目のシマノフスキのヴァイオリン協奏曲でのイザベル・ファウストのヴァイオリン。この曲、実演では2度ほど聴いていますが(カロリン・ヴィートマン、LP/クリスチャン・テツラフ、LSO)、決して聴きやすい曲ではないけど、意味深く感じる不思議な世界観が醸し出される音楽です。独奏のファウストさん、こんな世界中で大変な時期によくぞ来日してくれました。それだけで大感謝なのですが、ファウストさんの音色は実に繊細。一音でも聞き漏らすまいと、前傾姿勢で全集中して聴きました。曲の細部や表現の様式は、私にはようわかりませんが、緻密かつ切れ味ある音色はこの曲の読足の世界が展開されました。会場は大拍手、声は出せませんが、”Bravo”と記載した個人用ミニ横断幕を掲げた方もいらっしゃいました。

更に、お口直し的なアンコール曲での自然な美しい音が涙もの。本当にこんなに美しい音があるのだと、この日この場にいる幸せをしみじみと感じさせてくれる演奏でした。

後半のドヴォルザークの交響曲第6番を聴くのはきっと初めてです。予習もなしだったので、曲を追っかけるので精一杯でしたが、席のおかげもあり管陣の美しい音色を堪能しました。弦も含めたN響の皆さん熱演で、熊倉さんをまさに盛りたてていました。

ファウストさん効果もあってか、1席間隔を開けた配席とは言え、かなりは埋まった客席から盛大な拍手がおくられました。私も満足感一杯で帰路へ。

 

NHK交響楽団 2⽉公演 東京芸術劇場
2021年2月12日(金)開場 5:00pm 開演 6:00pm

東京芸術劇場 コンサートホール

スメタナ/歌劇「売られた花嫁」─ 3つの舞曲
シマノフスキ/ヴァイオリン協奏曲 第1番 作品35
ドヴォルザーク/交響曲 第6番 ニ長調 作品60
指揮:熊倉 優 
ヴァイオリン:イザベル・ファウスト 

【本公演のアンコール曲】ニコラ・マタイス/ヴァイオリンのためのエアー集 ― 前奏曲/パッサージオ・ロット/アンダメント・ヴェローチェ(ヴァイオリン:イザベル・ファウスト)

NHK Symphony Orchestra February Concerts at Tokyo Metropolitan Theatre
Friday, February 12, 2021 6:00p.m. (doors open at 5:00p.m.)

Tokyo Metropolitan Theatre  Access Seating chart

Smetana / "The Bartered Bride," opera — Three Dances
Szymanowski / Violin Concerto No. 1 Op. 35
Dvořák / Symphony No. 6 D Major Op. 60
Masaru Kumakura, conductor
Isabelle Faust, violin 

 

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アンガーマネジメントの本を2冊読んでみた

2021-02-12 07:30:51 | 

 

戸田久美 『アンガーマネジメント』 (日経文庫、2020)
川嵜昌子 『アンガーマネジメント 管理職の教科書』(総合科学出版、2017)

加齢とともに妙に怒りっぽくなっていることを自覚している。年を重ね、「あの人、丸くなったよね」と言われる人もいるが、私はむしろ逆コースを歩んでいるのではとの危機感がある。時々、図書館やお店で怒鳴っている「暴言老人」を見かけるが、まさか私もあんな末路をたどるのではないかとの恐怖感もある。
そんな個人的な怖れに加えて、こんな私に会社の教育担当から新任の管理者向けの研修で「ハラスメント」について話してくれという依頼を受けた(「これって、ブラックジョーク?」と思ったがそうではなかったようだ)ので、世の中的にも定着したコンセプトである「アンガーマネジメント」の本を2冊読んでみた。

構成は違うが、書かれている考え方やノウハウはとっても似通っている。
・「常識」「当たり前」が無い時代。自分のコアバリューになっている「・・・するべき」を知ろう。怒りは「べき」とのGapに発生する。でも、「べき」は人によって異なっている。

・怒りへの対処法としては、「6秒間やりすごす」「心が落ち着く言葉を唱える」「逆算する」「深呼吸する」と言ったテクニックもあるので意識的に活用して、コントロールしよう。
・「怒り」の記録、変えられるものと変えられないもの区別をしよう。
・「事実」と「思い込み」の見極めも大事
・スルーする力など感情・行動のコントロールも大事
・叱り方、怒り方の習得する(「私はこうして欲しい」「私はこう感じている」と「期待」や「信頼」を伝えるなど)。言い方はとっても大事。
などなど、理論的には全くその通りだろうが、実践はなかなか難しいんだよね。

戸田氏の本は網羅的に整理されていて概説書としては最適だし、川嵜氏の本はケーススタディ的にQ&Aが充実していて実践的。頭の整理や自己の行動の見直しに有益だった。

依頼された研修講師のほうは、本の受け売りではつまらないだろうから、私の「長い」会社生活におけるハラスメント「ヒヤリ・ハット」経験を中心にお話し、そこから「アンガーマネジメント」の重要性に触れてみた。自分自身が「言うは易し、行うは難し」であることは、全く言及していない・・・

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N響 2⽉公演/指揮 尾高忠明 /シベリウス交響曲第1番ほか @NHKホール

2021-02-09 07:30:49 | 演奏会・オペラ・バレエ・演劇(2012.8~)

緊急事態宣言の延長決定がされた週末なのに、春の訪れを感じるような温かさだったためか、先週の代々木公園に比べると随分人出があった。NHKホールでの演奏会は、改修工事のためこの日を区切りに当分お休み。感染防止のため1席空けての着席でゆったりリラックスして鑑賞できる。

前半は横坂 源さんのチェロ独奏によるタコのチェロ協奏曲がとっても印象的。私には初めの方ですが、落ち着いたチェロの音色が、耳障りよく、ショスタコーヴィチの所々癖あるメロディもとっても心地よい。かみしめながら何度も聴きたくなる演奏だった。また、この曲の準主役ともいえるホルンも、首席の福川さんが広いホールの隅々に美音が響き渡る。アンコールはバッハ無伴奏チェロ組曲2番からサラバンド。身体が清められるような感覚だった。

後半はシベリウス交響曲第1番。実演に接するのは2回目。この曲、ところどころグーっと引き込まれるところがあるのだけど、楽曲としてはまだ掴みどころが分からない。が、分からないながらも、尾高さんの指揮が、大きなスケールとち密さが両立した演奏をN響から引き出しているのは分かる。透明感あふれた演奏だった。

日に日に延びる陽に冬の終わりを感じながら、この日も満足感一杯で、暫しお別れとなるNHKホールを去った。

2021年2月7日(日)開場 2:00pm 開演 3:00pm
NHKホール 
指揮:尾高忠明
チェロ:横坂 源

武満 徹/3つの映画音楽
ショスタコーヴィチ/チェロ協奏曲 第1番 変ホ長調 作品107
シベリウス/交響曲 第1番 ホ短調 作品39
【本公演のアンコール曲】バッハ/無伴奏チェロ組曲 第2番 二短調 BWV1008 - サラバンド(チェロ:横坂 源)


NHK Symphony Orchestra February Concerts at NHK Hall
Sunday, February 7, 2021 3:00p.m. (doors open at 2:00p.m.)

NHK Hall

Takemitsu / Three Film Scores
Shostakovich / Cello Concerto No. 1 E-flat Major Op. 107
Sibelius / Symphony No. 1 E Minor Op. 39

Tadaaki Otaka, conductor
Gen Yokosaka, cello

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相澤 冬樹『メディアの闇「安倍官邸 VS.NHK」森友取材全真相 (文春文庫、2021)』

2021-02-06 07:30:00 | 

 NHKの 記者として森友学園問題の取材にあたっていた相澤冬樹 記者による取材記録である。サブタイトルにあるような「安倍官邸対 NHK」について書かれたものではない(「はじめに」にお断りが書いてあるものの、このサブタイトルはかなりミスリーディングで、編集者の良心を疑う)。

文句なしに面白い点は、相澤氏の記者としての活動を詳細に追体験 できることだ。記者という仕事や森友学園問題の(相沢氏から見た)ファクトがよくわかる。取材にあたった記者の記録ならではのリアリティやディテールが抜群である。

また 相澤氏の強いパーソナリティが本書を際立たせている。「俺すごいだろ」的な自負心記述や自慢エピソードは、読んでいて白けるところがあるが、このぐらいの自信がないとネタ抜き合戦の中で生き残るのは難しいのだろう。

森友学園問題の全容にはほど遠いが、筆者の取材の全容として楽しめる本であった。

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黒川敦彦『ソフトバンク「巨額赤字の結末」とメガバンク危機』講談社+α新書、2020

2021-02-02 07:30:03 | 

昨年、ソフトバンク・ビジョン・ファンド(SVF)の巨大損失決算の発表があったので、その裏事情が知れるかと思い本書を手に取った。ソフトバンクだけでなく、ANA、日本製鉄、丸紅、イオンと言った日本の有数の企業の苦境もレポートされ、日本経済の厳しさや今後来るであろう金融危機に警鐘を鳴らす一冊である。

SVFについては、たいていは既知の話しであった。投資会社だから上手くいくときもあれば、失敗するときもある。ただ、ソフトバンクがもはやToo big to failとも言えるような規模になっていることや、みずほ銀行が孫氏個人に相当お金を突っ込んでいるということはあまり認識してなかった。よく考えてみれば当たり前だが、創業者である孫さんはソフトバンク等の持株で年間100億円相当の配当金を個人で貰っているという。スケールが桁違いすぎて、笑ってしまう。

私にとって特に新しかった情報は、リーマンショックの原因となったサブプライムローンを使った金融商品CDO(Collateralized Debt obligation:債務担保証券)と似たような金融商品CLO(Collateralized Loan Obligation:ローン担保証券)なるものがアメリカで生まれており、農林中金、三菱UFJ、ゆうちょ銀行ら邦銀が夫々1兆円以上も保有しているとの情報だ。農林中金は8兆円もCLOを持っているという。リーマンショックについては、本や映画で少しかじった程度だが、CLOなる商品がまたもゾンビのように生まれていること自体が「さすが欲望の国アメリカ!」と思うと同時に、手を出している邦銀に危うさを感じる。

これら以外にも、一般会計よりもはるかに大きい特別会計の不透明さも再認識。改めて日本の経済・財政状況の厳しさが良く分かる。我々一般庶民は、一体どうしたらいいのだろうか?

筆者の主張するベーシックインカム制度の導入は、個人的には賛同できるものではないが、週刊誌を読むように読みつつ、今起こっていることを認識できるという点で有益な一冊だった。

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