その後の『ロンドン テムズ川便り』

ことの起こりはロンドン滞在記。帰国後の今は音楽、美術、本、旅行などについての個人的覚書。Since 2008

桐朋学園芸術短期大学自主上演実習公演『フローズン・ビーチ』 @せんがわ劇場

2024-07-15 08:21:57 | 演奏会・オペラ・バレエ・演劇(2012.8~)

ご縁あって桐朋学園芸術短期大学の認定専攻科(2年間の短期大学を卒業した後のプログラム)の演劇専攻の56期学生さんによる自主上演実習の公演を観劇。

「フローズン・ビーチ」がどんな話しかも全く知らないままに席に着いたが、南国のビーチリゾートで起こるコメディタッチのサスペンスと言えるような物語。笑いもあるのだが、殺人(未遂)、人間関係の愛憎・嫉妬、心理的かけひきが含まれていて、難しいというか、とっつきにくい物語であった。2時間半の作品を1時間10分のカットバージョンでの上演ということもあってか、登場人物の心理的立場も少々分かりにくいところもあった。

一方で、4名の学生役者さんのエネルギー一杯の熱演には、大いに引き込まれた。山田さんの双子姉妹の演じ分けや、千津役の上田さんの3場夫々での変化ぶりも楽しめた。未知の作品だった故に、何に注目していけばいいのかはわからずじまいだったけど、小劇場のライブ感あふれる若手によるお芝居は見ていて元気貰える。この4名の皆さん、これからどういう演劇人生、役者人生を送っていくのだろうか。頑張ってほしい。

会場は出演者のお友達や同じ専攻の学生さんと思しき若い人が7割ほど。

 

2024年7月12日

せんがわ劇場×桐朋学園芸術短期大学自主上演実習公演

『フローズン・ビーチ』 

作・ケラリーノ・サンドロヴィッチ/演出・ペーター・ゲスナー

キャスト:上田実祐那(千津)、今野まい(咲恵)、磯馴萌々子(市子)、山田みづは(萌、愛)

 

 


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横田栄司さん快演✕怪演の「オセロー」 (演出:鵜山仁)@紀伊國屋サザンシアター

2024-07-07 07:37:35 | 演奏会・オペラ・バレエ・演劇(2012.8~)

台本良し、役者良し、演出良しの3拍子揃ったレベル高い「オセロー」であった。

中でも、題名役の横田栄司の快演・怪演が強烈な印象を残した。横田さん、数年前のNHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」の和田義盛役で存在感を放っていたが、暫く体調崩してお休みをされていたらしい。

この舞台では、とても休養明けとは思えない、ほとばしるエネルギーにただただ圧倒される(義盛役の時は、小柄な方なのかと思っていたが、全く誤解であった)。救国の英雄として誰もが羨む花嫁と結婚した絶頂期から嫉妬に狂い、破滅していくまでのムーアの武人を演じた。強さ、弱さ、可愛さオセローの人間的特質を演じ分け、オセローが乗り移ったにも見える迫力は見ていて怖くなるほど。

対する、スキャンダルの仕掛け人イヤーゴーを演じた浅野雅博はオセローの「動」に対して、「静」的なキャラで知能犯を安定感たっぷりに演じた(この方、新国立の「スカイライト」で蒼井優さんとの会話劇が今でも印象深い)。ちょっと、スマートすぎて、「毒」要素が抑えれれていた気がしたが、私の気のせいか、それともそういう演じ方なのかな。

初めて拝見するデスデモーナを演じたsaraは可憐な役を素であるように自然に演じていて、とっても好感度高い(初めてなので、何が「素」なのかわからないが)。

主要級3役以外の脇役陣も、エミリアの増岡はじめ、夫々安定感たっぷりで、隙が無い。私は初めてなので何とも言えないが、これが「文学座」の格とでも言うのだろうか。

演出は鵜山仁。昨年の新国立劇場での「尺には尺を」「終わりよければすべてよし」もそうだったが、ここ数年観るシェイクスピア劇の演出はかなりが鵜山さんによるもの。

舞台上の中央に4畳半規模の立体ケージが置かれ、夫婦の寝室など様々な場面で活用される。群青色をベースにした照明も美しく、背景のカーテンに漁火のようなライトが投影され、ベネチアであったり、キプロスの幻想的な雰囲気をうまく作っていた。役者さんは観客エリアも縦横に動き、私の通路横に着席されていたお客さんは、横田さんに凄まれてマジでびっくりしてた。

第5幕は小田島の翻訳を忠実に、場面、セルフカット無しに演じられた。クライマックスではあるのだが、自分の集中力が切れかかってたのか、少々冗長な印象はあった。死んだデスデモーナやエミリアが(生き返るわけではないが)動くのも私には良く理解できなかった。

それにしても、オセローはシェイクスピア悲劇の中でも、ちょっとかなり感情移入が難しい。オテロ―は思い込み激しいお馬鹿さんすぎるし、デスデモーナはあまりにも可哀そうすぎる。それでも、こうやって見に来てしまうのは、この作品の引力なのだろう。

余談だが、この日の観衆は大学生ぐらいの若い人多く、会場の雰囲気もフレッシュだった。関係するかどうかは分からないが、終演後の拍手はとっても大きく、スタンディングオベーションの方も多数いた。

(2024年7月5日)

 

文学座公演  

『 オセロー 』

作:ウィリアム・シェイクスピア

訳:小田島雄志

演出:鵜山 仁

   

日程:2024年6月29日(土)~7月7日(日)

会場:紀伊國屋サザンシアターTAKASHIMAYA

   

Cast

石川 武(ヴェニスの公爵)

高橋ひろし(ブラバンショー/グレーシアーノー)    

若松泰弘(モンターノー)

浅野雅博(イアーゴー)

横田栄司(オセロー)

石橋徹郎(ロダリーゴー)

上川路啓志(キャシオー)

柳橋朋典(ロドヴィーコー)

千田美智子(ビアンカ)

増岡裕子(エミリア)

萩原亮介(役人 ほか)

sara(デスデモーナ)

河野顕斗(紳士 ほか)

 

□スタッフ

美術:乘峯雅寛 照明:古宮俊昭 音響:丸田裕也 衣裳:前田文子 ヘアメイク:鎌田直樹

アクション:渥美 博 劇中歌監修:高崎真介 舞台監督:加瀬幸恵 演出補:大内一生 制作:梶原 優、鈴木美幸 制作助手:畑田麻衣子

宣伝美術:三木俊一(文京図案室) 宣伝写真:佐藤克秋


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鈴木優人×イザベル・ファウスト NHK交響楽団 @調布国際音楽祭

2024-06-24 07:11:54 | 演奏会・オペラ・バレエ・演劇(2012.8~)

昨年は都合つかず訪れること叶わなかったけど、12年目を迎えるという調布の音楽祭に今年は参戦です。有料の演奏会も年々充実し、選ぶのに迷ってしまうのですが、今年はイザベル・ファーストさんが出演されることもあり、この音楽祭の顔でありエグゼクティブプロデューサーである鈴木優人さん指揮のN響の演奏会へ。

初っ端から、今日の目玉とも言えるファウストさんが登場。数日前にB定期のサントリホールで聴いたばかりですが、その時はシューンベルグのヴァイオリン協奏曲が私には難しすぎて、せっかくのファウストさんの真価も堪能し切れず。今回はベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲。聴き慣れた曲でもあり、期待大でした。

そして、期待通りの素晴らしい演奏でした。ファウストさんのヴァイオリンの音色は繊細で、様々な要素の最高のバランスの上に成り立っているように聴こえます。とっても知的でありながら、情熱的でもある。柔らかくもあれば、堅実さを見せることもある。愁いがあれば、歓びにも満ちている。発せられる一音一音に耳をそばだてます。音が不思議なほど素直に、体の中にしみ渡って行くような感覚でした。

彼女にとってはこれまで何百回、何千回と演奏した曲だとは思うのですが(それでも譜面台に楽譜が置いてあったのはちょっと不思議でした)、私にはまさに一期一会のファウストさんによるベートーヴェンのヴィオリン協奏曲。背筋伸ばして、手を握りしめて聴きました。

N響の演奏も素晴らしい。特にファウストのヴィオリンと木管陣の柔らかな音色が、ホール内で溶け合う化学反応にはうっとりと別次元に連れて行かれるようでした。第一楽章後半のカデンツァではティンパニーの伴奏が入りました。

終演後はこのホールでは聞いたことのないボリュームでの、賞賛と感動の拍手で会場は覆われました。ファウストさん、ヴァイオリンの素晴らしさは言うまでもありませんが、拍手に応える姿やオーケストラへの賞賛などの仕草もとってもチャーミング。大拍手に応えてアンコールはシャルル・オーギュスト・ド・ベリオ作曲12の情景作品109第12番コンソレーション(なぐさめ)でした。

後半は、B定期と同じ曲目ですが、私は定期の後半を聴けなかったので、丁度良かった。ラストのシューベルト交響曲第5番は全く初めて聴く曲でしたが、構造もはっきりして、音楽としてもとっても聴き易い楽曲。N響の弦のアンサンブル力や管楽器の美しい音色を堪能しました。

鈴木Jr.(お父さんも聴きに来られてました)もご自身がエグゼクティブプロディーサーとなっている調布国際音楽祭で、N響を自ら指揮されるということで、いつも以上に気合入っているように見えました。マルチな才能を見せる鈴木さん、これからも音楽祭の充実を期待したいと思います。

蛇足ですが、今回、ファーストさんということで、最高ランク席を購入。前から10列目という両席だったこともあり、市民ホールではありますが、細部のニュアンスを含めとっても良く聴こえました。正確に数えたことは無いけど、N響には過去100回以上の演奏会に足を運んでいるはずですが、指定席はNHKホールの3階席とサントリーの舞台後ろ席なので、う~ん、やっぱり高い席は高い席ならではのことがあると納得。回数減らして良席を取りに行くのが良いのか、安席で回数を楽しむのか、悩んじゃいますね。

 

鈴木優人×イザベル・ファウスト
NHK交響楽団 in Chofu

2024年6月23日(日)開演 2:00pm [開場 1:15pm]
調布市グリーンホール 大ホール

ベートーヴェン/ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 作品61
バッハ(ウェーベルン編)/リチェルカータ
シューベルト/交響曲 第5番 変ロ長調 D. 485

指揮:鈴木優人
ヴァイオリン:イザベル・ファウスト

Sunday, June 23, 2024 2:00p.m.
Chofu City Green Hall, Large Hall

Conductor : Masato Suzuki
Violin : Isabelle Faust

Beethoven / Violin Concerto D Major Op. 61
S. Bach / Webern / Ricercata
Schubert / Symphony No. 5 B-flat Major D. 485


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6月N響B定期:日本人若手指揮者競演シリーズ、第3弾は鈴木優人さんのウイーンプログラム(前半のみ)

2024-06-21 17:40:43 | 演奏会・オペラ・バレエ・演劇(2012.8~)

(公開するほどの内容でも無いのですが、記録のため)

本シーズン最後のN響定期であり、6月定期日本人若手指揮者競演シリーズ第3弾。鈴木Jr.の登場でしたが、残念ながら所要により前半のみ参加。

この日はウィーン所縁の作曲家のプログラムで、前半はウエーベルンとシューンベルグの20世紀の作品。

個人的には最近でも類を見ない大苦行となりました。私には音楽が難しすぎて、理屈としても感覚としても、私の理解の範疇超えていて、無条件降伏状態。シューンベルグのヴァイオリン協奏曲は、イザベル・ファーストさんが奏でるヴァイオリンの美音やハイレベルな技巧は感じ取れましたが、感想を言葉にするには難易度高すぎで、手も足も出ない見逃し三振。

鈴木ジュニア、N響、ファウストさんのコンビは週末に調布国際音楽祭に行くので、そこでリベンジ予定。ヴァイオリン協奏曲もシューンベルグからベートーヴェンに変わりますので、まだこちらの方は楽しめそう。

今シーズンもN響には大変お世話になりました。ルイージさんとのコンビも更に成熟度が上がっていると思ったし、コープマンさん、ソヒエフさん、エラス・カサドさん、ヤノフスキさん、エッシェンバッハさんらの名だたる欧米指揮者、尾高さん、ミッキー、原田さん、沖澤さんらの日本人指揮者など、バライティに富んだ出演者で毎回、異なった楽しみを味合わせてくれました。来シーズン、かなりの値上げとなったのはお財布にかなり応えますが、値上げに相応しい更なる満足度高い定期演奏会を期待したいと思います。

 

定期公演 2023-24シーズン
第2015回 定期公演Bプログラム
2024年6月20日(木)開演 7:00pm

サントリーホール

ウェーベルン/パッサカリア 作品1
シェーンベルク/ヴァイオリン協奏曲 作品36
バッハ(ウェーベルン編)/リチェルカータ
シューベルト/交響曲 第5番 変ロ長調 D. 485

アンコール
6/20:ルイ=ガブリエル・ギユマン/無伴奏ヴァイオリンのためのアミュズマン 作品18 ー 第12曲 アルトロ
ヴァイオリン:イザベル・ファウスト

指揮 : 鈴木優人
ヴァイオリン : イザベル・ファウスト

 

No. 2015 Subscription (Program B)
Thursday, June 20, 2024 7:00pm
Suntory Hall

Conductor : Masato Suzuki
Violin : Isabelle Faust

Webern / Passacaglia Op. 1
Schönberg / Violin Concerto Op. 36
S. Bach / Webern / Ricercata
Schubert / Symphony No. 5 B-flat Major D. 485


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6月N響C定期:日本人若手指揮者競演シリーズ、第2弾は沖澤のどかさんのフランスプログラム

2024-06-18 07:20:19 | 演奏会・オペラ・バレエ・演劇(2012.8~)

6月のN響、若手日本人指揮者競演シリーズ第2弾は、初めて実演に接する沖澤まどかさん。フランスもののプログラムも魅力的で、楽しみにしていました。

ステージに現れた沖澤さん、想像以上に小柄な方でしたが、姿勢よく堂々とされています。そして、指揮ぶりも自信あって迷いを一切感じさせない確信に満ちたものでした。古いですが漫画「ドカベン」の里中投手につけられた「小さな巨人」というニックネームを思い出すほど。

イベール<寄港地>は冒頭から香るようなオーケストラの優雅な響きにうっとり。ちょっと私自身が夏バテ気味の体調もあって、あまりの心地よさにかなり意識が遠のくほどでした。第2曲の吉村さんのオーボエも異国情緒満載で美しい。全曲通じて、まさに各寄港地の情景が脳裏に浮かんでくる演奏でした。

2曲目のラヴェルの<左手のためのピアノ協奏曲>は過去に2回は生で聴いていますが、未だ聴きどころ良く分かっていません。それでも、デニス・コジュヒンさんのピアノは、左手だけとは思えない力強さがあり、1音1音がとっても明瞭に聞こえてきました。オーケストラとの呼吸もぴったり。

そして、3曲目はドビュッシー〈夜想曲〉。1曲〈雲〉では、タイトルそのものですが、雲の上に横になって空中をのんびりとくつろいでいるような浮揚感。イングリッシュホルンの愁いを帯びた音色も夢の中で遠くから聞こえて来るやまびこのようでした。第2曲〈祭〉は切れよくワクワク。N響の金管、打楽器の活躍も光ります。第3曲〈シレーヌ〉は美しい女声合唱とともに、N響がキラキラと眩いような神秘的な世界を見せてくれました。

1時間ちょっとの演奏会ですが、無理無く自然体で、体に染み込むように吸収される純粋な音楽をN響と創り上げた沖澤さんの指揮ぶりは、本人の比較的淡々としているように見えた終演後の様子と併せて、返って凄みを感じるものでした。是非、もっといろんな楽曲を聴いてみたい方です。

定期公演 2023-2024シーズンCプログラム
第2014回 定期公演 Cプログラム
2024年6月15日(土) 開演 2:00pm(休憩なし) [ 開場 1:00pm ]

NHKホール

イベール/寄港地
ラヴェル/左手のためのピアノ協奏曲
ドビュッシー/夜想曲*

指揮:沖澤のどか
ピアノ:デニス・コジュヒン
女声合唱:東京混声合唱団*

Subscription Concerts 2023-2024Program C
No. 2014 Subscription (Program C)
Saturday, June 15, 2024 2:00pm [ Doors Open 1:00pm ]

NHK Hall

Ibert / Escales (Ports of Call)
Ravel / Piano Concerto for the Left Hand
Debussy / Nocturnes*

Conductor: Nodoka Okisawa
Piano: Denis Kozhukhin
Female chorus: The Philharmonic Chorus of Tokyo*


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フライングシアター自由劇場第二回公演「あの夏至の晩 生き残りのホモサピエンスは終わらない夢を見た」@新宿村LIVE

2024-06-14 08:05:09 | 演奏会・オペラ・バレエ・演劇(2012.8~)

串田和美さんのシェイクスピア劇は、2019年に「テンペスト」を拝見して以来。

「夏の夜の夢」(以下、「夏夜夢」)を解体・再構成した作品とのことで、意味ありげな長いタイトルと相まって、どんな芝居が展開されるのかとっても楽しみだった。

ベースの筋立てや登場人物は原作と変わらないながら、全体としてはアレンジ度も強い。なので、「夏夜夢」としても楽しめるし、原作とは別物の芝居としても楽しめる、一粒で二度おいしい舞台ともいえる。

一番大きなアレンジは、劇の冒頭と最後に出てくる串田和美演じる旅人(パック?)がソフトボール大の球体を弄りながら、過去の森の中での球体との遭遇が語られる。球体のメタファーは何なのか?終始、観るものに考えさせる。これと言った答えを見つけるのは難しいが、過去から現在までの時間軸をつなげたり、夢の世界と現実の世界を結ぶものとしての、球体なのかと思ったりした(映画「2001年宇宙の旅」の冒頭に登場する黒い石板やハムレットが持つ球体を思い出した)。

これ以外にも、後半、壁が崩れるところもあるが、否が応でも、ベルリンの壁、現在のガザ地区とイスラエルとの壁を思い起こさせる。

8名で「夏夜夢」を演じてしまった役者さんたちのパワーあふれる体当たり演技が強烈だった。串田和美さんと前回ノゾエ版「マクベス」でマクベス夫人を演じた川上友里さん以外はお初の方々だったが、皆さん、セリフ回し、動きともにしっかりしていて安定した舞台であった。一人二役は珍しくないだろうが、一人三役も四役もこなしていて、運動量だけでも相当だと思う。

串田さんの演出のやり方なのかどうかわからないが、台本にないアドリブシーンと思わせるところもいくつかあった気がしたのだがどうだったのだろうか。場面により、一瞬、役者さんが怯むように感じられた一方で、それが舞台の緊張感を高めた印象があって、観劇していてライブ感が満載で楽しい。

舞台装置はシンプルで、舞台中央奥に4つの扉が置かれ、その扉での出入りで場を表す。ナチュラルで無理がない。一方で、全般に中心的な場となる「森」は、役者さんの動きによって表せられるのだが、「夏夜夢」が初めての人にはちょっとイメージつきにくいかも。背景や衣装も白を基調にしながらも、劇中劇の舞台だけは原色系の非常に派手な色合いで舞台映えした。

この舞台、この後、ルーマニアの演劇祭で披露されるという。国際的にどう評価されるのか、興味深い。上演時間は2時間弱。あっという間の舞台であった。

(余談いくつか)
・観客層:シェイクスピア劇は女性観客多いが、今回は特に多かった気がした。8割がたは女性で占められていたように見えた。通常の観劇聴衆と雰囲気が若干異なる叔母様がたがいらした気がしたのは、元宝塚の大空さん目当てなのだろうか(憶測です)。

・新宿村LIVE:初めて訪れたが特異なシアターである。丸ノ内線の西新宿から7分ほど歩いて、小さなビルの地下4階(もしかしたら3階?)にある。階段でひたすら降りたところに小劇場がある。こりゃ、歳取るとつらいなあとか、火事になったらアウトだなと思ったりしたが、まさにアングラ劇場だ。

・アフタートーク:初めてアフタートークなるものに参加。稽古で大変だったところ、苦労したところなどが、役者さんから直接語られて楽しめた。球体の意味するところも各役者さんによって理解が違っており、別に共通の認識をもってやって演じているわけではないということも知る。串田さんの演出も相当自由度が高いようで、舞台を思振り返って思い当たるところもあった。

公演       フライングシアター自由劇場第二回公演
「あの夏至の晩 生き残りのホモサピエンスは終わらない夢を見た」
原作       ウィリアム・シェイクスピア 「夏の夜の夢」
翻訳       松岡和子
脚色・演出・美術             串田和美
出演       大空ゆうひ 川上友里 皆本麻帆 小日向星一
串田十二夜 谷山知宏 島地保武 串田和美

日程       2024年6月6日(木)-6月12日(水)
会場       新宿村 LIVE

スタッフ
照明:齋藤茂男
音響:市來邦比古
映像:栗山聡之
衣装:原田夏おる
演出助手:荒井遼
舞台監督:福澤諭志
制作:梶原千晶 長谷川きなり ・ 串田明緖
宣伝絵画:平松麻
宣伝写真:串田明緖
宣伝デザイン:GRiD CO.,LTD.  
企画・製作:フライングシアター自由劇場
主催:(有)自由劇場


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6月N響定期は日本人「若手」指揮者競演 ~原田慶太楼のオール・スクリャービン・プログラム~

2024-06-11 07:46:09 | 演奏会・オペラ・バレエ・演劇(2012.8~)

今月のN響定期は「若手」日本人指揮者による3本立て。どれも魅力ある共演者と組み合わせた楽しみな演奏会が続きます。

先頭バッターは原田慶太楼さんで、プログラムはスクリャービンの初期の作品から3本。最初の「夢想」を除いては、過去にN響定期で聴いたことがありますが、残念ながらあまり記憶に残っていません(ピアノ協奏曲は指揮がヴェデルニコフさん、ピアノがコロベイニコフさん。交響曲2番がパーヴォさん)。ピアノ独奏の反田さん効果か、このマニアックなプログラムなのにNHKホールは完売です!

反田恭平さんは、ご自身でオーケストラ立ち上げたり、ラジオのパーソナリティ等も行い、幅広く活躍されてます。今回のスクリャービンのピアノ協奏曲は初めての演奏とのことですが、微塵も感じさせない堂々たるものでした。楽曲もスクリャービンでも初期の作品と言うことで、耳になじみやすいものです。ショパンの影響を強く受けているということが、プログラムノートに書かれていましたが、ショパンの優美さに、さらにロシア的な雄大さを感じる音楽でした。反田さんのピアノは打鍵が強いのか、優しい弱音も含めて3階席迄はっきりと音が届きます。不覚にも第2楽章はオーケストラとピアノの絶妙なアンサンブルの美しさにちょっとウトウトしてしまったほど。第3楽章はロシア的なスケール感一杯の聴きごたえ満点の演奏でした。

後半の交響曲第2番は、5楽章構成ですが、第1と第2楽章、第4と第5楽章は続けて演奏されるので、3部構成とも言えます。第2楽章の美しさはとびきりで、うっとり。第4、5楽章は畳みかけるスケール感一杯の音楽。楽曲としてはやや冗長に聞こえてしまうところはありましたが、原田さん指揮のN響は、集中力途切れることなく充実した演奏です。フルート、クラリネットのソロにも耳をそばだてます。

原田さんとN響のコンビに接するのは3度目ですが、相互に信頼感が確立して安定した関係になっている印象を持ちました(最初に見た時は原田さんが随分と緊張されていたのが、よくわかったぐらい)。続く、沖澤さん、鈴木さんとの聴き比べも楽しみです。

定期公演 2023-2024シーズンAプログラム
第2013回 定期公演 Aプログラム
2024年6月9日(日) 開演 2:00pm [ 開場 1:00pm ]

NHKホール

曲目
スクリャービン/夢想 作品24
スクリャービン/ピアノ協奏曲 嬰ヘ短調 作品20
スクリャービン/交響曲 第2番 ハ短調 作品29

[アンコール曲]

6/9:ショパン/マズルカ 第34番 ハ長調 作品56-2
ピアノ:反田恭平

指揮:原田慶太楼
ピアノ:反田恭平

 

Subscription Concerts 2023-2024Program A
No. 2013 Subscription (Program A)
Sunday, June 9, 2024 2:00pm [ Doors Open 1:00pm ]

NHK Hall

Program
Scriabin / Rêverie, Op. 24
Scriabin / Piano Concerto F-sharp Minor Op. 20
Scriabin / Symphony No. 2 C Minor Op. 29
[Encore]
June 9: Chopin / Mazurka No. 34 C Major Op. 56-2
Piano: Kyohei Sorita

Artists 
Conductor: Keitaro Harada
Piano: Kyohei Sorita


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ミッキー最後の都響定期:都響定期A/井上道義/ ショスタコーヴィッチ交響曲第6番ほか

2024-06-09 07:59:21 | 演奏会・オペラ・バレエ・演劇(2012.8~)

かつて都響の「作曲家の肖像」シリーズなるものの会員になっていたことはありますが、今シーズンから初の定期演奏会(Aシリーズ)のメンバーになりました。今季最初の演奏会が、今回で都響との共演は最後となる井上さん(ミッキー)の指揮によるベートーヴェンとショスタコーヴィッチの共に6番という鉄板の記念碑的演奏会となりました。

前半のベートーヴェンの〈田園〉。とっても小編成で、ステージ上にティンパニやピッコロやトランペット・トロンボーンが不在。これで雷鳴るのだろうか??と心配しましたが、しっかり第3楽章で登場しました。

演奏はコンパクト編成ながらとってもダイナミック。前半はペースもゆっくり目でしたが、中盤以降は畳みかける迫力。室内楽的という印象というよりも、骨太でありながら細部にわたり美しい響きも味える、一粒で2度おいしい的な「田園」でした。

ミッキーの希望で聴衆席の照明は普段より落とした中で演奏されました。一聴衆としては、より集中して聴けたような気もしますが、あまり大きな変化は感じなかったというのが正直なところ。

後半はショスタコーヴィチ交響曲6番。3楽章構成で、私はお初でちょっと難易度高いところはありました。第1楽章は、前半はヘビーで重苦しいですが、中盤以降神秘的で美しい独特の旋律です。第2楽章はまるでハリウッドのアドベンチャーファンタジーの映画音楽に合いそうな躍動的なリズムやメロディーが印象的でした。第3楽章は快速かつ豪快に一気にたたみかけます。

細かい点は分かりせんが、音楽と一体化したミッキーの指揮に都響が献身的に応える熱演でした。豪快でありながら、決して雑にはならず美しいハーモニーをホールに響かせ、まさに都響の実力発揮という感じです。聴き応えがありました。

終演後は温かく大きい拍手がミッキーを包みます。終始、エネルギッシュに情熱的に音楽や楽団に向き合うミッキー。まだまだ続けて欲しい気持ちで一杯ですが、しっかりと目に焼き付けておきました。

余談ですが、初の定期会員。周りの人たちはどんな方々かと期待半分、怖さ半分でしたが、両隣どころか周囲は(私もですが)みなさんおひとり様で、かなりガチな雰囲気。まあ、たまたまなのかもしれませんが、密度濃い東京文化会館の席配置もあり、かなり緊迫感漂っています。ゆるゆるの新参者として、いつも以上に小さくなって、雑音を一切立てないことに気を遣い、結構疲れました。これから、仲良くなれれば、嬉しいです。

 

5/30(木)19:00     東京文化会館      
【完売御礼】第999回定期演奏会Aシリーズ

[出演]指揮/井上道義 (Michiyoshi Inoue)

[曲目]
ベートーヴェン:交響曲第6番 ヘ長調 op.68《田園》
ショスタコーヴィチ:交響曲第6番 ロ短調 op.54

Beethoven / Symphony No. 6 F Major Op. 68, Pastoral
Dmitri Shostakovich / Symphony No. 6 in B minor, Op. 54

 


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N響5月B定期 ファビオ・ルイージ指揮/ ニールセン交響曲第2番ほか

2024-06-08 07:39:32 | 演奏会・オペラ・バレエ・演劇(2012.8~)

(時間たってしまったので簡単にメモのみ)

ルイージ月間の最終プログラム。プログラムノートによると、2作品とも作曲家が若き日に書いた作品という共通項があるとのこと。

ブラームスのピアノ協奏曲 第1番は実演に接したのは数少ない。ピアノソロのブフビンダー氏は私は初めて聴く方だが、随分と有名な方のようだ。今年78歳とは思えない瑞々しさに溢れた音色が印象的だった。とりわけ、第2楽章の優しく甘美な音楽にうっとり。

後半のニルセン交響曲2番はパーヴォさん指揮で2019年に聴いて以来。曲についてコメントできるほど聴きこんでないが、重層的な音とスケール感が印象的な音楽。4つの人間の気質を描いたとされる作品は、各章ごとの表情の変化も楽しい。この日のN響はルイージと川崎コンマスに引っ張られて、前のめりで荒々しい程の演奏。従来からのN響の強みとも言える繊細さやバランスの良さに加えて、最近、迫力ある凄みが増したと感じられるのは、確実にルイージさんがポストについてからの変化と思う。

定期演奏会ならではの、珍しいプログラムを堪能した一晩だった。








(ソロカーテンコールあり)

 

定期公演 2023-2024シーズンBプログラム
第2012回 定期公演 Bプログラム
2024年5月23日(木) 開演 7:00pm [ 開場 6:20pm ]

サントリーホール

ブラームス/ピアノ協奏曲 第1番 ニ短調 作品15
ニルセン/交響曲 第2番 ロ短調 作品16「4つの気質」

指揮:ファビオ・ルイージ
ピアノ:ルドルフ・ブフビンダー

Subscription Concerts 2023-2024Program B
No. 2012 Subscription (Program B)
Thursday, May 23, 2024 7:00pm [ Doors Open 6:20pm ]
Suntory Hall

Brahms / Piano Concerto No. 1 D Minor Op. 15
Nielsen / Symphony No. 2 B Minor Op. 16, The 4 Temperaments

Conductor: Fabio Luisi
Piano: Rudolf Buchbinder


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吉田羊さんのハムレット:PARCO STAGE「ハムレットQ1」(演出:森新太郎)

2024-06-04 07:33:19 | 演奏会・オペラ・バレエ・演劇(2012.8~)

(時系列ぐちゃぐちゃの投稿続きますが、先月見たお芝居の感想です。)

吉田羊さんがハムレットを演じるということで、慌ててチケットを購入した。Q1のテキストも安西徹雄  訳で一読済。

想定通り、非常にサクサクとテンポよく進む展開で、鑑賞者の集中力が途切れることがない。吉田羊さん、吉田栄作さんを始め、テレビ等のメディアで目にする俳優さんも多く出演し、熱籠ったプロの演技を楽しんだ。

吉田羊さんのハムレットは、女性が演じていることを感じさせない若き貴公子ハムレットだった。凛々しい。台詞廻しも歯切れ良く、所作もスマートで美しい。復讐のための欺きとして、気が触れたふりをする阿呆ぶりも、声の変化が豊かで楽しめる。流石、ここ数年引っ張りだこの女優さんという感じだ。悩める青年ぶりは少し弱いと感じたが、これはむしろQ1の台本に拠るものだと思われる。

もう一方の吉田栄作さんは、先のデンマーク王(亡霊)と現王クローディアスの2役を演じた。興味深かったのはクローディアスの演じ方で、この物語の契機となる先王を殺した諸悪の源の悪人としてはあまりにも格好良すぎて、立派だった。クローディアスは、人間的に醜悪で、権力欲にまみれ、ギトギトしたエロオヤジの理解なのだが、そうは見えない人物に見えたのは、そういう人物設定としての解釈なのか、それとも吉田栄作さん自身のかっこいいオーラが強すぎたせいなのかは、ちょっと私には判別つがず。いずれにしても、この王であれば、王妃ガートルードが、先夫が無くなって2ヵ月もしないうちに、その弟である現王と再婚するのも致し方ないか。逆に、ガートルードこそ色狂いではないかとも思ってしまう。

このドラマ、ポローニアスが隠れ主役とも言えると思うが、佐藤哲さんがしっかりと安定して、俗物ぶりを演じていて良かった。途中、台詞忘れ?にも見えなくもないところもあったが、その凌ぎ方も流石(私の誤認であればゴメンナサイです)。

オフィーリア役の飯豊まりえさんも頑張って、ひたむきな演技。驚いたのは、フォーティンブラス役も担当。このノルウエイの若王子ぶりが凛々しくて、惚れ惚れ。最初誰だかわからず、「これは誰?」と動揺した。

舞台は、岩山を背景にしたような基本セットを照明や幕等を上手く使って、セット変更は無く様々な場面を作っていた。音楽が時折挿入されたり、劇中劇は歌で台詞を語るところもあり、こんな見せ方もあるのねと楽しめた。

丁度、彩の国の劇場で『ハムレット』を上演中で、そちらも興味があったのだが、日とチケットの空きが合わず観劇ならず残念。比較出来たらなお、楽しめただろう。

それにしても、シェイクスピア劇は特にそうだが、外国の芝居は本当に言葉の洪水だ。よくもまあ、あれだけの言葉を発することができるものだと感心する。そもそも比較が適切かという問題はあるが、前回見た平田オリザさんの『S高原から』の沈黙や間の長さとのあまりにも違いに戸惑うほどだ。良い悪いではないが、外国劇は疲れるわ~。

(2024年5月14日)

 

作:ウィリアム・シェイクスピア
訳:松岡和子
演出:森新太郎

出演
吉田 羊 飯豊まりえ 牧島 輝 大鶴佐助 広岡由里子
佐藤 誓 駒木根隆介 永島敬三
青山達三 佐川和正 鈴木崇乃 高間智子 友部柚里 西岡未央 西本竜樹
吉田栄作

STAFF
美術=堀尾幸男 照明=佐藤 啓 音響=高橋 巌 音楽=落合崇史 衣裳=西原梨恵 ヘアメイク=河村陽子 アクション指導=渥美 博 演出助手=石田恭子 舞台監督=林 和宏

宣伝=DIPPS PLANET 宣伝美術=東 學(一八八) 宣伝写真=渞 忠之 宣伝衣裳=宮本真由美 宣伝ヘアメイク=河村陽子

制作=麻場優美・大友 泉 ラインプロデューサー=冨士田 卓 プロデューサー=尾形真由美 製作=小林大介


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新国立オペラ ヴェルディ<椿姫> (指揮:フランチェスコ・ランツィロッタ)

2024-05-22 07:30:52 | 演奏会・オペラ・バレエ・演劇(2012.8~)

2年前の公演で中村絵里さんのヴィオレッタが素晴らしかったので、今回の再演も迷うことなくチケット購入。

ストーリーはべたな恋愛悲劇ですが、涙を誘い、終始、優しく美しい音楽であふれ、夫々の歌手の見せ場もたっぷりと用意され、合唱も大活躍という、まさに椿姫はKingというかQueen of 定番オペラであることを再認識し、どっぷりその世界を楽しませてもらいました。

お目当ての絵里さん。初日のせいか、やや硬さが感じられたのと、声量的には絶好調時には至っていないようにお見受けするところもありましたが、安定して美しいソプラノには魅了されます。小柄の体躯をフル動員しての演技は観衆の胸を撃ちます。最終幕の悲しさは、何度も観ているオペラであっても、涙を誘われました。

外国人歌手陣では、アルフレード役のリッカルド・デッラ・シュッカさんは美しいテノールです。お坊ちゃまで未熟な青年をしっかり演じてくれていて、不満はありません。耳をそばだてたのはジェルモン役のグスターボ・カスティーリョ。細身の体格ながら、その低音は地底から這い上がってくるような迫力の歌唱。若い2人を引き離す役柄ですが、その気持ちにも感情移入できるものでした。

そして、いつもながらですが、新国立劇場合唱団の迫力満点のハーモニー。パーティー場面の喧騒や盛り上がりが、歌声を通じてライブ感たっぷりに伝わってきます。

フランチェスコ・ランツィロッタ指揮の東フィルも「椿姫」の世界観を情感豊かに表現していて、ヴェルディのお音楽の素晴らしい差を牡満喫。

舞台は鏡や反射床を活用して、照明効果も映え、とっても美しく洗練されたもの。第3幕のヴィオレッタと他人物を分ける薄い幕など、世界の違いをそれとなく表現していて上手いと感じました。

こういう上演を見ると、やっぱり定番は定番の良さを再認識させられます。予定調和的な感動とも言えなくもないのですが、やっぱり良い作品は良いですし、それをこうしたハイレベルな公演で楽しめるので、嬉しいです。

余談ですが、この日は初日とあってか、ドレスアップしたご婦人も多くお見受けし、あちこちで弾む会話がホワイエに響いてました。外国人や若い人も多く、マーケティングプログラムがあったのかもしれませんが、多様性に富んで、開かれた空気が感じられます。空間そのものが楽しさに溢れていた気がしました。こういう雰囲気って、初めての方にとっても楽しさを感じ取れて、また行きたいって気になるでしょうから大事ですよね。オーケストラの演奏会は、もちろん楽団やプログラムによっても違いはあります(先週のレスピーギ祭りのN響なんかはとっても良い雰囲気でした)が、内向き傾向強く感じることが多いので、頑張ってほしいものです。

(2024年5月16日)

2023/2024シーズン
ジュゼッペ・ヴェルディ
椿姫
La Traviata / Giuseppe Verdi

全3幕〈イタリア語上演/日本語及び英語字幕付〉

公演期間:2024年5月16日[木]~5月29日[水]

予定上演時間:約2時間45分(第1幕・第2幕1場 75分 休憩30分 第2幕2場・第3幕 60分)

Staff&Castスタッフ・キャスト

スタッフ
【指 揮】フランチェスコ・ランツィロッタ
【演出・衣裳】ヴァンサン・ブサール
【美 術】ヴァンサン・ルメール
【照 明】グイド・レヴィ
【ムーヴメント・ディレクター】ヘルゲ・レトーニャ
【再演演出】澤田康子
【舞台監督】CIBITA 斉藤 美穂

【ヴィオレッタ】中村恵理
【アルフレード】リッカルド・デッラ・シュッカ
【ジェルモン】グスターボ・カスティーリョ
【フローラ】杉山由紀
【ガストン子爵】金山京介
【ドゥフォール男爵】成田博之
【ドビニー侯爵】近藤 圭
【医師グランヴィル】久保田真澄
【アンニーナ】谷口睦美
【ジュゼッペ】高嶋康晴
【使者】井出壮志朗
【フローラの召使】上野裕之

【合 唱】新国立劇場合唱団
【合唱指揮】三澤洋史

【管弦楽】東京フィルハーモニー交響楽団

 

2023/2024 SEASON

Music by Giuseppe Verdi
Opera in 3 Acts
Sung in Italian with English and Japanese surtitles

OPERA PALACE

16May - 29 May, 2024 ( 5 Performances )

Running time is approx. 2 hours and 45 mins including intervals.

CREATIVE TEAM
Conductor: Francesco LANZILLOTTA
Production and Costume Design: Vincent BOUSSARD
Set Design: Vincent LEMAIRE
Lighting Design: Guido LEVI
Movement Director: Helge LETONJA

CAST
Violetta Valéry: NAKAMURA Eri
Alfredo Germont: Riccardo DELLA SCIUCCA
Giorgio Germont: Gustavo CASTILLO
Flora Bervoix: SUGIYAMA Yuki
Visconte Gastone: KANAYAMA Kyosuke
Barone Douphol: NARITA Hiroyuki
Marchese D’Obigny: KONDO Kei
Dottor Grenvil: KUBOTA Masumi

Chorus: New National Theatre Chorus
Orchestra: Tokyo Philharmonic Orchestra


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N響/ファビオ・ルイージ メンデルスゾーン・プログラム

2024-05-19 07:30:25 | 演奏会・オペラ・バレエ・演劇(2012.8~)


(夕刻の代々木公園)

先週のAプロがレスピーギのローマ3部作という派手なプログラムだったの対して、今週のCプロはメンデルスゾーン2曲という地味プログラム。あっさり行くのかと思いきや、どうしてどうして、力籠った、充実の演奏会でした。

前半の「夏の夜の夢」は、劇自体、私がシェイクスピア喜劇の中では最も好きなもの。メンデルスゾーンの序曲も組曲も好みです。冒頭の神田さんのフルートから始まって、終始、N響は個人技、合奏ともに素晴らしい。神秘的だったり、ワクワクしたり、ロマンティックだったり、華やかで、場面場面を想像しながら聴くのは実に楽しかった。

後半の交響曲第5番「宗教改革」は数年前に鈴木ジュニア(優人さん)の指揮で聴いているはずですが、あまり記憶に残っておらず(ゴメンナサイ)。ほとんど初めての感覚で臨みましたが、期待以上に聴きごたえのある音楽と演奏で大いに感銘を受けました。確かに「宗教改革」とうたうだけあって、バッハに通じる宗教的な音楽が組み入れられ(第4楽章冒頭はルターが1529年に作曲したコラールの旋律が使われているそうです(Wikiから))、荘厳さを感じつつも、ど真ん中直球の宗教音楽とは一線を画します。バッハ的な教会音楽も「モダン」になるとこう進化するんだと、妙に納得でした。

私にはむしろ、この楽曲のより劇的でダイナミックさに魅かれました。ルイージさんの熱い指揮に引っ張られて、N響も熱量高く応えます。管弦楽の合奏の厚みが豊で、個人技も冴えていました。第4楽章のフィナーレ部分の盛り上がりは、背筋が伸びました。決して、予定調和的な感動お約束のプログラムでは無かったはずですが、今回の充実の演奏は、ルイージ/N響の底力を改めて認識させるものでした。

余談ですが、〈開演前の室内楽〉が出色でした。ラヴェルの〈マ・メール・ロワ組曲〉を編曲した竹島さん自身も打楽器で登場し、管楽器メンバーが加わって、美しく楽しい演奏をご披露頂きました。観衆に大受けで、私の知る限り初めての〈開演前の室内楽〉のカーテンコールでの呼び戻し。この室内楽企画は今季限りとのことで、残念です。




定期公演 2023-2024シーズンCプログラム
第2011回 定期公演 Cプログラム
2024年5月17日(金) 開演 7:30pm(休憩なし) [ 開場 6:30pm ]

NHKホール

メンデルスゾーン/「夏の夜の夢」の音楽-「序曲」「夜想曲」「スケルツォ」「結婚行進曲」
メンデルスゾーン/交響曲 第5番 ニ短調 作品107「宗教改革」

指揮:ファビオ・ルイージ

開演前の室内楽
ラヴェル(竹島悟史編)/組曲「マ・メール・ロワ」

クラリネット、小クラリネット:伊藤 圭
ファゴット、コントラファゴット:水谷上総
トランペット、フリューゲルホルン:長谷川智之
トロンボーン、ユーフォニアム:新田幹男
打楽器:竹島悟史


<開演前の室内楽で打楽器が登場するのは最初で最後?>

Subscription Concerts 2023-2024Program C
No. 2011 Subscription (Program C)
Friday, May 17, 2024 7:30pm [ Doors Open 6:30pm ]

NHK Hall

Program
Mendelssohn / A Midsummer Night’s Dream —Overture, Nocturne, Scherzo, Wedding March
Mendelssohn / Symphony No. 5 D Minor Op. 107, Reformation

Conductor: Fabio Luisi


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N響5月A定期/ファビオ・ルイージ指揮/レスピーギ<ローマ三部作>ほか

2024-05-13 08:22:41 | 演奏会・オペラ・バレエ・演劇(2012.8~)

ルイージさんによるレスピーギ「ローマ三部作」。タイフェスタで代々木公園は凄い人盛りでしたが、NHKホールもひさしぶりの当日券完売。外のカオス的盛り上がりとは異なりますが、内も熱い盛り上がりでした。

静けさと劇的さの双方の緊張感を漂わせた日本初演のパンフィリ「戦いに生きて」を含めて、どれも素晴らしい演奏。特に、三部作の中で前半の「松」と最後の「祭り」が圧巻でした。

「松」は冒頭からキラキラ輝くような音色に心奪われます。出色は松本さんのクラリネットの美音。そして、両サイドのバルコニーからのトランペット、トロンボーンを含めて、打楽器も5、6名?が配置され、NHKホールの空間をフル活用。それらがすべて管弦打楽器すべてがどれも埋もれることなく、有機的に溶け合う中に身を置くのは、まさにエクスタシーそのものでした。

「祭り」は更に濃度と劇的さをスケールアップ。ホルン、クラリネット、オーボエ、フルートの管陣の個人技も冴え、オケ全体、個々の演奏と3階席から双眼鏡を持つ我が視線も忙しい。心すっかり奪われた感覚で、音楽空間の中に身を置いていました。

前任のパーヴォさんももちろん熱い指揮ぶりでありましたが、どちらかと言うと、理知的なバランスの良さが特に秀でていて、それがN響の洗練されたアンサンブルと良くマッチしていた印象がありました。ルイージさんに代わって、その洗練さに加えて、もっと泥臭ささも伴ったひたむきさのようなものが今日の演奏からは感じられた気がしました。

満員の会場は満場一致の歓喜の拍手と歓声。ルイージさんも楽員を讃えながら、やり切った満足感の表情です。今月はあと2回。まだまだ楽しみです。

PS:ロンドン駐在時代の演奏会友達のMiklosさんご夫婦に、1年ちょっとぶりに、偶然、休憩時間帯にお会いしてご挨拶。短い時間でしたが、嬉しいひと時でした。



定期公演 2023-2024シーズンAプログラム
第2010回 定期公演 Aプログラム

2024年5月12日(日) 開演 2:00pm [ 開場 1:00pm ]

NHKホール

パンフィリ/戦いに生きて[日本初演]
レスピーギ/交響詩「ローマの松」
レスピーギ/交響詩「ローマの噴水」
レスピーギ/交響詩「ローマの祭り」

指揮:ファビオ・ルイージ

Subscription Concerts 2023-2024Program A
No. 2010 Subscription (Program A)

Sunday, May 12, 2024 2:00pm [ Doors Open 1:00pm ]

NHK Hall

Panfili / Abitare la battaglia [Japan Premiere]
Respighi / Pini di Roma, symphonic poem (Pines of Rome)
Respighi / Fontane di Roma, symphonic poem (Fountains of Rome)
Respighi / Feste Romane, symphonic poem (Roman Festivals)

Conductor Fabio Luisi

 


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N響4月定期Bプロ、クリストファー・エッシェンバッハ指揮/シューマン交響曲第2番

2024-04-28 07:31:22 | 演奏会・オペラ・バレエ・演劇(2012.8~)

N響、4月の定期公演の最後を飾るのは、エッシェンバッハさん指揮によるオール・シューマン・プログラム。3曲夫々素晴らしかったのですが、中でも後半の交響曲第2番が圧巻。音のレンジの広さ、表情の豊かさ、堂々たるスケール感を感じた名演でした。

とりわけ、第2,4楽章での弦陣の気迫あふれる演奏が印象的です。第2楽章は畳み込むように加速がどんどんつき、途中で遠心力働き過ぎてどっかに飛んでいってしまうのではないかと心配した程です。弦パートは各パートリーダーの気魄溢れる演奏に引っ張られ、厚みを持ちつつ、かつ個々の音が春の光が反射する川面のように、キラキラと輝いていました。また、第3楽章のオーボエ、フルート、クラリネットなど木管陣のとろけるような甘美な調べにも痺れました。歌っていましたね。

自席はP席なのでエッシェンバッハさんの表情や動きが良く見えます。ヤノフスキさんにも驚かされましたが、エッシェンバッハさんも今年84歳とはとても思えない姿勢や統率ぶりです。正直、あの指揮棒からどうしてこの音楽が生まれてくるのか全く不思議なのですが、間違いなくN響メンバーは、指揮者とこの作品のイメージを共有して、それに一途に向かっているように感じ取れました。本当にオーケストラって、不思議です。

交響曲2番は、私は今まで殆どマークしてなかった曲です。プログラムにあるように「幻聴に悩まされていた」時に作曲され、「メランコリックな耳鳴りのごとき半音階パッセージの旋回」(第1楽章)、「深い内面に沈んでいく」(第3楽章)ところはあるのですが、私には、この日の演奏は、苦しみながらも、若い前向きのエネルギーを感じるところが大でした。聴きながら、これは明るい「運命」交響曲ではないか、と思ったぐらいです。この日をもって、私の好きな楽曲リスト入りとなりました。

前半のキアン・ソルターニさんソロのチェロ協奏曲は、聴き易い上に情感に訴えるような音楽と演奏でしたが、私の体調が落ち着かず、時折睡魔が襲ってきたりして、非常に集中力を欠いたままでの鑑賞。ゴメンナサイでした。ただ、協奏曲後のアンコールはしっかり聴けました。ペルシャ民謡からで、民族性豊かなしみじみとした音楽で、聴けて良かったピースでした。

終演時の拍手は非常に大きく、暖かいものでした。エッシェンバッハさんは指揮台に上がっている時は全く年齢感じませんが、ステージ出入りの足取りはゆっくりと84歳仕様。私たちの感動を拍手で表し本人にお返ししたい、という気持ちと、あまり無理をお願いするのもどうか、という背反の気持ちが交差します。強面のマエストロもこの大拍手にはとっても嬉しそうな様子。最後はソロカーテンコール付きとなりました。N響とエッシェンバッハさんの演奏会は過去から何度か来ていますが、ここまでの熱と気持ちの入った拍手が続くのは初めての気がします。

またの来日を是非ともお願いしたいと思います。

 

定期公演 2023-2024シーズンBプログラム
第2009回 定期公演 Bプログラム

2024年4月25日(木) 開演 7:00pm [ 開場 6:20pm ]

サントリーホール

シューマン/歌劇「ゲノヴェーヴァ」 序曲
シューマン/チェロ協奏曲 イ短調 作品129
シューマン/交響曲 第2番 ハ長調 作品61

[アンコール曲]

4/25:ペルシア民謡/シーラーズの娘
チェロ:キアン・ソルターニ

指揮:クリストフ・エッシェンバッハ
チェロ:キアン・ソルターニ

 

Subscription Concerts 2023-2024Program B

No. 2009 Subscription (Program B)
Thursday, April 25, 2024 7:00pm [ Doors Open 6:20pm ]

Suntory Hall

Schumann / Genoveva, opera Op. 81—Overture
Schumann /A Minor Op. 129
Schumann / Symphony No. 2 C Major Op. 61

[Encore]
Arpril 25: Persian Folk Song / The girl from Shiraz
Cello: Kian Soltani

Artists
Conductor:Christoph Eschenbach
Cello:Kian Soltani


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N響、4月Cプロ/ブルックナー 交響曲 第7番 ホ長調 (指揮:クリストフ・エッシェンバッハ)

2024-04-25 07:29:25 | 演奏会・オペラ・バレエ・演劇(2012.8~)

まだヤノフスキさんのブラームスの興奮(Aプロ)が醒めやらぬ中、Cプロでも大御所の登場です。今年84歳というクリストフ・エッシェンバッハさんによるブルックナー交響曲7番一本勝負。

演奏始まって直ぐに「お〜」と唸りたくなるようなスローペース。じっくり、しっとりと聴かせてくれます。このあたりは、前週の筋肉質なヤノフスキさんとは好対照。ただ私には、ペースはスローながら、決してしつこさやねっちこさを感じるところはなく、とっても純粋で澄んだ音色のブルックナーに聴こえました(Xで多くの方が、逆の感想をポストされていたので、私の感覚がちょっと違ったのかもしれません)。特に、第2楽章の美しさは格別で、Xで「私の葬式音楽にして」とポストされた方がいらっしゃいましたが、全く同感。私も、聴きながら「自分の葬式音楽に流してほしいなあ」という心持で聴いていました。

第3楽章からはペースの遅さも感じず、スケール大きなブルックナーワールドが展開されました。N響も前週までとは全く違ったマエストロの芸風にしっかりとついて、熱演。コンマスはゲストコンマスに就任された川崎さん。とっても堂々とされた見た目と切れ味鋭いヴァイオリンの音が飛んでききます。オーボエ首席には吉井さんが座りました。いつもながら吉井さんのオーボエは芯が太くて、強く引き付けられました。

エッシェンバッハさん、ブルックナーという組合せもあってか、会場は8割方埋まってました。一人のフライングブラボー・拍手も出ることなく、余韻を楽しみながらの終演。大きな拍手に包まれてエッシェンバッハさんも満足そうだし、我々聴衆もお腹一杯という感じです。

ヤノフスキさんとスタイルは違いましたが、似ていたのは前X上での好き・嫌いの分断。其々のコメントがとっても興味深いものでした。

演奏会前の室内楽では、オーボエ、イングリッシュ・ホルンの降り番の吉村さん、坪池さん、和久井さんが登場。ベートーヴェンの「2本のオーボエとイングリッシュ・ホルンのための三重奏曲」の第一楽章、そしてアンコールとして第三楽章を演奏してくれました。優しくおおらかな音楽で演奏も素敵でした。加えて、私は、初めて吉村さんの生声聞いてとっても嬉し😅

 

定期公演 2023-2024シーズンCプログラム
第2008回 定期公演 Cプログラム

ブルックナー生誕200年

2024年4月19日(金) 開演 7:30pm(休憩なし) [ 開場 6:30pm ]
NHKホール

曲目:
ブルックナー/交響曲 第7番 ホ長調

指揮:クリストフ・エッシェンバッハ

 

開演前の室内楽
曲目:
ベートーヴェン/2本のオーボエとイングリッシュ・ホルンのための三重奏曲 ハ長調 作品87―第1楽章

オーボエ:𠮷村結実、坪池泉美
イングリッシュ・ホルン:和久井 仁

Subscription Concerts 2023-2024Program C
No. 2008 Subscription (Program C)
The 200th Anniversary of Anton Bruckner's Birth

Friday, April 19, 2024 7:30pm [ Doors Open 6:30pm ]
NHK Hall

Program
Bruckner / Symphony No. 7 E Major

Conductor:Christoph Eschenbach

Pre-concert Chamber Music Performance

Program:
Beethoven / Trio for 2 Oboes and English Horn C Major Op. 87―1st Mov.

Artists

Oboe

Yumi Yoshimura
Izumi Tsuboike

English Horn
Hitoshi Wakui


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