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その後の『ロンドン テムズ川便り』

ことの起こりはロンドン滞在記。帰国後の今は音楽、美術、本、旅行などについての個人的覚書。Since 2008

真央くんはピアノ界の大谷翔平:N響5月C定期,、指揮 ギエドレ・シュレキーテ、R. シュトラウス/歌劇「ばらの騎士」組曲ほか

2025-06-01 07:30:28 | 演奏会・オペラ・バレエ(2012.8~)

欧州演奏旅行帰りのN響のおかえりなさい定期演奏会。だが、いつもの定演とは様相が違う。

週初めにN響ガイドに土曜日から金曜日の振替をお願いしたら、「今回は既に多数の金曜日への振替を受けており、お席のランクダウンの可能性高いことをご承知ください」との警告。「ランクダウンもありますので・・・」はいつもの常套句なのだが、今回はトーンが遥かに強く、何事かと身構えた。

会場に着いてみて完売であることを知る。しかもNHKホール内、いつもの中高年男性中心の聴衆と明らかに違って、女性が多数。やっぱりこれは真央君効果、と容易に想像がついた。

振替となった席は幸いなことに土曜日の定位置の隣席。これは「ありがた山でございます」。隣席は同世代ぐらいの女性二人連れ。開演前にプログラムを読んでいる私に「今日の演目は何ですか?」と気安くお尋ねいただいた。驚きは胸にしまいながら、口で説明するのは曲数も多くて大変なので、そのままプログラムをお渡しして、「今日の演目はこちらですよ」とご案内した。「え、頂いてよろしいんですか・・・」「いやいや・・・」。

そんないつもと違う雰囲気であったが、そのみんなのお目当ての藤田真央くんはシューベルトの「ロザムンデ」序曲に続いて登場。私自身は2020年11月のコロナが落ち着かない頃に定演代わりに実施されたN響演奏会以来2回目。あれから5年近くが経過してるが、子供がそのまま大人になったような自由で気取らない様子や醸し出すオーラは全く変わってなかった。

演目のドホナーニ作曲「童謡(きらきら星)の主題による変奏曲」の演奏は、真央くんの外見そのものの、天真爛漫で伸びやかで清らかな美しさ。決して強い打鍵なようには見えないが、音がとっても明瞭に濁りなく3階席まで届いてきた。

オーケストラとの合わせも無理なく無駄なく一体化している中で、真央君の個性がしっかり輝いているのも素晴らしい。この作品、冒頭にオーケストラによる重厚な音楽が暫し続くが、真央君はオケを向いて一心に見つめ、奏でられる音楽を心から楽しんでいる。この様子は何か大谷翔平が野球を楽しんでいるのと同じような雰囲気を感じた。まさに天才とはこういう人達を指すのだろう。

アンコールはデオダ・ド・セヴラックの「ポンパドゥール夫人へのスタンス」という全く知らない楽曲だが、こちらも優雅ながらに聴衆の心をつかんで離さない演奏。ほんと素晴らしいピアニストだ。

後半はR. シュトラウスの代表的オペラ作品をまとめた2曲。今回N響初登場でオペラを得意としている女性指揮者ギエドレ・シュレキーテならではの選曲。

「影のない女」は、昨年、物議を醸したコンヴィチュニー演出の二期会オペラの観劇以来だが、改めてこの音楽の美しさやダイナミックさが理解できた演奏だった。トロンボーンによるバラクの愛の歌も耳に残る。

シュレキーテは欧州人としては中背だと思うが、姿勢よく、腕もいっぱいに伸ばして大きく指揮して、ダイナミックに音楽を創る。一方で、これはシュレキーテ故か、N響の演奏によるものなのか、はたまた私の耳が悪いのか分からないが、盛り上がり箇所において、やや散らかって普段のN響らしい凝集された演奏とは少し異なっていたような気がした。

それは、最後の「ばらの騎士組曲」も然りで、もちろん、美しさと切なさと楽しさが織り込まれたこの楽曲のすばらしさは十分に堪能した上で、どうも音楽がフォーカスしきれてないような印象を持ったところはあった。

いずれにしても、ちょっと気になったという程度であって、この日の初登場のシュレキーテ、素晴らしい真央君の演奏、プログラム全体のつくりの魅力など、印象に残る定期演奏会であったことは間違いない。


定期公演 2024-2025シーズンCプログラム
第2038回 定期公演 Cプログラム
2025年5月30日(金) 開演 7:00pm [ 開場 6:00pm ]

NHKホール

 


シューベルト/「ロザムンデ」序曲
ドホナーニ/童謡(きらきら星)の主題による変奏曲 作品25*
R. シュトラウス/歌劇「影のない女」による交響的幻想曲
R. シュトラウス/歌劇「ばらの騎士」組曲

[アンコール曲]
5/30:デオダ・ド・セヴラック/ポンパドゥール夫人へのスタンス
ピアノ:藤田真央

指揮:ギエドレ・シュレキーテ

ピアノ:藤田真央*

 


Subscription Concerts 2024-2025Program C
No. 2038 Subscription (Program C)
Friday, May 30, 2025 7:00pm [ Doors Open 6:00pm ]

NHK Hall

Schubert / Rosamunde, overture
Dohnányi / Variations on a Nursery Tune, Op. 25*
R. Strauss / Symphonic Fantasy from Die Frau ohne Schatten (The Woman Without a Shadow)
R. Strauss / Suite from Der Rosenkavalier (The Rose-Bearer)

[Encore]
May 30: Déodat de Sévérac / Stances à Madame de Pompadour
Piano: Mao Fujita


完売御礼!音響追求プログラム:下野竜也、都響、黛 敏郎:涅槃交響曲ほか

2025-05-01 07:28:30 | 演奏会・オペラ・バレエ(2012.8~)
「音響」追求した作品を揃えた、凝りに凝った通向けプログラム。私はどれも経験ない現代曲でもあり、いっそ振替えようかとまで考えた演奏会だったが、ホールに着いてみればなんと完売。都響の聴衆というか日本のクラシックファンって、「通」の層が厚いのね。怖いぐらい。
 
公演は少々私には難易度高すぎだったが、純粋に響きの面白さは味わえ、経験値が高まったので行って良かったというのが素直な感想。
 
冒頭の「ゴンドワナ」は、SF映画の宇宙空間や海底世界の背景音楽として使われるような印象で音の響きが異次元的。
 
二曲目の「重力波」はステージ中央奥と1階左右の出入口扉前に陣取った(私からはステージ向かって右側は死角で見えないが)、3つの大太鼓が様々な音を発してホールの響きの場を作っていく。「重力波」という標題がぴったりだ。
 
後半の「涅槃交響曲」は、鐘の響きをオーケストラが再現し、男性合唱団が念仏コーラスを唄う。まさに仏教の世界観を交響曲として表現する。オケの音は深遠で、1階席の中央の横通路に金管やコントラバス、銅鑼も陣取り、異空間を構築していた。合唱も抑制の効いた「念仏」ぶりで、美しかった。
 
ただこれは個人的事情に基づく主観に過ぎないが、環境的に幼い頃、仏教や念仏が身近だった私(今は逆に遠ざかってしまったけど)には、仏教の世界観を交響曲で表現することに、違和感というほどでもないが、何か不思議な心持ちが湧いた。マタイ受難曲を和楽器で演奏したら、西洋人はどんな心持ちになるのだろうか、などと余計なことを頭をよぎった。
 
演奏としては、都響の素晴らしさとともに、下野さんの捌きが印象的。リズムや強弱など複雑さ満載の現代曲をきちっと整理整頓して聴衆に示してくれる。
 
終演後は、完売の聴衆席から熱い拍手だけでなく、声も飛んだ。これも凄い。
 
 
 
第1020回定期演奏会Aシリーズ
日時:2025年4月30日(水) 19:00開演(18:00開場)
場所:東京文化会館
 
指揮/下野竜也
男声合唱/東京混声合唱団*
 
 
曲 目
トリスタン・ミュライユ:ゴンドワナ(1980) 
夏田昌和:オーケストラのための《重力波》(2004) 
黛 敏郎:涅槃交響曲(1958)*
 
Subscription Concert No.1020 A Series
Date: Wed. 30. April 2025 19:00 (18:00)
Venue: Tokyo Bunka Kaikan 
 
Tatsuya SHIMONO, Conductor
The Philharmonic Chorus of Tokyo, Male Chorus *
 
 
Program
Tristan Murail: Gondwana (1980) 
 
Masakazu Natsuda: Gravitational Wave for orchestra (2004) 
 
Toshiro Mayuzumi: Nirvana Symphony * (1958)
 
 

マーラー・フェスティバルへの期待大! ファビオ・ルイージ/N響 マーラー交響曲第3番

2025-04-28 07:39:43 | 演奏会・オペラ・バレエ(2012.8~)

5月にアムステルダムで開催されるマーラー・フェスティバルに出演するプログラムのお披露目演奏会。アジアのオーケストラでは初めての招聘で、N響以外の招待オケはロイヤル・コンセルトヘボウ、ブダペスト祝祭管、シカゴ響、ベルリン・フィルというから、メンバーの高い士気も容易に想像がつく。

そして演奏は、その気合と緊張感がひしひしと伝わり、美しく力強い響きは交響曲を聴く醍醐味にあふれたものだった。冒頭のホルンの合奏から最終楽章でタクトが下ろされるまでの100分間、聴くほうも緊張感一杯で全身感度をマックスにあげて受け止めた。痺れっぱなしの音楽体験だった。

オーケストラはほとんどのパートで各パートリーダー2名が演奏する強力布陣。しかも合唱陣が後ろに位置するためか、オーケストラは1階前方にせり出したステージの前一杯から配置されている。結果として、私の3階席右サイドから演奏者たちとの距離が縮まり、3階席ながら音がダイレクトかつ明瞭に伝わってくる。音のシャワーを思いっきり浴びた。

第4楽章のアルトのオレシア・ペトロヴァの独唱や第5楽章のコーラスもオーケストラとのバランスが素晴らしく、突出して目立つことなく、音楽全体の中に溶け込んでいた。ペトロヴァは丁寧かつ繊細な歌唱で、しっかりした芯と豊かな表現力を感じるものだった。

合唱陣は東京オペラシンガーズ・NHK児童合唱団とも純度高い透明感にあふれる歌唱。以前、パーヴォ/N響で同曲を演った際に、児童合唱の子が演奏中に体調を崩してしまうというアクシデントがあったが、この日は異様なまでの緊張感の中、しっかり歌い切った(小学校低学年と思われるような児童もいた)。

最終楽章の美しさは私の筆力ではとても書き表せないもの。静かに弱音で演奏される部分は耳をそばだて、ピュアで奥深い音楽を前のめりで聴いた。始まって相当長い時間がすでに経過しているのだが、この楽章が終わってほしくない、いつまでも続いてほしいという思いで一杯だった。

前日は金管陣が不調との指摘を多くのポストをX上に見かけて心配したのだが、この日は大きな違和感は感じることなく、むしろ金管陣の積極的に攻めに出る姿勢が感じられた。木管陣は節々に美しいソロを聴かせたし、弦陣は前のめりの演奏は普段以上に太く、厚いアンサンブルを創っていた。

ルイージはいつものアツアツの指揮ぶりで、オケ、合唱を引っ張る。ところどころの緩急や強弱のアクセントがつくが、全体としては無駄無い筋肉質の音楽作りの印象。ただ私自身、楽譜読んだり、聴き比べするほど聴き込んでも居ないので客観的な解釈論はよく分から無い。私自身は十二分に楽しんだ。

終演後は、完売・満員のNHKホールの聴衆から割れんばかりの熱狂的な拍手と歓声が贈られた。私も手が痛くなるほどの拍手を寄せた。アムステルダムでは果たしてどのような評価を受けるのか。ぜひ、遠慮することなく存分に力を発揮し、欧米の参加オケと聴衆を驚かせて来てほしい。




定期公演 2024-2025シーズンAプログラム
第2036回 定期公演 Aプログラム
2025年4月27日(日) 開演 2:00pm [ 開場 1:00pm ]

NHKホール

― N響ヨーロッパ公演2025 プログラム ―
マーラー/交響曲 第3番 ニ短調

指揮:ファビオ・ルイージ
メゾ・ソプラノ:オレシア・ペトロヴァ
女声合唱:東京オペラシンガーズ
児童合唱:NHK東京児童合唱団

 

Subscription Concerts 2024-2025Program A
No. 2036 Subscription (Program A)
Sunday, April 27, 2025 2:00pm [ Doors Open 1:00pm ]

NHK Hall

- The Program Scheduled to be Performed in NHKSO Europe Tour 2025 -
Mahler / Symphony No. 3 D Minor

Conductor: Fabio Luisi
Mezzo Soprano: Olesya Petrova
Female Chorus: Tokyo Opera Singers
Children Chorus: NHK Tokyo Children’s Chorus


東京・春・音楽祭 J.シュトラウス 喜歌劇《こうもり》 (J.ノット/東響)

2025-04-22 08:08:27 | 演奏会・オペラ・バレエ(2012.8~)

(多くのポストがX上に投稿されつくされているので、簡単に個人的感想だけ)

私的に今年最後の春祭プログラム。ノット監督と東京は毎年のR.シュトラウスの演奏会方式のオペラ公演で素晴らしいパフォーマンスを連発してくれているので、似て非なる「シュトラウス」だが期待をもって本演奏会のチケットを購入。「こうもり」は有名なオペレッタだが、私は鑑賞経験なかったので、こちらも楽しみであった。

季節の変わり目からの寝不足と疲れもあって自分の体調は万全とは言えなかったが、今回も歌手陣、合唱、オケ、演出が揃って素晴らしく、このオペレッタの楽しさが全開の上演だった。

なんと言っても目立ったのは、歌手陣のすばらしさ。とりわけ、アイゼンシュタイン役のアドリアン・エレートとファルケ博士役のマルクス・アイヒェの男性バリトン2人の歌唱と演技は演奏会方式であることを忘れさせるもので、舞台が躍動していた。代役として入ったロザリンデ役のアニタ・ハルティヒも、堂々と安定感あるソプラノでとても代役には見えなかった。アデーレ役のソフィア・フォミナ、アルフレート役のドヴレト・ヌルゲルディエフもとても持ち味を十分に発揮していて、主役陣に引けを取らない存在感を示していた。

ノット、東響もJ.シュトラウスの音楽の美しさ、楽しさを存分に味合わせてくれた。音楽ってこういう楽しいものだよね、と思わせてくれる見本のような演奏。演奏会から数日間、ここでの音楽が頭の中で繰り返しリフレインされた。

演出は舞台前方にソファや机が置かれた簡易セットと照明を組み合わせたものだが、場面想像には必要十分なもの。なにしろ、歌手陣の動作や表情が豊かなので、簡易セットで十二分に事足りる。

唯一残念だったのは聴衆の入り。ぱっと見、6割ぐらいだっただろうか。エリアによって密度の濃淡はあるものの、私の4階右サイド席は後ろの列は丸々空いていた。こんな楽しいオペラは、満員の劇場でみんなで笑って楽しめれば、楽しさもさらに倍増するのになあ。もちろん終演後の拍手は大きいものだったが、そんな思いが頭をよぎった。

ノット監督は今年度が監督最終年。あと何回このコンビの演奏会に行けるだろうか。

 

 

日時・会場
2025年4月18日 [金] 15:00開演(14:00開場)
東京文化会館 大ホール

出演
指揮:ジョナサン・ノット

アイゼンシュタイン(バリトン):アドリアン・エレート
ロザリンデ(ソプラノ):アニタ・ハルティヒ※
アデーレ(ソプラノ):ソフィア・フォミナ
アルフレート(テノール):ドヴレト・ヌルゲルディエフ
ファルケ博士(バリトン):マルクス・アイヒェ
オルロフスキー公爵(メゾ・ソプラノ):アンジェラ・ブラウアー
ブリント博士(テノール):升島唯博
フランク(バス・バリトン):山下浩司
イーダ(メゾ・ソプラノ):秋本悠希
フロッシュ:志村文彦
管弦楽:東京交響楽団
合唱:東京オペラシンガーズ
合唱指揮:米田覚士
構成:リリ・フィッシャー

※当初出演を予定しておりましたロザリンデ役(ソプラノ)のヴァレンティーナ・ナフォルニツァは都合により出演ができなくなりました。代わりまして、アニタ・ハルティヒが出演いたします。

曲目
J.シュトラウス2世:喜歌劇《こうもり》(全3幕/ドイツ語上演・日本語字幕付) 
上演時間:約3時間(休憩含む)

Date/Place
April 18 [Fri.], 2025 at 15:00(Door Open at 14:00)
Tokyo Bunka Kaikan Main Hall

Cast
Conductor:Jonathan Nott
Eisenstein(Baritone):Adrian Eröd
Rosalinde(Soprano):Anita Hartig
Adele(Soprano):Sofia Fomina
Alfred(Tenor):Dovlet Nurgeldiyev
Dr Falke(Baritone):Markus Eiche
Prince Orlofsky(Mezzo-soprano):Angela Brower
Dr. Blind(Tenor):Tadahiro Masujima
Frank(Bass-baritone):Koji Yamashita
Ida(Mezzo-soprano):Yuki Akimoto
Frosch:Fumihiko Shimura
Orchestra:Tokyo Symphony Orchestra
Chorus:Tokyo Opera Singers
Chorus Master:Satoshi Yoneda
Director:Lilli Fischer

Program
J.Strauss II:“Die Fledermaus”(Operetta in 3 Acts / Sung in German with Japanese surtitles)
Approx. 3 hours including intermissions.

 


パーヴォらしさ全開のプログラム N響4月B定期:プロコフィエフ/交響組曲「3つのオレンジへの恋」ほか

2025-04-19 07:14:15 | 演奏会・オペラ・バレエ(2012.8~)

4月パーヴォ月間のBプログラムは、都合により1日目に振替え。前週よりも更にパーヴォらしさがふんだんに発揮されたプログラムで、目が眩むほどエキサイティングな音楽体験となった。ストラヴィンスキーの「ペトルーシカ」、ブリテンのピアノ協奏曲、プロコフィエフの「3つのオレンジへの恋」、いずれもリズムや音の情景が目まぐるしく変化し、色彩も豊か。パーヴォとN響は、切れのあるシャープな演奏を展開し、個人的には今年のN響定期演奏会の中でもトップクラスの満足度だった。

前半は、プログラムのラストに持ってきてもいい「ペトルーシカ」で、1回表からフルスロットでスタート。ここ数年では、N響で山田和樹、鈴木パパで聴いている。謝肉祭の雑踏の中に入り込んだようなエネルギーに溢れた音楽が大好き。きびきびとメリハリの利いたパーヴォの棒に、N響が平然とついていく(ように見える)様に舌を巻く。ピアノは松田華音がオーケストラの中央(指揮者の目の前)で演奏。オーケストラと一体となった演奏だった。

ブリテンのピアノ協奏曲は全く初めて聴く曲。決してとっつきやすい音楽ではないが、こちらも第1楽章の活気あふれる音楽から第2楽章の陰鬱な雰囲気も伴う漂うワルツなど、変化に富む。ピアノ独奏のベンジャミン・グローヴナーは高速で手が動き(私の席からは指までは見えない)、スピード感一杯にピアノの音が弾ける。ステージ奥のP席では正直ピアノの音の詳細は良く分からないのだが、相当のテクニックが求められそうなこの曲を難なく弾きこなした。

ラストの「3つのオレンジへの恋」はこの日の演奏曲としては一番短いが、管弦打楽器がそれぞれの力を見せつけ、オーケストラが爆発。プロコフィエフらしい活気あるリズムとオケの爆音が組み合わさって、圧倒的な演奏だった。「戦争」では斜め前のおじさんが気持ちよさそうにエア指揮を展開していたのが気になった(何故か私の前の列は5席程度が空席で指揮スペースたっぷり)が、振りたくなる気持ちは理解。

終演後の会場の拍手は私の興奮度からするとやや控えめな印象で意外だった。私の両隣りの方も、冷静な拍手を送っていた。ただ、オケ解散後も粘り強く拍手を続けるお客に引っ張られるように、拍手を再開する人も増え、最後はささやかな一般参賀も実現。最近、一般参賀が習慣化しているのは鼻白むところもあるが、こんな素晴らしい演奏こそソロコールがふさわしいと思ったので、私としても嬉しい限りだった。

パーヴォは間違いなくN響から彼ならではの音を引き出してくれる指揮者だ。返す返す来シーズンのラインナップにパーヴォの名前が無いのが残念。


第2035回 定期公演 Bプログラム
2025年4月18日 (金) 開演 7:00pm

サントリーホール

曲目
ストラヴィンスキー/バレエ音楽「ペトルーシカ」(全曲/1947年版)
ブリテン/ピアノ協奏曲 作品13
プロコフィエフ/交響組曲「3つのオレンジへの恋」作品33bis


指揮 : パーヴォ・ヤルヴィ
ピアノ : ベンジャミン・グローヴナー(ブリテン)
ピアノ : 松田華音(ストラヴィンスキー)

Subscription Concerts 2024-2025Program B
No. 2035 Subscription (Program B)

Thursday, April 17, 2025 7:00pm [ Doors Open 6:20pm ]
Suntory Hall

Program

Stravinsky / Petrushka, burlesque in 4 scenes (Complete, 1947 Version)
Britten / Piano Concerto Op. 13
Prokofiev / The Love for Three Oranges, symphonic suite Op. 33bis

Conductor Paavo Järvi
Piano Benjamin Grosvenor (Britten)
Piano Kanon Matsuda (Stravinsky)


2年ぶりにパーヴォ:N響4月A定期、プロコフィエフ交響曲第4番ほか

2025-04-16 08:04:31 | 演奏会・オペラ・バレエ(2012.8~)

小雨降る日曜の午後、金曜夜のムーティ/春祭オケの余韻がまだ残っている中、N響の4月A定期へ。2年ぶりにパーヴォが登場です。

前半のベルリオーズ「イタリアのハロルド」はヴィオラ独奏のアントワーヌ・タメスティの独壇場でした。久しぶりに見る姿勢正しく凛としたパーヴォがステージに現れると、独奏者が登場しないうちに演奏が始まります。しばらくして舞台袖奥からタメスティが登場し、歩きながらの独奏がスタート。オーケストラの斜め左奥に位置するハープ早川さんの隣で、語り合うように演奏されるヴィオラとハープの合奏はいきなり胸打たれる美しさ。そして、その後もタメスティは、オーケストラのあちこちに移動。まさにハロルドの巡礼です。そのセミ演劇的なパーフォーマンスとともに、奏じられるヴィオラの表情の奥深さにもうっとりで、まるでオペラを見るかのようでした。

サプライズな演出と素晴らしい演奏に大喜びの聴衆からの大拍手に応えたアンコールは、バッハの無伴奏チェロ組曲第1番サラバンドのヴィオラ版。個人的に好きな曲なこともあり嬉しさいっぱいで、しみじみと味わいました。

後半のプロコフィエフの交響曲第4番は、私は全く初めて。プロコらしい変化に富んだ楽曲で、ところどころバレエの「ロミオとジュリエット」や「シンデレラ」を感じるところもあって楽しい。パーヴォのメリハリあってリズム感満載の指揮とも相性抜群です。更に、それに平然とついて行っているように見えるN響にも舌を巻きながら聴いていました。爆音の合奏がホールに轟きますが、決して崩れたりすることなく完璧なバランスです。ただ、まだ慣れない曲のためか、私自身が、速球と鋭い変化球を投げわける実力派投手に翻弄される打者のようで、全体を把握するには程遠く、パート・パートで楽しむに留まったのは残念です。

前半後半あわせて、さすがパーヴォ/N響と唸らせられる演奏会。来シーズンのラインナップにはパーヴォの名前が無いのがとっても残念です。残り1回のパーヴォ回を楽しみたいと思います。

定期公演 2024-2025シーズンAプログラム
第2034回 定期公演 Aプログラム
2025年4月13日(日) 開演 2:00pm [ 開場 1:00pm ]
NHKホール

ベルリオーズ/交響曲「イタリアのハロルド」*
プロコフィエフ/交響曲 第4番 ハ長調 作品112(改訂版/1947年)

[アンコール曲]
4/12:J.S.バッハ/無伴奏チェロ組曲 第1番 ト長調 BWV1007 (ヴィオラ版) ― 「前奏曲」
4/13:J.S.バッハ/無伴奏チェロ組曲 第1番 ト長調 BWV1007 (ヴィオラ版) ― 「サラバンド」
ヴィオラ:アントワーヌ・タメスティ

指揮
パーヴォ・ヤルヴィ
ヴィオラ
アントワーヌ・タメスティ*

Subscription Concerts 2024-2025Program A
No. 2034 Subscription (Program A)
Sunday, April 13, 2025 2:00pm [ Doors Open 1:00pm ]

NHK Hall

Berlioz / Harold en Italie, symphony (Harold in Italy) *
Prokofiev / Symphony No. 4 C Major Op. 112 (Revised Version / 1947)


[Encore]
April 13: J.S.Bach / Cello Suite No. 1 G Major BWV1007 (Viola ver.) - Sarabande
Viola: Antoine Tamestit
Conductor
Paavo Järvi
Viola*
Antoine Tamestit


東京・春・音楽祭2025: 圧巻のリッカルド・ムーティ指揮/東京春祭オーケストラ

2025-04-14 06:42:40 | 演奏会・オペラ・バレエ(2012.8~)

東京・春・音楽祭の毎年の目玉であるムーティ指揮のオペラや演奏会。残念ながら、今年はオペラ上演はありませんが、恒例の春祭オーケストラの演奏会はイタリアもののオペラ曲と管弦楽曲で固めた垂涎のプログラム。

ステージに現れたムーティは今年84歳になるとはとても見えないしっかりとした足取りと姿勢。登場とともに、ホールに大きく暖かい期待感一杯の歓迎の拍手とともに、ステージ上には緊張感も走ります。

前半はオペラの序曲や間奏曲。勇壮な<ナブッコ>の序曲で始まり、その後は優しく、柔らかい間奏曲が続きます。ピシっとしまったナブッコは想定の範囲内ですが、《カヴァレリア・ルスティカーナ》や《道化師》の甘い間奏曲でもムーティが振ると溶けるような甘さの中にギリギリの張り詰めたものが感じられるのが不思議です。本当に純度高い良い音楽を聴かせてもらっているという幸せな気持ちで充たされます。

尻上がりに熱量が上がり、《運命の力》序曲は超弩級の演奏。ジュニアオールスターズとも呼べるN響の郷古コンマスのリードの元、ホールの空気が揺れているのが分かるほど、造形は崩れることなく圧倒的なパワフルな演奏でヴェルディを堪能。

後半のトップバッターのカタラーニ、コンテンプラツィオーネは初めて聴く曲でしたが、とても優しく美しい音楽。そして、フィナーレのレスピーギの交響詩《ローマの松》は 圧巻でした。第一曲冒頭から万華鏡を見るようなきらめき輝く音色に胸を鷲掴みにされる感覚です。カタコンペに眠る死者たちの深い唸りのように聴こえてくる第二曲。そして第四曲の堂々として自信に満ちた〈アッピア街道の松〉。まさに古代ローマ軍の凱旋行進のようでした。

春祭オケは、ジュニアとは言っても、私が知っているだけでも、日本の主要オーケストラで活躍している演奏家が多数参加していて実力は保証付きでしょうが、そんな日本のエリート若手音楽家も、「この機会を逃すまじ」というかの如くの気迫で、必至にムーティにくらいついて行くのが分かる演奏。聴く者にとっても、オケがから発せられる音が体に刻み込まれる様な至高の音楽体験でした。

カーテンコールは凄まじい拍手。何度も呼び戻され、最後は腰を曲げて老人アピールをして退場。年齢を重ねても元気な指揮者は沢山いますが、ムーティほど老いを感じさせない指揮者はそうはいないと思います。来年も元気に来日して欲しいです。

2025年4月11日 [金] 19:00開演(18:00開場)
東京文化会館 大ホール

指揮:リッカルド・ムーティ
管弦楽:東京春祭オーケストラ

曲目

ヴェルディ:歌劇《ナブッコ》序曲 
マスカーニ:歌劇《カヴァレリア・ルスティカーナ》間奏曲
レオンカヴァッロ:歌劇《道化師》間奏曲
ジョルダーノ:歌劇《フェドーラ》間奏曲
プッチーニ:歌劇《マノン・レスコー》間奏曲
ヴェルディ:歌劇《運命の力》序曲 
カタラーニ:コンテンプラツィオーネ
レスピーギ:交響詩《ローマの松》 

Riccardo Muti Conducts Tokyo-HARUSAI Festival Orchestra
April 11 [Fri.], 2025 at 19:00(Door Open at 18:00)

Tokyo Bunka Kaikan Main Hall

Conductor:Riccardo Muti
Orchestra:Tokyo-HARUSAI Festival Orchestra

Program

Verdi:“Nabucco” Overture
Mascagni:“Cavalleria Rusticana” Intermezzo
Leoncavallo:“Pagliacci” Intermezzo
Giordano:“Fedora” Intermezzo
Puccini:“Manon Lescaut” Intermezzo
Verdi:“Forza del Destino” Overture
Catalani:Contemplazione
Respighi:Pini di Roma

 


25-26シーズンスタート! 大野和士/都響、ブラームス ピアノ協奏曲第2番ほか

2025-04-09 07:35:27 | 演奏会・オペラ・バレエ(2012.8~)

都響の2025-2026シーズンのスタートの演奏会。9月はじまりのN響シーズンは長い夏休み明けで気分がリフレッシュされますが、4月始まりだと前シーズンとの間隔も短くてちょっとワクワク感は乏しいかも。でも、両隣の方も変わり、同じ席でも何となく雰囲気が異なります。また、シーズン初めをしっかり大野音楽監督でスタートしてくれて、個人的にとっても嬉しい。

ベルグとブラームスという組合せのプログラムの趣旨は良く分かりませんが、見るからに聴き応え満載感が漂っています。

前半のベルグの「管弦楽のための3つの小品」は初めて聴く曲。先月、「ヴォツェック」でベルグの音楽の素晴らしさを堪能したので期待感が高かったのですが、本曲は私にはちょっと荷が重かった。小品とは言ってもステージ一杯にオーケストラが配置され、趣向を凝らした楽曲が展開されますが、私には手に余り、席に着いたのが開演直前だったこともあって、途中からは意識朦朧状態に。ごめんなさいです。

後半のブラームスのピアノ協奏曲第2番は実演に接した機会は少ないのですが、改めてこの音楽の素晴らしさを認識させてくれる演奏でした。ピアノ・ソロのゲルシュタインさんはお初。大柄で堂々とした姿勢はピアニストというよりガテン系に見えるほど。力強く打鍵されるピアノからクリアに一音一音が聞こえてきます。力で押し切るというわけでもなく、柔と剛のバランスが良くとれていて、華美なアクションも無く、良い音楽をそのまま聴かせてくれるというスタイルでした。(公演後のXでは、一定数の方から「前半が緩かった」、「本調子では無かった」というようなコメントがポストされていましたが、私には判別つかず)

都響の演奏も非常にクリアで美しい。オーボエ、クラリネットらのソロにも魅かれましたが、何といっても第三楽章のチェロのソロ。優しく、透明感があり、体に沁み入るような音色に多幸感で充たされました。

この音楽、構成と言い、大きなスケール感と室内楽的な響きの双方を持ち合わせていたり、耳に馴染みやすいメロディと言い、改めてその良さに気づかされました。知っているようでその良さを知らない曲が世の中にはまだまだ多くあるのだろうと思うと、ワクワクします。

終演後はゲルシュタインさんを始めとして、チェロ独奏者の伊東さんにも多くの拍手が寄せられました。

今シーズンも楽しみです。

2025年4月7日(月) 19:00開演/東京文化会館
第1018回定期演奏会Aシリーズ

指揮/大野和士
ピアノ/キリル・ゲルシュタイン

ベルク:管弦楽のための3つの小品 op.6
ブラームス:ピアノ協奏曲第2番 変ロ長調 op.83

Mon. 7. April 2025 19:00 / Tokyo Bunka Kaikan
Subscription Concert No.1018 A Series

Kazushi ONO, Conductor
Kirill GERSTEIN, Piano

Three Pieces for Orchestra (Berg)
Piano Concerto No. 2 (Brahms)


(上野公園の桜 花の間に月が出てます)


東京春祭ワーグナー・シリーズ vol.16 《パルジファル》(演奏会形式):マレク・ヤノフスキ×N響

2025-04-02 07:33:45 | 演奏会・オペラ・バレエ(2012.8~)

年度末の忙しさでブログのアップデートもままならない中、勇気を出して半日休みを取って恒例のヤノフスキ/N響のワーグナーシリーズへ。今年の演目はパルジファル。公演する方はもちろんだろうが、聴く方も相当の緊張感と体力が求められる聖なる作品だ。

結局、ヘロヘロになりながら聴きとおした本公演は、つい数週間前に鑑賞したヴァイグレ/読響による衝撃的な名演ベルグ〈ヴォツェック〉と肩を並べる圧倒的な秀演であった。独唱陣、合唱陣、オーケストラの三拍子揃った演奏家達を名匠ヤノフスキががっちりグリップ。血圧上がりまくりのパフォーマンスで、一月の間にn二度もこのような素晴らしい音楽体験ができる自分が信じられない。

歌手陣は外国人、日本人問わず、夫々が良い仕事だった。とりわけ印象的だったのは、アムフォルタス役のゲルハーヘル。出番は題名役やグルネマンツほど多くは無いが、深みあって味わいも迫力もあるバリトンは、まさに空気が変わるという表現が相応しい。ゲルマンツ役のナズミも1幕の長大な語りを初め、物語のベースを固める安定した歌唱。舞台の緊張感が高まった。パルジファル役のスケルトンは昨年のトリスタン役でも聴いているが、巨漢から発せられるテノールが相変わらず美しい。

東京オペラシンガーズの合唱も清らかで神聖なこの楽劇の雰囲気を盛り上げる。特に1,3幕で5階のセンター席から聴こえてきた女声合唱はまさに天上からの響きで、神秘的な空気がホール一杯に充たされた。

ヤノフスキ、N響も毎度ながら引き締まった演奏で緩みが全くない。前奏曲からの荘厳な演奏は神聖で身が清められるよう。全曲を通じて、クラリネット、オーボエ、イングリッシュホルンらのソロの美音も耳に沁みた。

当然だが、終演後は圧倒的な拍手がホールに反響する。いつも厳しい表情のヤノフスキもやっと表情が緩るんでいるように見える。歌手陣、合唱団もまずは無事に初日が終わって一安心という雰囲気に見えた。3時に開演して、終了は夜の8時。凄まじい疲労感はあるものの、あっという間の5時間であった。


(個人的に歌手部門MVPのおふたり)

東京春祭ワーグナー・シリーズ vol.16
《パルジファル》(演奏会形式)

 

日時・会場
2025年3月27日 [木] 15:00開演(14:00開場)
東京文化会館 大ホール

出演

指揮:マレク・ヤノフスキ
アムフォルタス(バリトン):クリスティアン・ゲルハーヘル
ティトゥレル(バス・バリトン):水島正樹
グルネマンツ(バス):タレク・ナズミ
パルジファル(テノール):ステュアート・スケルトン
リングゾル(バス):シム・インスン
クンドリ(メゾ・ソプラノ):ターニャ・アリアーネ・バウムガルトナー
第1の聖杯騎士(テノール):大槻孝志
第2の聖杯騎士(バリトン):杉浦隆大
第1の小姓(メゾ・ソプラノ):秋本悠希
第2の小姓(メゾ・ソプラノ):金子美香
第3の小姓(テノール):土崎 譲
第4の小姓(テノール):谷口耕平
クリングゾルの魔法の乙女たち
 第1の娘(ソプラノ):相原里美
 第2の娘(ソプラノ):今野沙知恵
 第3の娘(メゾ・ソプラノ):杉山由紀
 第4の娘(ソプラノ):佐々木麻子
 第5の娘(ソプラノ):松田万美江
 第6の娘(メゾ・ソプラノ):鳥谷尚子
アルトの声(メゾ・ソプラノ):金子美香

管弦楽:NHK交響楽団
合唱:東京オペラシンガーズ
合唱指揮:エベルハルト・フリードリヒ、西口彰浩
音楽コーチ:トーマス・ラウスマン

曲目

ワーグナー:舞台神聖祝典劇《パルジファル》(全3幕/ドイツ語上演・日本語字幕付)
上演時間:約5時間(休憩含む)

Tokyo-HARUSAI Wagner Series vol.16
“Parsifal”(Concert Style)

Date/Place
March 27 [Thu.], 2025 at 15:00(Door Open at 14:00)
Tokyo Bunka Kaikan Main Hall

Cast
Conductor:Marek Janowski
Amfortas(Baritone):Christian Gerhaher
Titurel(Bass-baritone):Masaki Mizushima
Gurnemanz(Bass):Tareq Nazmi
Parsifal(Tenor):Stuart Skelton
Klingsor (Bass):In-Sung Sim
Kundry(Mezzo-soprano):Tanja Ariane Baumgartner
Erster Gralsritter(Tenor):Takashi Otsuki
Zweiter Gralsritter(Baritone):Takahiro Sugiura
Erster Knappe(Mezzo-soprano):Yuki Akimoto
Zweiter Knappe(Mezzo-soprano):Mika Kaneko
Dritter Knappe(Tenor):Joe Tsuchizaki
Vierter Knappe(Tenor):Kohei Taniguchi
Klingsors Zaubermädchen
 1r Mädchen(Soprano):Satomi Aihara
 2r Mädchen(Soprano):Sachie Konno
 3r Mädchen(Mezzo-soprano):Yuki Sugiyama
 4r Mädchen(Soprano):Mako Sasaki
 5r Mädchen(Soprano):Mamie Matsuda
 6r Mädchen(Mezzo-soprano):Shoko Toya
Eine Altstimme(Mezzo-soprano):Mika Kaneko

Orchestra:NHK Symphony Orchestra, Tokyo
Chorus:Tokyo Opera Singers
Chorus Master:Eberhard Friedrich, Akihiro Nishiguchi
Musical Preparation:Thomas Lausmann

Program
Wagner:“Parsifal”(Opera in 3 Acts / Sung in German with Japanese surtitles)
Approx. 5 hours including intermissions.

 


圧倒的な名演! セバスティアン・ヴァイグレ、読響、 ベルグ 歌劇<ヴォツェック>

2025-03-16 08:30:43 | 演奏会・オペラ・バレエ(2012.8~)

私にとっては、今年前半の目玉演奏会の一つ。もともと題名役をゲルネが出演ということで購入したのだが、数カ月前にキーンリーサイドが代役というお知らせがあり、がっかりどころか逆に狂喜。ロンドン在住時にキーンリーサイドは最も印象的だったイギリス人歌手の一人であり、今でもロイヤルオペラでのマクベスは記憶に深く刻まれている。まさかその彼のヴォツェックが聴けるとは・・・

公演は事前の期待を更に上回るものであった。物語は救いようのない悲惨なものだが、キーンリーサイドはもちろんのこと、外国・日本人による歌唱陣、合唱、読響と各出演者がヴァイグレの棒のもと完璧な仕事をして、圧倒的な名演となった。

久しぶりに見るキーンリーサイドは流石に年齢を重ねた感はあるけども、相変わらずの格好良さ。第1幕前半とかは、精神病を患ったヴォツェックとしてはちょっとスマートすぎないかとの気もしなくもなかったが、劇が進むにつれて狂度が重くなっていくヴォツェックを表情、所作で見事に演じ、演奏会方式ながら歌唱だけでなく演技でも深みある人物像を表現していた。彫と深みあふれるバリトンの表情の豊かさ、美しさは相変わらずで、身体に沁み入る。

そして不貞の妻マリー役のオークスのソプラノはホールを揺るがすような声量。大きいだけでなく、マリーの揺れる女心を丁寧に歌い上げる。高音の緊張感は背筋がぞくぞくする迫力だった。

その他の歌手陣も外国人、日本人ともに、それぞれ存在感が十分ある歌唱。これだけの歌手陣とレベル感はなかなか出会えないと感嘆しきりだった。

舞台後方のP席に陣取った新国立劇場合唱団、フィナーレで舞台前方に現れたTOKYO FM 少年合唱団ともに美しいハーモニーを披露してくれた。

ヴァイグレの手腕なのだろう。読響も豪華歌手陣に全く引けを取らない。かといって目立ちすぎることもなく、歌・合唱とのバランスが見事。ヴァイオリンやチェロのなどの弦のソロや木管の調べなど感泣ものの美しさもあれば、響き渡る金管やこの救いようのない物語を更に悲惨さを加えるような重々しい合奏など、目まぐるしい変幻変化を見せた。ちょっと私の席(9列目)からでは、管楽器奏者を見渡せなかったのは残念。

終演後、大拍手がホール一杯に響き渡る。圧倒的な名演に触れて、我を忘れて、私も手が痛くなるほど拍手を寄せた。隣席の男性は私の右耳が壊れんばかりに「ブラボー」を連発。感動と興奮に包まれたサントリーホールだった。

 

(余談1)今回は単券でS席購入したが、やはり値段に相応しい音の聞こえようで、素晴らしい音楽体験だった。普段のN響、都響は定期会員のシリーズ券なので席は最安ランク。ご贔屓オケの演奏会は最安でそれなりに、非会員の演奏会は上席で満喫というのも、本末転倒の複雑な気分。N響、都響の会員にランクアップサービスとかあれば嬉しいのだが・・・

(余談2)なぜか上演中の途中退席の方が多く、私の視野に入る範囲で5名ほど。私の直前の列ではお二方が出られた。途中休憩なしということを知らずに来られたのかな?

第646回定期演奏会

2025 3.12〈水〉 19:00  サントリーホール

指揮=セバスティアン・ヴァイグレ
ヴォツェック=サイモン・キーンリーサイド(バリトン)
鼓手長=ベンヤミン・ブルンス(テノール)
アンドレス=伊藤達人(テノール)
大尉=イェルク・シュナイダー(テノール)
医者=ファルク・シュトルックマン(バス)
マリー=アリソン・オークス(ソプラノ)
第一の徒弟職人=加藤宏隆(バス) 
第二の徒弟職人=萩原潤(バリトン) 
白痴=大槻孝志(テノール)
マルグレート=杉山由紀(メゾ・ソプラノ)

合唱= 新国立劇場合唱団
TOKYO FM 少年合唱団
音楽総合助手・合唱指揮= 冨平恭平

ベルク:歌劇「ヴォツェック」作品7(演奏会形式)

 

Subscription Concerts No. 646

Wednesday, 12 March 2025, 19:00 Suntory Hall

Conductor= SEBASTIAN WEIGLE

Wozzeck= Sir Simon Keenlyside
Tambourmajor= Benjamin Bruns
Andres= Tatsundo Ito
Hauptmann= Jörg Schneider
Doktor= Falk Struckmann
1. Handwerksbursche= Hirotaka Kato
2. Handwerksbursche= Jun Hagiwara
Der Narr= Takashi Otsuki
Marie= Allison Oakes
Margret= Yuki Sugiyama

Chorus= New National Theatre Chorus
TOKYO FM Boys Choir
Musical Assistant & Chorus Master= Kyohei Tomihira
*Part of the cast has been changed from the initially scheduled cast.

BERG: Wozzeck, op. 7 (Concert style)


初めてカーチュン・ウォンと日フィルのコンビを聴く! マーラー交響曲第2番<復活>

2025-03-09 07:33:23 | 演奏会・オペラ・バレエ(2012.8~)

巷で評判高く気になっていたカーチュン・ウォン/日フィルによる、私の好きなマーラー交響曲第2番というプログラム。昨年、一般販売日の初日に気合を入れてチケット取り、この日が来るのを心待ちにしていました。

感想を正直に言うと、(期待値が高すぎたところもあるのかもしれませんが、)素直に感動したところと、何とも表現し難いもやもや感が共存した演奏でありました。

まず、オケ、合唱、独唱の熱量・集中度高いパフォーマンスが素晴らしかった。日フィルは聴き慣れたオーケストラではありませんが、ウォンの指揮に食らいつき、各奏者のほとばしる集中力が、1階席後部の私にも痛い程伝わってきました。第1楽章の冒頭の弦の低音の響きなどは、ハッとさせられ、これからの1時間半への期待がぐっと高まる合奏に始まり、全楽章を通じて金管もホール一杯に響き渡ります。要所要所での木管の調べも美しい。普段聴いているN響・都響と比較しても全く遜色ないものでした。

オケと並んで、合唱・独唱の素晴らしさも、この日の好演を支えていました。大学の合唱団だからか若いメンバーが目立ちますが、若々しい張りと透明感ある美しさに溢れた合唱でした。独唱の二人もしっかり仕事。メゾソプラノの清水華澄の歌唱が入ると、会場の空気が更に張り詰めたものに変わった印象です。

一方で、まだ私には咀嚼できずもやもや感が残ったのはカーチュン・ウォン。小柄な体を目一杯使って、明確な指示を与えながら、オーケストラをドライブする力は、「さすが今評判の指揮者」と十分納得しました。音楽もしばしばアクセントを置き、テンポも揺らします。そうして紡がれる音楽は、日フィルの献身的な貢献と合わさって、丁寧で濁りが無く、整えられた音楽でした。

ただ私には、特に前半が、不思議に響いてこないところもありました。第2楽章もとっても美しいアンサンブルでうっとりさせられるのですが、なぜか演奏の素晴らしさほど自分の中で刺さらない。「なぜだろう」「何なのか」と言った不思議な自分との対話がありました。

頻繁に現れるテンポの揺らしも、なにか計算されつくした仕掛けのような感覚をもってしまい、日フィルの奮闘には感心する一方で、整いすぎて純粋にその変化に投入できない。マーラーのこの交響曲は宇宙的な響きを感じるのが個人的なツボの1つなのですが、オケは良く鳴っているのだけど、そこまでのスケールある響きには聴こえてこない。そんな印象を持った前中盤でした(これは私の1階深部の座席位置の問題かもしれません)。

ただ第4,第5楽章と進むにつれて、ドライブ感・緊張感が更に増し、特に第5楽章後半はウォンの指揮で、オケ・独唱・合唱が一体となった素晴らしい演奏。荘厳なフィナーレは、もうこんな音楽を残してくれたマーラーにひたすら感謝、感謝です。

終演後は、完売の客席から猛烈な拍手とブラボー。オケも完全燃焼感が伺える表情です。私も大きな拍手を寄せました。

今回、お初のカーチュン・ウォンは、オケの統率や音楽の作り上げる手腕に、口をはさむ余地ない大器ぶりが感じました。この日感じた微妙なもやもや感は、単なる相性のような気もするので、今後の演奏会の中で確認していきたいと思います。







 

第768回東京定期演奏会

2025年3月7日 (金)19:00 開演
サントリーホール


指揮:カーチュン・ウォン[首席指揮者]

ソプラノ:吉田珠代
メゾソプラノ:清水華澄
合唱:東京音楽大学

マーラー:交響曲第2番《復活》 ハ短調

Fri, March 07, 2025
Start 19:00( Doors Open 18:20 )
Suntory Hall

Conductor: Kahchun WONG, Chief Conductor
Soprano: YOSHIDA Tamayo
Mezzosoprano: SHIMIZU Kasumi
Chorus: Tokyo College of Music

Gustav MAHLER: Symphony No.2 "Auferstehung" in C-minor


下野竜也、N響、オッフェンバック(ロザンタール編)/バレエ音楽「パリの喜び」(抜粋)

2025-02-27 07:56:44 | 演奏会・オペラ・バレエ(2012.8~)

遅ればせながら、土曜日のN響定期の感想です。

冬季シリーズの最後を飾るのは正指揮者の下野達也さんによる、オペレッタやバレエの楽曲を中心としたプログラム。

実演にはあまり接しない曲が並ぶプログラムで、私の行動パターンでは1回券ではなかなか購入までは至らないであろうプログラムですが、経験値を広げる機会にであえるのは定期会員ならではの有難さだと思います。

冒頭のスッペの「軽騎兵」序曲。小学校低学年の頃、親が「こどものためのクラシック」的なレコードセットを買ってきて、ちっとも好きでなかったのだけど、この曲が入った盤は子供ながらに曲の格好良さに魅かれ、好んで聴いていました。ただ、大人となってからは、録音は持ってないし、意外と実演に接する機会も無いんですよね。なので、突き抜けるような金管の美音で始まった演奏は、懐かしさとそのスケール大きさに爽快感一杯に満たされました。

続いては、三浦文彰ソロによるサン=サーンスのヴァイオリン協奏曲第3番。この曲のライブは2度目、三浦さんのソロを聴くのは3度目だと思います。奇をてらわずに音楽の美しさを自ずと語らせるような自然体の演奏がとっても素敵でした。第ニ楽章の優しい抒情的なメロディには体がとろけるようです。

アンコールはアンリ・ヴュータン:アメリカの思い出「ヤンキー・デゥードゥル(Yankee Doodle)」(「アルプス一万尺」の原曲と初めて知った!)。ヴァイオリン技をこれでもかという程ご披露いただき、聴衆も大喜びの演奏。

後半の滑り出しは、オペレッタとバレエ音楽から。「詩人と農夫」は辻本さんのチェロの音がホール一杯に響き、うっとり。

そして、ラストはオッフェンバック(ロザンタール編)のバレエ音楽「パリの喜び」(抜粋)。「地獄のオルフェ(天国と地獄)」など、N響のシンフォニックなサウンドが炸裂してとっても爽快。肩ひじ張らず、難しいことも考えず(普段も考えてないけど)気軽に音楽や演奏を楽しむことができるのも良いですね。フィナーレの「舟歌」を聴いて「ホフマン物語」がまた見たくなりました。

3月は定演はお休み月。日フィル、読響など普段なかなか行けてないオーケストラを聴きに行く予定です。

(トロンボーンの吉川さんが3月末で退団でこの日が最後の定演とのこと。お疲れ様でした!)

定期公演 2024-2025シーズンCプログラム
第2033回 定期公演 Cプログラム
2025年2月22日(土) 開演 2:00pm [ 開場 1:00pm ]

NHKホール

スッペ/喜歌劇「軽騎兵」序曲
サン・サーンス/ヴァイオリン協奏曲 第3番 ロ短調 作品61
スッペ/喜歌劇「詩人と農夫」序曲
オッフェンバック(ロザンタール編)/バレエ音楽「パリの喜び」(抜粋)

指揮:下野竜也
ヴァイオリン:三浦文彰

 

Subscription Concerts 2024-2025Program C
No. 2033 Subscription (Program C)
Saturday, February 22, 2025 2:00pm [ Doors Open 1:00pm ]

NHK Hall

Program
Suppè / Leichte Kavallerie, operetta―Overture (Light Cavalry)
Saint-Saëns / Violin Concerto No. 3 B Minor Op. 61
Suppè / Dichter und Bauer, operetta―Overture (Poet and Peasant)
Offenbach / Rosenthal / Gaîté Parisienne, ballet (Parisian Gaiety) (Excerpts)

Artists
Conductor:Tatsuya Shimono
Violin:Fumiaki Miura


東京二期会、ビゼー<カルメン> (指揮 沖澤のどか、読響)

2025-02-25 07:30:22 | 演奏会・オペラ・バレエ(2012.8~)

たまに無性に見たくなる定番オペラの1つが「カルメン」。登場人物にはあまり共感できない(ミハエラ除く)が、ビゼーの音楽が素晴らしい。今回は沖澤のどかさんと読響による演奏に魅かれ、4年ぶりに観劇(初日)。主要歌手陣、合唱団、オケ、演出がしっかりまとまった好演でした。

歌手陣は突出した方は居ませんでしたが、皆さんそれぞれ持ち味を出して、いい仕事をされてました。

題名役の加藤のぞみさんは初めて聴く方ですが、力強い芯のあるメゾソプラノの歌声は、カルメンの強さととってもマッチしてます。演技も堂々たるもの。ドン・ホセ役の城宏憲も美声のテナーで優男ぶりを発揮。声は素晴らしいのですが、ちょっと一本調子のところも感じられ、表現にもっと変化があればもっと良い気がしました。ミカエラの宮地江奈さんは純度の高い美しいソプラノで役柄にぴったり(小学生の遠足のような衣装は首をかしげましたが)。印象深かったのは、エスカミーリョの今井俊輔さんで、立派な体躯(着膨れかどうかは?)から歌われる声は迫力満点で、コミカルな演技も個人的に好み。カルメンはエスカミーリョが良いと、上演の厚みが増すので嬉しかった。

児童合唱も含めた合唱団も素晴らしいハーモニーでした。多くの人数を揃えたロマの一団による合唱は迫力たっぷりで、ホール一杯に響く合唱はとっても心地よいです。

今回1番のお目当てであった沖澤のどかさんが振る読響は、期待に応えた見事なタイムリーヒット。沖澤さんの指揮は、演奏会で2度聴いていますがオペラは初めて。小柄な体格を倍以上に感じさせる大きな指揮ぶりから繰り出される音楽は、とっても自然体で癖がなく体に素直に染み込んでいきます。読響との息もぴったりで、カルメンの躍動感、疾走感を存分に味わいました。作品の良さをしみじみ感じられる嬉しい演奏です。

舞台造形は、第1幕がセビリアのたばこ工場にはとても見えない荒野の設定になっていて、ずっこけて始まりました。2、3幕の間違いではと思ったり、その後も3幕も現代風のネオンセットがあったりして、時空の違和感があったのですが、プログラムには場所・時間を特定しない近未来設定との解説があるようです。ただ舞台設定が音楽や物語の進行を妨げるようなものではなかったし、照明等は美しく舞台が照らされていましたので、違和感はあったものの大きく気にはなりません。むしろ、闘牛場外の場面でダンスチームによるダンスを活用したのが、私としてはとっても好みでした。

終演後は、9割方は埋まった観客席から大きな拍手が寄せられました。演出家がカーテンコールに登場した際は、多少のブーイングも混じっていましたが、ブーイングってほどじゃないよねとの個人的感想です。昨年の同じ二期会公演の「影のない女」にはやられましたが、今回は定番オペラを定番ならではの良さをしっかり味わえる公演で、満足感一杯でホールを後にしました。

※カーテンコールの写真撮影がOKなのもとっても嬉しかった。

カルメン

<新制作>

オペラ全4幕 日本語および英語字幕付原語(フランス語)上演

2025年2月20日(木)

原作:プロスペル・メリメ 小説『カルメン』
台本:リュドヴィック・アレヴィー及アンリ・メイヤック
作曲:ジョルジュ・ビゼー

staff

指揮:沖澤のどか
演出・衣裳:イリーナ・ブルック
装置:レスリー・トラバース
照明:喜多村 貴
振付:マルティン・ブツコ
衣裳補:武田園子
合唱指揮:河原哲也
演出助手:彌六
舞台監督:村田健輔
技術監督:大平久美、村田健輔
公演監督:永井和子
公演監督補:大野徹也

Cast

カルメン:加藤のぞみ
ドン・ホセ:城 宏憲
エスカミーリョ  :今井俊輔
ミカエラ:宮地江奈
スニガ   :ジョン ハオ
モラレス:室岡大輝
ダンカイロ:北川辰彦
レメンダード:高田正人
フラスキータ:三井清夏
メルセデス:杉山由紀

合唱:二期会合唱団
児童合唱:NHK東京児童合唱団
管弦楽:読売日本交響楽団

 

CARMEN

[New Production]
Opera in four acts
Sung in the original language (French) with Japanese and English supertitles
Libretto by Henri Meilhac and Ludovic Halévy, Adapted from the novel by Prosper Mérimée
Music by GEORGES BIZET

Performance Schedule

Thu,20Feb,2025 17:00 Open/18:00 Star

Conductor: Nodoka OKISAWA
Stage Director & Costume Designer: Irina BROOK
Set Designer: Leslie TRAVERS
Lighting Designer: Takashi KITAMURA
Choreographer: Martin BUCZKO
Costume Associate: Sonoko TAKEDA
Chorus Master: Tetsuya KAWAHARA
Assistant Stage Director: Miroku
Stage Manager: Kensuke MURATA
Technical Directors: Kumi ODAIRA, Kensuke MURATA
Production Director: Kazuko NAGAI
Associate Production Director: Tetsuya ONO

Carmen: Nozomi KATO
Don José: Hironori JO
Escamillo: Shunsuke IMAI
Micaëla: Ena MIYACHI
Zuniga: Hao ZHONG
Moralès: Taiki MUROOKA
Le Dancaïro: Tatsuhiko KITAGAWA
Remendado: Masato TAKADA
Frasquita: Sayaka MITSUI
Mercédès:Yuki SUGIYAMA

Chorus: Nikikai Chorus Group
Children Chorus: NHK Tokyo children chorus
Orchestra: Yomiuri Nippon Symphony Orchestra


ポペルカ、N響、シューマン交響曲第1番〈春〉ほか @サントリーホール

2025-02-15 08:40:27 | 演奏会・オペラ・バレエ(2012.8~)

ポペルカとN響の2つ目のプログラムはモーツァルトとシューマンの組合せです。

前半、モーツァルトのアリア3曲を歌ったユコロフスカは初めて聴く方です。安定して美しいメゾソプラノです。ただ残念ながらP席からでは細部分からず、ホールに響く歌声を楽しむのにとどまりました。今度は前から聴きたい。

歌曲の間に挟まれて演奏されたのはモーツァルト交響曲第25番。映画「アマデウス」のシーンが蘇ります。第1楽想から音を絞り出させるようにメンバーに挑みます。その迫力に押されるに叩き込むようなアンサンブルが聴き応えたっぷりで、ドライブ感が満載。オーボエのソロなどの個人技も美しい演奏でした。

後半はシューマン交響曲第1番〈春〉。この曲、〈春〉というにはちょっと激しく忙しい印象を受けるのですが、シューマンの若さやエネルギーが感じられて好きな楽曲です。

ポペルカの指揮は、ここでもN響の合奏力を存分に引き出す力こもったもの。重層的で厚みある音がサントリーホール一杯に響き心地よいです。ヴァイオリン、ビオラ陣に飛びつかんばかりに挑み、全力投球でそれに応えるオケの姿は視覚的にもエキサイティング。第4楽章でホルンからフルートへ独奏が引き継がれる箇所などもハットさせられるような美しさでした。

終演後は満席の会場から割れるような拍手。ブラボーの歓声も多方面から飛んでました。風貌は落ち着いて中堅どころに見えるほどでしたが、まだ30歳代というこれからの活躍が大きく期待されるポペルカ。またの共演を期待したいです。


第2032回 定期公演 Bプログラム
2025年2月14日 (金) 開演 7:00pm

サントリーホール

曲目
モーツァルト/アリア「私は行く、だがどこへ」K. 583*
モーツァルト/アリア「大いなる魂と高貴な心は」K. 578*
モーツァルト/交響曲 第25番 ト短調 K. 183
モーツァルト/レチタティーヴォとアリア「私のうるわしい恋人よ、さようなら ─とどまって下さい、ああいとしい人よ」K. 528*
シューマン/交響曲 第1番 変ロ長調 作品38「春」

指揮 : ペトル・ポペルカ
メゾ・ソプラノ : エマ・ニコロフスカ*

No. 2032 Subscription (Program B)

Conductor:Petr Popelka
Mezzo Soprano*:Ema Nikolovska

Mozart / Vado, ma dove?, aria K. 583*
Mozart / Alma grande e nobil core, aria K. 578*
Mozart / Symphony No. 25 G Minor K. 183
Mozart / Bella mia fiamma, addio—Resta, oh cara, recitative and aria K. 528*
Schumann / Symphony No. 1 B-flat Major Op. 38, Frühlingssinfonie (Spring Symphony)

Suntory Hall


都響A定期、指揮エリアフ・インバル、ショスタコーヴィッチ交響曲第13番《バービイ・ヤール》

2025-02-13 07:22:48 | 演奏会・オペラ・バレエ(2012.8~)

今季都響A定期会員になって最も楽しみにしていた演奏会。インバルさんのショスタコーヴィッチということで高い期待をもって出かけた東京文化会館でしたが、期待を大きく上回る圧倒的な時間となりました。

前半からインバルさんと都響は並々ならぬ気配を漂わせていました。ラフマニノフの交響詩《死の島》はベックの版画にインスピレーションを得て作曲された音楽とのことですが、波に揺られてボートが進む様や陰鬱な島の情景が目に浮かぶような音楽です。オーケストラがインバルの指揮に合わせて、冒頭から高い緊張感を放っていて、その迫力に背筋が伸びます。緩むことのない張りが持続したまま、20分程で曲は終わりましたが、一体後半はどうなるのか、怖くなるほどの前半の演奏でした。

後半のショスタコーヴィッチの《バービイ・ヤール》は昨年、井上道義さん最後のN響定演で聴いた曲です。今回は、字幕があったおかげで、N響の時以上に作品の世界に投入することができました。スターリン後の時期とはいえ、この作品を旧ソ連で発表するショスタコーヴィッチの気概を改めて強く感じます。

そしてそのショスタコーヴィッチの気概と四つに組み合うがごとくの独唱・合唱・オケのパフォーマンスでした。独唱のグリゴリー・シュカルパ、エストニア国立男性合唱団による地響きのような低音が、叙事詩とも言えるこの作品の重厚さを引き立てます。そしてインバルが指揮する都響の前のめりの入魂の演奏も素晴らしい。コンマスの水谷さん(東響から移られて私はきっと初めて)の激しい、キレのあるヴァイオリンに引っ張られる弦陣の武骨にも聴こえるアンサンブルや管陣の美音、そしてそれらを統括するインバルの気魄らが、最高に組み合わさって、至高の音楽体験を味わいました。

タクトが下りると暫しの沈黙の、熱狂的な大拍手と歓声。心の底から「感服いたしました」と唸らされる演奏でした。致し方ないことではありますが、前日のN響定期の余韻が完全に上書きされてしまったのだけは、良くも悪くも残念。

反ユダヤ主義への抗議やロシア民族や社会への敬意・皮肉・批判が同居したこの作品に触れれば、現在のウクライナ・ロシア戦争や、止むことのないパレスチナ人とユダヤ人の争いに思いを向けざるをえません。都響とは2年越しでの本曲の演奏が実現したとの記載をどこかで目にしましたが、インバル先生はどういう思いでこの曲を指揮しているのか、伺ってみたいものです。

 

日時:2025年2月10日(月) 19:00開演
場所:東京文化会館 
【ショスタコーヴィチ没後50年記念】

出 演
指揮/エリアフ・インバル
バス/グリゴリー・シュカルパ*
男声合唱/エストニア国立男声合唱団*

曲 目
ラフマニノフ:交響詩《死の島》 op.29      
ショスタコーヴィチ:交響曲第13番 変ロ短調 op.113《バービイ・ヤール》*

Date: Mon. 10. February 2025 19:00
Venue: Tokyo Bunka Kaikan 
[50th Anniversary of death of Shostakovich]

Artists
Eliahu INBAL, Conductor
Grigory SHKARUPA, Bass*
Estonian National Male Choir, Male Chorus*

Program
Rachmaninoff: The Isle of the Dead, op.29
Shostakovich: Symphony No.13 in B-flat minor, op.113, “Babi Yar”*