その後の『ロンドン テムズ川便り』

ことの起こりはロンドン滞在記。帰国後の今は音楽、美術、本、旅行などについての個人的覚書。Since 2008

ジョナサン・ノット/ 東京交響楽団/ 東京オペラシティシリーズ

2014-04-28 20:23:46 | 演奏会・オペラ・バレエ・演劇(2012.8~)


 東京交響楽団の新音楽監督ジョナサン・ノット氏のお披露目コンサートに行って来ました。前監督スダーン氏と東響は随分良い関係だったようですが、まだ私は行くチャンスがありません。東響は良く新国立オペラのピットで聴かせてもらっているし、東京ってオーケストラの数、多過ぎで、とてもどれもこれもフォローできないですよね。今回は、ノット氏の就任披露ということで、きっと気合の入った演奏会になるに違いないと、期待感を大にして東京オペラシティ―コンサートホールへ。

 プログラムも魅力的でした。定期演奏会でのお披露目公演が、いきなりマーラーの交響曲9番と聞いて驚きましたが、この日のプログラムはウェーベルン「管弦楽のための5つの小品」、シューベルト交響曲第4番、ブラームスのピアノ協奏曲第1番というドイツ・オーストリア・プログラム。これらの作曲家の組み合わせはありそうですが、曲の組み合わせはあまり無いのではないでしょうか。私は、ウェーベルンの「小品」は生体験済みですが、恥ずかしながら、シューベルト交響曲4番とブラームスピアノ協奏曲1番はともにナマは初めてで、こちらも楽しみにしていました。

 結果は・・・、非常に充実したコンサートで、今後の東響の更なる飛躍を期待させるものでした。ウェーベルンとシューベルトは、「作品のコントラストが明確になり、それぞれの全く違う個性が際立つから」(ノット氏のプログラム挨拶より)という理由で休憩なしで演奏されました。そのせいかは私には分かりませんが、シューベルト4番は聴きごたえありました。ノット氏の指揮は、曲の構造や輪郭が明確で聴きやすい。作曲者が「悲劇的」という副題をつけたとされている曲ですが、私にはむしろ豊かで、若いみずみずしさにあふれている音楽として聴こえました。ウェーベルンが20名弱のメンバーで「点描的」(プログラム「楽曲解説」)に奏でられるのに対し、シューベルトは3~4倍以上のフルオーケストラによる演奏ですが、シューベルトの方がずっと室内楽なまとまり、優雅さを感じるのは不思議でした。

 休憩後の、ブラームスのピアノ協奏曲第2番も、ノット氏の指揮は、ブラームスらしいスケール感や激情を持ちながらも、しっかりコントロールした理知的な風情を併せ持ち、音楽の良さを音楽にそのまま語らせるというアプローチにお見受けしました。ピアノ独奏の佐藤卓史氏を聴くのも初めてですが、柔らかで優しい音ですね。激しいところは激しいですが、過度にアクセントをつけることもなく自然体で、ノット氏の指揮とも合っていました。楽譜が読めない私が言うのも気が引けますが、「あれ、今のはミスタッチでは?」と思うところはあったのですが、熱演の中では気になるレベルではありません。

 空席が目立ったのは残念でした。私は1階席の後ろから2列目に陣取りましたが、私の前の列はまるっきり全部空いていました。全体でざっと7割ぐらいの入りでしょうか?せっかくの素晴らしい演奏会なのに何ともったいない。天気が良すぎて、みんなピクニックにでも行ったのかしら。それでも、終演後の拍手はとても大きいものでした。終演後すぐに席を立つ人もほとんどおらず、聴衆一同からノット氏熱烈歓迎の大きな拍手が続き、ホール全体が暖かい雰囲気に包まれていました。

 チケット大入り完売のコンビになる日は遠くないでしょう。


東京オペラシティコンサートホール
2014年04月27日(日)14:00 開演

出演指揮:ジョナサン・ノット
ピアノ:佐藤卓史
東京交響楽団

ウェーベルン:管弦楽のための5つの小品 作品10
シューベルト:交響曲 第4番 ハ短調 D.417 「悲劇的」
ブラームス:ピアノ協奏曲 第1番 ニ短調 作品15

*指揮者の意向により、ウェーベルンとシューベルトは続けて演奏

Tokyo Opera City Series No.79
Sun.27th April 2014, 2:00p.m.
Tokyo Opera City Concert Hall
Conductor = Jonathan Nott
Piano = Takashi Sato

A.Webern : 5 Pieces for Orchestra, Op. 10
F.Schubert : Symphony No. 4 in C minor, D. 417 “Tragic”
J.Brahms : Piano Concerto No.1 in D minor, op.15




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ザ・ビューティフル 英国の唯美主義 1860-1900  @三菱一号館美術館

2014-04-25 21:49:45 | 美術展(2012.8~)


 「ラフェル前派展」に続いて、「ザ・ビューティフル 英国の唯美主義 1860-1900」を見に行きました。恥ずかしながら、自分の中では、バーン=ジョーンズやアルバート・ムーアなどはラファエル前派「系」の画家たちというぼんやりした認識でした。が、本展覧会で唯美主義という1860年代~1900年代の英国の美術界・デザイン界に台頭した「時代に蔓延する醜悪さや物質万能主義から逃れ、新たな美を見いだしたい」という「芸術のための芸術(Art for Art’s Sake)」を創りだそうとした運動(展覧会HPより)に位置づけられることを知りました。

 もともと好きな画家であったムーアの絵が何点も展示してあることもあり、とても興味深い美術展でした。特に、『花』や今回の目玉作品である『真夏』は優美という言葉がぴったりの美しい作品です。美しいだけでなく官能的でもあります。


アルバート・ムーア『花』


アルバート・ムーア『真夏』

 嬉しかったのは、ビアズリーのサロメの挿絵が展示されていたこと。サロメの挿絵はロンドンのビクトリア・アルバート美術館にいくつか展示してあり幾度と見ましたが、ハガキサイズの小さな挿絵が何とも毒々しく独特の世界を作っています。オスカー・ワイルドの戯曲の世界と表裏一体となっているこの挿絵をまじまじと細部まで見入りました。

 結局、なんだかんだ1時間半以上もかけて、閉館時間に押されるように会場を後にしました。ラフェル前派展とセットの割引チケットを購入したので足を運んだというところもあるのですが、期待を大幅に上回る展示内容で大満足でありました。

 5月6日までですので、まだの方は是非。


《金曜日は8時までやってます》

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かすみがうらマラソン完走記 CW-X効果も35kまで・・・

2014-04-23 00:49:14 | ロードレース参戦 (in 欧州、日本)
 昨年に引き続き、かすみがうらマラソンを走ってきました。昨年は大雨で難儀したものの、沿道の応援や大会ボランティアの方々の暖かい雰囲気を感じるレースだったのでとても好印象の大会でした。コースも走りやすいので再度挑戦です。今年は、にわか雨の可能性は残るものの、曇り空で気温14度という絶好のマラソン日和となりました。

 7時過ぎに日暮里で常磐線に乗って会場に向かいましたが、マラソン列車と化していた常磐線は始発の上野駅でほぼ満員。危うく土浦まで立ちっぱなしになるとこでしたが、何とか最後尾車両に座席を見つけました。スタート1時間半前の8時半には会場に到着し、職場のランニング仲間と合流し、記念撮影やトイレなどを済ませスタート地点へ。


≪スタート地点に集合≫

 今年は2万人近くのランナーが参加ということで、凄い混雑でしたが、無事10:00にスタート。最初は渋滞でしたが、道幅も広いのですぐばらけます。前半は思いのほか登り坂が結構ありました。去年はひどい雨だったので、コースが登りか下りかを感じる余裕もなく、ただただ足を動かしていただけだったことを思い出しました。


≪さあ、4時間切りを目指してスタート≫

 10k経過は55分とまずは順調です。時折薄日が差すと暖かいのですが、日が陰ると結構冷えます。風も弱いのだけど逆風で、なるべく集団の中に身を置いて走りました。前半は土浦市内の住宅地や工場地を走り抜けます。


≪土浦市内の工場地エリア≫

 15kほど走って、結構良い感じでした。天候といい、体調といい、「これは行けるかも」と気持ちも乗って来ます。土浦市からかすみがうら市に入ると俄然、雰囲気が長閑になり、気分もリラックスできます。ハーフが1時間58分。ロンドンマラソンの時と同じぐらいかな。このペースではサブ・フォーは厳しそうですが、直近2年間では一番行けそうな予感がよぎります。


≪曇り空のさくらもなかなか良いです≫

 ただ、ハーフを過ぎると、ちょっとエネルギーが切れてきた感じ。そこでつかさず、ウエストポーチに忍ばせていたアミノバイタルでエレルギー補給。すると、不思議なくらい力が湧いてきました。


≪かすみがうら市内の田園風景の中を走ります≫

 後半は霞ヶ浦沿いの平坦な道を淡々と走ります。後半になると、沿道のサポートも俄然増えて、補給所では水・スポーツドリンク・バナナだけでなく、パンやレモンも差し出してくれます。私設ステーションではおにぎりや沢庵まで。ガス欠寸前の身にとって補給食はありがたいことこの上ないですが、逆に食べ過ぎると走れなくなるので、ここは欲望との戦い。それでもなんだかんだで、コッペパンを3つも食べてしまいました。ちょっとお腹一杯。


≪かすみがうら市内の距離ポストのところには地元言葉のエールボードがあります。走りながらこのボードの意味を考えてたら、1キロは距離を稼げました≫

 20kから35キロまでの苦しい中盤を乗り越えられたのは、ランニングタイツCX-W効果があったことも間違いありません。今回、初めてのフルマラソンでの着用。普段、20キロを超えると必ずと言っていいほど始まるふくらはぎの痙攣も感じることはありませんでした。逆に普段感じることない両脇の腹筋がに筋肉痛を覚えましたが、耐えられないものではありません。35キロまではキロ6分以内でのペースを守って走ることができました。

 後半のコースは道幅も狭いので、サポーターとの距離が近いです。おじいちゃん、おばあちゃん、おばさん、おじさん、小さい子供たちの声援が何とも暖かく、ありがたいです。


≪道路幅狭いのでサポーターの励ましがダイレクトに伝わります≫


≪かすみがうらの民家の間を通り抜けるのですが、どのお宅も大きくて東京人にはうらやまし≫

 ただ、流石にCX-W効果も35キロまででした。35キロを超えると、色んなところが痛み始めます。脹脛、太もも、ペースも明らかに落ちてきます。そんな中でも40キロ手前のところでのバラスバンド演奏など、最後の力を振り絞る元気を貰いました。40キロで3時間53分台。サブ4は無理にしても、何とか4時間1けた分台は確保できるかなあ?そんな思いが過った後でした。

 丁度、41キロポストの手前で、左太ももの裏側が完全に吊ってしまいました。走ることはもちろん、歩くこともできないし、立ち止まっていても、筋肉がきーっと張ってどうしようもない痛み。撫でてみても、自分の体とは思えないほどの、伸縮を勝手に繰り返す筋肉。「おいおいあと1キロだぜ。なんとかしてくれよ」と自分の脚相手に話していると、突然、コールドスプレーを持ったおばさんが現れ、「大丈夫?ほら、スプレーよ」と言って、手に持ったスプレーを掛けてくれました。ありがたくて、ホント涙です。

 結局、かれこれ、5分ほど立ち尽くした後、何とか足が動けるようになったので、最後の力を振り絞って、ゴールへ。最後の1キロはヨタヨタでしたが、何とか歩くことなく走り通しました。手元の時計で4時間11分6秒。完全満足ではありませんが、前2回のレースが散々だっただけに、今後につながるレースとなり、嬉しかったです。


≪参加賞の品々≫

PS このマラソン大会、昨年も思いましたが、本当にアットホームな雰囲気が溢れる暖かい大会です。また来年も是非出たい。ただ、大会関係者に一つお願いは、トイレを増やしてほしいですね。参加ランナーの数に比べて、大会会場やコースのトイレの数が明らかに少ないと思います。大会あいさつで「来年は3万人を目指します」と役員の方が言っておられましたが、それならトイレの数は倍に増やしてほしいです。

<手元の時計>
5k: 28:02 (28:02)
10k: 54:57(26:55)
15k: 1:24:21(29:24)
20k: 1:52:38(28:16)
25k: 2:21:43(29:05)
30k: 2:49:50(28:06)
35k: 3:19:56(30:06)
40k: 3:53:34(33:38)
ゴール: 4:11:06(17:31)

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N響4月定期Cプロ/ ヤルヴィ父さんの北欧プログラム

2014-04-21 22:28:59 | 演奏会・オペラ・バレエ・演劇(2012.8~)


 定演お休みの3月明けの4月N響Cプログラムは、ヤルヴィ父さんの北欧プログラムです。ヤルヴィ父さんは、2010年にロンドンでロンドンフィルでの客演を聞いて以来、4年ぶりです。この指揮者、もちろん実績は申し分のない方ですが、独特の威圧的なご面相で、ステージ上の愛想も良くないので、私にとって印象はあまり良くありません。

 が、この日のプログラムは大変楽しめました。グリークのペール・ギュントは、CDなどでは良く耳にしていますが、実演で聴いたのは初めてかも。組曲ならでは、雰囲気の異なる各曲が楽しめます。うっとり、しんみり、ウキウキ、ドキドキという感じで、15分で4つの美味しさが詰め込まれていました。2曲目はスヴェンセンの交響曲第2番。私には名前をお聞きするのも初めての作曲家です。「北欧」という先入観があるせいかもしれませんが、透き通った色彩が目に浮かぶ、耳になじみやすい交響曲でした。

 休憩後のシベリウス交響曲第2番は、以前聴いたブロムシュテッドさんの指揮の痺れる感動が未だ忘れられないのですが、ヤルヴィ父さんはまた違った第2番を楽しませてくれました。ブロムシュテッドさんよりも、ふくよかで厚みがあり、包容力に満ちた音楽で、透明感、鋭さとは異なった印象を持ちました。第4楽章での盛り上げなどはお見事で、N響も力いっぱい応えた熱演。N響らしい安定かつハイレベルな演奏を聞かせてくれました。

 終演後は、会場からブラヴォー連発の凄い拍手で、ヤルヴィ父さんもご満足のようでした。カーテンコールへの応え方も、ちょっとお茶目なところを見せたりして、この方、こんなサービスもするんだと、少しこれまでの印象を改めなくてはと反省。2015/2016シーズンからは、息子さんがN響常任指揮者に就任しますし、またN響を振ってほしいです。



≪NHKホール前はアースデイ・イベント≫



第1779回 定期公演 Cプログラム
2014年4月19日(土) 開場 2:00pm 開演 3:00pm

NHKホール

グリーグ/「ペール・ギュント」組曲 第1番 作品46
スヴェンセン/交響曲 第2番 変ロ長調 作品15
シベリウス/交響曲 第2番 ニ長調 作品43

指揮:ネーメ・ヤルヴィ


No.1779 Subscription (Program C)
Saturday, April 19, 2014 3:00p.m.

NHK Hall

Grieg / “Peer Gynt” suite No.1 op.46
Svendsen / Symphony No.2 B-flat major op.15
Sibelius / Symphony No.2 D major op.43

Neeme Järvi, conductor

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石井裕也監督 『川の底からこんにちは』

2014-04-19 10:28:25 | 映画


 「舟を編む」が楽しめたので、ブログのコメントでyorikoさんからお勧めいただいた同じ石井裕也監督の作品『川の底からこんにちは』をDVD鑑賞してみました。

 上京してきたものの、仕事も恋愛もだめだめな20代前半の女性(というより女の子)が、田舎の父親の入院がきっかけで、バツイチ子連れのダメ彼氏と一緒に田舎に帰り、父親が経営するしじみ加工工場で一念発起するというコメディタッチの成長物語です。

 ヒロインを演じる満島ひかりさんの熱演が一番印象的です。私はこの女優さんを見るのは初めてでしたが、独特の雰囲気と魅力を持っていますね。決してテンポよく流れる映画ではないのですが、この女優さんの引力にずーっと引っ張れ通しでした。

 監督の石井さんは脚本も書いていますが、今時、「頑張る」ことを真っ正面に取り上げた作品を作ったのも面白いと思いました。廻りにダメな普通の市井の人々を置きつつ、同じように普通でダメな主人公が「頑張る」と決意し、行動に移していく。ちょっと、力みすぎ、くさい、痛いと思わなくもないですが、私は嫌いではありません。映画全般の柔らかく素朴な雰囲気が、その力みを和らげているのでしょう。

 「舟を編む」と比較すると、人物描写の深みや映像といった点で映画としての完成度は劣りますが、ほのぼのと楽しめる映画です。


監督 石井裕也
音楽 今村左悶 、野村知秋
脚本 石井裕也

キャスト
満島ひかり(木村佐和子)
遠藤雅(新井健一)
相原綺羅(新井加代子)
志賀廣太郎(木村忠男)
岩松了(木村信夫)


コメント (2)
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バッハ・コレギウム・ジャパン/ J.S.バッハ:マタイ受難曲 @ミューザ川崎シンフォニーホール

2014-04-14 21:55:09 | 演奏会・オペラ・バレエ・演劇(2012.8~)


 イースターウイークの始まりの日曜日、「マタイ受難曲」を聴きにミューザ川崎シンフォニーホールに行ってきました。昨年は同じくバッハ・コレギウム・ジャパンで「ヨハネ受難曲」を聴きましたが、今年は「マタイ」です。「マタイ」の方が好きだし、ミューザ川崎も初めてなので、とても楽しみにしていた演奏会です。

 そして、期待通り独唱、合唱、演奏、其々が素晴らしく、かつそのシナジーに優れた感動的なパフォーマンスでした。中でも、とりわけ光っていたのは、エヴァンゲリスト役のゲルト・テュルクさん。柔らかで香るような語り(歌)が劇的で、目の前に場面場面が浮かび上がるよう。想像力を思いっきり刺激してくれました。独唱陣ではモリソンさんの透き通るようなソプラノ、リンデさんの美しいカウンターテナー、浦野さんの低く響くバスも胸に刺さりました。独唱の出番はそれほど多くありませんでしたが、櫻田さんのテノールも潤いある歌声で、好みでした。

 合唱は総勢24名の少数精鋭メンバー。2010年にバーミンガム市響(サイモン・ラトル指揮)で聴いたとき(→こちら)は、100名を超えるような大合唱団かつ児童合唱団付だったので、この人数の合唱で大丈夫なのかと少々心配だったのですが、数は全然問題ではありませんでした。一人一人の歌唱が力強いせいか、24名とは思えないほど、ホールの隅々にまで響き渡る美しいハーモニーでした。

 演奏も古楽器の独特の響きが胸に浸みります。ここでも、メンバーは30名ほどで必要最小限の人数のようですが、少人数を感じさせないダイナミックさと繊細が共存する演奏だったと思います。

 これらは全て名匠鈴木雅明さんの指揮があってのことでしょう。バッハを知り尽くした鈴木さんの指揮ぶりは後ろ姿を拝見していて、聴く者が本当に安心して音楽に身を委ねられるものです。

 パフォーマンスが良ければ良いほど、この歴史絵巻の物語の力強さ、そして音楽の崇高さが身に染みて、感じられます。3時間を超える演奏の間、ステージからの強烈な磁力に引き付けられ、終わった時にはヘロヘロ。でも、この音楽を聴くことができた喜びが体から溢れだす、本当に不思議な音楽体験です。

 まあ、敢えて言えば、あの拍手は早すぎでしょう~。まあ、一人や二人のフライング拍手と言うレベルではなかったので、多くの人が思わず拍手してしまったということなのでしょうが、あそこであの拍手が10秒でも我慢してもらえたら、それはもう更に感動的だったのに・・・と思うと残念です。


PS 蛇足ですが、今回は字幕があって助かりました。昨年のヨハネを東京オペラシティ・コンサートホールで聴いた時は字幕無しで、事前に歌詞を持っていくか、プログラムを購入しないと(1000円)、歌詞を追えないと言う、「いくらなんでもそれはひどくないか?」という扱いでしたので、今回は持って行った歌詞に目を落とさずとも、舞台を追えました。これは大感謝です。



≪ミューザ川崎シンフォニーホールのデビューは3階席後方の中央。残響豊かな良いホールですね。≫


バッハ・コレギウム・ジャパン
J.S.バッハ:マタイ受難曲 BWV244

日時: 2014. 4.13 (日) 15:00開演
ミューザ川崎シンフォニーホール

出演:
バッハ・コレギウム・ジャパン
指揮:鈴木雅明

ソプラノI:ハンナ・モリソン
アルトI:クリント・ファン・デア・リンデ
テノール/エヴァンゲリスト:ゲルト・テュルク
バスI:ベンジャミン・ベヴァン
ソプラノII:松井亜希
アルトII:青木洋也
テノールII:櫻田 亮
バスII:浦野智行

曲目:
J.S.バッハ:マタイ受難曲 BWV244


Bach Collegium Japan "Matthew Passion"

Bach Collegium Japan
SopranoI= Hannah Morrison
Countertenor= Crint van der Linde
Tenor, Evangelist= Gerd Turk
Bass= Benjamin Bevan
Soprano II= Aki Matsui
Alto II= Hiroya Aoki
Tenor II= Ryo Sakurada
Bass II= Tomoyuki Urano

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大前研一 『稼ぐ力』 小学館

2014-04-12 22:06:14 | 


 週刊誌に連載中の筆者のコラムを編集したものです。大前氏の主張は、個人的に賛成する、しないは、トピックにより様々ですが、ユニークな目の付けどころや切れ味良く、明確な論旨にはいつも感心させられます。

 本書にもいくつか気づかされるところがありましたので、ピックアップしておきます。

・国家にとって最も大切なのは「雇用」(p24)。この20年間、日本はの対外投資は増えているが対内投資(海外企業の日本直接投資)は殆ど増えていない。企業が海外に出て行っているのに海外から投資を呼び込めていない日本は、当然ながら国内の産業が空洞化し、雇用は流出ばかりで創出されない。こんな異常な国日本の景気が良くなるわけない(pp19-20)

・グローバル人材になるためには「ハードスキル(会計・財務・マーケティングといったビジネスの道具)」と「ソフトスキル(民族・国籍・文化・宗教・言語の違う人たちとコミュニケーションを取りながら、ビジネスを円滑に進める力)」が必要。こうした力は会社の中だけでは身につかない(pp65‐68)。これからは「大卒」程度の能力では食べていけない(p64)。

・プレゼンの鍵は「物語」。500名を超える講演ではパワポは使わない。「そのプレゼンの結果、何を達成したいのか」を明確にする。そして、これからのプレゼンテーションは「積み上げ」型(ピラミッドストラクチャーにより論理を積み上げていく方法)よりも「Q&A」型(Q&Aに4割の時間を割く。最初の2割は共通理解の植え付け、そして次の4割を独自の新しい知識の提供に充てる)が良い(pp122-127)。

・日本企業の「集中と選択」の誤りは、単体の商品(テレビ、カーナビ、カメラ等)を軸に選択を行ったことであり機能(研究開発・設計・製造・販売・サービス)で選択と集中を行わなったこと。台湾は後者。強力なリーダシップを発揮する経営者の存在こそ、コモディティ化するデジタル大陸で生き残るのための条件(pp130-138)

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Jリーグ FC東京vsサガン鳥栖 @味の素スタジアム

2014-04-10 22:01:40 | 日記 (2012.8~)
 既に4日前のゲームなので今更ですが、一応、記録のため。

 今シーズン初のFC東京の本拠地での応援です。相手は、滑り出し好調のサガン鳥栖。やっぱりホームでの応援は気分が良いです。


≪後半開始直後。さすがに鳥栖の応援団は少数≫

 試合は膠着状態だった前半から、後半になって動き、東京が2点先制した後、鳥栖が1点を上げて追いかける展開。なかなかスリリングな好ゲームでした。普段、緩慢(に見える)プレイにいらいらする平山選手もこの日はスタメン出場で、頑張っていて、良く動いていました。


≪ホームは良いですね≫

 結局、東京が2-1で逃げ切り。とっても、気分良くスタジアムを後にしました。

 2014年4月6日

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お花見RUN ~野川桜街道を走る~

2014-04-08 00:04:14 | 旅行 日本
 荒れ模様の天気予報となった日曜日。それでも午前中は晴れ間も見えるということで、お花見とトレーニングを兼ねてお花見RUNに出かけました。

 コースは多摩川の支流の一つである野川に沿って、小田急線喜多見駅側からJR国分寺駅まで走るルートです。世田谷〜狛江〜調布〜三鷹〜小金井〜国分寺と1区5市をまたいでのランニングなのですが、距離にすれば13キロちょっとですので、ゆっくり走っても1時間15分程度です。足に自信のある人は往復も可能です。

 何が素晴らしいって、このコース、至る所に桜が植えてあって、この季節は日本の春、多摩の春を満喫させてくれるのです。ポケットデジカメをウエストポーチに忍ばせて、ところどころで撮ったショットを紹介します。 ピンボケ写真も多数ですが、ご愛嬌と言うことで。


≪スタート地点近く @世田谷区喜多見緑道近辺≫


≪この辺りは素晴らしい桜並木です @調布市佐須エリア≫


≪まさに満開≫


≪この日のベストショット。春のカワセミ @調布市調布ヶ丘エリア≫


≪桜と西武多摩川線 @野川公園二枚橋≫


≪垂れ桜の並木です @小金井市前原エリア≫


≪ここはまた違った桜。川がだんだんと細くなってきます。 @小金井市のどこか≫

 国分寺市に入るともう小川と言うより、コンクリートの溝になって来ます。野川の源流は中央線を越えて国分寺市の日立製作所の研究所らしいのですが、今回は国分寺駅を終着としたので、また次の機会を捉えて訪れてみたいと思います。

 なかなか私の走りながら、都度都度、立ち止まっての撮影では、雰囲気を上手く捉えることはできていませんが、素晴らしいランニング、サイクリング、ウォーキングコースですので、是非、お試しください。
コメント (4)
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オペラ「ヴォツェック」/アルバン・ベルク @新国立劇場

2014-04-05 20:45:14 | 演奏会・オペラ・バレエ・演劇(2012.8~)


 4週末連続の新国立劇場。毎回、最安席とはいえ、財布がかなり痛んでいます。

 今回は、ベルクの「ヴォツェック」。ベルクのオペラは以前ロイヤルオペラで「ルル」を観たことがありますが、「ヴォツェック」は初めて。ベルクの代表作でもあるし、久方ぶりの初日の観劇ということもあって、とても楽しみにしていました。


≪初日にしては普段ほど華やかさはなかったような・・・≫

 物語は、貧困にあえぎ、精神的にも病んでいる主人公ヴォツェックが、不貞を働いた内縁の妻マリーを殺してしまうという悲劇です。3幕ありますが、休憩なしで1時間40分が一気に上演されます。

 題名役のゲオルク・ニグルさんの熱演が光りました。ほぼ出ずっぱりで、世の不幸を一手に引き受けたような主人公の内面が滲みだした歌唱と演技でした。マリー役のエレナ・ツィトコーワさんを初めとした他の歌手陣も良かったです。ツィトコーワさんは「ルル」をやってもお似合いのような気がしました。

 アンドレアス・クリーゲンブルクさんの演出も印象的です。舞台の前面に水を張ったセットはこの物語の緊張感を際立たせます。明暗を際立たせた照明も美しい。大尉、医者、アンドレスを初めとした登場人物達のメイクや動きも個性的で好みでした。何故か「千と千尋の神隠し」に出てくる神様たちを思いだしてしまった。

 ちょっと首を傾げたのはピット。初めて見るオペラ、初めて聴く音楽なので、あくまでも個人的印象なのですが、このドラマの悲惨さや緊張感を表す演奏としてはどうも緩い。演奏にキレが感じられず、切実感、絶望感が伝わってきません。「この音楽って、こんな感じなのかしら?」と終止「?」が浮かんできました。指揮者の解釈なのか、演奏者の技量なのかは分かりませんが、物語、演出を活かしきれていないと感じたのは残念です。

 演奏が私のイメージと違っていたこともあって、必ずしも大満足というわけではなかったのですが、「ヴォツェック」をやってくれたことは大感謝です。新国立劇場は是非、定番以外の演目を積極的にやって欲しいです。来シーズンのプログラムも定番中心のプログラムで、正直、面白見がないです。日本でもオペラはかなり層が広がっていると思うので、是非、いろんな作品の上演をお願いしたいですね。


2013/2014シーズン

オペラ「ヴォツェック」/アルバン・ベルク

Wozzeck/Alban Berg

全3幕〈ドイツ語上演/字幕付〉
オペラパレス

予定上演時間:約1時間40分(休憩なし)

2014年4月5日(土)2:00 オペラパレス

スタッフ
【指揮】ギュンター・ノイホルト
【演出】アンドレアス・クリーゲンブルク
【美術】ハラルド・トアー
【衣裳】アンドレア・シュラート
【照明】シュテファン・ボリガー

(指 揮)ギュンター・ノイホルト
(演 出)アンドレアス・クリーゲンブルク

キャスト
【ヴォツェック】ゲオルク・ニグル
【鼓手長】ローマン・サドニック
【アンドレス】望月哲也
【大尉】ヴォルフガング・シュミット
【医者】妻屋秀和
【第一の徒弟職人】大澤 建
【第二の徒弟職人】萩原 潤
【白痴】青地英幸
【マリー】エレナ・ツィトコーワ
【マルグレート】山下牧子

【合 唱】新国立劇場合唱団
【管弦楽】東京フィルハーモニー交響楽団
[共同制作]バイエルン州立歌劇場


Music by Alban Berg
Opera in 3 acts
Sung in German with Japanese supertitles
Opera Palace

Staff
Conductor: Günter Neuhold
Production: Andreas Kriegenburg
Scenery Design: Harald Thor
Costume Design: Andrea Schraad
Lighting Design: Stefan Bolliger

Cast
Wozzeck: Georg Nigl
Tambourmajor: Roman Sadnik
Andres: Mochizuki Tetsuya
Hauptmann: Wolfgang Schmidt
Doktor: Tsumaya Hidekazu
Handwerksbursch: Osawa Ken
Handwerksbursch: Hagiwara Jun
Der NarrAochi: Hideyuki
Marie: Elena Zhidkova
Margret: Yamashita Makiko

Chorus: New National Theatre Chorus
Orchestra: Tokyo Philharmonic Orchestra
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平田オリザ 『わかりあえないことから──コミュニケーション能力とは何か』 (講談社現代新書)

2014-04-02 22:21:20 | 


 地元図書館の返却コーナーに置いてあったので、何となく手に取ってみました。著名な演劇家の平田オリザさんによる、演劇を通じてのコミュニケーション論、コミュニケーションを通じての日本人論です。

 平易な言葉で書いてあるので簡単に読めますが、内容について十分に理解するのは意外と難しいです。

・「会話」と「対話」は違う。これからは異なった価値観を持つ人と間で生じる「対話」の能力が大切。
・必要な言語運用能力は「冗長率」(意味伝達とは関係の無い言葉が含まれる割合)を低くすることではなく、操作する力
・コンテクストの「ずれ」:簡単に見えるけれどコンテクストの外側にある言葉。コンテキストを理解するのが、コミュニケーションの基礎的能力
などなど、何となく読んでしまうとそのまま読み過ごしてしまいます。

 特に首肯できるのは、これからの日本人に求められるのは「空気を読む能力」や「価値観を一つにする方向のコミュニケーション能力」から「日本人はバラバラ」であることを認めた上で、「バラバラな人間が、価値観はバラバラのままでどうにかして上手くやっていく能力」であり、「協調性から社交性」であるという主張です。その通りだと思います。

 少し残念なのは、章立て、構成に関連性・一貫性が乏しいところでしょうか。どうも頭にすっきり入ってこない原因は編集にあるような気がしました。


(目次)
第1章 コミュニケーション能力とは何か?
第2章 喋らないという表現
第3章 ランダムをプログラミングする
第4章 冗長率を操作する
第5章 「対話」の言葉を作る
第6章 コンテクストの「ずれ」
第7章 コミュニケーションデザインという視点
第8章 協調性から社交性へ



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