その後の『ロンドン テムズ川便り』

ことの起こりはロンドン滞在記。帰国後の今は音楽、美術、本、旅行などについての個人的覚書。Since 2008

ロイヤル・オペラ 『アンナ・ニコル』 (Anna Nicole)

2011-02-27 22:57:57 | オペラ、バレエ (in 欧州)
 ロンドン(の一部の人の間で)かなり話題の世界初演のオペラ『アンナ・ニコル』を見に行きました。アメリカのモデル(『プレイポーイ』誌のプレイメイト・オブ・ザ・イヤー)で、テキサスの田舎から、ウォールマート店員、ストリッパーを経て、63歳上の石油王と結婚し、39歳で薬物過剰摂取で死亡したアンナ・ニコル・スミスの一生をオペラ化したものです。

 守屋さんのブログ(こちら→)で事前に聞いてはいたものの、ロイヤルオペラハウスはアンナ・二コル一色。掲示モニター、ポスター、オペラ・バレエの衣装展示のマネキン、ロイヤルオペラ縁の人の胸像などなど、顔という顔が全てアンナ・ニコルの顔(冒頭写真(ロイヤルオペラホームページより))に変わっています。劇場内の舞台カーテンは真ピンク、カーテン上部の紋章もアンナニコル、そして驚いたことに、正面の舞台上の壁にある女王様の肖像にもアンナ・ニコルの顔が前に被せてありました。「こんなのありか!?」とアンナ・ニコルづくしの先制攻撃をくらいサプライズするとともに、ディズニーキャラで一色のディズニーランドの雰囲気に似たお祭り気分で、かなり気分が高揚します。音楽は無いけど、これで十分、序曲とも言えるかも・・・。会場も話題の世界初演オペラを見に来たという期待感で、観衆もなんか楽しさ一杯の雰囲気です。


【入り口前の廊下のポスターはすべてアンナ・ニコル】


【掲示用モニターにもアンナ・二コル】


【ストール席背面にある休憩所もアンナ・二コル】


【いつもは赤の舞台カーテンは怪しいピンク色】


【カーテン上部のイギリス国章にもアンナ・二コル】


【女王様の肖像にもアンナ・ニコル】


【ランプカバーもアンナ・二コル】


【衣装展示用のマネキンにもアンナ・二コル】

 で、肝心のオペラはいうと・・・

 期待以上に、とっても面白いものでした。オペラと言うよりミュージカルを観ているような感じです。アンナ・ニコルの一生が、とってもテンポ良く、軽快に、愉快に進んでいきます。

 取り分けプロダクションが印象的でした。舞台、照明がとっても華やかで、目を舞台から離れさせません。ジャズ風のテンポのよい音楽、風刺の効いた脚本は、会場の笑いを誘い、盛り上げます。歌手、役者さんたちの振り付けも、コミカルでうまく出来ています。演出が注目をされるようになったとはいえ、オーケストラに耳を傾け、歌を聴くのが主である通常のオペラとは違い、音楽、演出、演技、脚本などなど舞台全体が主役という印象です。これからのオペラはこうなっていくのかもと、未来を感じさせるものでもありました。

 しかし、このオペラについては、主役のエヴァ=マリア・ウェストブルック(Eva-Maria Westbroek)抜きには語れないと思います。このオペラの彼女以外が演ずることが想像できないほど、はまり役でイメージぴったりでした。むしろ、彼女を通じて、アンナ・ニコル・スミスを自分の中で再構成するような気分です。音楽を中心に置かない分、かなりの演技力が求められると思うのですが、本当に役になりきっていて、彼女の上昇志向、金銭志向、息子ダニエルへの愛などを、時に愉快に楽しく、時に切実に演じていたと思います。

 また、脇を固める石油王を演じたオーク(Alan Oke)、弁護士兼恋人であるスターンを演じたフィンリィ(Gerald Finley)、そしてアナの母親役のビックリィもしっかり味を出していました。あと、冒頭から笑わせてくれるコーラス陣も、コミカルな歌詞、愉快な振り付け、綺麗な歌声で、とっても印象に強く残りました。

 音楽はMark-Anthony Turnageによるものをパッパーノ大将が軽快にさばきます。ジャズ風のリズムも入ったり、綺麗なメロディもありますが、繰り返しになりますが、音楽は主役という感じではありません。

 とっても楽しんだ新作オペラでしたが、見終わった後は、複雑な思いもありました。このオペラが描く、アンナ・ニコルに託された、分かりやすいアメリカンドリームも今の時代にはむしろ色褪せて見えるのが不思議でした。正直、この知名度、財産至上主義には、空しさや寂しさを感じざるをえませんが、むしろこの単純さ、分かりやすさが今となってはむしろ懐かしいという気にさえなります。今を描いた現代劇ではあるものの、既に世の中の価値観は確実に変わってきていると思った次第です。


【カーテンコール】


【Eva-Maria Westbroekがすばらしい】


【監督のRichard Jones】


【パッパーノさんもうれしそう】


--------------------------
Anna Nicole
Saturday, February 26 7:30 PM

Credits
Composer: Mark-Anthony Turnage
Librettist: Richard Thomas
Director: Richard Jones
Set designs: Miriam Buether
Costume designs: Nicky Gillibrand
Co-Lighting Designers: Mimi Jordan SherinD M Wood
Choreographer: Aletta Collins

Performers
Conductor: Antonio Pappano
Anna Nicole: Eva-Maria Westbroek
Old Man Marshall: Alan Oke
The Lawyer Stern: Gerald Finley
Virgie: Susan Bickley
Cousin Shelley: Loré Lixenberg
Larry King: Peter Hoare
Aunt Kay: Rebecca de Pont Davies
Older Daniel: Dominic Rowntree
Blossom: Allison Cook
Doctor: Andrew Rees
Billy: Grant Doyle
Mayor: Wynne Evans
Runner: ZhengZhong Zhou§
Daddy Hogan: Jeremy White
Gentleman: Dominic Peckham
Trucker: Jeffrey Lloyd-Roberts
Deputy Mayor: Damian Thantrey
Four Lap Dancers: Yvonne Barclay, Amy Catt, Amanda Floyd, Katy Batho
Four Meat Rack Girls: Kiera Lyness, Marianne Cotterill, Louise Armit, Andrea Hazell
Onstage Band: John Parricelli (Guitarist),John Paul Jones (Bass Guitarist),Peter Erskine (Drummer)
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クリストフ・エッシェンバッハ/ ロンドン・フィルハーモニック/ マーラー交響曲第9番 他

2011-02-26 22:50:12 | コンサート (in 欧州)
やっと週末突入ということで、ロンドン・フィルハーモニックのマーラーの演奏会に出かけた。指揮はクリストフ・エッシェンバッハ。初めての人だが、悟りを開いた禅僧のような風貌。ちょっと、近寄りがたい雰囲気を醸し出している(画像はLPOホームページより)。

一曲目は、歌曲「さすらう若人の歌」。独唱はクリストファー・マルトマン。この間、ロイヤルオペラで『魔笛』でパパゲーノで出て、美しい歌唱と人なつっこい演技で舞台を盛り上げてくれたが、この日も軽やかなオーケストラの演奏にあわせて、抑揚のついた、しみじみ聴き入る歌唱だった。

休憩を挟んで、マーラー交響曲第9番。つい先月、ドゥダメルとロス・フィルのロンドン公演で聴いたばかり。しかし、演奏の印象は全く異なるものだった。前回のロス・フィルが比較的感情を排したさっぱりとした演奏に感じたのと対照的で、この日の演奏は過度な感情表現はないものの、より粘っこい、体にまとわるような音楽で、自分の感情に訴える演奏だった。

特に第2楽章と第4楽章がとても気に入った。第2楽章の民族舞踊的な音楽はとってもリズミカルで聴いていて気持ちが楽しくなるものだった。第4楽章は、弦の重層的なアンサンブルが美しい。前から3列目の席だったので、管の人が見えない上に、弦にかき消されて、良く聞こえないところがあったが、この第4楽章の弦楽器のうねりを間近に聞けるのは、前列ならではある。

確かに、個々の演奏の力では残念ながらロス・フィルに軍配があがると思う。でも、指揮者の強い個性とリーダーシップ、そして、それに答えようとするオーケストラの熱いハートを感じる演奏で、自分の気持ちへの訴えでは、この日の演奏に自信を持って軍配を上げたい。

来週もLSOでマーラーの9番がある。ゲルギーとLSOはどんな演奏を聴かせてくれるだろうか?楽しみだ。



25 February 2011 7:30pm

MAHLER ANNIVERSARY
Mahler Lieder eines fahrenden Gesellen
Mahler Symphony No. 9

Christoph Eschenbach conductor
Christopher Maltman baritone
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ロンドン イタリアンレストラン AVISTA

2011-02-25 23:26:20 | レストラン・パブ (in 欧州)
 取引先の方々と出かけたロンドンのメイフェア地区(地下鉄ボンドストリート駅から歩いて5分)にあるイタリアン・レストラン。結構、高級店だと思います。(写真はレストランHPから拝借)

 イタリアンなので、正式には、前菜、第1皿(パスタとか)、第2皿(メイン)、デザートと展開するようなのですが、どう見ても3コースも食べれないので、前菜にカルパッチョ、メインに鮪のステーキを頼みました。

 正直、驚くほど美味しかったです。いわゆる大衆イタリア料理というよりも洗練されたイタリア料理です。カルパッチョの牛肉は、日本のしゃぶしゃぶ肉を思わせる薄さと、その薄さの中に旨さが凝縮したような美味。鮪のステーキは、肉厚で豊かな上に、味付けも絶妙。ロンドンで食べた西洋料理では、今まで一番旨かったかも。ロンドンでもこんな料理が食べるのかと、Bグルメ専門の私には涙が落ちそうなお料理でした。

 気になるお値段は、下のホームページにのってますが、もちろん安くはありません。が、高くて行けないと言うほどでもありません。是非、一度、お試しください。


 ※お店のHPはこちら→ 
 
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予算カットの波が・・・

2011-02-24 23:37:04 | ロンドン日記 (日常)
保守党政権による、財政赤字の解消に向けた大胆な予算カットは、ここ半年イギリスの大きな話題です。生活補助費の削減、図書館の閉鎖、NHS(国による医療サービス)の削減、大学授業料の値上げなどなど、とにかく明るい話題がちっともないのです。

私の場合もひと事ではありません。まず、仕事でもろに影響受けてます。我々が、直接、イギリスの官公庁にサービスを提供しているわけではありませんが、我々のお客様で、政府向けのビジネスを生業とする英系企業のお客様は、一様にビジネス縮小を余儀なくされ、その結果、私達のサービスが解約されたり、カットされたりする現象が出始めているのです。ホント、予算カットの連鎖です。

そして、今日は、個人としても初めて予算カットを感じるできごとが。。。いつも愛用している図書館からメールが届きました。ちょっと長いですが、一部引用を・・・

Camden libraries – have your say

I am writing to tell you about the Camden libraries consultation which is currently taking place.

Due to reductions in central government funding, Camden Council needs to reduce its spending by £80 - £100 million over the next three years.

For libraries and a range of other services such as children’s centres, housing repairs and support to older people, this means a reduction in the services that we can provide.

We want to hear your views about the library service to help us decide how to best provide services with less money.

How to share your views:
• complete the library consultation survey online at:
http://www.xxxx.xxxxx.com/
• collect a printed copy of the consultation survey from any Camden Library and once completed, place it in the survey box, or post it.
• Download and print the survey from:
http://www.xxxx.xxxxx.com/
and once completed, place it in a survey box at any Camden library, or post it.

Please note that surveys must be received by Monday 4 April 2011.

We will publish information about the results of the survey on the Camden website soon after the end of the consultation. A report will be publicly available in late May 2011 with recommendations for the Council’s June Cabinet meeting. Once the Cabinet has made its decision, we will let you know what it means for library customers as soon as possible.

Kind regards

xxxxxxx
Head of Library Customer Service

要は、予算カットのためサービスを縮小せざる得ないから、そのやり方についてアンケートに答えてくださいというものです。

そして、そのアンケートを適当に訳しますと、

1. 最初の1万ポンド(1.3億円)を節約するために、次の中からあなたが適当と思うものを選んでください
 1)中央図書館の閉鎖
 2)2つの大規模図書館の閉鎖
 3)3つの中規模図書館の閉鎖
 4)4つの小規模図書館の閉鎖
 5)全ての図書館における開館時間の40%削減

2.次の50万ポンドの節約の為に、適当と思う施策(一つあたり25万ポンドの削減)を2つ選んでください
 1)新刊購入の40%削減
 2)職員の削減
 3)移動図書館の廃止
 4)全ての図書館の開館時間10%削減

3.最後の10万ポンド削減の為に、適当と思う施策(一つあたり5万ポンドの削減)を2つ選んでください
 1)滞納の罰金等の料金値上げ
 2)図書館地域サービス、司書サービスの削減
 3)図書館管理費の縮小
 4)図書館設備費の削減
 5)家具やパソコン費用の削減

正直、図書館は愛用しているので、このどの施策も私にはとっても痛いです。そして、このイギリスの政策が本当にいいものなのかとか、他にもカットの方法はあるだろうという議論ももちろんあると思います。

それでも、私が今日このメールを受け取って思ったのは、ここまでやらないとイギリスの財政は健全化しないのかというリアル感でした。そして、翻って、イギリスを上回る悪さ加減の財政状況である日本で、ここまでの血を見るというか、切実な施策議論はどこまで行われており、日本人はどこまで自覚しているのでしょうか?一部、過疎の村や破産した地方自治体について、行政等の公共サービスが著しく低下していることは報道されます。でも、大勢としては、問題についての正面からの議論を避け、オブラートに包んで、結局先送りにしているだけに、私には見えてしまいます。いい加減、日本人はリアルに今の状況を見て、目を覚まさねばならぬと思った次第です。

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塩野七生 『ローマ人の物語〈23〉危機と克服〈下〉』 (新潮文庫)

2011-02-22 23:29:07 | 
皇帝ヴェスパシアヌスの2人の息子、長男のティトゥス皇帝とその弟ドミティアヌス皇帝の治世を描かれます。父親も含めたフラヴィウス朝は27年のなかで、「ローマ帝国が直面した危機を収拾し、帝国を再び軌道に乗せ、しかも「リメス・ゲルマニクス」の建設をはじめとする数多くの政策を実施することで帝国の活力を回復させ、ローマ帝国がさらなる繁栄に向かう地盤を築いた」(p184)とされています。

個人的に一番興味を惹いたのは、前半の19ページから42ページにかけての、紀元79年の夏のヴェスタヴィオ火山の大爆発によって起こったボンペイの埋没の記述です。この爆発の犠牲になった『博物誌』の著者大プリニウスについて、甥の小プリニウスが歴史家タキトゥスに宛てた、叔父の最期についての2通の手紙を全文翻訳することで、筆者は当時の様子を紹介しています。この文章をそのまま紹介できないのがなんとも残念ですが、気品、教養、誠実に満ち溢れています。とても、こんな文章は書けません。

自然に対して人間が如何に無力であるか。ローマ人の歴史を読んでいると、いろんなところで、人間の知恵の素晴らしさと自然に対しての人間の限界を感じます。

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サイモン・ラトル/ ベルリン・フィル/ マーラー交響曲第4番ほか

2011-02-21 22:35:54 | コンサート (in 欧州)
 やっぱり、すごいわ、ベルリンフィルは。隙がない。艶がある。デリケートなのにダイナミックでもある。こくがあるけど切れもある。ホント、参った。

 後半のマーラー交響曲第4番。どうしてこんなに美しいアンサンブルなのか、感嘆のしどうしだった。個々の奏者の際立った音が、時にソロとしてホールに響きわたり、そして次には個性と個性の音同士がぶつかって異なる音が出来上がる。時として、音の靄が前列2列目の自分を優しく包み、かと思えば、強烈な打楽器の叫びが、その靄を打ち破る。そして畳み掛けるように、オケ全体の音の塊が自分を襲う。胸の鼓動が速くなり、気持ちが高揚するのがわかる。この感覚は同じコンビのCDを聴いたって絶対にわからないだろう。音が体に前から、上から、横から、直球、変化球、変幻自在に向かってきては、自分のなかに絡んでいくんだから。

 それに独唱のソプラノChristine Schäferの歌唱も素晴らしかった。気品のある美人で、声は透き通るように清らか。正直、一目見て、一声聴いて、そのままファンになった。とってもデリケートな声だったので、ホント前列2列目に感謝。

 
 一曲目のストラビンスキーは曲自体が初めて、マーラーの第4番も生で聴くのは初めてなので、演奏法とか、曲の解釈は良くわからない。ストラビンスキーはとっても優雅な演奏だったし、マーラーは軽快で躍動感のある演奏だったと思う。また、両方の曲で、日本人のコンサートマスター樫本氏がソロパートで大活躍していたのは、同じ日本人としても嬉しい。

 2年前の12月から売り出していたチケットであるが、去年の夏にチケットをとろうとしたら、当たり前のように既に完売。その後、ことあるごとにリターンを狙っていたが、2月に入ってやっとのことで見つけられて本当に良かった。今夜の感動を文字にできない自分にいらだちながらも、まだ余韻に浸っている。


Simon Rattle / Berliner Philharmoniker
The London Concerts 2011: Mahler Symphony No 4
21 February 2011 / 19:30
Barbican Hall

Stravinsky Apollon Musagète (1947 version)
Mahler Symphony No 4

Berliner Philharmoniker
Sir Simon Rattle conductor
Christine Schäfer soprano
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冬でも春でも無いブライトンを走る

2011-02-20 17:54:12 | ロードレース参戦 (in 欧州、日本)
 イギリスの由緒正しいビーチリゾート、ブライトンでのハーフマラソン大会に出場しました。ロンドンから電車で1時間~1時間半。今朝は6時32分ヴィクトリア駅発の列車で行きましたが、乗客は90%ロンドンのランナーで、さながらマラソン列車でした。

 天気は雨こそ降りませんでしたが、厚い曇り空。気温は10度ぐらいで、なんとも中途半端な天気です。

 本大会は出場登録者8000名のかなり大きな大会です。前回のワットフォードのハーフマラソンで大失敗しているので、自分としては相当、気合を入れて臨んでいます。出場者の多い大会は、応援も大きいので、自然、気分も高揚します。

 コースはスタート直後、一旦街中に入りますが、それ以降は、ずっとブライトンのビーチ沿いを走る快適コース。前半なだらかな長いスロープはありますが、さほど気になりません。それよりも道を閉鎖して、かなり広くコースを取ってくれているので、とても走りやすいです。天気がよければ、片側にイギリス海峡を望み、さらに気分が良いはずですが、まあ今日は雨、風がないだけでも良いとしましょう。

 今回は目標タイム1時間50分、目標マイルラップを8分23秒で設定しました。結果として、コースの快適性に助けられて、ほぼこのラップどおりで走れて、1時間49分20秒ちょっと(自己計測)で走ることができました。前回のリベンジができてとってもいい気分です。

 ただ、相変わらず、イギリスのマイル表示は測ったとは思えないいい加減さで、3マイルから4マイルは6分13秒、4マイルから5マイルは10分13秒。ほぼ同じペースで走っているから、こんなの有り得ん!

 細かいことを言えば切がないのですが、まあ結果が良かったので、良しとします。ご褒美に、11時半だというのに、パブでビールを引っ掛けて、帰りました。


※スタート地点の様子


※ジョージ4世の別荘、ロイヤル・パビリオンの横を走る


※ゴール地点


※賞品のメダル。これが嬉しい。(初めて、本人、登場)


※走った後のビールはたまりません


2011年2月20日
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イングリッシュ・ナショナル・オペラ/ パルジファル (Parsifal)/ ワーグナー

2011-02-20 00:05:55 | オペラ、バレエ (in 欧州)
 イングリッシュ・ナショナル・オペラ(ENO)によるワーグナーの最後のオペラ作品『パルジファル』を見に行きました。

 作品自体の素晴らしさに加え、歌唱、演奏、演出ともに出色の出来で、深く感動しました。知名度、実力ではロイヤルオペラの後塵を拝すENOですが、今回の好演はROH顔負け、いや大陸のメジャーオペラハウスにも負けない公演だったと思います。

 歌手陣では、まず老騎士グルネマンツのJohn Tomlinson、パルジファルのStuart Skelton、王のアムフォルタスのIain Paterson の3名が、歌唱のみならず演技でも、強烈な個性を発揮していました。特に、Tomlinsonの存在感は抜群で、出ずっぱりの第1幕では舞台に緊張感をほとばらせていましたし、第3幕でも終始舞台は彼を重心に廻っているような感がありました。貫禄が他の人よりも一枚上という感じです。パルジファルのSkeltonは、ヴィジュアル的には純粋な青年というより、蛮族の棟梁みたいで、いまいちフィット感はありませんでしたが、低めで押しの強いテノールは素晴らしかったです。また、Patersonも血気迫る演技でした。また、メインメンバーでは紅一点のクンドリー役のJane Duttonも、幕ごとに違った側面を演じる必要がある難しそうなクンドリー役を上手く演じていました。あと、舞台表、裏で登場するコーラスも清く美しい合唱でした。

 また、演出が特に素晴らしいです。時代設定は現代と中世が入り混じったような舞台構成ですが、各幕、見所、考えどころ満載の舞台です。1幕では、荒廃した城内の様子を、映画「未知との遭遇」(ちょっと、古いか?)で見たような神秘的、宇宙的な空間を創出していてワーグナーの世界に思いっきり観衆を引き込んでくれました。第二幕の誘惑の花園も照明が美しく、幻惑されます。また個人的には、第3幕の舞台は特に気に入って、線路を使って、時間軸や空間軸の相違を表すのはなかなか凝っていています。クンドリーが線路の彼方に消えていくラストシーンの神々しさは、音楽との相乗効果で、思わず涙するほどでした。

 ENOの演奏も文句なしです。緊張感、透明感のある張り詰めた演奏で、ワーグナー節をがんがんに利かしてくれました。

 90分、70分、70分で公演だけで4時間。休憩も入れると、3時半から始まった公演が、終了は9時。ワーグナーのオペラはみなそうですが、見る方にもかなりのエネルギーを求められます。今日は1幕、3幕はかなり集中できましたが、中盤の2幕はかなりぼんやりしてしまったのは自分としては残念でした。

 それにしても、今回のENOは本当に良くやってくれたという感じでした。思いっきり、拍手し、「ブラボー」を叫んで来ました。

※写真はGoogle検索より。

2011年2月19日 15:30-21:00

A co-production with San Francisco Opera and Lyric Opera, Chicago
Production supported by the Friends of ENO and a syndicate of donors

Conductor Mark Wigglesworth;
Director Nikolaus Lehnhoff;
Associate Director Daniel Dooner;
Set Designer Raimund Bauer;
Costume Designer Andrea Schmidt-Futterer;
Lighting Designer Duane Schuler;
Choreographer Denni Sayers;
Translator Richard Stokes

Cast includes:
Iain Paterson (Amfortas);
John Tomlinson (Gurnemanz);
Tom Fox (Klingsor);
Stuart Skelton (Parsifal);
Jane Dutton (Kundry);
Andrew Greenan (Titurel)

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London Symphony Orchestra / Daniel Harding

2011-02-18 23:55:52 | コンサート (in 欧州)
2ヶ月ぶりにLSOのコンサートに足を運びました。ロンドンのオーケストラは、皆、個性的で面白いのですが、私の場合、しばらく行かないと禁断症状が出るのはやっぱりLSO。最近、ぶるぶる震えが止まらず、ましてや今回はブラームスのヴァイオリン協奏曲とあれば行かないわけには行きません。

この日は最初にGary Carpenterさんという人の”Fred&Ginger”という現代曲。世界初演なので当然、初めてです。短い曲ですが、ジャズっぽいリズムが入って、楽しんできく聴くことができました。

続いて、早くもお目当てのブラームスのヴァイオリン協奏曲。今回のソリストのJanine Jansenは初めて聴く人ですが、とっても長身で大柄です。水色のドレスがとても映えて、舞台栄えする人でした。指揮台に立つハーディングと同じぐらいの背丈があります。
 
その彼女のヴァイオリンは、ぐいぐい押す迫力とうっとりするような優しさを併せ持った演奏でした。パワフルで情熱的ですが、けっして粗野ではありません。オーケストラも良く鳴っていて、弦のアンサンブル、管の響きともに秀逸で、聞き惚れるとはこういうことを言うのだろうなと思ったぐらいでした。

大きな拍手にこたえるJanine Jansenは小柄なハーディングの二回りぐらい大きいです。観衆の絶大な拍手に対して応える際も、ハーディングは彼女とあんまり並び立ちたあそうじゃなかったのがちょっと微笑ましくみえました。小柄なハーディングがますます小さく見えるから。
 
休憩を挟んで、続いては、ワーグナーの「ジークフリートの牧歌」。ワーグナーらしい重層的な音楽をLSOの弦、個性豊かな漢楽器が共演します。文句なしに美しい音楽でした。

そして、最後はシュトラウスの『死と変容』。シンプルな私なんぞは、この題名をきいただけで、ひいてしまうのですが、これもとっても良い演奏だったと思います。スケールが大きい音の塊が、大波のようにうねり、重なりあって迫って来ました。まさに、LSOの本領発揮という感じです。素晴らしい弦と管の個性のぶつかり合い

あえてのネガティブコメントを言うとすると、私のファンのハーディングの指揮振りでしょうか?ちょっとナリで振ってないか?と思うほどオケの力量に委ねた感じの没個性的な指揮ぶりに感じられました。守るには、まだあなたあなたはまだ若い。もっと、戦ってほしい。

久々のLSOコンサート。やっぱり、LSOのコンサートとはめったに外れがありません。

London Symphony Orchestra / Daniel Harding
Brahms Violin Concerto with Janine Jansen, plus music by Wagner and Strauss
17 February 2011 / 19:30
Barbican Hall

Gary Carpenter Fred & Ginger
Brahms Violin Concerto
Wagner Siegfried Idyll
Strauss Tod und Verklärung

Daniel Harding conductor
Janine Jansen violin
London Symphony Orchestra


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ロンドン 韓国料理レストラン Myung GA

2011-02-17 22:33:22 | レストラン・パブ (in 欧州)
 職場の仲間と出かけた韓国料理店。場所はピカデリーサーカスから北方向に徒歩5分です。(写真はGoogleイメージ検索から拝借)

 入口に大きく日本語で「韓国の味 焼肉レストラン」と書いてあるので、ちょっと引きますが、店内は大衆すぎず、気取らず過ぎずで良い雰囲気です。

 キムチ盛り合わせ、韓国風お好み焼き、焼肉・・・。焼肉は、日本のもの焼肉に近い、比較的薄切の肉でとってもおいしかったです。目一杯食べました。たまに無性に焼肉が食べたくなる時ってありません???

 ※レストランのホームページはこちら

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ロイヤル・オペラ/ モーツアルト 『魔笛』

2011-02-16 23:01:48 | オペラ、バレエ (in 欧州)
 先週、ロイヤルオペラにモーツアルトの「魔笛」を見に行きました。「魔笛」は自分の中でも、かなり好きなオペラの一つです。

 ギリギリに劇場について、席に着いたら、いきなりアナウンス。サー・デイビスが病気で当キャン。本シリーズの後半を振る予定だったDavid Syrusが代役とのこと。この公演は半分、デイビス先生お目当てでもあったので、いきなりで出鼻を挫かれて、かなりガックときました。

 でも、終わってみれば、やっぱり理屈抜きに楽しいオペラであることを再確認。

 歌手陣は今回も超スター選手は居ないものの、安定した良い歌唱だったと思います。特に、パミーノ役のKate Royal(何か名前が凄い)が清楚なお譲様役のイメージにぴったりの美人さんではまり役。線は細いですがとっても美しいソプラノで、舞台全体を華のあるものにしてくれました。主役にイメージに合う人が居ると、それだけでとても舞台を見ているのが楽しくなります。

 また、タミーノ、パパゲーノ、ザラストロの男声陣も良かったです。このオペラは、パパゲーノがとっても大切な役柄だと思いますが、Christopher Maltmanが演技、歌唱ともに好演です。また、ザラストロのFranz-Josef Seligの低音も迫力満点で、怖いぐらいでした。

 演出も色合いが美しいです。童話の世界のふわふわ感の「明」の世界と神殿でのフリーメンソンの秘密結社的な「暗」の世界の対照が興味深く、楽しめました。

 私的に、ちょっと?だったのは演奏。スローテンポで重い演奏に聴こえたですが、気のせいでしょうか?もっと、モーツアルトの音楽は軽快で、楽しいはずなのですが・・・。演奏自体は良かったのですが、なんか、重心の低い「どっこいしょ」的な音楽に聴こえて、歌唱や舞台に比べて、オーケストラには今ひとつ、乗り切れませんでした。

 まあ、贅沢を言ったら切が無いし、全体としてはもうとっても満足でございました。

 デイビス大先生は大丈夫だろうか?もうお歳もお歳なので、しっかりお休みいただき、早く良くなってください。3月のLSOのコンサートも買ってありますので・・・



Die Zauberflöte
Friday, February 10 7:30 PM

Credits
Composer: Wolfgang Amadeus Mozart
Designs: John Macfarlane
Lighting designs: Paule Constable
Movement Director: Leah Hausman

Performers
Conductor: David Syrus
Tamino: Joseph Kaiser
Pamina: Kate Royal
Papageno: Christopher Maltman
Papagena: Anna Devin§
Queen of the Night: Jessica Pratt
Monostatos: Peter Hoare
Sarastro: Franz-Josef Selig
First Lady: Elisabeth Meister§
Second Lady: Kai Rüütel§
Third Lady: Gaynor Keeble
Speaker of the Temple: Matthew Best
First Priest: Harry Nicoll
Second Priest: Donald Maxwell
First Man in Armour: Stephen Rooke
Second Man in Armour: Lukas Jakobski§
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リヴァプール観光 (3/3) 国際奴隷制度博物館

2011-02-15 22:27:14 | 旅行 イギリス
今回のリヴァプール行きはビートルズ目当てなので、特にその他の観光地による予定は無かったのだが、日曜日の午前中が空いていたので、一つだけ博物館に行った。リヴァプールはEUからEuropean Capital of Cultureに指定を受けるほどなので、美術館や博物館が沢山ある。ウオーカー・アート・ギャラリー、テート・ギャラリー、リヴァプール世界博物館、海洋博物館などなど。今回はその中から、ちょっと変わった、Internatinal Salvary Musem(国際奴隷制博物館)というのに足を運んだ。学生時代に『アメリカ黒人史』を少しかじったから。

リヴァプールは、悪名高い黒人奴隷貿易の英国の主要な港である。リヴァプールの港から、武器や日常品を運んだ船が、西アフリカに寄港し、そこで物人交換で黒人を手に入れる。そして、そこから中南米、北米に運ばれ、黒人と引き換えに、大量の貨幣、コーヒー、香料などを購入し、それを欧州に持ち帰り、関係者が大もうけをしたのだ。リヴァプールは "Capital of the transatlantic slave trade"だったのである。そして、 この博物館は、その奴隷船が出発した港に面して立っている。

ここでは、黒人のもともとのアフリカの文化の紹介、奴隷貿易の実態、リヴァプールとの関わり、プランテーションでの奴隷の生活、黒人開放の歩み、そしてオバマさんを初めとする現代世界で活躍する黒人たちが、模型やコンピュータグラフィックによる物語、歴史的遺品、フィルム、パネルなどによって語られる。もちろん、奴隷船での移動やプランテーションの厳しい生活は思わず目を背けたくなる内容だが、悲惨さを訴えつつも、過度の感情移入を抑えた客観的な展示はとっても勉強になる。

いくつも興味深い展示があった。例えば、リヴァプールから出発した奴隷船の船長の日記を、忠実にコンピュータグラフィックで再現したビデオ。当時の航海のルートや彼らの商売、そして奴隷がまさに商品として各人に値段がついて売り買いされる様が、とっても良くわかる。この様子は本を読んだだけでは絶対に分からない。

また、 現在のリヴァプールに残る奴隷貿易の傷跡の展示も興味深かった。市内には、奴隷貿易の儲けで建てられたタウンホール(市庁舎?)、奴隷商人たちの商館など、いろんな形でその跡を追うことが出来る。あのビートルズの曲で有名な、ペニー・レインという通りの名前も、実は、奴隷商人であったペニー氏の名前に由来しているなんて、初めて知った。

午後のミステリーツアーに備えて軽く流そうと思った自分が馬鹿だった。2時間近くたっぷり見学し、人間の手前勝手さ、強欲さ、残酷さ、そして強さを勉強することができた。

一度、見学をお奨めいたします


Internatinal Slavery Museumのホームページ
※ 冒頭、写真は上HPより
コメント (2)
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リヴァプール旅行(2/3) ビートルズ・マジカル・ミステリー・ツアー

2011-02-14 23:31:39 | 旅行 イギリス
 翌日の日曜日は、「ビートルズ・マジカル・ミステリーツアー」なるツアーに参加した。観光バスでリヴァプールのビートルズ縁の地を廻る2時間のバスツアーである。

 12:00にアルバート・ドックを出発し、ジョージの生家、リンゴの生家、歌になったペニー・レインやストロベリー・フィールド、ジョンが住んでいた家(Mendips)、ポールが住んでいた家(20ForthlinRoad)、ポールとジョンが始めてであった場所、リンゴ、ポールの高校、ジョンの通った美術学校と廻り、最後キャヴァーン・クラブのあるリヴァプールサウンドのメッカ、マシュー・ストリート近辺で解散となる。

 もちろん参加者はビートルズが好きな人ばかりだし、バスの運行中はガイドのポールおじさんが訪問地の解説をしてくれる。そして合間にはビートルズの歌がBGMとして流さる。もうビートルズ一色のツアーだ。

 仕事じゃないが、やっぱり現場に行ってみるといろんなことが良くわかる。ジョージやリンゴの生家はいかにもワーキングクラスの市民住宅だったし、ポールの家は多少良かったけど、それでも彼らのマネジャーをしていたミドルクラスのBrian Epsteinの家に比べるとずっと劣った。「ビートルズが受けたのは、彼らがリヴァプールのワーキングクラスの出身だからだ」なんて話を聴いたことがあるが、確かに彼らのファミリーはワーキングクラスなんだということが分かった。(まあ、もう今やPaulはSirだけど)。

 また、彼らがホントにリヴァプールと言う街の地元仲間なのかが良くわかった。彼らの家は各々十分歩いていける距離なのだ。リンゴとジョージの生家はほんとネイバーといえるほどの距離だし、ポールとリンゴは同じ学校。そして、その学校とジョンの美術学校は隣り合わせ。彼らはホントに地元の仲間だったんだ。

 そして、ペニーレーン、ストロベリー・フィールドなど歌の舞台を訪れると、その曲がますます好きになる。

 小雨がしとしと降る生憎の天気だったけど、とってもビートルズにお近づきになれた気になるツアーで、とっても楽しかった。

 2011.2.13

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リヴァプール旅行 (1/3) ビートルズ縁の地を訪ねる

2011-02-13 19:53:12 | 旅行 イギリス
 「イギリスに来たからには必ず足を運ばなくては」と思っていたリヴァプールをやっと訪れることができた。ビートルズ縁の地を訪ねるためだ。

 私はビートルズマニアではないし、楽曲以外の詳しいことはあまり知らない。もちろん同時代の世代でもない。でも、音楽は大好きだ。大学時代に友人に教えてもらって以来、いつも自室の中、車の中など、彼らの音楽は身近にあった。今でもたまに、どうしようもなく聴きたくなる瞬間がある。これまでのいろんな人生のシーンにくっついていた音楽でもある。なので、ビートルズ誕生の地ともいえるリヴァプールは行かねばならぬところだった。

 土曜日の昼下がりの2時過ぎ、Eustonの駅からバージン特急に乗った。2時間10分で着く。地図で見ると遠いのだが、思いのほか早い。リバプールは大戦時にドイツにコテンパンにやられたので、街自体は新しく、お洒落なショッピングセンターなどがあり、活気のある地方都市だ。

 さっそく、ビートルズ・ストーリーへ直行。ビートルズの生い立ちから、リヴァプール時代、メジャーデビュー、海外ツアー、映画製作、解散、その後のソロ活動までを、時系列に、当時の品(使ってた楽器とか)、再現セット(ビートルズが日々出演していたキャバンクラブなど)、関係者の証言などで振り返るビートルズ博物館だ。日本語の音声ガイドもあり、とっても楽しめる。

 それにしてもジョン、ポール、ジョージ、リンゴという才能が、同じタイミングで、同じリヴァプールに居たという偶然や、そしてジョンとポールの特異な個性とそのケミストリーには改めて驚くばかりである。

 閉館までの19時まで粘って、一旦ホテルにチェックイン。今回は2つ星のかなりチープなB&Bだったのだが、なんと1階にあるパブがMcCartney's Barという名前。ホテルの壁にもいたるところにビートルズやポールのポスターや写真が飾ってある。それだけで、嬉しくなる。

 ホテルで休憩した後は、次は夜の部へ出撃。あのビートルズ常連の幻のクラブ、キャバンクラブ(ホンモノは1973年に閉鎖。その隣のビルに1984年から復活)へビートルズバンドのライブを聴きに行った。

 入り口から地下に降りていくと、2つのエリアに別れている。入口近くの部屋は生演奏つきのパブ、奥の部屋がライブハウスの作りになっている。パブの方は、レンガの壁、ステージのつくりが、博物館でみたばかりの当時のキャバンクラブをそのまま再現した作りになっていた。この日は、別料金(といっても10ポンドだが)で、月1回、土曜日に行われるビートルズの日なのである。奥のライブハウスエリアでの公演。

 21時からとチケットに書いてあったが21時30分まではBGMが流れるだけ。ただ、部屋は、開演前からお客さんで一杯で、すごい熱気である。椅子は隅っこのほうに少し置いてあるだけだから、みんな基本的に立って、ビールやカクテルなどを飲んでいるのだが、なんか期待感一杯の表情。9時半をすぎたところで、ビートルズルックに身を固めたバンドが登場。ポールだけが、顔もそっくりで笑ってしまった。"A Hard Day's Night"で始まった。最初からボルテージは最高に上がっている。初期のナンバーを中心に、前半と後半の2部構成で日付けが変わる直前まで盛り上がった。老若男女、リヴァプール、マンチェスターの近隣の地元の人、世界各国からの観光客が、一緒になって盛り上がり、歌う。ビートルズぐらい世界共通言語の歌があるだろうか?世代を超え、国を超え、皆が一緒に歌えるのだ。なんと、楽しい時間だろう。

 ロンドンよりは2,3度は低いと思われる寒い夜の道を、熱気で火照った体を冷ましながらホテルに戻った。

 ※ビートルズ・ヒストリーのHP
  
 ※キャバンクラブのHP
 

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とある職場の風景 恐るべしキックオフイベント@Paris

2011-02-11 23:25:27 | ロンドン日記 (日常)
フランスの支店長(フランス人)から「フランスオフィスの2011年キックオフイベントをやるから来ないか?」と誘われたので、パリまで行ってきた。

フランス人の企画とは思えない、とんでもない企画だった。

夕方15:30、パリ市内のレストランを借りきって総勢70名余りの社員が集まる。第一部は、100%ビジネス。欧州社長の欧州事業計画プレゼンテーションから始まり、フランス支店長のフランスプランの説明、続いて営業やオペレーションの各責任者からの決意表明。「フランチーム一丸となってみんな、がんばるぞ〜、エイエイオー」みたいな感じ。へえフランス人もこんなことするんだと感心した一方で、社員の中には何となく乗り切れない雰囲気の人もいた。

つづいて第2部。てっきり、そのまま、パーティーかと思ったら、メトロで20分近くの移動。実は、この日の企画は第一部の会場を除いては、私も含めて社員には何も知らされていなかった。どこに行くのもわからないまま、誘導されるままに動くだけ。ミステリーツアーだ。

たどり着いたのはパリ市内ではあるが、観光では絶対行かないような場末感一杯のところ。アフリカ系や中東の人ばかりが目につく。そこの一角にある雑居ビルの階段を上っていく。まだ5時だし、パーティーの時間には、少し早いなあと思ったが、なんとたどり着いたのはバンド練習用のスタジオだった。狭くて、雑然とした廊下にエレキギターを担いだフランスのあんちゃん達がうろうろしている。ここで飲み会????

と思ったら、2部屋に分かれてダンスの練習だった。インストラクターがポップな音楽(後で聞いたら、Black Eyed Peasというグループの I Gotta Feelingという有名な歌らしい)に合わせてエアロビ擬きのダンス(これも後で聞いたら、フラッシュダンスというダンスらしい)を教えてくれる。皆、何でこんなことするんだと思いながらも、インストラクターの元気のよさに押されるように有無を言わさず踊らされる。まあ、この手のアクティビティは始めればそれなりに楽しいものだ。2時間みっちり、レッスンで汗だくである。なるほど、こうやって飲み会の前に共通体験を積ませてチームビルディングに役立てようって腹だな。と理解した。確かにパーティー前の運動は、ビールがさぞかし旨くなるだろう。しかし、これで終わらなかったのである。

2時間のレッスンが終わったら、第3部会場に移動と知らされる。少し広い会場で、記念に、全員で揃って踊ってビデオを撮るという。まだ移動かよ。段取り悪いんじゃないか?と思いつつ、メトロに乗ってまた移動。そしたら・・・・


到着したのはサン・ミッシェル噴水前の広場。東京で言えば、表参道の交差点広場というか、新橋の駅前広場というか、ぴったりのイメージのところは難しいが、メトロの出入口にあり、とにかく人がたくさん集まる広場だ。なんと、そこでストリートダンスとして、さっき覚えたダンスを皆でやるというのである。「え〜〜〜」、皆の顔に動揺が・・・。しかし、準備よく、もう立派なスピーカーや音響機器がセットされている。すぐに、イントロが流れ始める。躊躇している時間はない・・・

総勢70名のストリートダンスがスピーカー一杯から流れるポップミュージックとともに始った。50人はいるかと思われる、周囲にバラバラにいた人たちが、いきなり何が始まったのか?と集まってくる。

半分やけくそだが、この観衆の手前、あんまりみっともないことはできないと皆一生懸命踊る。まあ70人分の一だから、照れもあまりない。それより、観客はどんどん増えてくる。僕らの躍りに合わせて、一緒に踊っている人たちが見える。歓声も聞こえる。携帯で写真もとってる。こんな俺らを撮ってどうするんだとも思ったが、悪い気はしないもんだ。5分足らずの、まさに一芸はあっという間に終わった。最後には優に100名は集まっていたように見えた観衆から拍手ももらった。というか、自分達で自分達に拍手していた。

終わるや否や即、逃げるように徹収。そして、最後の移動で、振り出しのレストランに戻って、パーティーだ。盛り上がらないわけがない。パーティーの後半には、今日の練習から本番までの模様がビデオ編集されて、まさにプロジェクトXとして放映された。自分達の踊りを見る。なかなかいけてるじゃないか・・・・って。皆嬉しそう。

パーティで、支店長と話した。

「すごい企画だったね。悪いけど、フランス人がこんなことして喜ぶなんて思いもしなかった。僕の「個人主義のフランス人」のステレオタイプは完全に崩れたよ。」

「そうだろ。でも、もしこれが事前に内容をアナウンスしてたら誰も来ないよ。基本的には好きじゃないからね。でも、やればみんな楽しいのさ。こういうチームビルディングは大事なんだ。楽しんでくれた?」

「ああ、すごく楽しかった。誘ってくれてありがとう。でもこれで来年が大変だね。みんなもっと凄い企画を期待するぜ。」

「ああ、分かってる。でも大丈夫。もう来年のことも考えてある。」


今年のフランスチームの躍進は間違い無さそうだ・・・・



PS 今朝一番のユーロスターでロンドンに帰った。オフィスに到着するや否や、何人の社員から声をかけられた 「昨日、ストリートで踊ったんだって???」。この手の情報は廻りが早いのである。
コメント (4)
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