その後の『ロンドン テムズ川便り』

ことの起こりはロンドン滞在記。帰国後の今は音楽、美術、本、旅行などについての個人的覚書。Since 2008

METライブビューイング ヴェルディ 《オテロ》

2015-11-29 20:22:31 | 演奏会・オペラ・バレエ・演劇(2012.8~)

(グーグル画像検索から拝借。Otello (Aleksandrs Antonenko) has just returned from battle and he and Desdemona (Sonya Yoncheva) sing about their love for each other. Credit: Ken Howard/ Metropolitan Opera)

 METらしい豪華キャストによるハイレベルなパフォーマンスを堪能しました。

 オテロは、ロンドン駐在時にコリン・デイビス翁の指揮によるロンドン響でのコンサート方式の演奏に痺れて以来、一度是非、舞台付きで見てみたいと思っていた演目。当時、急な代役で登場したサイモン・オニールのオテロが素晴らしい出来で、舞台と演技が付いたらどんな迫力になるのだろうと、見なくてはいけないオペラリストの筆頭でした。今回、本当のライブではないけど、METのライブ・ビューイングということで期待大。

 公演は、「さすがMET」と言うしかない重量級の舞台。軸となる三役のオテロ(アントネンコ)、イアーゴ(ルチッチ)、デスデーモナ(ヨンチェーヴァ)がいずれも素晴らしく、ため息ものでした。とりわけ、ルチッチの悪役ぶりがスクリーン一杯に緊張感を注入してました。また、死を予期したデスデーモナが歌うアベ・マリアは、涙なしには見れないほど。イアーゴの歌唱も終始、安定。

 ガラスの仕切りを使った演出は、登場人物の心情を垣間見られるようになっていて、洗練された印象を受けました。私の好きな指揮者ネゼ=セガンが、陰影豊かにオーケストラをドラマチックに鳴らしていたのも感動。今回は、私が見たMETライブビューイングの中でも間違いなくトップクラスの出来です。

 幕間では、HD映像のディレクターがどうライブ映像を作って行くかが紹介されました。劇場内の12台のカメラ映像を縦横無尽に切り替えて映像つくりをする様子が分かり、興味深いものでした。ただ、これって、逆の意味もあって、「こうやって迫力画面が作られて、感動させられているわけね」と思ったりしてやや興ざめ的なところもあり、なかなか複雑。これは、やっぱり生で観るべきものでしょうね。


ヴェルディ《オテロ》新演出

MET上演日:2015年10月17日
■指揮:ヤニック・ネゼ=セガン Yannick Nézet-Séguin
■演出:バートレット・シャー Bartlett Sher
■出演:アレクサンドルス・アントネンコ(オテロ)Aleksandrs Antonenko、
ジェリコ・ルチッチ(イアーゴ)Željko Lucić
ソニア・ヨンチェーヴァ(デスデーモナ)Sonya Yoncheva、
ディミトリー・ピタス(カッシオ)Dimitri Pittas、
ギュンター・グロイスベック(ロドヴィーコ)

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野村克也 『監督の器』 イースト・プレス 2013

2015-11-27 00:00:11 | 


 先日、本ブログの運営サイトGooで「自分の人生に影響を与えた本は?」というお題でのブログを募集していた。Gooブロガー多しと言えども、その一冊に野村克也氏(ノムさん)の著作を上げるのはきっと私ぐらいだろう。

 それは『敵は我にあり』という氏の解説者時代の書籍だ(1980年初版。1982年に続編も出版。新装版が2008年に出版されている)。当時、高校球児の端くれだった私は、この本を読んで月並みだが天と地が引っくり返えったような衝撃を受けた。「野球って、こんなスポーツだったんだ」と。そこには、投げて、打って、捕って、走るを超えた、野球の考え方、戦術が書かれていた。それ以来、私の野球、スポーツ全般を見る目、楽しみ方は全く変わった。

 本書はそのノムさんの監督論である。10代、20代の時、ノムさんの著作は初期のものを中心に優に10冊以上は読んできたが、久しくご無沙汰だったので、久しぶりに手に取ってみた。

 一言で感想を言うと、「ノムさんも年を取ったなあ~」。もともとテスト生から這い上がった自負とコンプレックスから来る辛口な皮肉は、氏の魅力の一つなのだが、歳を取って更にエスカレートしている。私が愛読した頃はまだヤクルト監督就任前でもあったから、その後、名実ともに監督としての実績や加齢も加わり、高い立場からの「昔は良かった。今の時代、今の若い者は・・・」的な思考が散見される。私自身の「昔」の記憶と印象では、昔のノムさんは自分自身がまだ野心や向上心があって、まだまだ野球を極めたい、それを伝えたいという熱意が感じられて「良かった」。その頃を知り、尊敬していた私としては寂しい限りだ。

 プロ野球好きの人には、選手や監督のいろんなエピソードやノムさん流の選手・監督評価を知ることができるので面白くは読める。が、残念ではあるが、仮に今、私が高校生に戻って、本書を読んでも「人生に影響を与えた本」にはなることはないだろう。


【目次】
プロフェッショナルとは恥の意識″だ。
第一章 名将は不要か
第二章 組織はリーダーの器以上に絶対、伸びない
第三章 中心なき組織は機能しない
第四章 知略と知略の心理戦
第五章 捕手革命
第六章 監督は「気づかせ屋」である

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御礼、200万PV達成

2015-11-26 00:00:30 | 日記 (2012.8~)
 本日(2015年11月25日)をもって、ブログ開設以来200万ページビューを達成いたしました(2,000,720 PV)。ロンドンに赴任し、しばらくのホテル暮らしの後、住居を決めてネットがつながり、ブログを開設した2008年12月以来、丁度丸7年、日数にして2524日目にしての節目です。

 細々と続けてきた当ブログですが、訪問いただき、目を通していただいた皆様へお礼申し上げます。「ありがとうございました!」。コメント、メッセージ、トラックバック等頂いた方には、特に大感謝申し上げます。皆様からのフィードバックが継続の励みになりました。

 もともと単身赴任だった自分から家族に向けての近況報告として始めたブログでしたので、決して高PVを目指したものではないのですが、目を通していただく人がいるというのは、何とも嬉しいものです。今や自分自身の記録とともに、記憶にも欠かせないものになりました。日進月歩のITの世界では、ブログはすでにオールドメディアとなった感がありますが、自分の体験を自分の中に残し、更にそれを外の人と共有できるという点において、素晴らしいメディアだと思います。

 いつまで続けれられるかはわかりませんが、しばらくは継続していくつもりでありますので、引き続きよろしくお願いいたします。

 

 

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マルモッタン・モネ美術館所蔵 モネ展 @東京都美術館

2015-11-24 07:02:16 | 美術展(2012.8~)


 パリが大変なことになっていますが、そのパリにあるマルモッタン・モネ美術館の所蔵品からのモネ作品展です。パリは何度かプライベートや仕事で訪れましたが、マルモッタン・モネ美術館は行ったことがありませんので、非常に楽しみにしていました。
 
 お目当ては、印象派の由来となったモネの『印象・日の出』。開幕間もない10月に、空いているであろう金曜日の夜間開館時間に出かけたのですが、これが大いなる見込み違い。『印象・日の出』が期間限定展示(東京では10月18日まで。来年福岡、京都を巡ります)のためか、夜間とは思えない混み方で、土日の昼間と変わらないような人出でした。

 金曜の夜ということで、真面目に根気よく並んで、牛歩の歩みで鑑賞する元気も無く、他の作品は諦め、『印象・日の出』の一本勝負に。目玉の出展でもあり、整列して順次鑑賞するよう誘導されましたので、時間は短いですが間近で見れました。


《印象、日の出》 1872年


 ル・アーヴルの港の朝の印象を描いたこの作品、朝もやの中の港の風景が目の前にあるようです。(音声ガイドや昨年聞いたとある講演会でも耳にした話ですが、最近の研究で、モネが何年何月何日何時にどこで、この絵を描いたかまでが明らかになっているそうです。)会場では、上手くこの絵にスポットライトを当てていて、まるでこの絵が浮き上がって、輝いているようで見とれてしまいます。

 『印象・日の出』以外は殆ど人ごみの後方を素通りだったのですが、唯一、人ごみが途切れて立ち止まって鑑賞できたのが、若き時代に描いたカリカチュア(風刺画)。若き日は授業そっちのけでカリカチュアを描いて、小遣い稼ぎをしていたとか。そんな、微笑ましいエピソードに若きモネを想像し作品群を眺めるのは楽しいものでした。


《劇作家フランソワ・ニコライ、通称クレルヴィル》 1858年.鉛筆、紙


 展覧会は12月13日まで、東京都美術館にて。
 

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N響 11月定期Cプロ/ 指揮:ウラディーミル・フェドセーエフ/ チャイコフスキー:序曲「1812年」ほか

2015-11-22 08:41:25 | 演奏会・オペラ・バレエ・演劇(2012.8~)
 音楽の楽しさを存分に味あわせてくれ、最高の気分爽快さでホールを後にした演奏会でした。

 プログラムはフェドセーエフさんによる東欧・ロシアものです。フェドセーエフさんは病明けだった今年4月定演に続いての登場ですが、指揮台に飛び乗る様子も見せ、更にお元気になられた様子でなによりです。このCプロ、なんと金曜・土曜の両日とも完売。

 圧巻は、後半のロシアプログラム。グラズノフのバレエ音楽「四季」やハチャトゥリヤンのバレエ組曲「ガイーヌ」では、氏ならではのロシア風の抒情性、民族性あふれる演奏でしたし、序曲「1821年」ではホールの後方にスクリーンがあって映像が映っているかのような歴史絵巻が展開されました。

 私のステレロタイプ的なイメージだと、ロシアのオケだと、機能は多少犠牲にしても更にパワー炸裂の演奏になるのかもしれませんが、昨日のN響は機能とパワーを絶妙にバランスさせて、フェドセーエフさんの棒に応えてました。よかった、よかった。

 前半は今年の「第17回ショパン国際ピアノコンクール」で第1位を獲得したチョ・ソンジンくんのショパンのピアノ協奏曲 第1番。誠実、丁寧に弾く印象です。逆に、ちょっと教科書的、優等生的な感じで、もう一つ彼の個性、特徴のようなものはよくわからなかったかな。アンコールではショパンのポロネーズ第6番をやってもらいましたが、こちらのほうが思いが表出した、「らしい」演奏になっていた気がします。1994年生まれとのことですから、これからの更なる成長・活躍に期待大です。

 
《すっかり秋のNHKホール前》

 
《こちらは原宿駅前 サンマルク・カフェ2階より》



第1821回 定期公演 Cプログラム
2015年11月21日(土) 開場 2:00pm 開演 3:00pm
NHKホール

指揮:ウラディーミル・フェドセーエフ
ピアノ:チョ・ソンジン

ショパン/ピアノ協奏曲 第1番 ホ短調 作品11
グラズノフ/バレエ音楽「四季」作品67 ―「秋」
ハチャトゥリヤン/バレエ組曲「ガイーヌ」―「剣の舞」「ばらの少女たちの踊り」「子守歌」「レズギンカ舞曲」
チャイコフスキー/序曲「1812年」作品49


No.1821 Subscription (Program C)
Saturday, November 21, 2015 3:00p.m. (doors open at 2:00p.m.)
NHK Hall

Vladimir Fedoseyev, conductor
Seong-Jin Cho, piano

Chopin / Piano Concerto No.1 e minor op.11
Glazunov / “Les saisons”, ballet op.67 - “L’automne”
Khachaturian / “Gayne”, ballet suite - “Sabre dance”,“Dance of the rose maidens”,“Lullaby”,“Lezghinka”
Tchaikovsky / Ouverture solennelle “1812”, op.49
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イェジ・アンジェイェフスキ(著)、 川上 洸 (翻訳)  『灰とダイヤモンド(上)(下)』 (岩波文庫)

2015-11-21 00:00:48 | 
 

 先月読んだ松岡正剛氏の『誰も知らない世界と日本のまちがい』に紹介されていたので手に取ってみた。同名で映画化(監督アンジェイ・ワイダ)もされていて、映画の方も評価が高いようである(原作は1947年、映画は1958年)。

 内容は、第2次世界大戦終戦期のポーランド地方都市における、1945年5月5日からの4日間の様々なポーランド人の出来事を描いた「歴史」小説(松岡氏は「ナチス占領下のポーランドを描いた作品」と紹介しているが、正確にはナチス占領後のポーランドである。)。ソ連の支援を受けるポーランド労働者党の人々、青年運動家(テロリスト)たち、支配者側に協力した収容所帰りの元判事とそれを知らない家族、旧体制の貴族達など、広い社会階層、年代層の多くの登場人物が同時並行的に描かれ、当時の時代の空気がうまく切り取られている。

 ポーランドへはプライベートと仕事で一度づつ、訪れたことがある。ポーランド人はとても好印象だったが、戦争で破壊されつくした後に再建された綺麗な「旧市街」や、いかにもソビエト社会主義の名残りと言えるような権威的で無機質な建築物などを見て、この国の困難な近現代史が容易に想像できた。本書が描くのはそのごく一部であるが、そうした困難が肌感覚で理解できる小説である。

 背景、テーマは重いが、文章は会話も多く、読むことは難しくない。万人にお勧めできるとは言えないが、第2次大戦期の東ヨーロッパに関心のある人には一読をお勧めしたい。
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第1回 さいたま国際マラソン 完走記 (2/2)

2015-11-18 00:00:35 | ロードレース参戦 (in 欧州、日本)
【25~30キロ】
 25キロ地点で2時間11分45秒。5キロラップは26分22秒でよしよし。25.5キロ地点の神明町の折り返し。折り返して走る方角が変わり、雲から顔を出した太陽が眩しい。
 26キロ地点を通過して、最初のアクシデント。25キロからの1キロラップを確認しようとしたら目を疑った。ストップオッチが動いていないのだ。何が起こったのかわからず動揺。走りながら冷静さを取り戻すと、どうも25キロ地点でラップのボタンとストップのボタンを押し間違えたらしい。これでトータルタイムが分からなくなってしまった。トホホ・・・

 《神明町の折り返し。いよいよ後半》

 太陽が顔を照らし、体温が上がってくる。これから後半だが、何かきつくなる予感がした。平坦で単調な道だが、足が重くなり始めて疲れを感じる。小出監督が言うように、「30キロ過ぎに一番速く走る」を実践しようと思ったけど、ちょっとは難しいかなと思い始めた。30キロ手前の浦和大学の坂が結構長くてキツイ。

 コース試走の時に「きっと、こんなところは誰も応援が居ないだろう」と思った越谷の田園地帯にも、思いのほか多くの応援を頂いた。これはホントに有り難い。ウォ―ターステーションでは地元の中高生が水を渡してくれるのだが、「頑張ってください!」の一言で、水と一緒に元気も貰う。30キロはもう時計がずれているのでラップは良くわからないが、そんなにスピードが落ちた実感は無い(レース後の大会HPによると2時間38分、5キロラップは26分31秒)。

 《天気が一気に変わり、気温もグングン上昇》

 30キロ地点で第2のアクシデント。体温が上がってきたのが分かるので、給水所のたびに水を取って、顔にかけたり、脚にかけたりしてたのだが、なかなか下がらないので、頭から水をかけてみた。すると、今回初めてレースで着た長袖のランニングシャツがべたっと水を含んで、胸にベットリと吸い付き、心臓が冷える感じで不快感満点。ちょっと、これは参った。湿度が高いのか、走りながら乾く気配もなく「二度と着ないぞ、このど阿呆ウエア」となんの罪もないウエアに毒づく。

【30キロ~ゴール】
 30キロ地点を過ぎて3つめの異変。急に足が動かなくなり始めた。32キロの陸橋の上り下りで左ももが軽く釣り始める。後半の足釣りは毎度のことだったが、今年2月の東京マラソンでは釣ることはなかったし、釣るのは大抵ラスト2キロなので、想定外の早期の足の不調に動揺した。あと10キロもあるというのに・・・ちょっと、早いだろう。大丈夫か?これまで快調にキロ5分20秒を上回るペースで走っていたのが、時計が無くともガクッとペースが落ちたのが分かる。

 往路では気にならなかった小さなアップダウンが、大きな壁に見えてくる。周りには歩き始めているランナーが多数。サブ4ランナーたちがこうなのだから相当きついコースなのだろう。気温が上がっているせいか、側道に倒れて看護を受けている人がいる。「意識はあるか?」と駆け込む救急士さんの叫び声が聞こえてきたりして、自分勝手ながら、人の心配をするよりも、次は自分じゃないだろうなあ~という思いが頭をかすめる。35キロ地点でのタイムは、トータルタイムは既に不明だが、5キロラップはついに25分30秒を超え、28分57秒。キロ5分30秒を超えてしまった。このまま沈んでしまうのか?

 35キロ35k地点を過ぎて駒場公園を右折し、道幅が狭くなり、ここでも細かいアップダウン。お尻(制限時間4時間)が区切られているので、釣った足のリハビリのために立ち止まってケアする暇はない。時折早歩きに変えては、体のバランスを取り直す。北浦和駅前の坂でやや持ち直した感があったが、旧中山道に入って再び痙攣が襲う。

 痙攣したところをかばって走るためか、痙攣の場所が左腿、右腿、左ふくらはぎ、右ふくらはぎと次々と変わって行く。旧中山道に入り、周囲の応援は盛り上がるが、その声援に全く答えられないのがつらい。時計を見たら、また押し間違えていて、ラップタイムさえ分からなくなってしまった。ストップウォッチから時刻表示に変えて、制限時間でゲートが閉まる1時40分までのゴールを目指す逆算ランに切り替えた。

 40キロ地点を通過。ラップはわからないが、時刻は1時22分。あと18分ある。あと2.4キロ。歩いては間に合わない。なんとか、走り・歩きで少しでも前に進むしかない。ぴくぴく痙攣している脚が、2年前のかすみがうらマラソンの後半1kのように、完全につってしまったらゲームオーバー。完走メダルも完走タオルももらえない。足をなだめ、すかしつつ、とにかく前に進む。数度、中度の釣りが足を襲う。普段なら立ち止まって、簡易マッサージをするところだが、その時間はない。這ってでも進む、少しでも足が動く間は前に出る、そんな気持ち。こんな終盤は予想してなかったが、予想通り「秒」を争うレースになってしまった。

 最後のコーナーを廻って、200メートルほど先にゴールが見えてきた。普段なら、ここでカメラを向けるのだが、とてもそんな余裕はない。「あと、3分あるよ~。頑張って。」と沿道から声をかけてくれる人が居る。スピーカーを通じて、「頑張ってください。ゲートは1時40分までで~す」というような女性MCのアナウンスも聞こえてくる。公式時計が見えてきた。3時間57分50、51、52、53・・・・、ゴール!3時間58分7秒。

 足を引きずりながら、完走メダルと完走タオルも頂いた。靴に括りつけた計測チップを地元の中学生が外してくれる。が、その間に足が完全に吊って、そのまま動けなくなった。痛さに顔が歪むが、ゴールまでにこれが起こらなくて本当に良かったと思った。

 記録としては、今年2月の東京マラソンに次いでの自己セカンドベスト。ただ、消耗度はこれまでのどんなレースにも無いものだった。着替えを済ませ、ランナー仲間と近くの居酒屋で完走祝いをやったのだけど、ビールはジョッキ半分しか飲めないし、料理にも全く箸を付けられない(いつもは、レース後はかつ丼が食べたくなるのだが・・・)。仲間たちに気を遣わせてしまうことになってしまった。

いろいろ反省。
・反省1:やっぱり前半、周りにのまれてオーバーペースだった。タイムは溜めたけど、体力は消耗した。小出監督の本は全く実践できなかった。
・反省2:あんなに足をつったのは、これだけのコースに対応するには脚力がまだ足りないということだ。10月は自己最長の200キロ近く走ったけど、この程度ではだめと言うことなんかなあ~
・反省3:やっぱり制限時間4時間と言うのが体力的以上に精神的に大きくコンディションに影響を与えたのだと思う。タフにならねば。

 逆に30キロ地点までは、あれだけのアップダウンでもキロ5分15秒ペースで走れたのは自信にはなる。いやあ、マラソンは奥が深いわ。1回たりとも同じ、展開、物語がないからね。

 運営、応援は素晴らしい環境だった。オリンピック選考候補の選手たちと同じコースを走るというのもワクワクの体験。第1回大会に参加できたことを有り難く思い、運営された方々に感謝したい。
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第1回 さいたま国際マラソン 完走記 (1/2)

2015-11-17 00:01:15 | ロードレース参戦 (in 欧州、日本)
 昨日走ったさいたま国際マラソンの完走記です。毎度ですが、長くなりそうなので、2回に分けて書きます。

【起床~スタートまで】
 5時10分起床。雨がシトシト降っている。天気予報ではお昼には止むようだか、少しでも早く降り止むことを祈るばかり。朝食は味噌汁に小ぶりの焼き餅5つを入れる。トイレも順調で、予定通り7時10分前に家を出る。

 《さいたま新都心駅のポスター》

 8時15分現地到着。一緒に走る職場の仲間と落合い、スーパーアリーナで着替え。駅から近くて、屋内で着替え・準備ができるというのは、相当恵まれている。出場資格がサブ4(フルマラソン4時間以内で走れる)の人というだけあって、廻りを見回しても仮装した人とかは殆どいない。お祭りというよりも緊張した空気がアリーナには漂っている。参加人数が5000名に制限されているのも、マラソン大会にありがちな大混雑が無く、余裕が持てて良かった。最後のトイレもほとんど待たずに済んだし、非常に快適。

 《さいたまスーパーアリーナで準備》

 私自身も、今回のレースは、フルにつきもののお祭り感一杯にワクワク臨むというよりも、真剣な強い気持ちで臨んでいる。その理由は、4時間という制限時間と全部で6か所もある関門。スタート時のロスタイム6分を含めて、キロ5分30秒で走らないと完走できない。完走メダルももらえない!過去ネットタイムで4時間を切ったのが、14回中2回だけという私には、何らかの途中アクシデントがあると、絶対達成は無理。コース途中で収容されてしまうことになるのだ。このレースは前のゴールを掴みに走るレースというよりも、後ろの鬼に捕まらないように逃げる気持ちでのレースである。

 申告した持ちタイムから、私のスタートブロックは最後方のDブロック。スタート地点までのロスタイムが命取りになる可能性もあるので、Dブロック前方のポジションをキープできるよう、スタート40分前の9時にはスタートエリアに並んだ。すでに前には30mほどの人の波ができている。
 9時10分にはリオデジャネイロ・オリンピックの選考レースである女子エリートの部がスタートした。ブロック前方の位置を抑えたのは良かったが、立ったままでのバカ待ち状態で、逆にトイレが気になり始めた。もう一回行っておくべきか、でも後ろを振り向くと私の後ろにすでに100m近くの列が出来ている。あの後ろには並べないと思い、断念。なかなかスタートラインに向かって、前に詰める様子がないので、イライラしていたが、やっと10分前になって前進。それでもスタートまで、200m近くある。
 幸いにも、小雨模様はだんだんと小ぶりになってきて、気温もさほど寒くない。

《スタート前》

【スタート~15キロ】
 9時40分にいよいよ一般の部がスタート。気になるスタート時のロスタイムは3分ちょっとでスタートラインをまたいだ。最初は集団で固まって走りにくかったが、道幅も広くすぐばらけた。最初の1キロは5分33秒の入り。順調である。段々、体が温まって、ペースが上がってくる。体感速度としてはチョット早いかな。心配した坂は気にならない。けやき通りを下って行く。5キロのラップは26分12秒。 26:50~27:30が目安なので、若干早い。体は良く動いているが、ちょっとペースが早い。周りが走り込んでいるランナーなので、自然ペースが上がっている気がする。流れに合わせて走って良いものか。雨は完全に上がった。

 《けやき通り》

 10キロ経過が 52分37秒。5キロラップは26分24秒と多少落としたものの、「これじゃあ早すぎるなあ~」と思わず口に出た。すると、隣を走っていたご婦人ランナーから「そうですよね。突っ込み過ぎですよね。これだと後半(脚に)きますよね~」と話しかけて頂いて、ちょっと気持ちが緩む。
 463号線を左折して第2産業道路に入る。ここは殆ど実感はないほどの緩く長い登り坂。最初の折り返し地点である山崎の交差点から戻って来たランナーたちが対面を走る。運よく職場の仲間を見つけて、声をかける。相当、飛ばしている感じだ。

 《最初の折り返し点の目印 大けやきの木》

【15-25キロ地点】
 再び463号線に戻る。15キロ通過は1時間18分54秒。5キロラップは26分17秒。またまたペースが上がってしまった。対向車線に走り抜けるエリートランナー達とすれ違う。日本人選手は先頭から離れて3位で一人見かけ、4位で渋井選手が通り過ぎた。まあ、別世界の人たちではあるが、彼女たちの走りは、本当に早く、美しい。雲が切れて青空がのぞき始めた。

 《先頭を走る招待選手》

 見晴らしの良い新見沼大橋有料道路を渡り、浦和大学を左に見ながら、再びアップダウンを過ぎると、左折し浦和レッズの本拠地埼玉スタジアムに向かう。20キロで1時間45分22秒、5キロのラップが26分27秒。もともとのプランでは、ここまで1時間50分で、ここから平坦な30キロ地点まではペースアップの予定だった。でも、もう既にこのペースで走ってきてしまったので、更にペースアップすることはせずこのままのペースで走るよう方針変更。ここまでは上出来。神明町の折り返し地点を折り返した職場仲間が、今度は私を見つけて声をかけてくれた。

 《新見沼大橋有料道路を行く》

 《いよいよ雲が切れて、青空が出てきた》


(つづく)

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いよいよ明日 第1回さいたま国際マラソン

2015-11-14 10:13:19 | 日記 (2012.8~)


 いよいよ明日に迫ったさいたま国際マラソン。緊張感が高まってきました。

 昨夜は終業後に、さいたま新都心にあるさいたまスーパーアリーナへゼッケンを受け取りに。参加者は5000名に制限されているので、会場のわりには人気も少なく都市型マラソン大会としては、やや寂しい感じ。東京マラソンぐらいの大マラソンEXPOが開催されれば、お祭り気分も盛り上がるのでしょうけど。ボランティアの方々には暖かくお迎えいただきモチベーションアップになりましたが、わざわざ高い電車賃払って大宮まで来たのだから、企画としてはもう少し一捻りあってもいいんじゃないかな。


《受付会場。なんか会社説明会に向かうスーツ軍団のよう》

 今回、いつになく緊張感が高まっているのは、4時間以内という制限時間につきます。過去に4時間以内で走ったことは2度しかないにも関わらず、無謀と言えなくもない今回のチャレンジ。私のスタートエリアだと、スタートラインにたどり着くのに5分はかかるはずなので、実質3時間55分で走りきらなければいけません。

 自己新記録だった今春の東京マラソンではネットタイム3時間48分台でしたが、平坦な道が続く東京マラソンに比べ、今回のコースは難易度が桁違い。小さいながらもアップダウンの連続で、どうみても一定ペースで走り続けるのはなかなか難しそうです(下のコースマップの高低差参照)。完走メダルと完走タオルを持って帰るためには、1秒も無駄にはできません。

 しかし改めて各関門の制限時間や見たりすると、ちょっとしたアクシデントや出来事があるとアウトの可能性大。今回は私になりに練習も重ねてきたし、レースに向けてはペースも含めて結構考えてますが、さて思い通りにいくか。



《レースプラン》
 0~20K:アップダウンがある前半は、ひたすら我慢の走り。小出監督の「タイムためるな、体力ためろ」を実践し、キロ5分25-30秒で淡々と走る。
 20~30k:ハーフを過ぎて平坦な道となるこの部分は多少ピッチを上げて加速する。キロ5分15-20秒で走りたい。
 30~37k:再びアップダウンが続く我慢の7k。ペースが落ちるのは覚悟。キロ5分30秒を維持できればうれしいが35秒も可。
 37~42k:最後は気合で。体力の残り方次第だが、再び平坦な道になるので、できればキロ5分25秒で。

 最終ネットタイムは3時間50分を切るようがんばる。


 こう書いてみると、ほとんどペースには差がないように見えますが、実はこのキロ15秒ぐらいの違いが、私には全然違います。走ってみないとどんなアクシデントが出るか全くわからないのがフルマラソン。そのアクシデントにどう適応できるか、自分が試されます。

 頑張るぞ~。

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映画 『この自由な世界で』(2007) IT'S A FREE WORLD... (監督ケン・ローチ)

2015-11-13 00:00:10 | 映画


 イギリス現代文化を論じた本の中で紹介されていたので、DVDを借りてみた。イギリスの外国人労働者相手の職業紹介会社を立ち上げたイギリス人女性の主人公が不法移民の斡旋に踏み込んでいくストーリーを軸に、イギリスにおける移民労働者の世界を描く。

 リアリティ溢れるストーリー展開と映像が、現実の複雑さ、深刻さ、困難さを等身大に切り取っていると感じた。正直、見終わった後は、未知の世界を知って勉強になったといいう思いとともに、現実を垣間見てどっしりと重い気持ちにもなった。

 骨太の社会映画であり、大学の国際社会学や移民学の授業で取り上げられそうな映画。


キャスト
アンジー:カーストン・ウェアリング
ローズ: ジュリエット・エリス
カロル:レズワフ・ジュリック
ジェイミー:ジョー・シフリート
ジェフ:コリン・コフリン
アンディ:レイモンド・マーンズ

スタッフ
監督:ケン・ローチ
製作総指揮:ウルリッヒ・フェルスベルク
脚本:ポール・ラヴァーティ
音楽:ジョージ・フェントン


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小出義雄 『30キロ過ぎで一番速く走るマラソン サブ4・サブ3を達成する練習法』 (角川SSC新書)

2015-11-10 07:00:00 | 


 今週末のフルマラソンに向け、何かヒントになればと思い読んでみました。あの高橋尚子さん(Qちゃん)のコーチとして名をはせた小出義雄さんのマラソン指南書です。

 本書の一貫したテーマはタイトル通り、30キロ過ぎて一番早く走ることです。とにかく、前半は「タイムの貯金」をしないで、「体力の貯金」をすること。これが繰り返し出てきます。初のグロスタイムのサブ4(3時間台で完走)を達成した、今年2月の東京マラソンでは、偶然ですが30-35kのラップタイムが一番早かったので、私的にもとても腹落ち感がありました。

 本書では、サブ4、サブ3のための3カ月の練習メニューが紹介されています。私は、東京マラソンのサブ4がフロックで無かったことを証明するために、連続サブ4完走を目指しているので、サブ4メニューを参考にしました。面白いのは、私の手元には、昨年の金哲彦コーチの「3カ月でフルマラソン 「サブ4」の勲章を手にいれろ」の3カ月メニューとMizuno社のホームページから印刷したサブ4向けの練習メニューがありますが、そのどれとも違っています。一言で言えば、一番、厳しいメニューです。サブ4の練習は「脚つくり」が肝ということで、脚に刺激を与える練習がたくさん。読み始めた時には、既に1か月前だったのでつまみ食いですが、参考にさせてもらいました。

 さあ、あとは本番で、実践するだけです。


【目次】
第1章 マラソンのコツは「後半型」で走ること―一番苦しい30キロ過ぎで一番速く走るために
第2章 後半型で走るための考え方と練習方法―サブ4を例に説く「マラソンのコツ」
第3章 サブ3のためのマラソン練習―心肺を鍛えて「スピード」を体に覚えさせる
第4章 自己ベストを更新できる人、できない人―レース当日に起きることを知っておく
第5章 自己ベストの最大の敵は「故障」と知る―故障の起こり方と予防の仕方

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A・レブランク弦楽四重奏団 & イェルク・デームス @東京文化会館小ホール

2015-11-09 19:46:11 | 演奏会・オペラ・バレエ・演劇(2012.8~)


 友人からお誘いを受け、室内楽の演奏会に行って来ました。

 前半がA・レブランク弦楽四重奏団というカナダのアンサンブル(小林響さんと言う日本人ヴァイオリニストがリーダーをやっておられるようです)の演奏。そして、後半が、イェルク・デームスという往年の名ピアニスト(だったらしいです)を加えての五重奏(ソロの曲も一つあります)というプログラム。

 以前、N響の定期演奏会ではコンサート前に室内楽演奏の企画があり、毎回楽しんでいたのですが、いつの間にか無くなってしまったので、生の室内楽を聞くのは久しぶりです。東京文化会館の小ホールも初めて入りました。小ホールと言う割にはそこそこ大きいですが、演奏家を身近で接することができ、普段、大ホールの上から双眼鏡を通してステージを眺めている私には嬉しい限りです。

 アットホームな雰囲気で、くつろぎながら音楽を楽しめる室内楽の良さが満喫できる演奏でした。冒頭の、ショスタコーヴィチの弦楽四重奏はちょっと私には難しかったけど、ベートーヴェンの弦楽四重奏は、曲の作りもクリアで、各楽器の音も良く聞き取れ、シンフォニーの原型としての室内楽が良く分かります。

 後半に登場したイェルク・デームスさんは既に86歳。Wikiによると「日本では、パウル・バドゥラ=スコダとフリードリヒ・グルダとともに「ウィーン三羽烏」と呼ばれ」、カラヤンとも共演された華麗な経歴を持つ方とか。正直、年齢を隠しきれないところは伺えましたが、ブラームスの「3つの間奏曲」やピアノ五重奏曲を弾いて頂き、86歳であんなに指が動くだけでもすごい。

 室内楽なので時間も短めかと思ったら、終演まで2時間20分あまり。重量級のプログラムを楽しみました。


2015年11月8日(日)

A・レブランク弦楽四重奏団 & イェルク・デームス 

Quatuor Arthur-Leblanc & J�・rg Demus

会場 : 東京文化会館小ホール

Tokyo Bunka Kaikan Recital Hall

【出演】
アルトゥール・レブランク弦楽四重奏団 Quatuor Arthur-Lablanc
イェルク・デームス(ピアノ), J�・rg Demus (piano)


[Program]
ショスタコーヴィチ:弦楽四重奏曲第7番 嬰ヘ短調 op.108
ベートーヴェン:弦楽四重奏曲第9番 ハ長調 op.59-3「ラズモフスキー第3番」
ブラームス:3つの間奏曲 Op.117
ブラームス:ピアノ五重奏曲 ヘ短調 op.34


Dmitry Shostakovich: String Quartet No. 7 in F-Sharp Minor, Op. 108
Ludwig van Beethoven: String Quartet No. 9 in C Major, Op. 59, No. 3, "Rasumovsky"
Johannes Brahms: 3 Intermezzi Op.117
Johannes Brahms: Piano Quintet in F Minor, Op. 34

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水野 和夫 『資本主義の終焉と歴史の危機』 (集英社新書)

2015-11-07 09:51:59 | 


 発刊時(2014.3)いろんな本や雑誌で紹介されていて筆者とタイトルは知っていたのだが、なかなか読む時間がとれなかったがやっと通読。

 印象に残っていることを幾つか抜き出すと、

 ・資本主義:「地理的・物理的空間の拡大」
 ・電子・金融革命は資本主義のフロンティアを垂直に伸ばした(膨張した)ものだが、リーマンショックで破裂して縮小
 ・グローバリゼーションとは、資本主義システムの「中心」と「周辺」の組み替え
 ・インフレ→価格革命→システム入れ替え→歴史の危機
 ・利子率=0%が資本主義の死
 ・フロンティアを失った資本主義は終わる
 ・資本主義は貧富の格差を拡大する方向に
 ・中産層の解体により民主主義の前提が崩れる
 ・中国は今までの先進国のようには発展しない

 歴史的視点に立った現状の分析はなかなかアカデミックかつダイナミックであった。金融革命が垂直方向に資本主義空間を広げるものだったという説明は肚落ちする。経済学の学派については詳しくないが、読んでいると学生時代に読んだウォーラーステインの世界システム論の考え方や「中心」「周辺」といった従属理論の考え方を取り入れてあり、近代経済学というよりもマルクス的な香りも放っている。

 一方で、歴史を踏まえた現状分析はあるものの、未来像については描かれてないことや、新書という形態のためか、分析の深みといった点で物足りなく同じ主張や説明が何度か繰り返し記述されているのも満足いかない。

 そういった不足感はあるものの、世の中の動きを見る一つの視座を得られることは間違いない。

【目次】
はじめに――資本主義が死ぬとき
第一章 資本主義の延命策でかえって苦しむアメリカ
第二章 新興国の近代化がもたらすパラドックス
第三章 日本の未来をつくる脱成長モデル
第四章 西欧の終焉
第五章 資本主義はいかにして終わるのか



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ジョゼフ コンラッド (著)、黒原 敏行 (翻訳) 『闇の奥』  (光文社古典新訳文庫)

2015-11-05 20:27:00 | 


 イギリスの船乗りマーロウが、コンゴの奥地で象牙貿易に従事する謎のスゴ腕社員クルツの救出に現地に向かう。その過程での様々なマーロウの体験を描いた物語です。先月読んだ松岡正剛氏の『誰も知らない世界と日本のまちがい』に紹介されていたので手に取ってみました。(ただ、松岡氏の紹介は、クルルの体験談のような書き方がされていますが、実際の内容は全く違っています・・・(^_^;))

 本書は、欧米の帝国主義が食い物にしたアフリカを白人の視点から描写した小説として有名な作品のようです。確かに世界史的観点から批判的に読むことは一つの本書の読み方だと思います。ただ、私はそうした社会的側面よりも、作者の細やかな心情描写、人間洞察、情景描写に現われた文学的な奥深さに魅かれました。映画を見るように、各エピソードの風景、登場人物の心情が目に浮かび、胸に響きます。

 この物語を現地のアフリカ人の立場で描くとどうなっていたのか?を考えると、暴力装置としての帝国主義の酷さに憤りを感じるのは自然です。ただ、現代に生きる我々としては、昨今の韓国との従軍慰安婦議論然り、歴史として受け止め、これからの教訓とするしかないのではと思います。

 色んな読み方ができる本であり、受け止めは人其々と思いますが、誰もが「読む必要がなかった」とは思わせることはない作品であることは間違いありません。
コメント (2)
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これは一見の価値あり  山中湖「夕焼けの渚・紅葉まつり」

2015-11-03 00:10:22 | 旅行 日本

《山中湖観光協会HPから拝借》

 前週に引き続き、富士五湖地方に遠征。今週はレース出走ではなく、保養で山中湖です。生憎、先週のような快晴の天気ではありませんでしたが、後半を迎えた紅葉の素晴らしさを堪能しました。

 特に、今回は山中湖「夕焼けの渚・紅葉まつり」というイベントが出色でした。山中湖の湖畔600mに渡って紅葉の木々をライトアップするという企画です。夕方4:30からのライトアップは、辺りが暗くなるに従って、幻想的な雰囲気が生まれます。きっと、摂氏5℃以下ではないかと思われる冷たい空気も散策には気持ちいい。ライトアップされた紅葉鑑賞は、初めての経験でしたが、暗闇の中に光が当たって輝くさまは見事です。夜桜ライトアップの秋版ですね。この日の特別イベントとして、竹灯篭にろうそくが灯されていたのも、幻想的な雰囲気を盛り上げていました。このイベントはお勧めです。


《紅葉越えで山中湖を望む》


《曇り空の中、ホンの一瞬、姿を表した富士山。実際は、写真よりももっと暗いです》


《周囲が暗くなると眩さが増します》


《なかなか私の写真では伝わらいのが残念》


《足元の竹灯篭も幻想的です》

 翌日は、宿の廻りをゆるゆるサイクリング。日本の秋の美しさは格別ですね。イングランドの湖水地方や南イングラインドのカントリーサイドも紅葉期に訪れましたが、こと紅葉に限っては日本のカラフルさに匹敵するようなところはなかなか無かったなあ。寒暖の差が大きい日本の気候のおかげなのでしょうか。ここ数年、紅葉期に観光旅行に出かけるということはしていなかったので、久しぶりの日本の「秋」をじっくりと味わいました。惜しむらくは、なかなか私の簡易カメラと腕では美しい紅葉を捕えきれ無い事。多くのアマチュア・カメラマンらしき観光客が、立派なカメラで紅葉を収めているのを見ると、もっと上手く写真が撮れればいいなあと思う一方で、これ以上趣味を増やす金も時間もないなあというミックスした思いに捉われれました。


《いろんな色の葉がミックスされてます》


《天気が良ければもっと美しいのでしょうけど、こんなパレットの中のサイクリングは最高です》


《山中湖畔の諏訪神社境内です》

 2015年10月31日-11月1日
コメント (2)
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