その後の『ロンドン テムズ川便り』

ことの起こりはロンドン滞在記。帰国後の今は音楽、美術、本、旅行などについての個人的覚書。Since 2008

マラソン前日の信州観光(その2:上田)

2019-04-29 07:30:00 | 旅行 日本

 長野で想定外の美術館訪問で、宿泊地の上田に到着したのは16:00。前日に観光で疲れてしまうのは本末転倒なので、別所温泉行はあきらめ、ホテルで一休みした後、夕方食事かねて上田市街散策に変更。上田は2年前の秋に大河ドラマ「真田丸」に合わせて訪れたことがあるが、市街をぶらつくのは初めて。夕方の上田の街中は結構シャッターを下ろしているお店が多く、ちょっと寂しい感じ。でも空気が澄んでいて、気分はいい。そんな中で通りかかった、「富士アイス」というお店で食べた「志”まんやき」なる大判焼はあんこほかほかでとってもおいしかった。なんでも上田市民のソウルフードとか。

《寂しめの商店街にこのお店だけ行列が・・・》

《皆さん10個とかかなりまとめ買いをしていきます》

《ほかほか餡子が最高》

 夕食前に大判焼きを食べてしまったので、お腹を減らすためにもう少し散歩を。ホテルで桜まつりなるものを上田城址でやっているということを知ったので、上田城址まで足を延ばす。もう桜もピークは過ぎていた感じだったので、あまり期待していなかったが、ライトアップされた桜は想定外の美しさで、息をのむほどだった。城の周りには露店も立ち並び、大混雑というほどではないが、家族連れ、地元の友達通しなどでにぎわっており、秋の昼間に訪れた上田城とは全く違う姿を見せてくれていた。

《日暮れ時の桜と山の稜線が美しい》

 

《真田神社前》

 

《城と堀と桜》

上田城公園をうろついていたら何だかんだ20:00を回ったので晩御飯を。飲み屋に入ると飲んでしまうので、相生食堂なる定食屋に入った。老夫婦がやっていて、お客は知り合いらしい男性客一人のみ。かなり引く展開だったが、注文した生姜焼き定食はとっても美味しかった。

 

マラソン遠征の楽しさを存分に味わったちょっとした信州経験だった。

 

2019年4月20日


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

マラソン前日の信州観光(その1:長野)

2019-04-27 10:11:44 | 旅行 日本

 良くも悪くも長野マラソンは前日受付必須なので、信州観光ができるのが嬉しい。前回出場時は土曜日の夜ぎりぎりに現地入りしたので、レース後に善光寺を覗いたぐらいだが、今年は早めに長野入りして、ゆっくりすることにした。

 お昼どきに長野に到着してさっそく昼食。蕎麦も食べたかったが、レースに備えてカーボローディングということで、「長野名物」というソースカツ丼いすることにし、長野駅の駅ビルにある明治亭というお店に入った。これがびっくりボリューム。しかもカツにかかるソースが美味。到着早々、この遠征は何か良いことありそうな予感。

《長野のランナー歓迎の雰囲気が嬉しい》

《長野マラソン歓迎イベント》

《すごいボリューム。ソースヒレカツ丼@明治亭》

 腹ごしらえが済んだら、まずは受付会場のビックハットに。マラソン・エキスポもやっているがこちらはやや寂し目で、一通り見て外に出た。宿泊は上田なので(長野マラソンは出走権のエントリーも激しいのだが、宿泊所の確保はもっと大変で、長野市内には取れなかった)、別所温泉に温泉でもつかりに行こうかと思ったところ、受付会場の斜め前に、水野美術館と書いた立派な建物があったので、ちょっと入ってみた。

《受付会場》

これが実は素晴らしい美術館だった。日本美術専門の美術館なのだが、丁度、歌川国芳の企画展をやっていて、期待を圧倒的に上回る充実した展示だった。土曜日と言うのに心配になるぐらいの訪れる人も限ら得ているので、独り占めで鑑賞できる。建物の前には整った日本庭があり、落ち着いた雰囲気が素晴らしい。旅行サイトとかでもあまり上位のお勧めとしては上がってこないが、日本美術に興味のある人には、超お勧めです。

《庭園内の枝垂れ桜が美しい》

 

《お勧めです!》

 《1階のホールから眺める日本庭園》

 その2に続く。


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

3年ぶり2回目の出走は今回も最高のランニング体験:長野マラソン完走記

2019-04-25 07:30:00 | ロードレース参戦 (in 欧州、日本)

ni日曜日に走った長野マラソンの1日をお送ります。

【起床~スタート】

4:45起床。目覚ましは5:00セットだったので、ちょっと早いが始動。前日にコンビニ購入したおにぎり、カット野菜、ゆで卵、クリームチーズ、味噌汁、野菜ジュースを食す。

3年前初めて走った時も、長野のホテルを確保できず上田に宿を取った。その際は5:45発の臨時列車に乗ったが、やや早く着きすぎた感があったので、今年は一本遅い6:08に乗る。小諸始発なので長野まで座れないではと心配だったが、到着時はガラガラ。長野で真っ赤なコカコーラ列車に乗り換え、隣の北長野駅で下車。プラットフォームから改札までが大渋滞で、駅の改札を出るのに10分程度掛かってちょっといらいら。次回は階段が近い前方の車両に乗ろう。

≪コカコーラ列車≫

≪まさか改札にたどり着くのに10分かかるとは≫

駅からは15分程度歩いて、会場入りは7:30。すぐにトイレに並ぶ。待ち時間は15分。すっきりした後は荷物預けて、8時にスタートエリアへ。ここまで完璧と思っていたが、準備運動してないことに気づいた、高橋尚子さん(Qちゃん)リードの体操で体を温めるが、曇り空の天候は結構寒く、体が冷える。

≪スタートエリアに集合≫

今回は自己新目指して、3時間45分を切ることが第一目標だ。

≪いよいよ42kの旅スタート。スタート台に上がっているのはQちゃん≫ 

【スタート~10km】

 薄曇りの天気で低めの気温は、マラソンには絶好のコンディション。定刻8:30にスタート。相変わらず沿道は凄い応援で一杯。久しぶりの歓声の中で走れる喜びに、嬉しくなって、スピードがついつい上がりがち。アップダウンがあり、自分のペースを掴みにくい。5キロ通過は2653秒で理想の入り方。5k過ぎから善光寺の参道を下る。ここで早くも最初のアクシデント。スタート前に体を冷やしたためか、トイレに行きたくなってきた。我慢するか、早めにトイレに行くか、頭の中でいろんなシミレーションを走らせる。10キロ地点で52分59秒で、5kのラップが26分6秒を確認して、この感じなら早めに行っておこうと判断し、ビッグハットのトイレに寄り道。50秒ロスしたが、体楽になって仕切りなおし。


【10k~ハーフ】

多少声援も落ちついてきたので、ペースを意識して走るが、トイレロスを取り返そうとして、どうしても早くなる。市街から犀川沿いの道に出て展望が開けて、気持ちがいい。15キロ地点で1:19:52で、5kラップは26:57(トイレロスを除くと26:7)、自分としては練習でも例がないハイペース。もう少し抑えるべきだが、3時間45分切りのためにはこのぐらいのペースが必要だし、気持ちと脚がコントロール不能。もう行けるところまで行くしかないかと割り切る。
応援地帯となっているMウエーブ周回の声援がまた凄い。これまで液体だけだったエイドがやっと給食が始まる。バナナを取ってほうばる。五輪大橋は私が嫌いな自動車道路特有の緩やかな上り。20キロで1時間46分6秒で5キロラップが26.14。あとどのくらいこのペースを続けられるのか・・・

≪Mウエーブ通過≫

【ハーフ~ゴール】

オリンピック・モニュメントであるホワイトリングを見ながら幅広の道が広がる。走りやすい。桜や桃の花が美しい。雲が切れ太陽が顔を出し始め、気温が上がってきた。25キロ地点は、2時間12分16秒で5キロラップは26分9秒。相変わらずハイペースが続く。まだ17キロもあるが、カウントダウンを意識し始める。ハーフを超え体が疲れてきたのがわかる。この辺りからペースが落ちてきた。千曲川に出たところでQちゃんが「頑張ってください~」と一声かけてくれた上にハイタッチ。これはとっても元気が出るのだが、贅沢言えば、もっと疲労婚倍の30キロ以降でご登場いただくともっと嬉しいなあという思いが頭をよぎる。

≪野球少年の応援は嬉しい≫

30kは3時間6分59秒、5キロラップは27分50秒。いよいよペース落ちが明らかに。この辺りは真田家ゆかりの松代エリアにあたるためか、真田の兜を被った女性陣達が応援してくれる。ここから35キロぐらいまでは淡々と。 34kの給水場に立っている桜が丁度見頃だった。 岩野橋を渡って、最後の堤防沿いの一本道。見通し良く、気分が良い。35kは3時間6分59秒で5キロラップが27分50秒。そういえば3年前はここでもう完全に足が止まった場所だ。ペースは落ちたが今年はまだいけるぞ。左手にゴールのオリンピックスタジアムも見えてくるが、まだ7kある。右となりをすーっと「おじいさん」(明らかに70代か80代)に抜かれた。大したもんだなあ。この最後の堤防道路が長く5k近くある。まだかまだかと思いつつ、やっと川を離れ、一般道に出て40キロ時点。3時間37分32秒。

≪梅の花が美しい≫

≪34キロ地点の給水所≫

目標の3時間45分切れは届かなかったゴールは手元の時計で3時間51分台。オリンピックで言えば、銅メダルぐらいかな。

やっぱり、この大会最高です。沿道の大応援、スムーズな運営、出場選手の規模、ボランティアの皆さんの笑顔、素晴らしい景色、この満足度の高さはなかなか他の大会ではない。唯一の難点であるエントリー競争の厳しさだが、必ず来年も走って自己記録をやぶりたい。

 

それにしても今回は疲労困憊。前回は、長野駅そば屋で天ぷらそば食べて、善行寺観光して帰京したのですが、今回は疲れ果てて、観光どころか、めし、ビールは全くのどが通らない。吐き気を催したぐらいです。そばは駅の立ち食いそば屋でかけそばだけ頂きながらも、ショート観光の気分も無く、予定の新幹線を早めて帰京しました。

2019年4月21日


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

鈴木裕美演出、チェーホフ作 演劇「かもめ」 @新国立劇場 小劇場 

2019-04-21 07:30:00 | 演奏会・オペラ・バレエ・演劇(2012.8~)

チェーホフの代表的戯曲「かもめ」を見に行く。事前に原作を読んでおいたが、面白さがもう一つ分からなかったので、あの原作が演劇になるとどうなるのか楽しみだった。

思いのほか読書のイメージと舞台が違和感なく相似形だったのが第一印象だが、「あの下りはこういうことだったのね」と舞台を見て理解できたことも多かった。「かもめ」が喜劇と言うのが原作だけではピントこなかったのだが、確かに舞台を見ると登場人物のちょっとした台詞や会話の行き違いがユーモラスで、なるほどこれは喜劇なのだ(の一面もあるのだ)と肚に落ちた。

フルオーディションで選ばれた役者さんたちというのが、今回の公演の売りの一つであるのだが、確かに各役者さんが演じるキャラクターも(私が持った)原作のイメージを忠実に表していたと感じた。中でも、イリーナ・ニコラーエヴナ・アルカージナ役の浅海さんは、さすが元宝塚スターだけあって、オーラと存在感抜群で役柄へのはまり感が半端ない。イリーナの息子コンスタンチン・ガヴリーロヴィチ・トレープレフ役(主人公?)の渡邊りょうさんは、(地声なのか稽古のし過ぎかわからないが、)声が擦れているのが気になったが、純粋で芸術の世界に革新をもたらそうとする若き情熱が良く表れていたと思う。 

公演そのものはとっても満足だったたが、依然、私自身この戯曲をどこまで理解しているのかが疑問に残る。ロシア人やロシア社会の特性を反映しているためか、感情表現の大きさ(例えば、泣く場面がやたら多い)が気になるし、感情移入できる人物が見当たらない。喜劇と悲劇の組み合わせも単純脳の私にはむず痒い。この複雑さが、この作品の価値なのかもしれないが・・・。

観衆は若者から年輩の方まで幅広かったが、かなり演劇に造詣の深い人が多い雰囲気だった。どうやってこの演劇を楽しめばいいのか、御指南頂けないかなあと思いながら、劇場を後にした。私としては、お勉強モードとなった今回の観劇であった。

 

2018/2019シーズン
演劇「かもめ」 The Seagull
小劇場

2019年4月11日 観劇

作 アントン・チェーホフ
英語台本 トム・ストッパード
翻訳 小川絵梨子
演出 鈴木裕美
美術 乘峯雅寛
照明 沢田祐二
音響 長野朋美
衣裳 黒須はな子
ヘアメイク 宮内宏明
演出助手 伊達紀行
舞台監督 村田 明

【キャスト】
朝海ひかる
天宮 良
伊勢佳世 
伊東沙保 
岡本あずさ
佐藤正宏  
須賀貴匡 
高田賢一 
俵木藤汰 
中島愛子
松井ショウキ 
山﨑秀樹 
渡邊りょう


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

N響 4月A定期 ヤクブ・フルシャ指揮/ヤナーチェク シンフォニエッタ ほか

2019-04-19 07:30:00 | 演奏会・オペラ・バレエ・演劇(2012.8~)

フルシャさんの指揮は、5年前に都響でスーク・プログラムを一度だけ聴いています。若いのに堂々としていて、輪郭明確かつ情感も伴った音楽を紡ぐ指揮ぶりがしてとても好印象でした。そのフルシャさんとN響の初顔合わせの演奏会ということで、公演前の期待値を思い切り上げてホール入り。

プログラムもなかなか凝ってます。いきなり「ツァラトゥストラはこう語った」から始まり、ベルリオーズの「クレオパトラの死」。そして、フルシャさんの出身地もののヤナーチェクの「シンフォニエッタ」。聞いたことのある曲はシュトラウスだけですが、興味がそそられる曲が並んでおり、開演を待ちながら、どんな演奏会になるのかワクワク。

 冒頭のシュトラウスの導入部(日の出)の響きは、映画『2010年宇宙の旅』の冒頭シーンが目に浮かびがちですが、今回はこの日のプログラムの幕開けのファンファーレに聞こえました。この交響詩を自分が消化しているとはとても言えませんが、フルシャさんがバランスよく造形を明確に描いて音楽を作りをしているのが印象的でした。コンサートマスターは「さまよえるオランダ人」に続いてキュツヒルさん。彼ののヴァイオリンの音色は本当によく響きます。びしっと、芯が通る感じですね。

個人的にこの日最も感銘を受けたのは2曲目。クレオパタラの死を描いたベルリオーズの作品です。フランス出身のソプラノ、ジェンズさんがクレオパトラの心情を歌います。私はお初の方でしたが、真紅のドレスに身を包んだ長身は、とっても舞台映えします。そして、歌の方も、凛として芯の通った歌声で、クレオパトラの気持ちを劇的に表現してました。20分少々の時間にクレオパトラの自負と無念の思いが凝縮されたドラマに大いに感動しました。

休憩後のヤナーチェックは、オケの最後列に10名を超える金管部隊を置き、実に勇壮で力強い音楽。チェコの独立と深く結びついた音楽と言うことで、国威掲揚的な意味合いもあるようですが、純音楽的にも楽しめます。フルシャさんは過度に煽るというよりも、お国の音楽を多くの人に聴いてほしいという愛を感じるものでありました。

終わってみれば、コンサート前に思いっきり上げた期待値に見事にこたえてくれたフルシャさんとN響。初顔合わせとは思えない息の合ったこのコンビを、聴衆からの温かい大きな拍手が包み込みました。是非、今後も定期的に指揮台に上がって欲しいと思います。 

 

1909定期公演 Aプログラム
2019414日(日)開場 2:00pm  開演 3:00pm
NHKホール

R.シュトラウス/交響詩「ツァラトゥストラはこう語った」作品30
ベルリオーズ/叙情的情景「クレオパトラの死」*
ヤナーチェク/シンフォニエッタ

指揮:ヤクブ・フルシャ
ソプラノ*:ヴェロニク・ジャンス 

 

No.1909 Subscription (Program A)
Sunday, April 14, 2019  3:00p.m.  (doors open at 2:00p.m.)
NHK Hall

R.Strauss / “Also sprach Zarathustra”, Tondichtung frei nach Nietzsche op.30
Berlioz / “La mort de Cléopâtre”, scène lyrique*
Janáček / Sinfonietta  

Jakub Hrůša, conductor
Véronique Gens, soprano*

≪葉が付きはじめたホール前≫


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

全く新しい観劇体験・・・劇団現代古典主義 「THE MACBETHS」(マクベス家)@劇団現代古典主義アトリエ

2019-04-15 07:30:00 | 演奏会・オペラ・バレエ・演劇(2012.8~)

代田橋から徒歩7分の環7沿いのビルの4階が劇場?チケット購入の際に首をひねりながらも、「マクベス」見たさに予約したチケットだったが、「劇場」入りして一瞬ひるんだ。本当にマンションの一室(15畳くらい?)が劇空間に改造されている。しかも、座席は2列で椅子11脚のみ。教室で行う高校生の文化祭の演劇の方がよっぽど広い。ここは、ある宗教団体のサティアンで、このまま洗脳されるのではないかと一瞬不安がよぎるぐらい。来るところ間違ったか・・・?

しかし文字通り「手が届く」舞台で展開された「THE MACBETHS」(マクベス家)は私に全く新しい観劇体験をもたらせてくれた。瞳が拡大し、息を飲みっぱなしの70分だった。

この劇団、古典作品を同時進響劇(舞台上を複数場面に分割し、同時間枠での別地点の物語を同時に進行させる)というスタイルで定期的に公演を行っているようだ。今回の「マクベス家」は、原作に沿うところもありながらも、登場人物にマクベス夫妻の二人の子供を登場させて、マクベス一家の破滅を描く内容になっている。原作の台詞を節々に盛り交ぜ、ベースストーリーは変えないが、ちょっと視点をずらして異なった物語にしている。台本がシェイクスピア的な世界観をしっかり踏襲しているので、違和感は全くないし、違いも原作の展開に沿って吸収され(マクベス夫人の死からTomorrow Speechにつなげるところとか)、上手くできていると感心した。「マクベス」の別編を見ているようである。

舞台が目の前ということもあるかもしれないが、役者さん達の熱量が凄まじい。特にマクベスの血気迫った演技や怨念に満ちたマクベス夫人は恐いぐらいだったし、魔女たちの妖気一杯漂う動きも印象的だった。とにかく、本当に目の前で劇が展開するから役者さんと視線がバッチりあってしまう。自分自身がスコットランドの城中に居合わせているような感覚になる。

あえて、自分としての注文を上げると、シーン毎に挿入される音楽にちょっとこれはイージーではないかい?と思うところがあったのと、最後の最後の落ち(マクダフはああなったが、イアンは?)が今一つ分からなかった。

まあ、そんな小さな注文は全体のこの経験から見れば些細なことである。下北沢の小劇場とも全く違うので、こればかりは是非一度体験してみてとしか言いようがない。体で感じる、新しい「マクベス」、新しい観劇体験ができる。4月28日まで。

Theatrical company MODERN CLASSICISM
The 4th floor series vol.5
同時進響劇
劇団現代古典主義版 マクベス
THE MACBETHS
原作:ウィリアム・シェイクスピア 脚色・演出:夏目桐利
[会場] 劇団現代古典主義アトリエ
上演時間70

CHARACTERS

武将マクベス(マクベス家の王):大西輝卓 Terutaka Onishi
マクベス夫人(マクベスの妻):藤井絵里Eri Fujii
イシュラ(マクベス家の長女・イアンの姉):田畑恵未Megumi Tabata
武将バンクォー(マクベスの友人):樽谷佳典Yoshinori Tarutani
武将マクダフ(マクベスの友人):諏訪貴大Takahiro Suwa
国王ダンカン(スコットランド王):柏木公宰Kosai Kashiwagi
イアン(マクベス家の長男・イシュラの弟):倉持杏純Azumi Kuramochi
魔女:土肥亜由美、Ayumi DohiKanako Mikami
従者(マクベスの従者):Kenta Akiyama 

≪入口。ドア開けるの結構勇気いります。「注文の多い料理店」の入り口のドアみたい≫


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

爆演に心臓ばくばく!・・・アフカム指揮、N響、《さまよえるオランダ人》 @東京春祭ワーグナー・シリーズvol.10

2019-04-08 07:00:11 | 演奏会・オペラ・バレエ・演劇(2012.8~)

毎年、ワールドクラスのワーグナーを聴かせてくれる東京・春・音楽祭。今年もやってくれた。

開演前は嫌な予感がたくさん。演目は、ワーグナーの中では私はそれほど好きではない『さまよえるオランダ人』、指揮者ダーヴィト・アフカムは全く知らない人、そして直前でダーラント役の変更のお知らせが。加えて、ホールに着席すると、春祭のワーグナーシリーズでは私には経験のない空席の数(そうはいっても8割は埋まってましたが、このシリーズ満員以外経験がないので)で、ますます不安に。

しかし、公演は圧倒的なもので、私自身の感動具合や衝撃度は過去4回の『さまよえるオランダ人』経験をどれをも上回るものだった。

出色は何といっても外国人勢で固めた歌手陣。題名役のブリン・ターフェル、ゼンダ役のリカルダ・メルベート、エリックのペーター・ザイフェルトらの、世界の有名歌手の実力が遺憾なく発揮され、個性のぶつかり合いが凄まじかった。ターフェルは10年前にロイヤルオペラで同じ役で聴いているが、その時はここまでの迫力、声の深みは感じなかった気がする。ザイフェルトもどっかで聞き覚えがあると思ったら、こちらは以前、ウィーンでローエングリーンを歌ったのを聴いていた。音量たっぷりの伸びのあるテノールはエリックにはちょっともったいないぐらいの美声で聞き惚れる。メルベートは最近は新国立劇場の常連で、2017年12月に「ばらの騎士」の元帥夫人に感動させてもらったばかりだが、今回もピンと張りつめたソプラノは圧巻で男性歌手陣のパワーに全く負けていない。ダーラントを代役出演したイェンス=エリック・オースボーは初めて聴く歌い手だったが、張りのある歌声がとっても良くて全く代役を感じさせなかった。

アフカムの指揮によるN響も尻上がりに本領を発揮し素晴らしい演奏となった。春祭出演が恒例のキュヒルがコンマスとして引っ張ったが、本当に彼のヴァイオリンの音色は引立つ。この作品の持つ緊張度をグーっと高めていた。N響は前半はちょっとおとなしいなと思わせるところもあったが、徐々に温度が高まり、特に第3幕はうねりにうねって圧倒的陶酔の世界を作り上げていた。

加えて、東京オペラシンガーズの合唱が、独唱陣に負けない存在感を示していたのも嬉しい。特に男性コーラスの美しさは感動的だった。

毎年、議論を呼ぶ舞台後方のスクリーンに映される映像は、物語の進行理解としては良いものだった。シンプルで分かりやすいCGだったが、あくまでも状況説明の補助ツールで、ここから何か特別なインスピレーションを得るという類のものでない。なので、個人的にはあまり気にしないようにしていた。

終演後、聴衆からあがった凄まじい興奮、拍手、歓声は日本ではあまり経験がないぐらいのもの。拍手やブラボーが無秩序にホールに響き渡る。4階席右サイドの私も、胸がいっぱい、心臓バクバクの中、思いっきり「ブラボー」を叫んだ。クラシック音楽やオペラを聴き始めて、人生、本当に良かったと思わせてくれたパフォーマンスだった。

来年への期待がもう始まっている。

 
東京春祭ワーグナー・シリーズvol.10
《さまよえるオランダ人》(演奏会形式/字幕・映像付)
■日時・会場
2019/4/5 [金] 19:00開演(18:00開場)
東京文化会館 大ホール

■出演
指揮:ダーヴィト・アフカム
オランダ人(バス・バリトン):ブリン・ターフェル
ダーラント(バス):イェンス=エリック・オースボー
※出演を予定していたアイン・アンガーは、イェンス=エリック・オースボーに変更。
ゼンタ(ソプラノ):リカルダ・メルベート
エリック(テノール):ペーター・ザイフェルト
マリー(メゾ・ソプラノ):アウラ・ ツワロフスカ
舵手(テノール):コスミン・イフリム
管弦楽:NHK交響楽団
合唱:東京オペラシンガーズ
合唱指揮:トーマス・ラング
合唱指揮:宮松重紀
アシスタント・コンダクター:パオロ・ブレッサン
映像:中野一幸

■曲目
ワーグナー:歌劇《さまよえるオランダ人》 [試聴]
(全3幕/ドイツ語上演)[上演時間:約3時間(休憩1回含む)]


Spring Festival in Tokyo2019

Tokyo-HARUSAI Wagner Series vol.10
"Der fliegende Holländer"
(Concert Style / With projected images and subtitles)

[ Date / Place ]
April 5 [Fri] at 19:00
April 7 [Sun] at 15:00
Tokyo Bunka Kaikan Main Hall

[ Cast ]
Conductor : David Afkham
Der Holländer : Bryn Terfel
Daland : Jens-Erik Aasbø (Replacement of Ain Anger)
Senta : Ricarda Merbeth
Erik : Peter Seiffert
Mary(Mezzo Soprano) : Aura Twarowska
Der Steuermann Dalands :Cosmin Ifrim
Orchestra : NHK Symphony Orchestra, Tokyo
Chorus : Tokyo Opera Singers
Chorus Master : Thomas Lang
Chorus Master : Shigeki Miyamatsu
Assistant Conductor : Paolo Bressan
Video : Kazuyuki Nakano

[ Program ]
Wagner(1813-83):"Der fliegende Holländer"(Concert Style / With projected images and subtitles)
 
≪春祭のソワレは初めて≫
 
 ≪開演前の上野公園≫

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

チェーホフ 作、湯浅芳 訳 『かもめ』(岩波文庫、1952)

2019-04-07 07:37:28 | 

今月、新国での舞台を見に行くので原作で予習。もちろん作品名は知っていたし、Wikiによると「演劇史上の画期となる」という文学史上の重要作品であるが、恥ずかしながら読むのは初めてである。

読んでみての印象は、こういう作品を素直に受け止める感性をいつの間にか失ったのかなあという自分に対する思いである。自らの思想や芸術について真摯に思索し、それを自らの生き方と照らし合わせて行動する。そんな、瑞々しい感受性は、現世における日々のどさくさの中で、どっかに行ってしまった。もっとも現世における日々のどさくさ自体もそれなりの面白いものなのだが、浮世離れした荘園において交わされる上〜中流階級の人たちの会話、思索、行動は、自分の立ち位置を改めて映し出してくれる。

ストーリーとしてはラストシーンを除いては劇的なことが起こるわけではない。物語としての展開を楽しむよりも登場人物の心情を想像する楽しさを味あわせる作品だ。これが舞台でどう演じられるのか。役者たちのどんな演技でどんな心情が表現され、作品に生命の息葺きが吹き込まれるのか。とっても楽しみである。


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

奥泉光 『メフィストフェレスの定理 地獄シェイクスピア三部作』(幻戯書房、2013)

2019-04-04 07:30:00 | 

先月、下北沢演劇祭で観劇した『喜劇💛ロミオをジュリエット』の戯曲を単行本を読んでみた。「ロミオとジュリエット」(本書における題は「無限遠点」)のほかにも、「リア王」と「マクベス」を下敷きにして、時期を原作後に、状況を地獄に変えてた2作品(「リヤの三人娘」と「マクベス裁判」)が収められている。

三作品とも、原作の登場人物と悪魔や地獄の住人たちとのコメディタッチな会話をもとにストーリーが展開する。シェイクスピア的な気の利いた洒落やエスプリを漂わせながら、人間の心性をあぶりだすセンスの良い戯曲集だ。地獄の生活を楽しみ過ぎているマクベスを地上に復帰させることで、地獄の苦しみを与えようとする悪魔の画策など、一捻りある仕掛けだ。

一方で、戯曲を読むと、言葉に命を吹き込むのは役者であることが改めて良く分かる。舞台の「喜劇💛ロミオとジュリエット」では「これは面白い!」と感じたシーンが、戯曲ではさっと読み流してしまうところが幾つかあったし、この何気ない台詞をあの役者さんはああ演じたのか、と気づかされたところ、感心させれられたことも多い。

肩ひじ張ることなく、リラックスした気分で読める。ゴールデンウイークの旅行先で読むのにお勧めである。
 
 

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

上岡敏之 指揮、新日本フィル/マーラー交響曲第2番「復活」 @サントリーホール

2019-04-01 07:30:00 | 演奏会・オペラ・バレエ・演劇(2012.8~)

上岡敏之さんと新日本フィルのコンビが、大好きなマーラー交響曲第2番をやるということで1回券を購入して出陣。この曲、何度か生で聴いてきたが、日本ではNHKホールでしか聴いたことが無く、今回はサントリーホールというのも楽しみの一つだった。

終わってみると、非常にユニークな解釈・演奏で終演後のTwitterも賛否両論に分かれるものだったけど、確かに今までに聞いたことのない類の演奏だった。ただ、個人的には乗り切りれず、<復活>に期待する圧倒的な感動には残念ながら至らなかった。

例えば、ペースが掴みにくいというか、よく変わる。第一楽章はゆっくり目で始まったと感じたが、全楽章通じてところどころで普段聞かないような緩急がつけられる(楽譜が読めない私の経験則からだけの印象です)。そして、最終楽章のクライマックスではぐーっとテンポが上がって、エンド。この変幻自在の変化についていけず、自分が演奏に投入できなかった。個々のパーツ、パーツではとっても美しかったり、ハッと感じるところがあったものの、<復活>全体としてのドラマが感じられず、切り張り感を感じてしまったのも、テンポの変化についていけなかったためかもしれない。

 また、今回はかなり弱音を重視した演奏になっており、ティンパニー等の強音との対比は特徴的だなあと思ったが、2階席最深部の私までは弱音のニュアンスが十分に届かなかった。これは、単なる座席の問題だと思うが、称賛の声はその弱音のすばらしさを上げる声が多かったので、少々残念。

 演奏自体はとっても熱演であったことは間違いないのだが、ところどころ「うむ?」と思わせるところもあり(普段、この曲は小さい傷は全体の熱量の中では気にならないケースが多いのだが)、演奏に完全投入できなかった一因となっていた。(更に、これはオケとは全く無関係だが、最悪は聴衆席からアラームの音が大事なところで鳴っていたのは、怒りどころかとってもがっかり)

一番感動したのは、第四楽章におけるゲーリングのメゾ・ソプラノの独唱。澄み切った美しい声がホール全体に響き、涙がこぼれそうになり、前のめりで聴いた。この声をこのホールで聴けただけでも、来てよかったと心底思った。

以上のような事情で、普段はこの曲を聴いた後は高揚感と陶酔感に浸ってふらふら帰るのだが、今回はそこまでは到達せず。ミックスした微妙な気分でホールを後にした。ちょうど、この日の花曇りの天気のようだなあと思いながら・・・。

2019.03.30 SAT 14:00~
#602 ジェイド<サントリーホール・シリーズ>

指揮
上岡 敏之 Toshiyuki Kamioka
ソプラノ:森谷 真理 Mari Moriya, soprano,
メゾ・ソプラノ:カトリン・ゲーリングKathrin Göring, mezzo-soprano,
栗友会合唱団 Ritsuyukai Choir, chorus,

マーラー:交響曲第2番 ハ短調「復活」
Mahler: Symphony No. 2 in C minor, “Resurrection”

〈なんとなくブラブラ四谷まで歩いた〉

 


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする