その後の『ロンドン テムズ川便り』

ことの起こりはロンドン滞在記。帰国後の今は音楽、美術、本、旅行などについての個人的覚書。Since 2008

至福の休日午後: アリサ・ワイラースタイン 無伴奏チェロ・リサイタル @三鷹市芸術文化センター風のホール

2016-11-30 07:30:00 | 演奏会・オペラ・バレエ・演劇(2012.8~)


もう2週間以上前のイベントになってしまいましたが、備忘録として。

 以前N響の定演にソリストとして登場したアリサ・ワイラースタインさんのチェロ・リサイタルに行ってきました。会場は三鷹芸術文化センターという三鷹市の市民会館。車でふらっと出かけて当日券で入場しました。ただ、市民会館といっても、木造りのとっても洗練されたホールで、市の公共施設にこんな立派なホールがあるんだと感心しきりです。

 ワイラースタインさんは1982年アメリカ生まれ。黒のパンツルックで、スポーティでリラックスした雰囲気で登場しました。曲はすべてバッハで、無伴奏チェロ組曲の中から第1番、3番、5番を演奏してくれました。

 彼女のチェロの音は、美しく、暖かいものです。ホール一杯に優美な音が広がり、その中に身を置く幸福感は言葉にできない。チェロの音って、人を落ち着かせる力を持ってますね。最近、アレクサンドル・クニャーゼフさんのバッハ無伴奏チェロ組曲全集を買ったばかりですが、クニャーゼフさんのチェロに比べるとより華やかな印象です。ホールの音響も素晴らしい。

 会場の入りは半分ほど(1階はそこそこ埋まってますが、2階は人はまばら。実にもったいない。)でしたが、都心の演奏会にはないアットホームな雰囲気で、贅沢な休日の午後となりました。
 



アリサ・ワイラースタイン
無伴奏チェロ・リサイタル

2016年11月13日(日) 15:00開演

【出 演】
アリサ・ワイラースタイン
【曲 目】
J.S.バッハ:無伴奏チェロ組曲第1番 ト長調 BWV1007
J.S.バッハ:無伴奏チェロ組曲第3番 ハ長調 BWV1009
J.S.バッハ:無伴奏チェロ組曲第5番 ハ短調 BWV1011
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タコ三昧!:N響 11月定期Cプロ/ 指揮:井上道義/ショスタコーヴィチ交響曲第12番ほか

2016-11-27 07:00:00 | 演奏会・オペラ・バレエ・演劇(2012.8~)


 コンサート前はとってもミックスした気持ちでした。オール・ショスタコーヴィチ(以下、タコ)のプログラムは何とも魅力である一方、自分のほうは水曜日に鑑賞した「ラ・ボエーム」の余韻が残っていて、頭の中で「ムゼッタのワルツ」や「冷たい手を」がクルクル回っている状態。これがタコに上書きされるかと思うと何とも寂しい・・・

 今回の指揮の井上道義さんは、個人的には本当に久しぶりです。まだ、クラシックを聴き始めの学生時代に、初めて年末の第九なるものを聴きに行った時の指揮が井上氏(オケは新日本フィル)。あれから、数十年経ってますが、この間、なぜかあまりご縁がありませんでした。でも、ステージ上に現れた井上さんは、数十年前と印象が変わらず、年月を飛び越えているように感じられました。

 特に理由はありませんが、タコは進んで聴きに行く作曲家ではないので、しばしば演奏される交響曲第5番などを除いてはあまりなじみがありません。なので、今日のプログラムは全て初モノ。

 冒頭の「ロシアとキルギスの民謡による序曲」は民族色豊かな、聴きやすい音楽でした。冊子には、「序奏やアレグロ主部に流れる各主題は全音階的で、ロシア民謡というよりもソ連的な響き」とありましたが、ソ連的な響きというのはよくわからずじまい。

 続くピアノ協奏曲第一番は、オケは管弦楽のみで通常、管の皆さんが位置する後部座席部分は照明もオフ。この曲、ピアノ協奏曲とありますが、出版前には「ピアノ、トランペット、弦楽合奏のための協奏曲」と呼ばれていたらしく、ピアノとトランペットとの掛け合いが妙です。解説によると「様々な借用やパロディがちりばめられている」らしいのですが、元の音楽を知らない私には無関係で、純粋にピアノとトランペットのコンビネーションを楽しみました。ヴォロディンさんのピアノは、軽快で優しい印象。菊本さんのトランペットもスーッと通る美音でうっとりです。ヴォロディンさんはアンコールでラフマニノフ前奏曲作品23第4番を。これもブラボー。

 休憩後のメインは、交響曲第12番。解説によると、「1917年」という表題をもち、「レーニンを讃えることで共産党を賛美し、党に捧げられた作品として広く認知」されたらしいのですが、筆者の中田朱美氏は、実はその裏でタコさんはスターリンへの影もしくは自身への揶揄を隠しているのではないかという、他の学者さんやご自身の仮説を紹介され、演奏前から興味を掻き立てくれます。そして、演奏の方はまさに爆演とも言える、すさまじい音圧の中で管弦のバランスが絶妙に取れた素晴らしいものでした。井上さんはこの曲を知り尽くした感があって、大きなジェスチャーでぐいぐいとN響を引っ張り、N響も応えてました。最近のN響金管陣の充実ぶりがいかんなく発揮されましたね。私は、曲は全く初めてでしたが、同じ動機が全曲中何度も顔を出すので、馴染みやすく、投入感も高まります。確かに、共産党讃美歌らしい(?)高揚感たっぷりの、ストレスが抜ける音楽でした。

 全プログラムを通じて感じたのは、井上氏のエンターテイナー性。指揮姿はもちろんのこと、オケへの称賛や聴衆への感謝などの表現が実にストレートで開放的です。なんか、井上さんでホール全体が明るい空気に包まれるような、特別なオーラを感じます。とかく、ベテラン大指揮者が振ることが多くどうしても「硬い」雰囲気になりがちな定演が、(井上さんももちろん実績豊かなベテラン指揮者ですが)とっても柔らかくなった印象。こういう雰囲気って、N響のためにもとっても大事なんじゃないか、そんな感想を持ちました。

 予想通り「ラ・ボエーム」は完全に上書きされてしまいましたが、実に気分爽快で気持ちよくホールを後にすることができ、井上氏とN響に大きく感謝です。


《終演後のNHKホール前。青の洞窟》


《こちらは開演前》


《晩秋ですね》


第1849回 定期公演 Cプログラム
2016年11月26日(土) 開場 2:00pm  開演 3:00pm
NHKホール

ショスタコーヴィチ/ロシアとキルギスの民謡による序曲 作品115  
ショスタコーヴィチ/ピアノ協奏曲 第1番 ハ短調 作品35
ショスタコーヴィチ/交響曲 第12番 ニ短調 作品112「1917年」
 
指揮:井上道義
ピアノ:アレクセイ・ヴォロディン

ゲスト・コンサートマスター:ダンカン・リデル

No.1849 Subscription (Program C)
Saturday, November 26, 2016  3:00p.m.  (doors open at 2:00p.m.)
NHK Hall   Access   Seating chart

Shostakovich / Overture on Russian and Kyrgyz Folk Themes op.115
Shostakovich / Piano Concerto No.1 c minor op.35
Shostakovich / Symphony No.12 d minor op.112 “The Year of 1917”
 
Michiyoshi Inoue, conductor
Alexei Volodin, piano
Duncan Riddell, Guest Concertmaster
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これぞ永遠の青春讃歌: オペラ『ラ・ボエーム』 @新国立劇場オペラパレス

2016-11-23 20:38:17 | 演奏会・オペラ・バレエ・演劇(2012.8~)


 個人的に好きなオペラ五本指に入る「ラ・ボエーム」。生での視聴は4年ぶりということもあって、ワクワク感一杯で新国立劇場へ出かけた。

 ミミ役は今回がロール・デビューというルーマニア出身のアウレリア・フローリアンさん。雰囲気が可憐なミミと合っていてとっても好印象。ただ、題名役としてのオーラというか、華がちょっと足りなかった気が。可憐さと華って、正反対ぽいので両立は難しいのかもしれないけど、もう少し強いインパクトが欲しかったな。

 反面、弾けてたのがロドルフォ役のジャンルーカ・テッラノーヴァさん。6年前の私の生涯唯一のミラノ・スカラ座現地体験で、「リゴレット」マントバ公爵を聴いており、その時はパンチ不足という判定を下した人。今日はまるで別人のような、パンチ力満点の伸びるテノールを聴かせてくれた。どう見ても、今日は一番。

 私的にこのオペラの注目は、いつもムゼッタ。今日の石橋栄実さんには、昨年の「沈黙」のオハル役が素晴らしかったので、今回も期待していたのだが、しっかり応えてくれた。声に艶があり、演技も溌溂としていて良かった。

 ピットに入った東フィルも、美しいプッチーニの旋律を存分に聴かせてくれた。

 演出は粟國淳さん。この作品、過去にはロイヤル・オペラでジョン・コンプリ―(John Copley)、ハンガリー国立劇場でナーダシュディ・カールマン(NÁDASDY Kálman)の舞台を見ているけど、負けず劣らずの美しいステージ。ただ、「ラ・ボエーム」は、演出家によって大きく変わったという舞台を私自身経験したことがなく、比較的どれも似通っている。

 特に致命的なマイナス点は無かった公演だったのだけど、好きなオペラだけに期待値が高すぎたのか、打ちのめされるような感動には残念ながら至らなかった。歌手、オケ、舞台がぐーっと一点に収束していくような緊迫感を感じず、なんとなく流れてしまった感じがしてしまったのである。もちろん、場面場面は感動的で、涙腺が緩むこともしばしばだったが・・・。ただ、そうしたことは差し置いても、ラ・ボエームは永遠不滅の青春讃歌であることを再認識した。冬は「ラ・ボエーム」に限る。




2016年11月23日 14:00

2016/2017シーズン
オペラ「ラ・ボエーム」/ジャコモ・プッチーニ
La Bohème / Giacomo PUCCINI
全4幕〈イタリア語上演/字幕付〉
オペラパレス

スタッフ
指 揮:パオロ・アリヴァベーニ
演 出:粟國 淳
美 術:パスクアーレ・グロッシ
衣 裳:アレッサンドロ・チャンマルーギ
照 明:笠原俊幸
舞台監督:大仁田雅彦

キャスト
ミミ:アウレリア・フローリアン
ロドルフォ:ジャンルーカ・テッラノーヴァ
マルチェッロ:ファビオ・マリア・カピタヌッチ
ムゼッタ:石橋栄実
ショナール:森口賢二
コッリーネ:松位 浩
べノア:鹿野由之
アルチンドロ:晴 雅彦
パルピニョール:寺田宗永

合唱指揮:三澤洋史
合 唱:新国立劇場合唱団
児童合唱:TOKYO FM少年合唱団
管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団

La Bohème
2016/2017 Season

Music by Giacomo PUCCINI
Opera in 4 Acts
Sung in Italian with Japanese surtitles
Opera HOUSE

Staff
Conductor Paolo ARRIVABENI
Production AGUNI Jun
Set Design Pasquale GROSSI
Costume Design Alessandro CIAMMARUGHI
Lighting Design KASAHARA Toshiyuki
Stage Maneger ONITA Masahiko

Cast
Mimi Aurelia FLORIAN
Rodolfo Gianluca TERRANOVA
Marcello Fabio Maria CAPITANUCCI
Musetta ISHIBASHI Emi
Schaunard MORIGUCHI Kenji
Colline MATSUI Hiroshi
Benoit SHIKANO Yoshiyuki
Alcindoro HARE Masahiko
Parpignol TERADA Munenaga

Chorus Master MISAWA Hirofumi
Chorus New National Theatre Chorus
Children Chorus Tokyo FM Boys Choir
Orchestra Tokyo Philharmonic Orchestra

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念願の真田丸ツアー @信州上田

2016-11-21 07:30:00 | 旅行 日本
 今年は、珍しくNHK大河ドラマをドロップアウトすることなく継続視聴している。実力俳優陣の熱演もさることながら、三谷幸喜の脚本がひねりが効いていて、実に面白い。最終回までカウントダウンに入ってしまったのが、何とも寂しい。

 その「真田丸」所縁の地を訪ねる旅行を春から計画していたのだが、なかなか実現できなかった。今回、当初のプランよりはかなり縮小版になってしまったが、ようやくツアーにでかけることができた。目的地は信州上田市の上田城と真田の郷。

 「真田丸」のおかげで、上田市は観光客で一杯との噂だったので、早朝に出発し9時半には到着。まずは、最も混雑が予想された上田城址内の「信州上田真田丸大河ドラマ館」へ。団体様一行が到着する時間帯は入場待ちの行列ができるほどと聞いていたが、行列こそ無かったものの、会場は9時半で既に休日の東京の美術展並みの混雑だった。

ドラマの時代背景、真田家の紹介、ドラマで使われた衣装や小道具の展示など、ドラマを見ている人も見てない人も楽しめる内容になっている。私的には、ドラマ美術の世界というコーナーで、舞台セットの小道具がエイジング技術(例えば、発泡スチロールでできた城の瓦とか)を使って本物っぽく見せる技法が面白かった。


《このエリアだけ会場で唯一写真撮影が許されている。赤揃えの甲冑と真田丸をバックに》

 小一時間ほど大河ドラマ館を見学したあとは、秋真っ盛りの上田城址内を散歩。砦や真田神社を訪れて、当時の様子に思いを巡らせてみる。やや最盛期は過ぎた感はあったけど紅葉が美しい。


《堀を囲む樹木の紅葉が美しい》


《上田城址入口》


《真田石と呼ばれる直径3mの大石》


《真田幸村を合祀している真田神社。徳川に二度攻められながらも、落城しなかった上田城内にあるということで「落ちない」神社として受験生に人気とか》


《真田井戸。深さが16mもあり、かつ抜け道になっているとやら(真偽は不明)》


《城内の紅葉が素晴らしい》


《昔はここに市電が走っていたとのこと》


《上田城と隣接している旧藩主邸。真田信之はここに居館を構えたとのこと。今はまるまる県立上田高校のキャンパスになっている。こんな校門って格好良すぎ》

 上田駅近くで昼食を取った後は、中心部から7キロ程、菅平高原方向に向かったところにあり真田氏発祥の地とされる上田市真田エリアへ(昔は小県郡真田町と言ったらしい)。まずは、真田本城跡を訪れる。上田城址の喧騒を離れ、なんとも牧歌的で長閑な日本の田舎の原風景とも言える風景が展開し、旅情を掻き立てられる。

 この場所が、本城であったことの確かな証跡はないようだが、規模や立地から見て、ここが本城であったに違いないとされている。確かに、この城跡にたって周囲を眺めると、上田の中心部や市街を取り囲む山々が見渡せ、将棋の王将の位置にしているのが分かる。今や、のんびりとした田舎風景の一部となっているが、戦国時代当時は、ここでまさに一族郎党の運命を左右する緊張感あふれるやり取りがあったに違いない。


《城跡入口》


《上田市街に向かってなだらかな丘が広がる》


《お地蔵さんの賽銭も六文銭》


《戦国史にたびたび登場する砥石城が正面に》

 本城跡に続いて、真田氏が上田城を築城する以前の居館跡である真田氏館跡と隣接する真田氏歴史館へ。真田氏歴史館では、真田一族の歴史や関わる古文書が展示されていて興味深い。中でも、大坂夏の陣を描いた屏風絵(複製)は、武将一人ひとりの行動が細かく描写されており、当時の大戦闘を偲ばせる。


《真田氏歴史館入口》


《中の様子》

 そんなかんだで、歴史館を出ると、既に陽は傾き夕方の4時を廻っている。このまま帰っても高速の上り渋滞に巻き込まれるだけなので、隣接の東御市の湯楽里館という、日帰り温泉施設へ立ち寄った。いわゆる「ふるさと創生資金」で建てたような、いかにもの公営温泉施設(入館は500円)なのだが、北アルプス、八ヶ岳を望む眺めが素晴らしい。山に沈んでいく夕陽を眺めながらの露天風呂は予期せぬ心の贅沢となった。館内もゆったりくつろげるので、根が生えてしまい結局7時まで2時間半ほど滞在した。


《こんな風景を見ながらの露天風呂が楽しめる》 

 日帰りと言うことでかなり詰め込んだせわしい旅程となってしまったので、訪れたい見どころ、楽しみ処を残しての帰路となった。また是非、じっくりと訪れてみたい。


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小屋 一雄 『シニアの品格』(小学館、2016)

2016-11-17 20:30:00 | 


 シニア社員が増えつつある職場において活用できるかなというのと、まだシニア社員と呼ばれるには早いがいずれは回ってくる自分にも役に立つかな、というスケベ心一杯で手に取った本だったが、深い内容持ったものだった。

 80歳を超えた品格ある老人とまだギラギラ感を捨て切れない59歳のシニア企業戦士との出会い、親交、別れが、2人の対話を軸に物語的に描かれる。前半部分の対話は、老人のよろず相談だが、そのプロセスはシニア企業戦士がコーチングを受けることにより気づきを得る過程そのものだ(第1章のタイトルは「傾聴」!)。だが、だんだんとそれは老人と企業戦士の対話による相互プロセスに変化していく。そして、対話を追いながら、読者も「品格」について自然と自ら考えるようになっている。

 印象的な言葉も多い。「使命などというものは考えて身に着けるものではなく、その生き様から自然と導かれるものだということであろう」、「老人の言う「品格」というものは彼の人生そのものよりも、その場その場での態度、役割を持って状況をどう受け止めるか、ということ」、「もし『シニアの品格』というものがあるとしたら、それはもっと自分から関心が離れていくものだと思うんです」、「私はやっぱり、大切なのは知性よりも、姿勢やまなざしだと思うんです」などなど。

 読んでいて、数年前に亡くなったKさんを思い出して目が潤んだ。地元の英会話サークルで知り合い、「友人」となったが、たまたま大学の先輩であったこともあり、何かとお世話になった。押しつけがましいところのない自然な気配りと周囲の人へのリスペクトを持ち、70歳台であったが多方面にチャレンジを続ける方で、あのように歳を重ねたいと思ったものだ。私のロンドンに赴任中に、仕事でイギリスに来られた時にはわざわざ連絡を頂き、手土産まで持って来ていただいた。そんな私にとって「シニアの品格」の見本のような人生の大先輩は5年前に突然の発作で世を去った。

 簡単に読める本ではあるが、自らを内省する機会を与えてくれる味わい深い一冊である。


【目次】
 邂逅
 傾聴
 時間
 強み
 仕事
 成長
 自由
 役割
 仲間
 約束
 品格
 未来

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これぞ理想の美術鑑賞空間!:「生誕130年記念 藤田嗣治展 -東と西を結ぶ絵画-」@府中市美術館

2016-11-14 20:00:00 | 美術展(2012.8~)


 秋の週末、府中市美術館で開催中の企画展「生誕130年記念 藤田嗣治展 -東と西を結ぶ絵画-」に出かけた。藤田嗣治の絵は、独特の自画像など数点観た記憶があるが、個展として鑑賞する機会は初めて。

 青年期の絵に始まって晩年まで、パリでヒットした「乳白色の下地」の絵や裸婦像など100を超える作品が展示されている。年代とともに画風が変わっていくのが興味深い。西洋画なのだけど、普段見る西洋画とは違い、和の香りが仄かに漂う不思議な印象が残る。また、第二次大戦中に「戦争画家」として作品を描いていたことなどは、初めて知るとともに、その凄惨な絵には足がすくむ。


《五人の裸婦》


《アッツ島玉砕》

 一点一点の絵画作品が魅力的であるとともに、人・藤田嗣治の波乱の人生にもひきつけられる。西洋と日本の文化に挟まれ生きた一生は、アイデンティティという意味でさぞ苦労の多いものであったであろう。

 何度か訪れている美術館だが、今回は展示もさることながら、その環境の素晴らしさに改めて感じ入った。(主催者側にはあまり喜ばしい事ではないのだろうけど)週末だというのに、混み具合も大したことなく、ゆっくりとマイペースで鑑賞できる。気に入った絵の前では暫く立ち止まり、じっくりと眺め、疲れたらソファに腰かけて一休み。時間も人も気にすることなく、静かで絵が発するメッセージだけを汲み取ることができる空間。美術鑑賞の楽しさそのものがここにあるという感覚だった。絵を見るってこういうことだよね、なんて分かったような気になる。

「ダリ展」も良いけど、それとは対照的な美術展であり、是非訪れることをお勧めしたい。12月11日(日曜日)まで。
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混雑覚悟で。でも見に行かないわけにはいかない: ダリ展@新国立美術館

2016-11-07 08:00:00 | 美術展(2012.8~)


 評判のダリ展に行ってきました。相当の混雑の噂を聞いていたので、覚悟はしていたけどやはり混んでます。別案件で休みを頂いた平日に出かけたのですが、入口から出口まで絶え間なく混みいってました。現代の画家なので若い人が多いのかなと思ってたのですが、高齢者の方も多くダリの人気がよくわかります。美術展も平日は空いているという時代ではなくなってますね。

 ダリの青年期から晩年に至るまでの絵画、工芸等、250点近くの作品が展示されており、ダリの多才・奇才ぶりを見せつけられ、見ごたえ十分です。彼が脚本を書いたり、協力した映画などの映像も流されているので、全部を見ようと思ったら3時間以上はかかるんではないでしょうか。私は、時間も限られていたので、長い映像は飛ばしましたが、1時間半かけても相当急いで見た感じです。この一連の展示を見るだけで、ある天才の濃い人生を追体験でき、とてつもないエネルギーを感じます。
 
 特徴的なシュルレアリスムの絵画の前に立つと不思議な感覚に捕われます。彼の絵には御馴染みの、折れ曲がった時計を見てるだけで、非日常の世界に吸い込まれそう。ただ、混雑のため、一つ一つの絵に長く立ち止まって思索に耽るという猶予は与えられないし、そういう気分にもなれないのは残念です。お金と時間があれば、何回かに分けて訪れるのが良いのかもしれません。12月までやっているので、もう一度くらい行ってみたい。

 混雑は覚悟と我慢をしても、これだけのダリの作品を一挙に鑑賞できる機会はなかなかないでしょうから、足を運ばれることをお勧めします。11月19日(土)より会期末まで、土曜日も夜間20:00まで臨時開館するそうですからねらい目かも。

《構成》
第1章 初期作品(1904-1922)
第2章 モダニズムの探求(1922-1929)
第3章 シュルレアリスム時代(1929-1939)
第4章 ミューズとしてのガラ
第5章 アメリカへの亡命(1939-1948)
第6章 ダリ的世界の拡張
第7章 原子力時代の芸術(1945-1950s)
第8章 ポルトリガトへの帰還―晩年の作品(1960s-1980s)
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レベル高ぁ!: 水戸室内管弦楽団 第97回定期演奏会 /指揮 ナタリー・シュトゥッツマン

2016-11-04 08:00:00 | 演奏会・オペラ・バレエ・演劇(2012.8~)


 水戸黄門漫遊マラソンの前夜に定期演奏会をやってくれるという嬉しい心遣い(?)で、一度聴いてみたかった水戸室内管弦楽団の演奏会に足を運ぶことができました。本拠地の水戸芸術館は水戸駅から歩くと15分ぐらいで、隣接しているタワーが目印です。


《NHKニュースの中継でよく目にするランドマーク》

 水戸芸術館はコンサートホールに加え、劇場やギャラリーも併設していて、文化的な香りが漂う、いい雰囲気。ありがちな無機質な市民会館とは一線を画してます。コンサートホールは収容680名で、丁度、東京文化会館の中ホールぐらいの大きさ。ステージがとっても近くアットホームでありながら、デザインも洗練されています。これからどんな演奏が聴けるのか、居るだけでワクワクしてくるような空間になってます。


《芸術館入口》


《コンサートホールATM》

 この日の指揮は女性声楽家でもあるナタリー・シュトゥッツマンさん。歌は聴いたことがありますが、指揮は初めてです。プログラムも興味深い構成で、モーツァルト・プロコフィエフ・ビゼー夫々の初期の交響曲を揃えてました。表情豊かに、高い身長を目一杯に使っての指揮姿はとっても明るく輝いた印象を受けます。

 モーツァルト以外は初めて聴いた曲ですが、プロコの交響曲一番は変化があって楽しかったし、ビゼーの交響曲は古典的ながらも華やいだ音楽でとっても楽しめました。ロッシーニやグノーの交響曲の影響を受けてるらしいけど、ベートーヴェンの初期にも似ている気がしたなあ。

 演奏会の度に世界各地から水戸芸術館に集まるという楽員さんたちが奏でる音もとっても福よかで美しいものでした。コンサートマスター(ミストレス)が曲毎に変わります。プロコフィエフの交響曲第1番では竹澤恭子さんが務めておられました。人数も少なく、ステージが近いので、どこの誰がどんな音を出しているのかが手に取るように分かるのがうれしいです。シュトゥットガルト放送交響楽団のオーボエ首席奏者であるフィリップ・トーンドゥルさんのソロがなんとも豊かで味わい深い音色で痺れました。ホールの音響も抜群で、ほんわり残響に包まれる幸福感は、何しに水戸に来たのかを忘れるほど。

 1時間40分ほどでプログラムが終わったので、アンコールがあるのかなと期待しましたが、残念ながらありませんでした。翌日のフルマラソンを考えると、このぐらいで終わって頂いてむしろ良かったかも。

 それにしても、こんな素晴らしい楽団を持っている水戸は恐るべしです。会場には制服を着た中高生たちも多く見かけましたが、こんな手の届くようなところでワールドクラスの演奏を聴けるなんてとっても恵まれた環境ですね。聴衆の皆さんも、とっても静かで、フラブラもなし。自然に音楽を楽しんでいる雰囲気が満ちていて、とっても快適なホールでした。来年も是非、水戸黄門漫遊マラソンと定期演奏会は同日程でお願いしますね!


水戸室内管弦楽団 第97回定期演奏会
コンサートホールATM
2016年10月29日[土]18:30

【指揮】ナタリー・シュトゥッツマン

【曲目】
モーツァルト:交響曲 第25番 ト短調 K.183
プロコフィエフ:交響曲 第1番 ニ長調 作品25〈古典的〉
ビゼー:交響曲 ハ長調

【出演メンバー(50音順)】
*ヴァイオリン:安芸晶子、荻原尚子、川又明日香、久保田巧、佐份利恭子、島田真千子、竹澤恭子、田中直子、豊嶋泰嗣、中島慎子、中村静香、Thelma Handy、福原眞幸、渡辺實和子
*ヴィオラ:大島亮、川崎雅夫、川本嘉子、店村眞積
*チェロ:辻本玲、原田禎夫、堀了介、宮田大
*コントラバス:池松宏、谷口拓史
*フルート:岩佐和弘、工藤重典
*オーボエ:フィリップ・トーンドゥル、南方総子
*クラリネット:リカルド・モラレス、中秀仁
*ファゴット:ダーグ・イェンセン、鹿野智子
*ニール・ディランド、猶井正幸、阿部麿、勝俣泰
*トランペット:デイヴィッド・ヘルツォーク、松居洋輔
*ティンパニ:Don Liuzzi

Mito Chamber Orchestra
97th Regular Concert
October 29 (Sat.), 2016

Nathalie Stutzmann, Conductor

[Program]
Mozart: Symphony No.25 in G minor, K.183
Prokofiev:Symphony No.1 in D major, op.25 "Classical"
Bizet: Symhony in C major
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第1回水戸黄門漫遊マラソンでねばりきれず(2/2)

2016-11-02 08:00:00 | ロードレース参戦 (in 欧州、日本)
 とにかくこのレース、沿道の応援が素晴らしいです。同じ茨城と言うこともあってか、かすみがうらマラソンと似た雰囲気。じいさま、ばあさまの応援も頂いて励まされます。手を向けてくれる人とは、たくさんハイタッチをして力をもらいました。私設の給水所、給食所もありで、バナナやチョコを頂きました。オフィシャルの給水所、給食所も数多く準備されており、ミニ饅頭は旨かった。ただ、難を言うと、コップを置くテーブルの長さが短く、取りもれて、水分補給でできなかなかったことが何度かあったので、できれば来年はもう少し長めにテーブルを設置いただければ助かります。


《村人全員の応援では?》


《野球少年からの応援は励まされます》


《さすが茨城。大洗ハワイアンガールズ?》


《高架道路下を特急列車が通過》

 30キロを過ぎると市街地のビルが見えてきました。もう一息。ただ、練習では未踏の32キロを過ぎると急に疲れが噴き出してきました。(たしか)32kぐらいで四季の原公園に入り、そのまま千波湖畔を走ります。景色も良く気分も晴れるのですが、痛めつけられた体には景色の良さも味わっている余裕がありません。長野マラソンで35k地点から失速した悪い思い出が急に頭によぎり、いやな感じ。それでも、35kを何とか3時間8分37秒で通過。いよいよあと7k。ねばるぞ~。


《四季の原公園のコスモス畑》


《千波湖畔のランニングコースには白鳥が?》


《危ないですよ~》

 最後の7kはアップダウン続き。千波湖を出ると緩やかなだけど長めの上り、そしてトンネルに向かって長い下り。このアップダウンに耐えきれなかったのか、違和感のあった左ももの後部が釣り始めました。来た・・・・って感じで焦ります。いったん早歩きに切り替え、体のリセットを試みましたが、不思議なことに走るより歩く方が足の釣り具合が強くなるのです。サブ4に向け、カウントダウンに入り、1秒を争う展開になりつつあるのですが、一度釣ったら最後、5分近くはロスします。なので、足を宥めすかしながら、だましだまし走り続けることにしました。40k通過は3時間39秒。サブ4だけは死守したい。

 更に追い打ちをかけたのが、40キロ過ぎに忽然と現れたこのコース最大斜度の急坂。「ラスト2キロを切ってこの坂を走らせるとは酷い!」という恨めしさ一杯の一方で、城って高いところに建っている(ゴールは旧水戸城址)んだと、当たり前のことを再認識。何とか、一所懸命走ってはみるものの、いよいよ腿裏の釣りが爆発しそう。それでも「何とか粘るぞ~」と思い足を動かすけど、隣で歩いているランナーさんと走っているはずの私と進み具合がほとんど同じ。「これじゃ、走っても意味ないじゃん」とがっくりきて、200メートルばかりの坂は歩かせて頂きました。情けない・・・

 坂を上がるともう残り1キロ。あとは平地です。最後の大きな声援を頂いて、ゴール。何とか3時間54秒台、グロスでもぎりぎりサブ4達成。100% の満足ではないけど、サブ4の目標は達成し嬉しかった。ゴール後は印籠と梅をあしらった素敵なメダルを頂きました。


《ゴール!》

 レース後、一緒に走った職場の同僚と落ち合いお疲れ様会兼反省会。同僚は3時間10分台の自己ベストで、まだまだ走りたいと言っていました。凄い奴だ。

 第1回のレースで運営が心配なところがあったけど、素晴らしい大会でした。コースは適度にアップダウンがあるし、何より応援が素晴らしい。今後の更なる発展を期待したいです。今回はせっかく前泊したのですが、時間の関係で弘道館とか水戸の名所は見られずじまい。来年は水戸観光も組み合わせて、走りたい大会です。

(おわり)
コメント (2)
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