その後の『ロンドン テムズ川便り』

ことの起こりはロンドン滞在記。帰国後の今は音楽、美術、本、旅行などについての個人的覚書。Since 2008

雨のアシュリッジ・エステイトでイングリッシュ・ブルーベルを見る

2012-04-30 22:12:38 | 旅行 イギリス
 しかしまあ、週末にあれだけ強風と雨が降り続いて、月曜日になるとこうも晴れるのかという、恨めしい快晴の月曜日でした。

 週末の土曜日は4月下旬から5月上旬にかけて咲くブルーベルを見にアシュリッジ・エステイトというナショナルトラストが管理する土地へウオーキングに出かけるつもりでした。それが、朝から強風交じりの雨。でも、イングランドの天気だから、晴れる瞬間もあるだろうと思い、強行出発。結果として、天気が上向くことはありませんでしたが、印象的な風景を目にすることができました。

 アシュリッジ・エステイト(Ashridge Estate)は、ロンドンから車で40分程度北北西に行った行ったところにあります。2,000ヘクタール (5,000エーカー、甲子園グランドの1460個分、皇居の約14個分)という広大な土地がナショナルトラストにより自然むき出しの形で保存してあります(HPはこちら→)。

 近年はスパニッシュ・ブルーベルとの雑種が広がっているそうですが、イングリッシュ・ベル―ベルには、花茎が湾曲する、香りがより強いなどの特徴があるようです。3年前に、ブルーベル鉄道という機関車が走る路線に載った際に、車窓から、森の中に一面に群生したイングリッシュ・ブルーベルにより青の絨毯がひきつめられていたのを目にし、また一度、同様の風景が見たいと思っていました。ネットでアシュリッジ・エステイトがブルーベルで有名ということを知ったので、ブルーベル目当てで出かけたわけです。

 冷たい雨が降りしきる中、森の中にあるビジターセンタから出発。とことこと雨の中の一人歩きはかなり寂しい物がありますが、雨さえ降っていなければ、ここはどんなに気持ちが良いだろうと思うような、新緑が始まったばかりの森でした。



 時折、森の切れ目から見渡せる一帯は、日本の原風景のような趣さえあります。
 

 そして歩き始めて20分余り、イングリッシュ・ブルーベルが群生している一帯を発見。
 

 近ずくと・・・
 

 更に接写。
 

 神秘的としか言いようのない美しさがありました。

 あまりにも寒いのでしばらく楽しんだ後は、元の道を戻り、ビジターセンタへ。カフェで暖かいスープを飲んで、体を暖め、計2時間の滞在で帰宅となりました。


 2012年4月28日
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楠田 祐, 大島 由起子 『破壊と創造の人事』 (ディスカヴァー)

2012-04-29 15:20:01 | 
 これも出発前の成田空港でタイトルに惹かれて衝動買いした1冊。企業の人事を巡るイシューを解説し、専門家や現場の人事責任者のインタビューを交えてあるべき今後の日本企業の人事を探る。

 専門家とのインタビューにおけるグローバル化、コーチングについてのやりとりや、現場の人事とのインタビューはそれなりに興味深い点もある。ただ、大部分は人事を少しでもかじったことのある人なら既知のことで、大層なタイトルをつけてハードカヴァーで売るほどの内容のものではない。本屋で5分立ち読みすれば、その底の浅さはすぐわかる。多くの人事担当者は、イシューは分かりつつも、それを慣性の法則が働く組織のなかで、具体的にどう変えていくことができるかでもがいているのだ。タイトルと帯につられて、出版社のマーケティング戦略に完全にのかった自分のアホさ加減に腹がたつ。

 驚いたのは、「アマゾンでこの本はレビューではどう評価されているのか」と思い調べたところ、全体で5つ星の評価で、内訳をみると34のレビューのうち30のレビューは満点の5つ星がついている!これはありえんだろうと思ったら、直近のレビュアーが同じような疑問を呈しておられた。これ以上本書に自分の時間を取られたくないので、一つ一つのレビューを吟味することはしていないが、これには首をかしげざる得ない。

 あまりネガティブなことは言いたくない性分なのだが、この本にはやられた。

 

 
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ロイヤルオペラ 『リゴレット』

2012-04-29 00:14:35 | オペラ、バレエ (in 欧州)
 何故、こんなロンドンマラソンの前夜にオペラのチケットを取ってしまったのか?と最後まで行くか行くまいか迷ったのですが、前半だけ観て帰ればいいかと思い、足を運びました。そしたら、歌手陣、オケともに引き締まったレヴェルの高い好演で、結局最後まで観てしまいました。

 リゴレット役のディミートリ・プラタニアスはとても安定したバリトンで、歌声が心地よく耳に入ります。いわゆる男前タイプとは正反対を行く外見がまたリゴレット役にぴったりで、演技も素晴らしく、舞台がしっかり締まっていました。また、好色男マントヴァ公爵を演じるのは、プラタニアスとは反対の超男前のテノール、グリゴーロ君。これがまたはまり役の上、歌唱は相変わらず惚れ惚れする素晴らしさ。声量もたっぷり、声の質も豊かで表情がある彼のテノールは間違いなく世界トップクラスだと思います。
 非運の女性ジルダ役のLucy Croweはまだそれほど実績もない、これからの若手歌手のようですが、繊細だけども声量ある高音ソプラノはとても魅力的でした。まだ歌の表現や細かい演技はこれからという感じもしますが、むしろその素朴さがジルダの役柄ともマッチして、非常に好感度高いものがありました。これからが楽しみです。この3役が非常に良かったので、観ていて全く飽きることのなく、常に集中してみることが出来ました。
そして、演奏の方もこれが素晴らしかったです。ガーディナーさんがロイヤルオペラを指揮するのははじめて聴いたのですが、流石と思わせる非常にシャープな音楽作りで、パッパーノさんが振る時のように際立った演奏でした。メリハリが効いたバトンさばきがすばらしかったです。

 本プロダクションによるリゴレットは2009年、2010年と観ているので、今回で3回目だったのですが、間違いなく今回が一番だったと思います。翌日のマラソンを控え、カーテンコールには参加せず、終演直後に劇場を出ましたが、満足感一杯でした。


Rigoletto
Saturday, April 21 2012 7:30 PM

Credits
Composer; Giuseppe Verdi
Director; David McVicar
Set Designs; Michael Vale
Costume Designs; Tanya McCallin
Lighting; Paule Constable
Associate Director and movement director; Leah Hausman

Performers
Conductor; John Eliot Gardiner
Duke of Mantua; Vittorio Grigolo
Rigoletto; Dimitri Platanias
Gilda; Lucy Crowe
Maddalena; Christine Rice
Sparafucile; Matthew Rose
Giovanna; Elizabeth Sikora
Count Monterone; Gianfranco Montresor
Marullo; Zhengzhong Zhou
Matteo Borsa; Pablo Bemsch
Count Ceprano; Jihoon Kim
Countess Ceprano; Susana Gaspar

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ロンドンマラソン完走記 (その3) 【ハーフ地点~ゴール】

2012-04-27 00:12:00 | ロードレース参戦 (in 欧州、日本)
【ハーフ地点(13.1マイル)~20マイル(32キロ)】

ハーフのラップは1時間59分15秒でちょっとがっくりきたが、まだ諦めちゃいけない。これから20マイル(32キロ)までをいかに平穏に走れるかどうかが、ラストまで持つかどうかの分かれ目だ。これからは、新都心ドッグランズ(こちら→)に向かって東に走る。気温の上昇にあわせて、体温も上がってきたのが自分でも分かる。体を冷やさないと思い、給水所で貰ったボトルの水を顔に掛け、頭の上からかけ、そして足にかける。顔にかけた水が顔に張付いた汗の塩分と混ざり合って、かなり濃い塩水になって、口の中にしみこんで来た。そのしょっぱさに、結構、汗をかいていることに気付く。思っている以上に、体力を消耗しているかもしれない。14マイルラップは2時間7分8秒(4時間標準ラップから1分6秒先行)。

(13~14マイル地点。私の後ろを走るランナーたち。(走りながらカメラだけ後ろを向けて撮影。下部の黒いのが私の帽子))


(熊かリスかなんだか分からなかったけど、抜いた)


 ちょっと誤算と言うか、判断を誤ったのは、15マイル(23キロ)手前でのトイレ待ち。簡易トイレが空いていると思ってドアを開けたら、既に先客が保有済み。その先客が出るのを待っていたら、意外と長い用足で2分以上待たされた。自分の用も合わせて、ここで2分間半のロス。こんなにロスするんだったら、適当にその辺で済ませりゃ良かったと後悔したが、後の祭り。そのロスもあった16マイルは2時間26分36秒で通過。ついに4時間の標準ラップを3秒割ってしまった。

(14.5マイル地点。ドッグランズが近づきます)




 新都心ドックランズエリア入る。ここは東京で言えば幕張のようなところだから、日曜日にそんなに観衆はいるまいと思ったら、とんでもなかった。どこからこんなに人があふれて来るのかと思うほどの、大声援である。声がビルというビルに反響して、すごい音になっている。自分がオリンピックの大選手にでもなったかのような感覚で、惑うほどだ。相変わらず"XXXX(私の名前), GO!"の声援も絶えない。もう何人に"Thank you!"で応えただろうか?もう100近くになるような気がするけど、こんなことなら最初から数えておけば良かった。

(18マイル地点。高層ビルが直ぐそこ)


 18マイル(28.8キロ)を2時間44分46秒で通過(再び4時間標準ラップに5秒先行)。流石に少し足に疲れが生じてきたのが解る。今回にあわせて20マイルのレースに2月、3月に1回ずつ出走しているが、そのおかげかここまでは意外なほど走りは順調だ。随分持ったものだと思う。しかし、何故か想定外に、腹筋に切り切りとした違和感を感じ始める。う~ん、フルマラソンはこの3年で6レース走っているけど、この違和感は初めてだなあ~?なんだろう?腹筋のトレーニングも必要だったか?と自問自答していたところで、何故だかの理由が分かった。それは、声援に応える自分の"Thank you"で普段使わない腹筋を使っていたのだ。のど元はランニングの呼吸で手一杯だから、自然と"Thank you"は腹式呼吸で腹から声を出していたのだ。普段の酷いジャパニッシュの私の英語も、さぞかし今日の"Thank you"はいい発音に違いない。と思わず自分で、苦笑い。

(19マイル地点。凄い声援のビル街)


 ロンドンマラソンのコースは、高低差はあまりないので基本的には走りやすいはずなのだが、意外と曲者のところがある。短くて小さな上り、下りは意外とあるのである。ただ、上手くできているのは、ほぼ1マイルごとにある給水所がだいたいその坂の真ん中とか手間にある(気がした)。なので、頑張ってここを上らねばというようなプレッシャーは殆ど感じずに走ることができた。給水所で水ボトルを差し出してくる少年、少女が天使に見える。


【20マイル(32キロ)~ゴール】

 そして、先週末に最後の下見ランを始めた20マイル(32キロ)地点を走り抜ける。ラップは3時間2分56秒(4時間標準ラップに16秒先行)。4時間標準ラップには先行しているものの、4時間を切るためには、あと10キロを57分で走らなくてはいけない。ここから走り始めるなら楽勝だけど、既に32キロ走っている中で、どこまで、どのくらいで走れるかは、何回経験してもその日になってみないと分からない。思い切って、ペース上げてみようかと思っても、もう足がついていかない。とにかく今の流れを継続していくので精一杯なのだ。周りには段々と歩き始める人が出はじめた。苦痛に顔をゆがめて足をさすっているランナーが居る。本当はここらで一旦止まって、ストレッチをするのが最後までしっかり走りぬくにはいいのだろうけど、止まることでタイムが遅れるよりも、一旦止まったら2度と走れなくなるのではないかという恐怖感から、止まることもできない。22マイルは3時間21分40秒。ついに4時間標準ラップから9秒遅れた。このまま沈んでしまうのか?

 そして、いよいよタワーブリッジ、ロンドン塔の交差点に戻ってきた。コース中で恐らくここが最も観衆が集まっているところだと思う。人の声、叫び、笛の音、ハンドマイクやメガホンで人を呼ぶ声、スティック風船を叩く音、バンドの音楽などなど、音という音が、無秩序に、重層的に、破壊的に共鳴して自分にぶつかって来る。これは声援に背中を押されているというよりは、合戦で矢や鉄砲玉が飛び散り、向かってくる中を歩兵の私が突撃していくような気分である。

(23マイル手前。タワーブリッジの北端の交差点。花道に突入って感じです)


 ロンドン塔の横を過ぎて、応援は少し落ち着く。もうここからは、自分のホームグラウンドだ。通勤でもたまに走るし、酔っ払っときはここからピカデリーサーカスまで歩いて酔いを醒ます。ただ、コースを知っているだけに、残った距離と体力を天秤にかけると、精神的に結構つらかった。ロンドン大火のモニュメントを右手前方に見ながら「やっぱりフルマラソンは厳しいなあ」と弱気になった丁度そのとき、「XXXさ~ん」と日本語で私を呼ぶ声が。職場の同僚たちが、応援に駆けつけてくれていたのだ。初めて、耳にする日本語の、かつ自分を応援してくれる声。うれしかった。夢中で手を振って応える。よ~し、最後までがんばるぞ。それでも、24マイルのラップは3時間40分43秒。ついに4時間標準タイムより53秒遅れ。

 そこから残りの4キロ弱は正直、無我夢中だった。ゴールに近づけば近づくほど、更に声援は大きくなる。みんな分かっているんだ、ここが一番辛いところだって。左手にテムズ川があり、その奥にロイヤルフェスティバルホールが見えて来る。そして、その先にはロンドンアイの観覧車が。そして、ついに正面に国会議事堂のビッグベンが現れた。あと2キロ。疲労はピークに達し、もう応援コールに笑って応えることもままならず、疲れた"ThankYou"しか返せなくなってきた。

(24.5マイル。テンプル近辺)


(25マイルを越え、樹の葉の蔭から国会議事堂が見えてきた)


 40キロを03:49:37で通過。この数キロでペースがぐっと落ちてしまった。あと2キロを10分はいよいよ不可能だ。自分でもあきれるほど子供じみた考えだが、1000メートルで良いからワープできないか?とか、500メートルでいいから、羽がついて飛べないか?と思った。最後の力を振り絞って、スピードを上げようかと試みる。だが、足はついて来ない。この際もう4時間は潔く諦めねばならない。これが今の自分の実力だ。最後は、しっかり笑顔でゴールできるように、42キロを全うしよう、そう言いきかせる。そんな時、ふくらはぎがぴくぴくして、痙攣の予兆が始まった。ゴール前100メートルで突然、動けなくなった1年半前のアムステルダムマラソン(こちら→)が蘇る。まだ、最後の最後まで、何が起こるかわからないぞ。

 あとは、小さな子供をなだめすかすように、自分の体と対話しながら走り続ける。あと800メートル、600ヤード(確か)などの標識が目に入る。バッキンガム宮殿前のビクトリア女王の像が目の前に入る。宮殿前の広場を右折して、いよいよゴール200メートル前。ゴール前はスタンドがコース脇に設営されていて人が一杯に座っている。何とかゴールまで行けそうだ。最後のゴール前花道は、10メートル以上も離れたスタンドからの声援なので受ける印象も今までより、ちょっと格式ばっている。でも、写真班のカメラを意識して、思いっきり手を上げて、ゴール。時計を止めたら4時間3分45秒だった。ふう~。

(残り400メートル)



【アフターラン】

 レース後は、完走の満足感と最高のコンディションにも関わらず目標タイム(4時間)を切れなかった不甲斐なさに、非常に複雑な気持ちに満たされた。きっとオリンピックで「銅」メダルを取った人ってこんな気分なのではなかろうか?私の場合、自己新なら「金」だったろうし、自己新でなくとも4時間切れたら「銀」の気分なのだろう。そして、レースの終わった今は、頑張った満足感に浸りながらも、どうしたらあと4分は縮められただろうかと、どうして縮められなかったのか、疲れて思考力がない頭の中をぐるぐる思いが廻る。もっとリスクを犯して走るべきだったのでは?写真撮りすぎたか?いろんな事が気になってしまう。でも言いきかせる。いいじゃないか。こんな大舞台で走れたのだからと。。。

 レースが終わるを待っていたかのように雲が空を覆い、パブでビールを飲むときには激しい雨となった。

(いろんな思いを胸に頂きながら、とりあえず前に惰性で進む、Finishersたち)


 翌日、社に出社すると、思いもかけず、多くの同僚たちから声をかけられた。 "Well done!", "Very Impressive!", "How did you feel?", "Congratulations!", "お疲れ様でした・・・”,”素晴らしいですね・・・”。普段、向こうから声をかけてくれることはあまり無いような人まで声をかけてくれる。声援は沿道だけでなかった。「最後まで走れてよかった」と心底思った。タイムはやっぱり2の次なのだ。

 この年齢になると、いまさら「夢」なんていう言葉を使うのは気恥ずかしい(こういうことを言うこと自体が、親父じみていて嫌いだが・・・)のだが、ロンドンマラソンで走ることは間違いなく自分の「夢」だった。そして今、その「夢」が終わり、自分は不思議なほどすがすがしい気分でいる。

(完走Tシャツと完走メダル)



(終わり)
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ロンドンマラソン完走記 (その2) 【スタート~ハーフ地点(13.1マイル/21.098キロ)】

2012-04-25 23:53:14 | ロードレース参戦 (in 欧州、日本)
 スタートラインに引きつめられた、タイム記録用の茶色のマットを強く踏みしめ、自分のストップウォッチのボタンを押して、いよいよスタート。(うまくいけば)4時間前後の個人ドラマが始まった。

(スタート地点へ向かうランナー達)


 この1週間は見たことのないような青空の下で、朝のみずみずしい空気を切って走り始める。最高のコンディションだ。こんな天候で走れる幸運に、とにかく感謝しなくては。住宅街の沿道では、連なった観衆が声援とともにランナーを送り出す。でも、よくあることだが、スタート直後は混雑でコースが渋滞し、思うように走れない。最初の1マイルを経過したところで時計を見たら、9分で走るはずのところが、なんと10分もかかっている。いきなり1分以上のロスか・・・。

(奥に見えるのが1マイルの標識)


 2マイルを過ぎると、ようやく混雑を抜ける。丁度、ペースをつかみ始めたかなあと思ったら、今度は自分の後ろでドッタという鈍い音が聞こえた。ふと振り向くと女性ランナーが、何かにつまずいたのか、前のめりで倒れている。2年前のアムステルダムマラソンでの自分の転倒悪夢を思い出した(こちら→)。「あの形で転ぶと結構傷ついているだろうな。大丈夫かな?上手く立ち直ってくれればいいなあ」と思いつつ、自分のことで精一杯なので、とにかく走り続ける。ちらほらと仮装ランナーも見える。折角だから、仮装ランナーはカメラに収めておこうと思い、ビール瓶の着ぐるみを着たランナーが隣に居たのでシャッターを切るものの、走りながらでは、なかなか上手く捉えられない。なので、あきらめた。すると、今度はフラフープを廻しながら走っている女性を発見。今度は何とか捕まえた。「このまま完走できたら、この人、さぞかしウエストが締まるだろうな~」などとしょうもない雑念が頭をよぎる。

(いろんなランナーたち。これはカバ?)


(ホントにこの人42キロをフラループまわしながら走るのだろうか?)


(何故ヘルメットやクリケット?)
 

 6マイル(9.6キロ)地点頃からグリニッヂのダウンタウンに出てくる。ペースは落ち着いたが、仮装ランナーに気をとられていたら、6マイル(9.6キロ)でラップを刻み忘れた。気を取り直して、直後の10キロで時計を確認。55分52秒。借金こそ何とか返したものの、前半戦に作る予定だった貯金は全く貯まっていない。ペースもつかみつつあるので、「ここで少しスピード上げようかなあ?」と色気が出てくる。でも、あわてて、「今日はタイムよりレースを楽しむんだ」と言いかせ、グリニッジの船着き場近くに展示してある帆船カティーサーク号の横を走る。歩道に群がるように並んだ観衆にに目をやりながら、この最高の雰囲気を全身で受け止めながら走る。

(左前方が王室海軍学校。赤いゲートは10キロ地点)


 3年前、初めてロンドンマラソンを応援で見に行ったときに、観衆のすごい声援にたまげたのだが、走る立場になると、その凄さが実感として身にしみる。沿道の観衆が絶えることなく連なっている。2重3重の層になっていて、後方に位置した人が、一生懸命、人の隙間や背伸びしながら、知り合いや同じチャリティのメンバーを探しているが目に入ってくる。そして、私にもTシャツにプリントした私の名前を、見ず知らずの人が、何人も呼びかけてくれる。"Go! XXXX! (私の名前)"って。こんなに自分の名前を続けざまに呼ばれたことがあるだろうか?って思ったぐらいだ。呼ばれるたびに、お愛想だけはいい私は、手を振ったり、両手を挙げて"Thank you"と言っては応える。走りながらだけど、呼んだくれた人とは、不思議なぐらいしっかりと目と目が合う。この人なんで、こんなに嬉しそうに自分の名前をコールしてくれるのだろう。お愛想抜きで、こんなうれしいことはないし、自然に笑みがこぼれてしまう。また、不思議なことにコールは連続するという特徴を持っているらしい。誰かが一旦呼んでくれると、何故かそれが連鎖してしばらく続いていくのである。そして、いつの間にか収束していく。なんか面白い。

 ROTHERHITHEエリアに入ると、右に左に細かくコースが折れる。でも、大丈夫。2週間前に下見ランをしているので、コースは全て頭に入っている。10マイル地点を1時間30分54秒で通過。4時間ペースでやっと30秒の貯金。

(珍しく人が途切れたROTHERHITHEエリア、10マイル地点)


 そして、いよいよ前半のハイライト、タワーブリッジ(20キロ過ぎ地点)に差し掛かる。思えば、3年前にこの地点でこの大会を初めて応援し、「いつかは応援される側で走りたい」と思った場所を走っていく。自分でも信じられない。観衆の盛り上がりも、今まで以上に最高潮。ワーッと言う声援ともどよめきともつかないような熱気と音の塊が自分を包む。244メートルのこの橋を走って渡ってしまうのは、あまりにももったいない。「もっと楽しませてくれ~。何ならここだけ2回走っても良いし、時間が瞬間的に止まってくれればいいのに」と真剣に思った。真っ青の空に浮かぶ白い雲、青色に塗られた橋の骨格部分と灰色の石で出来た塔の部分。なんて美しい景色だろう。

(タワーブリッジが近づいて来る)


(くぐります)
 

タワーブリッジを渡ると、今度は右折して再び東方面に向かうと、いよいよ中間地点が来る。ラップは目標1時間55分に対して、1時間59分14秒。タワーブリッジをゆっくり走り過ぎたのか、このタイムだと同じペースで走り続けないと4時間切りは難しい。う~ん、ちょっとギリギリだなあ~。


(つづく)


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ロンドンマラソン完走記 (その1) 【起床~スタート】

2012-04-24 17:50:26 | ロードレース参戦 (in 欧州、日本)
 2012年4月22日

 朝6時、カーテンに差し込む陽の光で目が覚めた。「曇り時々雨という昨日の天気予報は何だったのか?」という言いたくなるほど、雲ひとつない晴天。ベットから起きて、思わずガッツポーズ。あとは、なんとかこの天気が昼過ぎまでもって欲しいと祈りながら、出発の準備にはいる。

 「ロンドンマラソンのコースは、水分補給地は沢山あるが、食料(バナナとか)は出ないので、お腹が空かないように朝はしっかり食べた方がよいよ」という経験者のアドバイスに従い、前日にジャパンセンターで購入した切り餅4切れをコンロで焼いて、インスタント味噌汁にぶち込んで、食べる。加えて、スタート前の最後のエネルギー補給用に、おにぎりを1個作って、バナナと一緒に荷物に詰め込んだ。

 地下鉄・列車の遅延がないかネットで最終確認。あわせて、ブログに頂いた応援メッセージにも急ぎお礼。そして、9時45分のスタートにあわせて、7時20分に自宅を出た。今回はブログ仲間のYさんと、Tube車内で待ち合わせ、会場まで一緒に行くことになっている。日曜日の朝だというのに車内はもうランナー達でいっぱいだ。Yさんと無事落ち合い、今日の天気、レースのことなどを軽く話しながら、ロンドンの東方にあるブラックヒースにある会場に向かった。今回は、待ちに待ったレースと言うこともあってか、柄にも無く緊張していたので、話し相手になってくれる人がいるのはとてもありがたかった。(Yさん、ありがとうございました)

 ロンドンブリッジでTubeから列車に乗り換え、最寄り駅ブラックヒース駅で下車。朝日が眩しいぐらいだ。予定通り8時半過ぎに会場付近に到着。青空と朝日に映える芝生が何とも美しい。会場は既にランナー達で一杯で、着替えたり、準備運動をしたり、トイレを待っている。実は、このトイレが曲者で、20メートルはあるかと思う行列ができていて、結局順待ちに20分以上もかかった。あせる気持ちを抑えて、トイレ待ちの時間もストレッチで準備体操。

(Blackheath駅にて)


 

(出発地点エリアに向かうランナー達)


 トイレが済んだら、いよいよランナー専用エリアに入って、荷物をトラックに預ける。スタートエリアが違うYさんとも互いの健闘を祈ってここで別れる。レース前最後のおにぎりと水を飲む。これで全ての準備が完了。あとはスタートするだけだ。不思議だったのは、昨年、一昨年にロンドンマラソンを応援したときにあれほど目にした仮装ランナーが回りには殆ど居ない。たしか、申し込んだときに、4時間前後の目標タイムを自己申告したためか、周りは真面目なランナーが多いようで、お祭り気分は半分で、あとは記録を狙う意欲のオーラが皆あふれ出ている。

(ランナーエリアの入り口)


(スタート地点へ向かう)


 スタートエリアは私のブルースタート・エリアのほかにも、近隣にレッドとグリーンとで計3箇所ある。総勢4万近くのランナーが走るわけだから壮観なわけだ。

(スタートエリアでスタートを待つランナー)


(背中の熊さんが可愛い)


 今回の目標は、絶好調なら自己ベスト(3.58.45)更新、できれば4時間切。そのためには、左手首につけたラップ一覧にあるように、マイル9分9秒が平均ラップ。頭の中の理想的展開は、前半はマイル8分45秒ぐらいで刻み、後半疲れたら9分15秒で持ちこたえて、4時間ギリギリでゴール。この天気なら行けるかも・・と思う一方で、ふと我に返る。「いかん、いかん。このレースは、職場の同僚、ブログやフェイスブックのみんなから激励されたように「Enjoy」が大前提なんだ。記録は2の次」と、言いきかせる。こんな大舞台で走れることはそうはないんだから、タイムなんかより、とにかく目一杯ロンドンマラソンを楽しまねば。

 さあ、いよいよスタートに向けてカウントダウンが始まった・・・

(つづく)


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ロンドンマラソンから帰還

2012-04-22 19:52:56 | ロンドン日記 (日常)
 ロンドンマラソン、無事完走できました。全くの想定外の好天気に恵まれて、最高のコンディションで走ることが出来ました。沿道の観衆からの声援も、昨年までのように見ているのと、実際に走るのとでは更にインパクトが違っていて、その声援の凄さに感動しながら走ってました。

 タイムの方は残念ながら、自己記録更新と目標には及ばない4時間3分台の記録でしたが、楽しんで走りぬけることが出来ただけでも大満足です。また、模様は明日以降、元気が戻ったらアップいたします。

 当ブログで、応援メッセージを頂いた皆さま、ありがとうございました。
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行ってきます~

2012-04-22 06:20:10 | ロンドン日記 (日常)
 おはようございます。応援メッセージを送って頂いた皆さま、ありがとうございます。今のところ天気も良さそうです。何とか持ってほしいです。がんばって、楽しんで走って来ます~

 下のTubeのポスターのようにならないように、早めに家を出ます。模様はまた後ほど・・・

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ロンドンマラソン 決戦前日

2012-04-21 17:37:20 | ロンドン日記 (日常)
 年甲斐もなく、緊張してきました。いよいよ明日は、このロンドン滞在中にあっては最大のプライベートイベントであるロンドンマラソンへの出走です。

 今日はゼッケンを取りに、ロンドンの東にあるエクセルというコンベンションセンターへゼッケンを取りに行ってきました。朝早めに行ったので、着いた時はさほど人も多くは無かったのですが、中で開催されているエキスポ(展示会)をぶらぶらしている間に、みるみるうちに凄い人ごみになりました。まあ、このお祭りのような昂揚したイベントの雰囲気は大きなフルマラソンの大会ならではですので、とっても好きです。自分の気合も合わせて高まります。

(会場入り口)


(いろんな展示ブースが並びます)


(自分のウエアに名前をプリントしてくれるサービス。8ポンドで、ちょっと高いなあと思いますが、自分で書くのも汚いので思わず頼んでしまいました。いい商売してます)


(栄養ドリンクやジェルの売り場。フルマラソンには欠かせません。ここでも、サバイバルパックなるレース前中後の飲み物、シリアル、ジェルの詰めあわせ9ポンドを買ってしまいました)


(どんどん人が増えてきます)


 展示会の規模は相当なもので、ぶらぶらしていたら、あっという間に2時間が過ぎてしまいました。その上、中盤以降、人ごみにもまれてややお疲れモード。こんなんでは、本末転倒ということで、まだいろいろ覗きたいところはあったのですが、気持ちを振りきって帰宅。そして、お昼寝。

(エクセルに行く時に乗るDRL)


 しかし、思えばフルマラソンを自宅から参加するのは、ロンドンに来てからは初めてです。いつも前泊してのアウェイでの出場。食事、昼寝、準備に気を使わないでよいホームはやはりアドバンテージがあります。

 あと気になるのは明日の天気だけ。この時期にしてはまだ気温が相当寒い(今日も最低6度、最高14度。しかし最高温度が14度もあるとは思えない体感)ので、いまだ明日何を着るかは決めてません。そして、いつも思うのですが、何故、イギリスの天気予報って予報元によって予想が全然違うのでしょうか?ある予報じゃ、明日のロンドンは雷のマークがついているのですが、別のものは曇りと晴れと処により一時雨。何を信じて良いのだか・・・。もっとも、一日に天気が何度も変わるのがイギリスの天気なので、正直、予報を聞いたからってそんなに実際の行動には影響しないんですけどね。

 とにかく、明日は楽しんで走ろう!そう思いつつ、いわれのないプレッシャーを何となく感じる前日です。


 2012年4月21日




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Barenboim & Staatskapelle Berlin (バレンボイム/シュターツカペレ・ベルリン)

2012-04-20 18:38:45 | コンサート (in 欧州)
 1年前に予約したチケット。最近めっきりコンサートホールに足が遠のいてしまっていたのだが、久しぶりに気合を入れてロイヤルフェスティバルホールへ出撃。何と言ってもバレンボイムと手兵シュターツカペレ・ベルリンのコンサートである。

 しょっぱなは、モーッアルトのピアノ協奏曲24番。バレンボイム自身のピアノ演奏である。バレンボイムのピアノは初めて聞くのだが、この1年はモーッアルトのピアノ協奏曲というと内田光子さんばかり聴いていたので、当たり前の話だが、随分違うもんだと思った。光子さんの素朴ながらも繊細で華がある演奏と比べると、バレンボイムのピアノは同様に素朴なのだけど、もっと太くたくましい感じがする。これは光子さんが女性で、バレンボイムが男性というきわめて、私の思いこみに来ている可能性も否定できないが、少なくともこの日の私はそう感じた。でも、そのバレンボイムの愚直とも聞えたモーツァルトはとっても体にすんなり入ってきて、かみしめながら聴くことができた。



 そして、ブルックナーの交響曲7番。多くの人がそうであろうが、私もブルックナーの交響曲の中ではこの7番が一番好きである。原体験は、ずーっと昔、クラウス・テンシュテットが振ったフィラデルフィア管の演奏を聴いたことで、感受性が強い時期だったということもあるが、自分史の中でもとっても衝撃的な体験だった。今回は バレンボイムとシュターツカペレ・ベルリンが創り出す重厚で雄大な世界に魅せられた。特に、弦の厚みのある演奏は、冒頭のチェロの演奏から痺れっぱなしだった。ベルリン・フィルのような機能的で鋭利な刃物のような隙のない完璧なアンサンブルとは全く趣が異なっているが、ドラマチックで人を気持ちを揺さぶる演奏だ。なんかこの音楽を使って物語を書いたりしてみたくなる。暗譜で振るバレンボイムもかなりオーケストラを煽っていたが、金管もフルパワーで鳴らし、大きなロイヤルフェスティバルホールが揺れているような感覚に陥るほど。今回はバルコニー席だったのだが、これはもっとステージ近くで聴きたかったなあ~。



 終演後は盛大なスタンディングオベーションだった。





Royal Festival Hall

Barenboim & Staatskapelle Berlin
The Bruckner Project
15 April 2012

Wolfgang Amadeus Mozart: Piano Concerto No.24 in C minor, K.491
Interval
Anton Bruckner: Symphony No.7 in E

Staatskapelle Berlin
Daniel Barenboim conductor, piano

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雨宮 寛二 『アップル、アマゾン、グーグルの競争戦略』  (NTT出版)

2012-04-18 18:33:01 | 
 成田空港の本屋で偶然見つけ、衝動買い。

 ネット勝ち組であるアップル、アマゾン、グーグルの戦略を、ポーターの競争戦略論・バリューチェーン理論、バーニーの経営戦略論、クリステンセンのイノベーション理論などのフレームワークを使って分析し、インターネットビジネスの解(「ネット解」)を明らかにしようとする。

 今をときめくネット企業の3社だが、本書のように共通のフレームワークを使って戦略を比較分析した本は今まであまりないのではないか?ジャーナリスティックなレポートでもなければ、学者が書くようなコンセプチュアルな理論運用でもないので、ビジネスマンが、概括的に3社の戦略を知るのには、有益だと思う。

 一方で、分析はそれほど深くなく、切り込みも筆者のユニークな視点があるわけではないので、パンチの弱さは否定できない。既存のフレームワークを適用して現状を分析したレヴェルに留まっている。筆者には失礼だが、自分が大学院の「経営戦略」のタームペーパーで、「某業界の競合2社を取り上げ、そのクラスで学習した経営理論を使って分析せよ」という課題で、レポートを書いていたのを思い出した。

 ただ、「お前に書けるのか?」と問われれば、今の私には出来ないので、本書の整理されたナレッジは私にはそれなりに有用だった。自分の中でも評価が割れる1冊だった。

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ロンドンマラソン テストラン

2012-04-16 23:02:14 | ロンドン日記 (日常)
 先週末は、天気こそまずまずだったけど、気温が4月とは思えない寒さ。一時の暖かさがウソのようでした。

 土曜日に、いよいよ1週間後になったロンドンマラソンの最後の調整として、ロンドン東部のカナリーワーフからゴール地点のバッキンガム宮殿前までのラスト10キロちょっとをテストラン。カナリーワーフは高層ビルが立ち並ぶ新都心の趣ですが、そこからロンドン塔までの5キロほどの途中には結構怪しげなエリアも通ります。

 そして、ロンドン塔からはテムズ川沿いを走り、国会議事堂のところで左折して、セントジェームスパークを右横に見ながら、そのままバッキンガム宮殿へ。昨年はこのテムズ川沿いの40キロ地点で応援した際(こちら→)の大観衆を思い出しながら走りました。来週はこの辺りを走る時は、自分はどうなっているのだろうか?運動会を迎える小学生のように、期待と不安が入り混じった気持ちです。
 
 写真はゴール地点近くのバッキンガム宮殿前。花壇の花が綺麗に咲きそろっていました。


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ミュージカル ”レ・ミゼラブル” (クイーンズ・シアター)

2012-04-14 18:47:06 | ミュージカル、演劇 (in 欧州)
 初日以外は天気が悪く全く冴えないイースター連休だったが、幸運にも連休最終日に「レ・ミゼラブル」のチケットをTKTSで36ポンド(定価65ポンド)で入手。渡英して最初に見たミュージカルを3年ぶりに見に行くことができた。




 
 改めて25年のロングランは伊達ではないと納得した。テンポの速いストーリー展開・迫力満点の音楽、派手な仕掛けは無いが十分に雰囲気を伝える演出が非常に良く出来ていて、3時間近い上演時間があっという間に終わってしまった。

 出演者の中では、Javert役のFraserFantine の歌唱が圧倒的にすばらしく、歌では主役Jean Valjean役の David Shannonの上を行っていた。伸びる高音と圧倒的な声量はマイクなしで聴きたいと思うほど。David Shannonも演技はすばらしく、歌も良い。
 女性陣は、Carolineの SheenThénardierはとっても美形だが歌は可も無く不可もなく、CosetteのLisa-Anne Woodは今ひとつ存在感が薄かった。Eponine役のAlexia Khadimeのコブシの効いた歌唱は、どっかで聴いた覚えがあると思ったが、2年前に見た「Wicked」西の魔女エルファバ役だった。彼女は演技も溌剌として、私的にはとっても好み。





 クイーンズシアターは、他のミュージカルの劇場に比較して、こじんまりしている気がするが、舞台と観客席がとても近く、アットホームな雰囲気を醸し出している。好感度の高い劇場である。

 天気に恵まれない連休だったが、締めくくりはとっても良かった。


Cast

Jean Valjean David Shannon
Javert Hadley FraserFantine
Caroline SheenThénardier
Cameron BlakelyMadame
Thénardier Katy Secombe
Eponine Alexia Khadime
Cosette Lisa-Anne Wood
Enjolras Liam Tamne
Marius Craig MatherEnsemble

Creatives

Producer Cameron Mackintosh
Author/Dramatist Alain Boublil
Book & Music Claude-Michel Schönberg
Lyricist Herbert Kretzmer
Adapation & Direction Trevor Nunn
Adapation & Direction John Caird
Production Designer John Napier
Lighting Designer David Hersey
Costume Designer Andreane Neofitou
Musical Staging Kate Flatt
Sound Designer Mick Potter
Sound Designer Andrew Bruce
Orchestrations John Cameron
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ドーヴァー旅行2日目/ 小雨と風の中のウォーキング

2012-04-13 23:02:39 | 旅行 イギリス
 2日目。この日の天気は、前日よりも更に悪化。朝から小雨がぱらつく、肌寒い天気でした。

 Mikiさんお勧めのドーバーの西側の要塞Walking(こちら→)にも魅かれていたのですが、長い距離を歩いて、トレーニング代わりとしたかったので、Doverから隣町のDealまでの10マイルのWhite Cliffs Walkにチャレンジすることにしました(ウォーキングコースの案内はこちら→)。

 フランスに出入りするフェリーの港を見下ろしながら、ナショナルトラストが整備したウォークパスを歩きはじめます。




 白亜の崖の上を歩くとは聞こえはいいですが、1メートル左横は絶壁。風が強い日で、突風でも吹いたら、あっという間に御陀仏間違いなし。正直、足を震わせながら歩きます。


 

 天気さえよければ、海の青、草の緑、岸壁の白の色々が、青空の中に溶け込んで、さぞかし素晴らしい風景なのでしょうが、この日はそうした輝く春の日を夢見ながら、苦行のようにひたすら前へ。誰にも行きあわないのも、ちょっと不安にさせてくれます。




 SouthForeland Lighthiouse。灯台があっても、この霧雨交じりの天気では、用を足さないでしょう。


 行程の1/3のところで、パブで休憩。ブリテン島で最もフランスに近いパブとのことです。確かに、ここでは私のOrange社の携帯電話が、フランスの電波をキャッチしていました。ロンドンにかけたら国際電話になるところだった・・・




 海岸から白壁を見上げる。


 出発から12キロぐらい歩いたところで、やっと丘を下りて、人里へ。


 海岸線にそって真っすぐ伸びる道をテクテク歩き。この周辺の海岸地域はその経済的、戦略的重要性からヘンリー8世が、防御用の城塞を築いた歴史的な地域だそうです。



Walmer Castle


Deal Castle


 4時間歩いてやっと目的地Dealへ。イースターのこの日は、街のハイストリートのお店も9割閉店。かろうじて、パブや飲食店はオープンしていたので、頑張ったご褒美に、レストランで昼食。小雨にぬれて冷えた体をワインで温めました。


 

 コースは良かったのですが、雨には勝てません。天気に良い日に、再度チャレンジしたいと思います。


コメント (4)
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イースターのドーヴァー旅行

2012-04-10 23:52:36 | 旅行 イギリス

 イースター休暇の4連休。唯一のイベントが、ブリテン島南東の外れにある港町ドーヴァー(ドーバー)ヘの1泊旅行。ドーヴァーはロンドン・セントパンクラス駅からハイスピードトレインで1時間ですから、十分日帰り圏内なのですが、物の散らかったフラットから抜け出したく、1泊でゆっくりすることにしました。

(セントパンクラス駅発のハイスピードトレイン)


 お昼前に到着したのですが、生憎、天気は小雨がぱらつくすっきりしない天気の上に、気温もロンドンよりもずっと寒い。天気の悪さのせいか、街中を散策しても、どんよりしていて、それほど特筆すべきところはない感じで、何か場所のチョイス間違えたかな?と、早々と後悔の念。市内中心部の観光スポット、博物館、ローマ人の家なども悪くは無いのですが、かといって・・・・・・という感じ。

(ドーバー博物館の目玉 青銅器時代の木船)


(ローマ人の家 イギリスでも保存状態が最も良い遺跡だそうです)


(街で見かけたドーナツ屋さん その場で揚げてくれるホカホカドーナツは一つ35ペンス)


 やっと15時過ぎに雨が止んだので、街の西端の丘の上に建つ、ドーヴァーの目玉ドーヴァー城へ出かけました。ドーバー城は、ブリテン島に侵攻したローマ人が灯台を建てた地に、11世紀頃からブリテン島の前線として砦が築かれて以降、1958年まで兵が駐屯した現役の城塞だったところです。

(街を見下ろすようにそびえるドーバー城)


 ドーヴァー城は流石、観光の目玉だけあって、一見の価値があります。城内を散策して、まず、その広さに驚きました。イギリスで幾つかの城を巡りましたが、規模の大きさは有数だと思います。山の上にありますから、坂道をよっちら上るのはしんどいですが、良い運動になります。また、城から見渡すドーバー海峡の眺めの素晴らしいこと。雨こそ止んだものの、生憎のくもり空で視界はそれほど良くないのですが、それでも大陸までが肉眼ではっきりと映ります。フランスへ出港したり入港したりするフェリーを観るのも、とっても長閑な気分です。

(城の立つ丘から見るドーバー港 フランス行きのフェリーが行き来しています)


(いよいよ本丸へ)


(本丸の塔から見下ろす景色)




(本丸内の部屋)


(右がローマ人が建てた物見塔 左はサクソン人が建てた教会)


 ここまではイギリスの城めぐりと大きくは変わらないのですが、ドーバー城ならではの一押し必見新アトラクションがあります。Secret Wartime Tunnelsという、第2次世界大戦中にイギリス軍がドーバー城が立つ崖をくり抜いて作った防空壕です。ここを1時間かけて廻るガイドツアーがあるのです。このツアーが、とっても面白く、トンネル(防空壕)の中を巡りながら、1938年のドイツのオーストリア併合から始まって、1940年のダケルクの撤退作戦までの戦史を映像で紹介してくれます。

(トンネル入り口です)




 特に、このアトラクションがダイナモ作戦と名つけられているように、ドイツ軍の侵攻に破れ、フランスのダケルクから英・仏の32万の兵士を撤退させたダイナモ作戦(コードネーム)は、詳細に映像で紹介されます。この作戦の最前線がこのドーバー城であり、司令部がまさにこの地下トンネルにありました。ガイドのお兄さんによると、私たちが廻ったのは、トンネルの10分の1程度にすぎないということでしたが、当時の通信室、指令室、司令官室などが保存してありますが、当時の緊張感がそのまま伝わって来ます。

(ダイナモ作戦の成果)


 ツアーが終わり、外界に出て、再びドーバー海峡を前にすると、ぼんやりと長閑な気分に浸って眺めていた1時間前とは、同じ海が全く違って見えるから不思議です。

 (このツアーは20名程度のグループで、15分おきにトンネル内に入場していきます。私がドーヴァー城に入った際は、連休のせいもあったかもしれませんが、30メートル程度の行列になっており、入場に90分は待つだろうと言われました。なので、先に城めぐりを先行させたのですが、帰り際に並んだ時は30分程度の待ち時間で済んだものの、17時からの最終のツアーでした。このツアーを見逃すとドーバー城の面白さは半減していただろうだけに、訪問される方は、時間配分や優先順位を意識されておいた方が良いかと思います。もう一つ、このトンネル内にある戦時病院のツアーもあるようなのですが、私は時間切れでした。)

 トンネル内は撮影禁止なので、写真はないですが、下記のナショナル・ヘリテージのHPが詳しいです。(こちら→
 ドーバー城を降りてきたところにあるパブ。すごくアットホームな感じで、いい雰囲気のパブでした。

 

 ※なお、今回のドーバー旅行にあたっては、Mikiさんのレポート(→)を大変参考にさせていただきました。この場を借りて、お礼申し上げます。
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