その後の『ロンドン テムズ川便り』

ことの起こりはロンドン滞在記。帰国後の今は音楽、美術、本、旅行などについての個人的覚書。Since 2008

春の房総週末旅行2/3(民宿まぐさに泊まる)

2018-03-31 07:00:00 | 旅行 日本
 今回の房総旅行は、会社の友人に勧められた民宿への宿泊が目玉でした。新鮮でお美味しい魚が食べきれないほど供されると聞き、それが何よりの楽しみで訪れたわけです。

 民宿に泊まったのは何年ぶりだろう。少年時代、父親に釣りに連れられて、良く海や湖近くの船宿にお世話になったり、金欠学生時代にスキーで泊まって以来ですね。民宿まぐさは、親戚の家を訪れたような、海辺の丘陵地帯に佇む田舎の一軒家でした。



 玄関口で迎えてくれた女将さんは、丁寧かつとっても愛想の良いお方。案内された部屋は6畳一間の和室で決して広いとは言えませんが、二人なら十分です。宿泊用の部屋は全部で4部屋ほどありそう。窓を開けると波が打ち寄せる音が微かに聞こえてきます。荷物を降ろし、少し休んでお風呂へ。

 お風呂はいわゆる普通の家族風呂が2つあり、宿泊者が交代で入るシステム。旅行先で足を曲げて湯船に浸からなくてはいけないのは、少々悲しいものがありますが、民宿ですからね。

 そして、お風呂から上がると、さっそくお目当ての夕食タイム。夕食は寝室の2階から1階に降りて頂きますが、食事用の個室が当てがわれますので、ゆっくり落ち着いて自分たちのペースで頂くことができます。料理は聞いていた通り素晴らしいものでした。二人では食べきれないほどの船盛のお刺身に加えて、焼き魚に煮魚にフライ。そして、魚介の卓上一人鍋など、いわゆる家庭料理ではありますが、魚の調理法が網羅されているのではと思うほど。そして、利き酒師の資格を持つご主人お勧めの地酒と一緒に。もう幸せいっぱいです。



 途中でマスターが「ちょっと残ったので宜しければお飲みになってください」と、日本酒一合弱を追加でいただき、ほろ酔い状態にさらにダメ押しで、いい気分この上なし。たっぷり食べて、呑んで、この日は9時に寝てしまいました。

 そのおかげか、翌朝は5時に目が覚めました。近くの鵜原湾に面する砂浜を散歩。リアス式海岸の間にあるこの砂浜は、『日本の渚・百選』に選ばれているとのこと。こうした海辺の散歩はとっても久しぶりでした。朝方は空気が澄んでいて、空気がおいしい。



 犬と一緒に散歩する地元のお婆さんから、浜辺に打ち上げられたワカメを貰ったり、のんびりしていいですね。



 散歩から戻ると、朝ごはん。夕食ほどではないもののこちらもボリュームたっぷりです。


《鯵尾の干物のおおきいこと》

 狭めのお風呂を除いては、非の打ちどころのない民宿でした。料理はおいしいし、宿のご夫婦も感じ良し。1年に一度は来てみたい宿です。
 
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春の房総週末旅行1/3(いすみ鉄道に乗る)

2018-03-29 07:30:00 | 旅行 日本
 3/17-18の週末に春を感じに房総地方に出かけました。友人お勧めの勝浦の民宿へのお泊りです。

 初日のアトラクションはいすみ鉄道。千葉県房総半島のいすみ市の大原駅から大多喜町の上総中野駅まで、26.8キロ、14駅を走る第3セクターの鉄道。一時は廃線の危機にあったけども、歴史ある城下町と、自然豊かな沿線の町並みの中を走ります。


⦅太原駅⦆

大原駅~上総中野駅の間、一日どこでも乗り降り自由なフリー乗車券を1000円で購入して、列車へ。




《列車のつり広告も素朴》


⦅線路脇に咲き乱れる菜の花が美しい⦆


《絵葉書のよう》

 線路の枕木にはいすみ鉄道応援プレートが張り付けてありました。



 ほぼ中間地点である大多喜駅で途中下車。房総の小江戸と呼ばれる大多喜町の旧市街を急ぎ足で散歩。


《旧道沿いに残る江戸時代の商家の家》


《徳川四天王の一人、本多忠勝が築城したとされる大多喜城》

 片道系1時間弱で終点上総中野駅。ここで小湊鉄道に乗り換えると、五井駅まで行け、列車で房総半島を横断できます。私はここで折り返し。


《終点の上総中野駅からの線路風景》

 帰路はほぼ居眠りでしたが、途中で被り物したおじさんがポップコーンを売りに来ました。いいなあ~。


 ゆっくり、のんびりと時間が流れるローカル中のローカル線。ここならではの良さがあります。是非、一度お楽しみください。頑張れ、いすみ鉄道!


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演劇 『赤道の下のマクベス』(作・演出:鄭 義信)@新国立劇場小劇場

2018-03-25 07:00:00 | 演奏会・オペラ・バレエ・演劇(2012.8~)


 超ヘビー級の作品。節々にユーモア、希望、愛が差し込まれるものの、絶望的な状況、運命にはあがなえない。重く滴る涙なしには観ることができない。アウトコース低めに150キロで砲丸を投げ込まれたように、手が出ない、くすむしかない。

 1947年、シンガポール、チャンギ刑務所で、第二次世界大戦のBC級戦犯として収容されていた日本人と元日本人だった朝鮮人が織りなす交流の物語である。上官の命令に従って捕虜を強制労働に駆り立てた朝鮮人監視員たち、ゲリラであることが疑われる住民を殺した日本人兵士、命令を下す側であった日本人将校など、絞首刑の判決を受け執行を待つばかりの囚人たちの多種多様な感情、想いが表現される。生への渇望、故郷の家族への思い、自己の行為への罪悪感・贖罪、上官へのたてた憎悪、祖国は解放されながらも自身は帝国協力者として裁かれる不合理、複雑な要素が様々に絡み合う。

 どの俳優も個性豊かで持ち味を十二分に出し切っていたが、中でもマクベスを愛し、常に明るく未来を見る朝鮮人 朴南星(清本南星)を演じた池内博之の熱演が光る。「なぜマクベスはダンカンを殺したのか。魔女や妻にそそのかされたからではない。自ら破滅の道を選んだのだ!そして俺も、上官の命でも、朝鮮人だからでもなく、この道を選んだのだ」(私の記憶によるので、正確ではない)と叫ぶ迫力は、凄まじい。

 この作品、韓国で上演されたものを一部修正して日本で上演されているとのこと。どこにどう修正が加わったのか、興味があるところではある。歴史の重み、民族の思い、人間の憎悪と愛、罪と罰、どのテーマを重く受け取るかは、観る人それぞれだろう。演劇というメディアの深みを見せつけられた舞台だった。


作・演出:鄭 義信
美術:池田ともゆき
照明:笠原俊幸
音楽:久米大作
音響:福澤裕之
衣裳:半田悦子
ヘアメイク:川端富生
擬闘:栗原直樹
演出助手:城田美樹
舞台監督:北条 孝

キャスト
池内博之 浅野雅博 尾上寛之 丸山厚人 平田 満  
木津誠之 チョウ ヨンホ 岩男海史 中西良介
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ガレキの太鼓『地上10センチ』 初日 @こまばアゴラ劇場

2018-03-19 07:30:00 | 演奏会・オペラ・バレエ・演劇(2012.8~)


 昨年の「他重人格」に続いて、舘そらみさんの作品を観る。「ガレキの太鼓」という舘さんが主宰する劇団の復活公演とのことだ。

 話は、とある若者夫婦の夫くんが、余命宣告をされて、過去に例がない最高の葬式がやりたいということで、自分の葬式のリハーサルをやることにした。そこで巻き起こる一連の物語。「死」や「葬式」というテーマは重いが、真面目に面白い演劇である。

 まあ幸せなことだが、普段自分の「死」「葬式」なんて考えたこともないから、目の前の舞台で繰り広げられる芝居を観ながら、常に「自分だったら・・・」を問う自分がいた。毎日を生きるってことは、毎日「死」に向かっていることでもあるんだよね。

 公演初日だったけど、俳優さんたちの落ち着いた熱演が目を引いた。特に、奥さん役の村井まどかさんは、やや幼稚とも見える夫の希望に誠心誠意応えようとする様子が切ない。「他重人格」にも出演されていたが、そこでも、誠意をもって夫とコミュニケーションを図る若奥さんの役柄をやっておられたが、とっても嵌っている。

 普段考えないようなことを考える興味深い演劇だったのだけど、あえて、ちょっと物足りなさを言うと、余命宣告をされ、葬式のリハーサルをやりたいと言い出す夫くんである。葬式のリハーサルは面白いテーマ設定だけど、どうも、「葬式のリハーサル」なるものが余命宣告を受けた人がするリハーサルと言うよりも、むしろまだそんなことを考えたこと無いような人が行うリハーサルのようだった。余命宣告されているには、なんかリアリティが無いのである(少なくとも、無いように見える)。自分の周りに余命宣告された人が身近にいたわけでは無いので、あくまでの想像の域を出ないのだけど、自分が余命宣告されたら自分の葬式のことよりも、残された日々をどう生きるかを考えるんではないかなあ~

 舞台を劇場の真ん中に置き、観客が四方から舞台を囲むような配置は向かいや左右の観客の反応も分かり、一体感が出る。観客席は2列しかなく、ほぼ満席であるもののキャパは総勢50名強ほどのアットホームな雰囲気だからなおさらだ。目の前で芝居が展開し、俳優さんの息遣いまでが伝わってくる。このライブ感の興奮は、ちょっと大劇場のオペラや芝居ではとても味わえない楽しさだった。


⦅観劇後、劇場近くの偶然入った定食屋さんのヒレカツ定食。目茶旨かった⦆

※以下、「ガレキの太鼓」HPから抜粋

【復活公演】3年の沈黙を破り、再始動!この世界の胸ぐら掴んで抱きしめる。

■あらすじ
「いつ死ぬかわかんないもんね」
「でも明日も生きる気しかしないんだけど」
まだまだ生きるくせに俺たちは、最高の葬式の夢を見たーー。
小劇場から尻尾巻いて逃げ、いつの間にか映像脚本やWEBコラムばかりを書いていた舘そらみがホームグラウンドで膝を震わせながら数年ぶりに筆を取るハイテンション冠婚葬祭ロードムービー。
(本作は演劇公演です)
​地上10センチ
作・演出 舘そらみ

■出演者
石川彰子(青年団)
海老根理(ガレキの太鼓)
岡慎一郎
尾﨑宇内(青年団)
小瀧万梨子(青年団/うさぎストライプ)
小林樹(カムヰヤッセン)
酒巻誉洋
日比野線(FunIQ/劇団半開き)
村井まどか(青年団)

■日時  2018年3月8日(木)-18日(日)
■会場  こまばアゴラ劇場
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やっぱりホフマン! 新国立オペラ 『ホフマン物語』

2018-03-16 08:00:00 | 演奏会・オペラ・バレエ・演劇(2012.8~)


 やっぱり「ホフマン物語」は楽しい。個人的好きなオペラの5本の指に入る作品だが、夢、現実、酒、女、歌と人生に大切な要素が一杯詰まっている。

 同じプロダクションを3年前に見ていて、どんな舞台かはすっかり忘れていたが、なんかゴテゴテした感じがしてしっくりこなかったのだけは覚えていた。それが今回はとっても舞台が映えて美しいとの印象を持った。同じ演出なのに不思議なものだ。各幕其々趣向が異なっていて、幕が上がるのが楽しみだった。

 歌手陣はとりわけ目立った人はいなかったが、どのソリストもしっかり仕事をしていた。存在感と言う意味では、4人の悪役を演じたトマス・コニエチュニーさんが魅力ある低音に加えて、いかにもの悪人振りで、舞台が引き締まった。ニクラウスのレナ・ベルキナさんは秀目麗しい容貌がズボン役にぴったりで、とっても似合っていた。主役ホフマンのディミトリー・コルチャックさんは、歌は綺麗なテノールで良かったけど、主役としてのアウラが弱かった気が。私が勝手に持っている「酔っ払い詩人ホフマン」のイメージとは離れていて、ちょっと真面目すぎるんじゃないかと思ってしまった。

 日本人歌手陣も素晴らしく、3人の歌姫は姫たるに相応しい歌唱と演技だったと思う。特に砂川さんのアントニアには泣かされた。ちょっと役柄は失念したが(ごめんなさい)、男性陣も要所要所で良い仕事をされていて、耳が引き寄せられた。

 たまたま、フランス人っぽい人が隣席だったので、幕間に「失礼ですが、フランスの方ですか。」と聞いたら、オランピアのように「Oui」とは答えてくれなかったが、「Yes」とのことだったので、「日本人歌手のフランス語の発音はどう?」って聞いてみたら「Very Well」とのことだった。まあ、よく考えたら、あの場で「良くない」と言う人はいないだろうけど。

 セバスティアン・ルランさん指揮の東フィルも安定した演奏。個人的に音楽も大好きなので、十分に楽しませてもらった。

 やっぱり、「ホフマン物語」はいい。



2018年3月11日(日)

スタッフ
指 揮:セバスティアン・ルラン
演出・美術・照明:フィリップ・アルロー
衣 裳:アンドレア・ウーマン
振 付:上田 遙
再演演出:澤田康子
舞台監督:斉藤美穂

キャスト
ホフマン:ディミトリー・コルチャック
ニクラウス/ミューズ:レナ・ベルキナ
オランピア:安井陽子
アントニア:砂川涼子
ジュリエッタ:横山恵子
リンドルフ/コッペリウス/ミラクル/ダペルトゥット:トマス・コニエチュニー
アンドレ/コシュニーユ/フランツ/ピティキナッチョ:青地英幸
ルーテル/クレスペル:大久保 光哉
ヘルマン:安東玄人
ナタナエル:所谷直生
スパランツァーニ:晴 雅彦
シュレーミル:森口賢ニ
アントニアの母の声/ステッラ:谷口睦美
ほか

合 唱:新国立劇場合唱団
管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団

20th Anniversary
2017/2018 Season

Music by Jacques OFFENBACH
Opera in 5 Acts
Sung in French with Japanese surtitles
OPERA HOUSE

Conductor Sébastien ROULAND
Production, Set and Lighting Design Philippe ARLAUD
Costume Design Andrea UHMANN
Choreographer UEDA Haruka

Cast
Hoffmann Dmitry KORCHAK
Nicklausse, La Muse Lena BELKINA
Olympia YASUI Yoko
Antonia SUNAKAWA Ryoko
Giulietta YOKOYAMA Keiko
Lindorf, Coppélius, Miracle, Dapertutto Tomasz KONIECZNY
Andrès, Cochenille, Frantz, Pitichinaccio AOCHI Hideyuki
Luther, Crespel OKUBO Mitsuya
Spalanzani HARE Masahiko
Schlemil MORIGUCHI Kenji
La voix de la mere, Stella TANIGUCHI Mutsumi

Chorus New National Theatre Chorus
Orchestra Tokyo Philharmonic Orchestra
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第6回古河はなももマラソン完走記

2018-03-13 08:30:00 | ロードレース参戦 (in 欧州、日本)
 「平坦で走りやすいよ~」という出場経験者のコメントに誘われて、職場のランナー仲間たちと初めて出走。その言葉通り、多少の緩やかなアップダウンはあったものの、押しなべてフラットなコースで、寒くもなく暑くもない天候条件も重なり、4年ぶりの自己新記録を更新できた大会となりました。

 自宅を6:20に出て宇都宮線野木駅に8:20過ぎに到着。もっとも混雑する時間になってしまったため、野木駅から会場までのシャトルバスに乗り込むのに30分近くかかってしまい、会場に到着したのは9時過ぎ。更に、着替えやトイレに意外と時間を要し、スタートエリアに並べたのは、スタート10分前。ろくに準備運動もできず、かなり慌ただしいスタートなりました。





 前評判通り、平坦なコースです。そのためか10キロ地点経過が53分台、20kが1時間45分台とちょっと早すぎるぐらいでした。練習ではキロ5分30秒を基本ペースに走り込んできたのですが、やっぱり本番レースになると、周りのランナーにも影響されてどうしても早めのペースになってしまいます。
 
 20-30キロは、「後半10キロに備えて力を蓄えるところ」と自分に言い聞かせて走ります。

 それにしても、聞いていた通り、コース自体はいたって単調です。折り返し地点が設けられていて、エリートランナー達とすれ違う箇所が何か所かあるのは楽しみですが、景色を楽しんだり、目立ったランドマークはなく、正直退屈してしまうのは事実です。ただ、沿道の応援してくれる人やボランティアからの声援は熱く、力を貰えました。







 30k地点は2時間38分台、35キロ地点は3時間5分台と多少ラップは落ちたものの、余力はある感じでした。途中空腹が気になったけど、丁度いいところにアンパンの給食があったので、ずいぶん助けられました。流石に40キロ地点では5キロのラップが28分台に落ちましたが、これまでの大会での慰労に比べればかなり良い方。太陽が出てきて、気温がドンドン上がっていくのがわかりましたが、そのまま「楽勝」「楽勝」と呪文のように唱えながら、脚を前に進めました。結局、記録は3時間45分台でガッツポーズでゴール。





 この大会、ちょっと地味ですが、運営はしっかりしていますし、走やすさはNo1を競うと思います。首都圏からも十分日帰り圏内ですし、来年もここで記録を狙いたいと思います。
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特別展「仁和寺と御室派のみほとけ-天平と真言密教の名宝-』 @東京国立博物館

2018-03-09 08:00:00 | 美術展(2012.8~)


 実に充実した企画展で、私にしては珍しく会期中に前半と後半に1回ずつ計2回足を運んだ上に、図版まで買ってしまった。

 恥ずかしながら仁和寺という京都の寺は初めて知った。建立した宇多法皇以来、仁和寺は天皇家ゆかりで、ここを総本山として全国約790箇寺で形成される真言宗の一派を形成している。この展覧会が凄いと感じたのは、その仁和寺の秘宝の仏像や宝物を多数展示しているだけでなく、御室派と呼ばれる全国の寺から、普段は公開されない秘仏像らを惜しみなく展示しているところにある。

 展示後半のこれでもかと言わんばかりの仏像パレードの迫力にはただただ圧倒される。一つ一つの仏像から発出されるアウラがすさまじいので、観る方もエネルギーがいる。時間をかけて一つ一つ丁寧に見たいのだけど、集中力の勝負だ。

 会期後半から展示された葛井寺の国宝・千手観音菩薩像は展示の目玉だけあって、死ぬまでに一度は観ておきたい仏像とはこのことだろうというぐらい、精巧な作りで彫られた千本の手の異様さもさることながら、観音様の静かで平和な表情に癒される。一つの宗教体験とまでいえそうだ。


⦅仁和寺の観音堂を展示室に再現!このコーナーは写真撮影可能⦆







 前半は書とか絵が中心。弘法大師空海直筆の「三十帖冊子」が展示してあったのも感動だった。ただ、薄学の私には、小さくこちょこちょと書いているようにしか見えない空海の書の良さは、理解できなかったけど・・・。

 今回の展示の多くが、所蔵の寺などでは、普段は非公開になっていることが多いとか。紙と木の文化である日本では、止む得ないこととは思うが、あまりにも勿体ない。もう少し日本の貴重な文化財を広く公開することは出来ないものなのだろうか。

 今週末で会期終了なので、まだの人は急いで。

 最後に蛇足だが、2回目の来館は夜間開館を狙ったが、夜間開館は9時までなのは本当にありがたかった。

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武内孝善,‎ 川辺秀美 『カラー版 空海と密教美術』 (カラー新書y、2011)

2018-03-03 10:51:51 | 



 お正月に空海を描いた小説を読んでその人となりに興味を持った。もう少し知りたいと思い、空海だけでなく、関連の美術についても触れてある本書を図書館で見つけ、借りて読んでみた。ネット情報だと、丁度、本書が発刊された2011年に同名の展覧会が開かれていたようなので、イベント便乗本かもしれない。

 中身は極めて分かりやすい。カラー図表入りで代表的な密教美術を紹介してくれているし、空海についても、基本的な仏教上の位置づけや一生の足取り、その思想などが記述されている。私にとっては、小説で読んだ人間空海を客観的に捉える機会となった。

 ただ、これで空海や密教が分かった気になったら、それこそ空海さんに怒られるだろうから、もう少し掘ってみたい。

 京都には何度か行っているが実は東寺には行ったことが無い。ましてや、高野山金剛峯寺は近づいたこともない。行っておきたいリストに加えておこう。


第一章 密教美術から空海を読み解く
第二章 密教は仏教のなかでどのような位置づけにあるのか
第三章 空海は密教をどうして取り入れようと考えたのか、密教は日本でどのように広まったのか
第四章 史実から迫る空海の実像
第五章 空海の思想とはどのようなものなのか
第六章 知っておきたい空海の名文とその背景
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