N響 、下野竜也によるオール・シューマン・プログラム。
昨年のショパン国際ピアノコンクールで4位入賞した小林愛実さんが出演されるためか、蔓延防止期間でありながらも会場は8割がた埋まっていました。客層も、普段よりも若い人が多いような気が。
プログラム2曲目のシューマンのピアノ協奏曲。ワインレッドのドレスで現れた小林さん。小柄ながらも、落ち着いた所作に穏やかなオーラを感じました。この曲、2020年11月に真央君とN響で聴きましたが、小林さんのシューマンは、また一味違った印象でした。
第1楽章はスケール感あるがっちりした演奏。意思を感じる音色です。第2楽章は一転して柔らかで優しく美しい。ロマンティックなメロディをじっくりと聴かせてくれます。そして第3楽章は一気呵成に畳み込みます。一貫して装飾的なパフォーマンスなく、楽曲の良さをそのまま聴衆に届けてくれる音楽です。オケとの掛け合い、息の合わせ方もぴったりで、「フランツ・リストの2作品とともに19世紀前半の展開を総括する重要な作品」(プログラムノートより)というこの曲を堪能しました。
アンコールはショッパンからワルツ変イ長調 作品42。「おー、これぞショッパン」と感じる伸び伸びした演奏で、ヨーロッパの宮廷の一部屋でピアノを聴いているような感覚を味わいました。
「オミクロンが暴れている中、池袋まで来た価値あった。これだけで十分」と思っていたところでしたが、後半の交響曲第2番は、そうは問屋が卸さんぞと言わんばかりの、前半を上回る興奮でした。
下野さんの熱量高い指揮の下、優しく美しく響くオーボエ、フルート、クラリネットらの木管陣、重心しっかりした厚い弦陣のアンサンブルが絶妙に組み合わさって、スケールあり、緻密さありの音楽。単純な比較はすべきではないのでしょうが、昨年、同じ曲を下野さん指揮で聴いた東響の演奏も良かったのですが、N響は一枚上手と唸らざる得ない感じです。シューマンの交響曲2番を聴いてこれほど胸打たれたのは初めて。喜ぶべきか、悲しむべきかわからない、ピアノ協奏曲の余韻が上塗りされてしまった素晴らしい演奏でした。大ブラボー。
ありそうでない「シューマンの創作上の充実期を証する作品群」(プログラムノート)の儒実のプログラムと演奏。満足感一杯でホールを後にしました。
第1951回 定期公演 池袋Aプログラム
2022年2月6日(日)開演 2:00pm
東京芸術劇場 コンサートホール
指揮:下野竜也
ピアノ:小林愛実
シューマン/序曲、スケルツォとフィナーレ 作品52 —「序曲」
シューマン/ピアノ協奏曲 イ短調 作品54
シューマン/交響曲 第2番 ハ長調 作品61
No. 1951 Subscription (Ikebukuro Program A)
Sunday, February 6, 2022 2:00p.m.
Tokyo Metropolitan Theatre
Tatsuya Shimono, conductor
Aimi Kobayashi, piano
Schumann / Overture, Scherzo and Finale Op. 52 − Overture
Schumann / Piano Concerto A Minor Op. 54
Schumann / Symphony No. 2 C Major Op. 61