その後の『ロンドン テムズ川便り』

ことの起こりはロンドン滞在記。帰国後の今は音楽、美術、本、旅行などについての個人的覚書。Since 2008

ギリシャ国立オペラ座/ クレタの女 (The Cretan Girl)/スピロ・サマラ

2011-11-29 22:18:41 | オペラ、バレエ (in 欧州)
(アテネシリーズもいよいよやっと最終回。長くお付き合い頂いた方、ありがとうござました)

 前夜のコンサートに加えて、土曜日の夜はオペラを見に行きました。ギリシャ国立オペラ座という「ギリシャの作曲家や音楽家にとっての檜舞台であり、あのマリア・カラスがデビューした舞台」(ギリシャ観光局)です。

 カラスがデビューした舞台というだけでも期待が膨らみます。しかし・・・・・、オリンピアシアターと言う名がついたオペラハウスに到着したら、かなりがっかり。「これでは、日本の過疎の町の映画館と変らんではないか」という貧相な正面。これなら、私の日本の地元の市民公会堂のほうがずっと立派です。



 でも、劇場内は狭いながらも、結構きれいでホッとした。ちょっと安っぽいけど。観光客っぽい人は見かけず、代わる代わる挨拶を交わしている風景を見ると、殆どが地元の人っぽくて、地元のためのオペラっていう雰囲気はアットホームな感じがしていいです。この日は、初演の初日で、テレビカメラも入り、結構、華やいだ雰囲気でした。



 

 オペラの作品は、ギリシャの作曲家スピロ・サマラの最後のオペラ「The Cretan Girl」。もちろん、私は初めてです。それでも、歌やセリフはイタリア語で、ギリシャ語の字幕がついていた。なので、愛国を背景にした一種のラブコメディであることは想像はついたものの、具体的な話の筋は殆どわからずじまいでした。



 でも、音楽はフォークダンス的なメロディや、耳に馴染みやすい軽快な音楽が中心で、とっても楽しめました。歌手陣もロイヤルオペラ等に比べるともちろん劣るものの、取り立てて不満もありません。むしろ合唱が多用されていて、美しいし、盛り上がります。

 「2回の休憩を挟んで、終演は11時」と係りのお姉さんから聴いたので、翌日のマラソンに備え、2回目の休憩時に退館。翌日のマラソンがなければ最後まで見たかったです。


Title:The Cretan Girl
When:12.11.11 - 04.12.11
Where:OLYMPIA THEATRE –

Premiere 12 November 2011

The Cretan Girl
Spyros Samaras

Libretto: N. Laskaris & P. Dimitrakopoulos

New production

Petros Zoulias' timeless direction brings us back to a Crete under Venetian rule in Spyros Samaras’ comic opera, The Cretan Girl, which was the composer’s last work. A charming mix of love and patriotism, The Cretan Girl is bound to win over fans of operetta with its great melodies. Through the sound of shots being fired and through kisses, songs and traditional Cretan dances, Crete celebrates its revolution and the key players celebrate the fact they can at last come together.

Conductor Elias Voudouris
Director, Text Editor Petros Zoulias
Set – Costume Designs Anastasia Arseni
Lighting Design Katerina Marangoudaki

Αρετή Γεωργία Ηλιοπούλου
Κοντέσα Μαρία Μητσοπούλου
Δούκας Γιώργος Ματθαιακάκης
Δούκισσα Τζούλια Σουγλάκου
Παύλος Γιάννης Χριστόπουλος
Μιχάλης Δημήτρης Σιγαλός
Φουρλάνος Κωστής Ρασιδάκης
Δον Πλάτσιντο
Παύλος Μαρόπουλος


featuring the G.N.O Orchestra, Choir and Corps de Ballet

Place:OLYMPIA THEATRE

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アテネ博物館シリーズ (国立考古学博物館/アゴラ博物館)

2011-11-27 17:28:49 | 旅行 イギリス外
【国立考古学博物館】



 新アクロポリス博物館と並んで、素晴らしいのが国立考古学博物館。紀元前7世紀から紀元後5世紀に至るまでの、ギリシャ国内の様々な地域での出土品が展示してあります。その規模、質にはただただ驚愕。その洗練された美しさ、迫力には息を吞むばかりでした。3時間ぐらいかけましたが、それでも、とても全てを見切れるわけにいかず、冬季は午後3時に閉館と言う極めてギリシャ的な時間設定に、無念の退館となりました。

(印象に残ったいくつかの作品を)
 

「アルテミシオンの馬乗り」




「ポセイドンのブロンズ像」




【アゴラ博物館】
紀元前150世紀頃建造されたアタラスの柱廊の跡にアゴラ博物館があり、アゴラでの出土品が展示されています。こじんまりとした博物館ですが、その展示品のレベルの高さは間違いなく一級品です。





ガイドブックを見るとまだまだビザンチン博物館やキュクラデス(キクラデス)博物館、ベナキ美術館など、まだまだ面白そうな美術館、博物館が沢山あるのですが、老後の楽しみにとっておくことにしました。


(付録)
 3日間のアテネ滞在で唯一のレストラン体験。オリンピア駅から徒歩2分ぐらい。雰囲気も気さくな大衆食堂で感じ良いです。英文ガイドで、「地元ジャーナリストの御用達」と紹介されてました。

(レストラン名) Athinaikon(アシナイコン)
(住所) Themistokleous 2, Omonia





(頼んだは白ワインとギリシャサラダとタコのグリル)


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アテネ博物館シリーズ (新アクロポリス博物館)

2011-11-26 17:13:17 | 旅行 イギリス外
アテネは街自体は大して魅力的ではなかったのですが、遺跡に加えてもう一つ大きく感動したのが、博物館でした。限られた時間だったので、訪れたかった博物館/美術館の全てには行けませんでしたが、幾つかを2回に分けて簡単に紹介します。

【新アクロポリス博物館】
2009年に新しくオープンした美術館。私の持っている「地球の歩き方 ヨーロッパ」は2008年版なのでこの博物館の存在すら紹介されていません。守屋さんから事前に「あそこは評判いいですよ」と教えていただき、初めて知りました。そして、行って大正解でした。守屋さん、この場を借りてお礼申し上げます。



アクロポリスの発掘現場から出土した文化財を中心に収蔵・展示している考古博物館ですが、博物館の建物と言い、展示作品と言い、素晴らしいです。

博物館はアクロポリスの丘の下に位置し、ローマ時代の遺跡の上に建てられています。床がガラス張りになっていて、ローマの遺構を見下ろせるようになっています。そして、大きなガラス張りで建てられているため、広い余裕の展示スペースの中で展示物を見学しながら、アクロポリスの丘を見上げることができるという素晴らしい環境の中で時間を過ごすことができます。



館内の写真撮影は厳禁なので、中の写真は下記の観光サイトを参考にしてください。(こちら→

青銅器時代から古代ギリシア・ローマ時代を中心に、彫像や工芸品が展示されていますが、そのスケールと工芸品の美しさは息を飲みます。特に3Fのパルテノン神殿の大理石の彫像は素晴らしい。現物と同じ大きさで再現されています。大英博物館所蔵のものと合わせたらどうなるのか見てみたいと思うのは、きっと私だけではないでしょう。

夕方、夕暮れ頃に入ったのですが、思わぬ収穫は中2階にあるカフェ&レストラン。窓越しにパルテノン神殿を見ながら食事やお茶をすることができます。ライトアップされた神殿は神秘的でロマンチックなものでした。





退館する際には、真っ暗でした。


アテネに行く時は、必ず立ち寄られることをお勧めいたします。

 2011年11月11日訪問
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チェコフィルハーモニー管弦楽団/ インバル/ マーラー交響曲一番 @アテネ

2011-11-25 22:41:42 | コンサート (in 欧州)
 わざわざアテネに来てまでコンサートに行かなくても良いと思うのだが、演奏会があるとついつい足が向いてしまう。今回はたまたまチェコフィルの引っ越し演奏会と重なったので、アテネでチェコのオーケストラを聞くという妙な取り合わせとなった。

 会場はアテネの中心部シンタグマからも近いメガロムシキ(アテネ・コンサートホール)。アテネ市内の建物はどれも古ぼけていて冴えないのだが、このコンサートホールは新しく、眩いばかりのコンサートホールだった。ホール内も、舞台後ろにオルガンが設置され、木の壁に囲まれた雰囲気は、なかなか本格的で高級感も漂うものだった。

 



 この日の演奏はマーラーシリーズ。1曲目はプレガルディエンのテノールによる「さすらう若人の歌」。意外とあっさり終わってしまったが、前菜としては丁度良かったかも。

 休憩後はマーラーの「巨人」。これは素晴らしい演奏だった。インバルさんは名前はもちろん知っていたが実演に接するのは初めて。後頭部の薄さと言い、髪型と言い、後ろから見ているとお茶の水博士そのもので笑ってしまったが、指揮ぶりは強い情熱に溢れるものだった。しかも、チェッコフィルの音の特徴なのだろうか?とっても重心の低く、かつパワフルな演奏だった。この重量感は10月に聴いたライプツィヒ・ゲヴァントハウスすらも超えるものだ。







 第一楽章の前半は少し退屈な出だしだったが、途中でギアチェンジし、そこからは憑かれたような勢いを感じた。「これぞ生演奏の醍醐味」と言う感じでで、どんなオーディオルームもこの迫力、このレンジは再現できまい。

 それにしても、お客が全体の6割ぐらいしか入っていないのはとっても残念だった。1階ですら7割、2階は5割も入っていない感じだった。これも経済危機の影響の一つなのだろうか?

(地下鉄のエスカレーターから。そういえば。カラスってギリシャ人だった)



Friday, 11 November 2011, 20:30
ATHENS CONCERT HALL- CHRISTOS LAMBRAKIS HALL

Mahler Year: Tribute to Gustav Mahler for the centenary of his death (1911-2011)

Gustav Mahler:
- Lieder eines fahrenden Gesellen
- Symphony no 1

Christoph Prégardien tenor

Czech Philharmonic Orchestra
Conductor: Eliahu Inbal



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アテネ遺跡シリーズ (アゴラ 他)

2011-11-24 23:40:44 | 旅行 イギリス外
 アクロポリスの丘を下りて、アゴラ(現代ギリシャ語で市場、古代は議論を交わす社交の場という意味)を訪れました。

(中央の公園のようなところがアゴラ)


(ここは昔、市場だったとのこと)




(ヘファイストス神殿)


(ヘファイストス神殿からアクロポリスの丘を見上げる)


 アゴラを出て、地下鉄の駅に向かう途中に、またまた遺跡がありました。ハドリアヌスの図書館ということでした。ハドリアヌスと言えば、イングランドとスコットランドの国境にハドリアヌスの壁を作ったイギリスでもとってもなじみの深いローマ皇帝です(ハドリアヌスの壁の旅行記はこちら→)。当時のローマ帝国を縦横無尽に動き回ったハドリナヌスの足あとがこんなところにもあると知り感動。飛行機どころか車も無かった時代の彼の行動力にひたすら脱帽です。



 続いて、ギリシャ神話に登場する神々の中で最高神とされるゼウスを祀ったゼウス神殿。ギリシャ本島の遺跡では最大級とのことです。確かにでかい。


 そして、最後は、ゼウス神殿の近くに合った遺跡。どっかで観たことあるなあと思ったら、ローマ人の風呂跡(ローマンバス)でした。


 以前は遺跡巡りなんぞは全然自分の趣味ではなかったですが、欧州に来て以来、自分の想像力とのゲームであることを理解し、結構はまっています。

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アテネ遺跡シリーズ (アクロポリスの丘/パルテノン神殿)

2011-11-23 00:26:25 | 旅行 イギリス外
 今回のアテネ訪問はマラソンが目的ですが、せっかくの機会なので金曜日に休みをもらい、金・土と少しばかりのアテネ観光を楽しみました。アテネと言えば、やはり古代ギリシャの遺跡です。

 そして、アテネの遺跡と言えばパルテノン神殿のあるアクロポリスの丘。「聖域であるとともに、都市国家防衛のための要塞としての役割を担っていた」(「地球の歩き方 ヨーロッパ」)ところです。夏は暑くて見学にならないと言う話も聞いたことがあるのですが、この日は、逆に、寒くて風が強い。あやうく飛ばされるかと思う風の中、震えながら見学しました。



(イロド・アティコス音楽堂)
 今でも夏は音楽祭をやっているらしいです。


(プロピレア)
 パルテノン神殿の前門です。


(パルテノン神殿)
 町の守護神アテナを祀った神殿で、紀元前438年完成の「古代アテネの栄光を象徴する遺跡」(地球の歩き方)です。その美しさ、雄大さには掛け値なしに圧倒されます。2400年の時間を超えてここに存在すること自体に感動します。









(神殿のとなりにあるエレクテイオン)


 近くに日本人ツアーの一団がいらしたので、ちょっとガイドさんの案内を盗み聞き。

 ガイドさん  「・・この神殿にあった彫像の多くは、イギリスの大英博物館に保存されています・・」
 関西のおばちゃん「それって、泥棒って言うんちゃう~」
 その友達    「そや、泥棒や~」

(ティオニソス劇場)
 ここでギリシャ劇のコンテストが開かれたとのこと。


(丘の上からの絶景)


 

 2011年11月12日 訪問


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イングリッシュナショナルオペラ 「カストールとポリュックス(Castor and Pollux)」(ラモー)

2011-11-21 23:46:46 | オペラ、バレエ (in 欧州)
(アテネ観光の記事ももう少し書くつもりですが、先週末に出かけたオペラの記事をお先に)

 ENOにフランスのバロックオペラ、歌劇「カストールとポリュックス」(ラモー作曲)を見に行く。オペラはもちろんのこと、作曲家の名前さえ知らなかったが、ギリシャ神話が題材(オペラの筋とは違うようだが)で、双子座の星の名前にもなっているということを知り、興味を持った。
※あらすじはこちら→
 いつもながらの当日券狙いで、この日はバルコニーの前から2列目の席が何と16ポンド!

 バロックらしい優雅な曲に、中心となる若手イギリス人歌手陣が素晴らしく、音楽的に素晴らしいオペラだった。特にTelaïre役のソフィー・ビヴァン(ソプラノ)とカストール役のAllan Clayton(テノール)は声量も大きい上に、高温がとても美しい。また、ポリュックス役のRoderick Williamsも安定した歌いで、失礼ながら、ENOでもこんな素晴らしい歌手陣の歌唱が聴けるのだと驚いた。

 しかし、音楽は美しいのに、意味不明の下品な前衛的演出が作品全体を台無しにしていたのが極めて残念。舞台にすっぽりはまる木枠の箱が舞台に設置され、その中で舞台は進行する。前半は途中で右手に人の高さもある大きな砂山が設置されるが、それ以外には舞台の飾りは一切ない抽象的な演出。この意図も不明だったが、さらに和をかけて、登場人物の動きが極めて卑猥。ポリュックスを誘惑するシーンでは、女性二人がストリッパーのごとくスカートの中のパンツを次々に脱いでいく。5重にも6重にも重ね着しているので下半身が素肌が露出することはないが、全く音楽の優雅さと全く合わない。また、Phoebe がエロチックな妄想に耽るシーンでは、その砂山から腕だけが現れ彼女の下半身をもてあそぶ。後半はさらに過激になって、5人の男性と一人の女性が性器も露に全裸になる(幸か不幸か、長髪を顔の前に垂らしているので顔は全く見えない)。現代ものの演出は好きなほうだし、ましてや自分も男だから、女性の脱衣シーンが嫌いなわけはないが、この音楽でこの演出はないだろう。正直、これらのシーンは気分が悪くなった。エロチックなものが見たければ、ENOに来ないで、最初からそれなりのところに行くのである。音楽が本当に良かっただけに、残念だった。

 まあROHではあり得ない演出なので、ENOらしく、試みとしては面白いと言うべきなのかもしれない。バロックとはいえ、昔ながらの旧態依然とした演出を続けていても、オペラが化石化するだけだから、むしろ挑戦を称えるべきなのかもしれない。

 ただ私の好みでなかったことは確かで、今日の演出なら、舞台無しの、演奏会方式のほうがずっとよかったというのが正直なところだった。


いつもにもましてピンボケですが・・・

Sophie Bevan(ソプラノ) ブラボー!!!


Allan Clayton(テナー) これもブラボー!!!


(中央が指揮のChristian Curnyn)これまたブラボー!!!


Castor and Pollux
Rameau

New Production

Sat 19 Oct 11

Running time 2hrs 40mins

Credits
A co-production with Komische Opera, Berlin

New production supported by The Foyle Foundation and a syndicate of individual donors

Conductor Christian Curnyn
Director Barrie Kosky
Designer Katrin Lea Tag
Lighting Designer Franck Evin
Translator Amanda Holden

Cast includes
Telaïre Sophie Bevan
Phoebe Laura Tatulescu
Castor Allan Clayton
Pollux Roderick Williams
Jupiter Henry Waddington
High Priest of Jupiter Andrew Rupp
Mercury/Athlete Ed Lyon

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アテネ・クラシック・マラソン 当日

2011-11-19 23:36:22 | ロードレース参戦 (in 欧州、日本)
 さあ、いよいよ大会当日。アテネからスタート地点のマラソン市までは、文字通り42キロあるので、大会当日はマラソン用のシャトルバスが早朝アテネから発車する。そのバスに合わせて、5時に起床し、特別に朝5時からオープンのホテルの朝食ビュッヘで腹ごしらえをし、5:40にはホテルをチェックアウトした。まだ真っ暗の中を続々とランナーが達が、シンタグマの広場から出発するバスに乗り込み、運ばれていく。戦地に向かう兵隊の一団のようだ。

 6:40頃、スタート地点のマラソン市陸上競技場へ到着。実は、これからスタートの9:00までの2時間ちょっとが一番辛かった。気温が低い上に、凄い強風なのである。気温は最低気温10度の予想だったが、体感温度は間違いなく1桁台。日本なら強風警報間違いなしのすごい風で、体がどんどん冷えていく。時おり雨も混じり、こんな天候で走るなんて、最悪。競技場の周囲には、低木が茂る低い山に囲まれているが、日本人の感覚でいうとほとんど禿げ山に近く、殺風景なことこの上なく、あまり気分も盛り上がらない。

(7:00頃。まだ暗い)


(周囲の山。風は写真に写らないのが残念)


 スタート前までは風を凌ぐために、極力、建物の影で待機していた。隣に居た男性ランナーが話しかけてきたが、はるばるアメリカのモンタナ州から来たそうだ。目標タイムが3時間38分と言っていたから、自分よりは相当早い。でも、寒さで正直、スタート前の盛り上りやウキウキ感もあまりないのは残念。仮装ランナーは殆どいない様子で、真面目な雰囲気が流れてる。アテナイ軍の兵士のコスチュームを来たおじさんを何人か見かけたのは、アテネのマラソンであることを感じる少ない機会だった。

(この人、「裸足で走る」と言っていたが、ホントに走ったのだろうか?)


(風をよけてランナー待機中。でも、アテネ兵士が風を避けちゃいけないと思うんだけど・・・)


 9:00にエリートランナーの号砲がなる。自分は一番後ろの方のブロックだったので、遅れること15分ほどでスタート。アテネに向けての42キロが始まった。走り始めると、時おり雨が吹き付けてくるのには閉口したが、風が強いフォローの風であることが判明。風に体を押してもらうような感覚で走れるので、体が軽くなる。途中5キロ地点ではアテネ兵士を祀る墓墳を通る。合掌。

(いよいよスタート)




(アテネ兵士を祀る墓墳)


(コースの道路にはクラシックマラソンのサインがいくつもありました)


 本コースの最大の特徴は200メートル以上もある高低差。10キロまではほぼ平坦だが、その後アップダウンを続けながら、徐々に上っていく。10キロ地点から20キロ地点まで、100メートル上って、50メートル下がる。そして最大の山場である20キロから31キロ地点までは高低差200メートを超える断続的な登りとなる。そして、31キロ以降はゴールまで150メートル下る。このレースがこんなアップダウンの連続であることは申し込み後に知り、マラソン発祥のコースを走れる市民マラソン大会ということで衝動的に申込んだことを悔やんだ。それでも、この直近2ヶ月の週末はハムステッドの坂で集中的に練習した上に、この日は「登りきる」と覚悟を決めて望んでいる。確かにきつかったが、神風にも助けられ、何とか上りきった。

(コースイメージ)


(余り早くない兵士の一団)


(奥にはエーゲ海が見えるのですが、天気が悪いので、ぼんやり)


 31キロを過ぎて、いよいよ下りに入る。30キロで2時間55分だったので、下りに乗じてペースをあげることができれば、4時間切りも夢ではないかという考えが、一瞬頭をよぎった。しかし、そんなに甘くない。10キロの登り続けたあとに、下りにギアチェンジするのは想像以上に難しかった。負担がかかる筋肉が上りと下りでは全然違うのである。いきないふくらはぎや腿の後ろに痙攣の予兆を感じる。「これはまずいかも」という嫌な予感がし、残り10キロの雲行きが急に怪しくなってきた。

(下りになったので一枚撮影)


 たくさんレースを経験することのメリットは、自分の失敗談についてもいくつものケーススタディを経験しているということだ。そして、その経験には、その場で即時応用が効く。4時間切りを目指すような色気はすぐに諦めた。そして、1~2キロ毎に、屈伸、ストレッチを行い、足の状態を確認し、確実に走り抜けるよう走った。

(市内が近づくにつれて犬が増える。一緒に走りだす犬も)


 残り5キロになるといよいよ市内に入って来る。やっと戻ってきたという感じだ。アテネの兵士も「勝利の報告まであと一息」と思って走ったに違いない。少し太陽も出てきた。最後のゴールは、109年前の第1回近代五輪が行われたパナシナイコスタジアムである。タイムは4時間8分台。風の助けを受けたとはいえ、これだけの難コースを全く歩くことなく完走できたのは、我ながら頑張った感があった。

(ゴールまであと1キロ)


(スタジアムの手前)


(109年前の第1回近代五輪が行われたパナシナイコスタジアム)





 さてこのコースだが、今まで走った他のフルマラソンのコースと比べると、マラソン発祥の地を走ると言う意味合いを除いては、魅力度では正直劣る。関係者のオーガナイズは素晴らしい。しかし、幹線道路だけのあまりにも殺風景なコースは面白味がないし、天気のせいもあったと思うが、サポーターの応援もゴール直前を除くと少し寂しい。

(途中の風景をもう一枚。こんな感じが続く)


 しかし、一度は走る価値のある大会だ。ここをアテネの兵士が走り抜けたと思うと、とても歩いたり、止まったりできなかった。聖地パワーはすごいのである。

 2011年11月13日
コメント (2)
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アテネ・クラシック・マラソン 前日 アテネ市街ジョギング

2011-11-18 23:36:37 | 旅行 イギリス外
 (今週は仕事が滅法忙しく、まだマラソン完走記が書けていません。ちょっと間継ぎ記事を)

 レース前日の土曜日の朝に、アテネ市内見学も兼ねてちょっと市内ジョギング。アテネの街自体は西欧諸国に比べると、街自体洗練された美しさはあまりなく、どちらかと言うとアジアの途上国から成長のエネルギーを抜いたようなのようなイメージで、正直走っていてもさほど面白くはありませんでした。ビルは古ぼけているし(空洞化が進む日本の地方都市の感じ)、道路やビルの片隅など寝ている犬が沢山いるのも、活気を感じない理由かもしれません。

 また、今回の訪問期間は天気にもあまり恵まれませんでした。気温も最低も最高も11-13度ということで、ロンドンとそんなに変わらない寒さ。ギリシャと言えば真っ青な青空と白壁の家並み、灼熱の太陽という極めてステレオタイプのイメージしか持ち合わせていなかった私には、「う~ん、俺はどこに来たのか?」と言う感じでした。

 ただ、さすがアテネ。街のいたるところに遺跡がありました。観光で訪ねた遺跡はまた別記事で紹介します。




 遺跡からパルテノン神殿を臨みます。


 パルテノン神殿の丘に向かって、登り道を走る練習。白い家が立ち並び、やっと私のイメージのギリシャに近い家並み。


 丘からの眺めは抜群でした。


 市の中心部にある中央市場。どの国を訪れても市場の活気は同じですね。この市場は肉ばかりが売ってました。それにしても、どうして市場のオジサン達ってこんなにフレンドリーなんだろう。と思うほど、多くの人から声をかけられました。「そんな短パンじゃ寒いだろう。」「明日、走るのかい?」「ハロー、マイフレンド」・・・。
 



 オリーブ売り場です。


 翌日のレースに備えて軽めの40分程度の市内Jogでした。

 2011年11月12日 8時半ごろ

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アテネ・クラシック・マラソン前々日

2011-11-16 23:05:20 | 旅行 イギリス外
 「紀元前450年9月12日、アテナイの名将ミルティアデスはマラトン(Marathon)に上陸したペルシャの大軍を奇策で撃退した。マラトンの戦いである。勝利というエウアンゲリオンをアテナイの元老に伝えるためにフィディピディス(Philippides)という兵士が伝令に選ばれた。フィディピディスはマラトンから約40km離れたアテナイまでを駆け抜け、アテナイの郊外で「我勝てり」と告げた後に力尽きて息を引き取ったと言われている」(「マラソン」ウキペディアより)

 このマラソンの発生の地で行われるアテネ・クラシック・マラソンというマラソン大会に参加してきました。この故事にあるマラトンからアテネ(アテナイ)までを走るレースです。1997年の世界選手権と2004年のアテネオリンピックで利用されたコースでもあります。言わば、ランナーにとっての聖地。せっかく欧州に居るなら、一度は出たいと思い申し込んだものです。



 かなり悪いコンディションの中のレースだったのですが、レース模様はまた別にご報告します。今日はとりあえず、前々日の様子を。

 市内の中心部にある公園にある施設でマラソンEXPOとゼッケンの受け取りが行われました。

 さすがギリシャ。ゼッケン引き取り会場も神殿風。 


 ゼッケンの引き取り会場。


 ゼッケンを引き取った後は、マラソンEXPOです。
 

 ゼッケン引き取ると、「いよいよだ」と気持ちが盛り上がります。

(付録:飛行機からギリシャを初見)



2011年11月11日
コメント (3)
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ロンドン交響楽団 / ニコライ・スナイダー指揮 / ブラームス交響曲第4番ほか

2011-11-13 23:51:59 | コンサート (in 欧州)
 もう2週間も前のコンサートの記録です。
 
 スナイダーさんのLSO指揮デビューコンサート。ここ2年ばかりで、スナイダーさん関連では、ヴァイオリン・ソロとしてのLSOやウイーンフィルとの共演を聴いた。ウイーンフィルとの共演だったザルツブルク音楽祭では、演奏後はCDのサイン会で、CDにサインをしてもらい、握手もした。テクニックもさることながら繊細で優しいヴァイオリンの音は大好き。指揮者としては、どんなスタイルなのかとっても楽しみだった。

 プログラムはワーグナー、シューマン、ブラームスというドイツプログラム。

 冒頭の ニュルンベルクのマイスタージンガーの序曲は、暗譜だった。190センチぐらいあるのではという長身だから、指揮台は要らないぐらい。曲の持つスケール感を十分に引き出し、大きな音楽を聴かせてくれた。なぜか呼び戻しなしで拍手が終わったのが残念。

 続いてのシューマンのピアノ協奏曲はいかにもロマン派という音楽。 サリーム・アッボウド・アシュカール(Saleem Abboud Ashkar)のピアノは、はっきりとした輪郭のなかに、優しさが一杯の音楽で、うっとりと聴き入った。



 サプライズは休憩後のブラームス交響曲第4番。第一楽章、ゆったりと優しく始まった。ブラームスの4番と言えば、重厚な弦が畳み掛けるように襲ってくるイメージなのだが、私のイメージとは全く異なる優しいメロディ。これがブラームスの4番かと驚きを隠せなかった。第2楽章になるとペースは更にスローになる。弦のメロディ部分は普通にしても、木管がリード部分はことさらにゆっくりで聴かせる。モーツァルトやシューマンの如く優しく、ロマンティックだ。まるで全く別の音楽を聴いているようだった。途中でいったいこの曲はどうなるのか?と心配になったぐらい。このペースは結局第3楽章、第4楽章になっても変わらなかった。良く言えば、一つ一つの音節を噛み締めて味わうように音楽が構成されるし、悪くいうとブラームスの交響曲らしい勢い、厚み、流れが感じられない。最後のフィナーレも盛り上がりはあったものの、大きな波を被るようなうねりを感じることは少ないままに終わった。

 人により好き嫌いがある演奏だと思う。私は驚いたまま終わってしまったのでもう一度聞きたい。新しいブラームスの交響曲を聴いたことだけは確かだ。

 しかしデビュー戦をこれだけ挑戦的な解釈で振るスナイダーは逆に大したものだと感心した。無難に常識的(そんなものがあるのか知らないが)な演奏ではなく、確固たる自信を持った自分の音楽の提示に見えた。しかし、ヴァイオリンと指揮の2足のわらじをこれからどう履きわけていくのだろう。とっても興味がある。





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London Symphony Orchestra / Nikolaj Znaider
Music by Wagner, Brahms and Schumann
30 October 2011 / 19:30
Barbican Hall

WAGNER Overture: Die Meistersinger von Nürnberg
SCHUMANN Piano Concerto
BRAHMS Symphony No 4

Nikolaj Znaider conductor
Saleem Abboud Ashkar piano
London Symphony Orchestra

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柳井正 『成功は一日で捨て去れ』 新潮社

2011-11-12 16:25:41 | 
ユニクロの親会社ファーストリテーリングの会長兼社長の柳井正さんによる経営論。現場の経営第一線でユニクロを初めとするグループ会社の陣頭指揮をとり、成長拡大させていた主張は一味もふた味も違う迫力がある。

一冊を通じての主張は、安定志向を捨てろ、スピード(即断即決即実行)が命、グローバル化、失敗を恐れずリスクを取る。言うのは簡単だが、それを日々休むことなく実践している筆者は、日本を代表する経営者だけある。本を読むだけで筆者の凄身が伝わってくる。

こうした経営者のビジョン考えを、経営者自身が模範となり、そして管理者や社員が支え、実現していく。元気のない日本企業の中で、成長を続ける理由は本書で明らかであるが、それを真似、実現させるのは容易なことではない。しかし、企業競争の世界では、やるか、やらないかしかないのだ。



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ロンドン交響楽団/ マリン・オールソップ / Voices of Light (Richard Einhorn)

2011-11-11 00:08:17 | コンサート (in 欧州)
 今年は15世紀のフランスの英雄ジャンヌダルクの生誕600年にあたるとのことで、バービカンセンターでは先週末にジャンヌダルク企画特集をやっていた。(恥ずかしながら、このコンサートのチケットを買うまで英語のJoan of Arcがジャンヌダルクだとは知らなかった)。金曜日にはオネゲルのオラトリオ「火刑台上のジャンヌ・ダルク」、日曜日にはマリン・オールソップのジャンヌダルクをネタにした講演会、そして、その締めくくりがこのコンサート。1928年製作の白黒無声映画「裁かるゝジャンヌ」(Carl Dreyer監督)という映画にあわせて、1988年にRichard Einhorn というアメリカ人が作曲した「Voices of Light 」とセットで上映上演するというもの。曲は映画に完全に合わせて作られている。

(開演前:ステージ後方に設けられたスクリーン)


 感動的公演だった。白黒映像の力に圧倒された。映画は、裁判から火やぶりの刑に処せられるまでのジャンヌダルクが描かれる。白黒画像に登場人物をアップに大写しにするカメラワーク。無声映画であることが、更に見る者の気持ちを画面に集中させる。主演女優のルイーズ・ルネ・ファルコネッティの熱演に、役80分の上映時間、目と気持ちがスクリーンに引き込まれ離れない。今回はLSOの演奏会なので、メインは演奏とコーラスで、映画は添え物なのだが、映像のメディア力の強さに主役の座を譲らざる得なかった。

 しかし、主役にはなれなかったものの、コーラス、オーケストラの美しさも格別だった。合唱は、独唱部分をシナジーコーラスという6名からなるグループがそれぞれマイクを使って歌ったのだが、その声は透明感があり、思わず背筋を伸ばすような神聖さを感じるものだった。ロンドンシンフォニーコーラスの合唱はいつもながらの上手さ。オーケストラもヴィオリンやチェロの独奏が悲しさを引き立てる。映画を見ながらBGMのようにLSOの生演奏を聴くなんて、なんとも贅沢。

 日曜日の夜に見る公演としては、ちょっとヘビーすぎる内容だったが、それほど日本では知られた映画ではないとおもうが、是非、映画だけも見ておいて損はないと思う。好みは分かれるかもしれないが、お勧め。

(中央は指揮のマリン・オールソップと作曲のRichard Einhorn)


(後ろがンドンシンフォニーコーラス、シナジーコーラスは中央ですが影になって見えない)


 ※なんとこの映画YouTubeで観れます→

London Symphony Orchestra / Marin Alsop
Einhorn Voices of Light and Carl Dreyer’s The Passion of Joan of Arc
6 November 2011 / 19:30
Barbican Hall

Richard Einhorn Voices of Light

Marin Alsop conductor
Synergy Vocals
London Symphony Chorus
London Symphony Orchestra

コメント (2)
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週末ジョギング ハイドパーク/ケンジントンガーデン

2011-11-07 22:46:01 | ロンドン日記 (日常)
 最近の週末ジョギングはハムステッドヒースが続いたので、この日曜日はハイドパーク/ケンジントンガーデンへ。薄曇りの晩秋の風景をいくつかご紹介します。

 マーベルアーチからハイドパークに入るところ。


 ハイドパーク内。いよいよ紅葉も終盤です。


 ケンジントンガーデンの歩道を走ります。この木もきっと来週は葉なしになっているかも。


 ケンジントンガーデンの並木。天気が良ければ、もっと美しいのでしょうけど、ちょっと寒々しいぐらい。


 奥にアルバート公の銅像とロイヤルアルバートホールが。


 ハイドパークの池。水鳥の揃い踏み。


 18日から始まるWinter Wonderlandの準備が始まっていました。



 何故か走っていて思い出したのは、私の好きなメグ・ライアンとビリー・クリスタルが共演する映画「恋人たちの予感」で描かれる秋のニューヨーク・セントラルパーク。それにも劣らない秋を、ロンドンでも感じることができました。

 2011年11月6日 10:00頃

コメント (8)
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ロイヤルオペラハウス 夢遊病の女(La sonnambula)/ ベッリーニ: おっとトラブル・・・

2011-11-06 22:57:31 | オペラ、バレエ (in 欧州)
 こちらに来てロイヤルオペラハウスには随分足を運んでいるが、こんなトラブルは初めてだった。

 いつもどおり、照明が落ちて、指揮者が来て音楽が始まる。とても甘美な音楽。そして、コーラスが聞こえてくる。でも舞台のカーテン(緞帳)はまだ上がらない。ようやく少し開いたと思ったら、半開きの形でLisaのアリアが始まる。舞台はまだ全体の1/4も見えない。随分、じらす演出なんだなあと思っていたら、アリアの直後、音楽は鳴り舞台が進行している中、一人の女性がマイクを持って舞台に飛び込んできた。「大変、申し訳ありません。カーテンがメカの問題のため上がらず、このまま舞台を続けることはできません。一旦ここで中断させて頂き、至急調整いたします」とのこと。

(手持ち無沙汰でバカ待ちのオーケストラと観客)


 「流石、イギリス」と私は苦笑いだったが、他のお客さんもおおらかで、ブーイングどころか、Tube車内で、信号機トラブルのために途中駅で降ろされたり、線路上で立ち往生してしまう時と、まったく同じ「しょうがないね」という空気が流れた。ということで舞台はしばし水入り。その後、このステージマネジャーらしき女性がでてくること3回、最初は「すぐ直おる予定」と言いながら、2回目は「しばらく時間がかかりそうなので一旦休憩として30分後を目処に再開いたします」となった。

(一瞬、上がりがけたが、これ以上上がらないカーテン)


 そして30分後にやっとセフティカーテン(緞帳の外側に降りる機能カーテン)が上がった。場内大拍手。もう一度、Lisaのアリアから再開した。一幕終了後も二幕終了後も結局緞帳は降りてこなかったから、壊れたままだったのようだ。イギリスらしいと言えば、イギリスらしいの一言で終わってしまうだが・・・

 パフォーマンスの方は、初日の公演に対するメディアの批評は芳しくなかったので、不安だったが、なかなか良かった。オペラのストーリー自体は、夢遊病で歩き回わる癖のある新婦が、その行動がもとで結婚破棄を通告されるのだが、最後は疑いを晴らしハッピーエンドという他愛もない話。

 やっぱりお話自体は全く面白みは感じなかったが、音楽が美しく、歌手がとても良かった。特に、新婦Aminaの役は高音が要求され、難しい役柄に見えたが、 キューバ系アメリカ人ソプラノのEglise Gutiérrezは、高音も美しく、声量も充分。美人とは言いがたいが、今後期待できそうな若手だった。また、新郎のElvino役のCelso Albeloの テノールが、いかにもイタリアオペラのテノールという感じの甘い声で魅了させられた。この2人は、他のオペラでも是非聞いてみたいと思う。あとは、Count Rodolfo役のMichele Pertusiが存在感のある役作りで、舞台を支えていた。

 オーケストラは、とってもスローで緩慢なところを時折感じるが気になるほどではない。演出も現代風にスイスのリゾートホテルでの結婚披露宴の設定だが、無理なく懲りすぎず、上手く見せていた。

 何回も見たくなるオペラではないが、楽しめて良かった。

(ElvinoのCelso Albelo)


(AminaのEglise Gutiérrez)




(指揮のDaniel Orenを加えて)



La sonnambula
Saturday, November 05 7:30 PM

Credits
Composer: Vincenzo Bellini
Director: Marco Arturo Marelli
Set designs: Marco Arturo Marelli
Lighting designs: Marco Arturo Marelli
Costume design: Dagmar Niefind-Marelli
Associate Director: Andreas Leisner
Lighting Associate: Friedrich Eggert

Performers
Conductor: Daniel Oren
Elvino: Celso Albelo
Amina: Eglise Gutiérrez
Lisa: Elena Xanthoudakis
Count Rodolfo: Michele Pertusi
Alessio: Jihoon Kim§
Teresa: Elizabeth Sikora

Chorus
Royal Opera Chorus

Orchestra
Orchestra of the Royal Opera House

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