その後の『ロンドン テムズ川便り』

ことの起こりはロンドン滞在記。帰国後の今は音楽、美術、本、旅行などについての個人的覚書。Since 2008

朝の小金井公園

2020-05-31 07:34:01 | 日記 (2012.8~)

先週の野川・武蔵野公園に続いて、今週末の朝ランは小金井公園まで足を延ばしました。緊急事態宣言もようやく明けましたが、コロナとは末永いお付き合いになりそうなので、当面は極力動かない生活を続けるつもりです。そんな中で、早朝のランニングは、体力維持、ストレス発散にも欠かせません。

小金井公園は野川公園からは4kほど、電車で言えば中央線の東小金井駅が最寄になるのでしょうか。大きさは野川・武蔵野公園には及ばないかもしれませんが、武蔵野の面影遺す大きな公園です。ジョッギング最中に立ち止まっては撮ったスナップを残しておきます。

東側の入口から入ると、バスケ少年たちが待ち望んだかのうように練習してました。


〈嬉しそうでしたね〉

野原には名前はわかりませんが、芥子のような赤い花が綺麗に咲いています。

朝日に木々が照らされ始める時間で、朝の澄んだ爽やかな空気と、光と緑の陰影がこの時期ならではの清々しさを感じさせてくれます。

年配夫婦の朝のウオーキングも足が弾んでいるように見えます。

私はまだ入ったことのないですが、知名度高い江戸東京たてもの園。いよいよ6月2日から再開とのことです。

公園を出ると玉川上水。羽村から四谷まで40k相当、江戸時代の市民の飲み水を供給してきた歴史的水路です。

こういう爽やかな空気で走れるのは、梅雨前の週末では最後かもしれません。今年はコロナのおかげで、身近なところで春のうつろい、美しさを感じることができました。

2020年5月30日

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

映画 「万引き家族」(監督:是枝裕和、2018年)

2020-05-28 07:30:00 | 映画

遅まきながら是枝監督のカンヌ映画祭の最高賞であるパルムドール受賞作『万引き家族』を見る。血縁関係のない大人、子供が一緒に暮らす「家族」を通じて、現代社会の貧困や児童虐待を描いた作品。貧困、家族、愛について考えさせる直球の社会ドラマだ。

非常に良くできた映画であることは間違いない。貧困を社会構造要因のみに求めるわけでないし、貧困ゆえの万引きを正当化するような単純な物語でも無く、「血を超えた親子の愛」というようなステレオタイプな感動の押しつけでもない。人間の卑しさも含め、問題の難しさをそのままに描いている作品だと感心した。

また、「家族」の役者たちの演技が素晴らしく、まるで現実を追ったドキューメンタリーのようなリアルさがある。特に、安藤サクラの演技は迫真で、胸が締め付けられる。リリー・フランキーのダメ親父もどっかにいそうだし、樹木希林のしぐさ一つで語る動き、存在感は流石。松岡茉優の自然体の演技も上手く嵌っている(加えて、何しろ可愛い!)。子役の二人も、大人の大俳優達を前に一歩も引いていない。観ながら、感心しっぱなしだった。こうした演技を引き出した是枝監督の手腕もあるのだろう。

ただ、作品そのものの素晴らしさとは別に、個人的には嗜好のストライクゾーンからは外れていたのは事実である。う~ん、これはなぜだが良く分からない。不思議に感情移入できなかったところはあった。

好き嫌いは人により分かれるかもしれないが、一見の価値は十分にある。そして、好みでは無かったと言っているこの私も、視聴後のずっしりと重く深い感慨が去るには、随分と時間がかかった。

 

監督・脚本:是枝裕和

キャスト

リリー・フランキー:治
安藤サクラ:信代
樹木希林:初枝
松岡茉優:亜紀
城桧吏:祥太
佐々木みゆ:ゆり

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

野川・武蔵野公園の緑

2020-05-24 10:10:46 | 日記 (2012.8~)

全面在宅勤務になってもうかれこれ3カ月。この間、オフィスには3回出社したきりで、それ以外は近隣での買い物以外はStayHomeの毎日が続いています。

そんな中で、唯一フレッシュな外気を味わえるのは週末のジョギング。幸い、ちょっと走れば多摩川やそれなりの公園が幾つかあるので、行先には困りません。中でも、私のお気に入りは、野川・武蔵野公園です。

この3カ月で、冬が終わり、春になり、そして今梅雨が近づいています。木々に芽が息ぶき始め、梅が咲き、桜に移って、そして新緑となり、今、その緑がどんどん深みを増しています。毎年のことではありますが、今年ほど、その季節の変わり目をじっくりと味わえた年はなかったような気がします。

今朝のランニング最中にスマートフォンで撮ったありきたりのスナップですが、もうすぐ緊急事態状態も明けそうな気配が漂うので、今年の記念に残しておくこととします。


〈ハケ(国分寺崖線)の上から撮った武蔵野公園。もう緑が濃い〉


〈まだ7:30前ですが、散歩・ジョギングの人がどんどん増えてきます〉


〈野川で生き物探しの親子〉


〈もう十分初夏ですね〉

武蔵野の面影を残す、この野川・武蔵野公園。この公園のおかげで、StayHome期間も無事乗り越えられそうです。

2020年5月24日

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ジ・オフィス/ the office  (シーズン1、2)

2020-05-21 07:30:00 | 映画

アマゾンプライム会員の人は、是非、一話で良いので見て欲しい。私が勝手に思うこれぞイギリス(?)のシチュエーション・コメディです。

2001年の放映なのでもう20年も前の作品なのですが、当時イギリスでは大旋風を巻き起こしたらしいです。アメリカでリメーク版が制作されていて、それを飛行機の中で見たことがあるのですが、ツイッターで脳学者の茂木健一郎さんがイギリスのオリジナル版を絶賛お勧めしていました。そんなこともあり、コロナ騒動のStay Homeを活用して見始めたら、シーズン1,2の12話を一気に見てしまいました。

ロンドン近郊のスラウ(ロンドン駐在中に仕事で何度か訪れたことありますが、イメージは首都圏で言えば、八王子、川口、昔の川崎といったイメージかな?)にある紙の卸会社が舞台です。ドラマは、そこの「史上最低の」マネジャー、デイビッドとこちらもあまりいけてない部下社員たちの職場風景を淡々とドキュメンタリー風に追った作りになっています。

この作品の面白さを説明するのは、ちょっと私の表現力では難しいです。ですが、デイビッドのとんでもなさは、「いたいた、こういう管理者!」と思うところもあるし、「流石にこんな管理者いないだろう」とあきれるところありですが、地なのか演技なのか、わからないリッキー・ジャーヴェイスの「怪演」が神がかっています。

また、社員たちの呆れた言動ややりとりもリアリティと非現実性がスレスレで絶妙のバランスです。ここまで緊張感無い職場では無かったですが、私が務めていたオフィスにも通じた緩い雰囲気はあって「あるある」の連続でした。

ジョークはかなりブラックだし、(イギリスのテレビではあまり珍しくなかった気がしますが)今の日本なら完全アウトでしょというようなハラスメント、差別発言も満載なので、不快に思う人もいるでしょうし、合わない人には全く受け付けられないコメディだと思います。なので、まずとりあえず一話を見て頂ければと思います。宜しければ、感想教えてください。

 

(出演)

リッキー・ジャーヴェイス

マーティン・フリーマン

ルーシー・デイヴィス

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

安宅和人 『シン・ニホン AI×データ時代における日本の再生と人材育成』 (NewsPicksパブリッシング、2020)

2020-05-17 07:30:00 | 

 筆者の熱い思いがダイレクトにぶつかってくる、日本・日本人に向けた警世の書である。衝撃的な日本の実情をファクトベースで示されショックは隠し切れないが、日本人のはしくれとしてこの国の未来のために私自身が何ができるだろうか、を考えるきっかけを与えてくれる。本の厚さに少々怯む(約440頁)が、明確な構成と論旨明確で読み易い文章なので、多くの人にお勧めしたい1冊だ。

「一人負けを続けた15年」の間にいかに日本がいけてない国になってしまったかの事実は思わず目を覆いたくなる。一人当たりのGDPの国際比較、一人当たりの生産性の国際比較、日本人世帯の貯蓄額低下などのマクロ統計数値的なものは散々見聞きしているが、GDPに占める人材育成投資比率の国際比較や米中日韓の科学技術予算の推移など、国の「将来」を左右する分野においても日本は既に圧倒的に残念な国になってしまっていることには愕然とする。

筆者が指摘する「AI-readyでない日本」は、今回の新型コロナ感染症の対応を見ても、本書が紹介する残念な統計を裏書きする形で、定性的にも白日の下にさらしてしまった。経団連が、成功のプラットフォームとしての日本が、「デジタル革新」×「多様な人々の想像/創造力」で達成されるという(p122)一方で、紙とファックスで感染者数の集計を行っている公共機関、1世帯布マスク2枚の配布が国民が国に期待し・必要とされる優先度の高い施策と考えるリーダー層の想像力/創造力などなど、具体的事例は枚挙にいとまない。

そのうえで本書の良さは、そうした残念な国になってしまっている日本が、どうしたらその潜在力を解き放てるかを、中長期の観点から具体的に語っていることである。この不確実で先が見通せない状況下で求められる人材はどういう人なのか、「未来を創る人」をどう育てていくのか、そのためのリソース配分はどうあるべきか、そして筆者自身の「風の谷」の構想が紹介される。個々の施策については、ミクロレベルでの実現可能性や緻密さなど、きっといろいろなハードルや問題点もあるだろう。でも、こういう議論と実践を、ここ数年政治家や国・企業のリーダーが思いをもって語り、実行に移そうとしているところを見たことがない気がする。まさに、こうした骨太の議論と実行が必要なのだと思う。厳しい現状に目を背けず、直視して、でもポジティブに将来像を構想し、実行プランを考える本書の姿勢は、少しでも多くの日本人が見習いたい。

 はしがきで筆者は言う。

「もうそろそろ、人に未来を聞くのはやめよう。
 そしてどんな社会を僕らが作り、残すのか、考えて仕掛けていこう。
 未来は目指し、創るものだ。」(p6)

その通りだと思う。私に何が作れ、残せるのか、考えて実行したい。

 

目次
1章 データ×AIが人類を再び解き放つ -- 時代の全体観と変化の本質
2章 「第二の黒船」にどう挑むか -- 日本の現状と勝ち筋
3章 求められる人材とスキル
4章 「未来を創る人」をどう育てるか
5章 未来に賭けられる国に -- リソース配分を変える
6章 残すに値する未来

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

延長中の緊急事態宣言下の東京風景 5月12日火曜日

2020-05-14 07:30:00 | 日記 (2012.8~)

 紙とハンコ仕事のため、4月10日以来1月ぶりに出社しました。前回は久しぶりの出社にワクワクだったのですが、今回は自分でも驚くほどメンタルが違ってました。「会社行けるかな?」「電車乗れるんだろうか?」「感染しないだろうか?」などなど、ワクワクどころか、漠然とした根拠不明な不安が次々と襲ってきます。自他ともに認める会社人間の私でも、3カ月で3回目の出社となるとこうなんです。緊急事態宣言の緩和に従って、これから、強制在宅勤務も徐々に緩んでくると思うのですが、結構、社員全般のメンタルケアというかリハビリプログラムは結構大事になってくると思いました。

 さてさて、4月の出社時は東京駅丸の内側を徘徊したので、今回はお昼休み時を使って八重洲口から銀座を回って、丸の内、大手町と散歩しました。まだまだ人影は少なく、週中の東京とは思えない様子は変わらないけど、4月に比べると幾分か人出は増えている気がしました。記録として、アップしておきます。


〈八重洲口から外堀通りを銀座方面に〉


〈銀座1丁目 中央通り〉


〈銀座 数寄屋橋交差点〉


〈有楽町駅前〉


〈丸の内 仲通り 緑が眩しい〉


〈仲通のCafe 外での食事には一番いい季節だが人影無し。(中にはいました)〉


〈東京駅 これでも4月よりは人増えてました〉


〈皇居方面を臨む〉


〈大手町のビルの隙間に現れる林〉


〈大手町 サンケイビル前 お弁当屋さんも余裕あり〉

来月の今頃はガラッと変わった風景になっていて欲しいですね。

2020年5月12日(火)

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

映画 『日々是好日』(監督:大森立嗣、2018)

2020-05-11 07:30:00 | 映画

茶道を題材に、日本の文化、自然、人についての奥深さ、豊かさ、繊細さを約100分の映像の中に凝縮させた佳作です。

アマゾンプライムにあったので視聴したのですが、コロナウイルス感染防止のため普段と異なった毎日を余儀なくされている今の日本人にぴったりの作品でした。私にとって、「日常」「人生」「音」を振り返る機会となりましたし、見る人それぞれの気づきが得られる作品だと思います。

茶道の師匠役である樹木希林と弟子役である黒木華の地に足に着いた演技が、落ち着いた映像にピタリと嵌り素晴らしいです。映画には茶道の所作が映されたり語られる場面がいくつか出てきますが、この二人には茶道に通じた役者としての所作を感じます。

映画の終盤、新年のお茶会で弟子たちを前に、師匠の武田先生(樹木)がこう言います。
「またこうして初釜がやって来て、まあ毎年毎年同じことの繰り返しなんですけれども、・・・こうして同じことができるってことが本当に幸せなんだなあって・・・」
この台詞の意味を噛みしめることができるのも今ならではです。

 

スタッフ・キャスト

監督:大森立嗣
原作:森下典子
脚本:大森立嗣

典子:黒木華
武田先生:樹木希林
美智子:多部未華子
雪野:鶴田真由
典子の父:鶴見辰吾

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

今読んだほうがいいマネジメント本: 倉貫 義人『管理ゼロで成果はあがる~「見直す・なくす・やめる」で組織を変えよう』(技術評論社、2019)

2020-05-07 07:30:00 | 

1年前、研修でお世話になった講師からのお勧めで購入したのですが、パラパラっとめくって、ちょっと私の職場には合わないと感じ、積んでおいたままになってた一冊です。この連休中に改めて手に取ってみたのですが、このコロナ期やafterコロナの時代に必読の一冊であることに気づかされました。

書かれている施策だけを表面的に見ていると現実離れしているように感じます。「組織の階層をなくす」、「評価をなくして、ボーナスは山分けする」、「教育は無くして、育つ環境を整える」などなど、積読になってしまったのも、筆者のような中小規模の会社ならともかく、一定規模以上の企業では「無理でしょ~」と思ってしまったところにありました。

しかし、改めて「はじめに」から丁寧に読んでいくと、一つ一つの施策がしっかりとした考え方や経営方針と結びついていて、合理的かつ論理的であること、そして今の若い人の感性や時代の方向とも合っていることが良く分かり、目から鱗が落ちる感覚でした。

筆者は「組織として圧倒的な成果を出すことと、そこで働く個人が圧倒的に楽しく仕事をすること-その両立こそが、実現したい組織の姿」(p9)として、そこに至るまでの3つのステップを置きます。第1段階として「生産的に働くこと」、第2段階として「自律的に働くこと」、そして第3段階として「独創的に働くこと」です。そのうえで、夫々の段階で、必要となる考え方や施策が語られます(エッセンスは下の目次をご覧ください)。

私の昨年の目の通し方のように、個々の施策、打ち手に目を奪われるのではなく、全体としての考え方やマインドをしっかり理解することが大切だと思います。なので、とっても平易で分かりやすい文章ですが、サーっと表面上を読み流すのではなく、底流に流れる発想や環境に思いを馳せて読むのが良いと思います。

そのうえで、細部としては、会議を情報共有の場でなく問題解決と設計や生産の場と捉えて、会議の中で成果物を一緒に作り上げる「協働作業」の場としていくという考え方や、「ホウレンソウ」よりも「ザッソウ」(雑談と相談)を大切にするという、生産性向上の考え方はとっても参考になりました。また、自律的に働く組織となるために必要な「信頼関係の構築」や「個人のモチベーションと会社への貢献を一致させることの重要性」は(グーグルの人事管理ノウハウとしても耳にしたことがありますが、)今までの昭和的マネジメントスタイルから抜けられない私世代の管理者は特に心する必要があると思います。

それにしても、米国でも最近取り入れられ始めているという「ノーレイティング」(評価無し)のやり方はもう少し深堀してみたいです。自分の経験においても、ルーティン化しがちな半期ごとの部下との目標設定や査定、そして組織内の評価調整にかける稼働・エネルギーは膨大なものがあります。そして本書にも指摘がありますが、それが社員の中長期のモチベーション向上や会社の業績向上に役立っているかと問われれば、無駄になっているとしか言いようがないのが私の現実の世界です。もちろん、評価を無くすという施策だけの話はないのですが、調べてみたい題材です。

一見、流行りもののハウツー本に見えますが、これまでのマネジメントの考え方に染まった管理者の人に一読を強くお勧めいたします。

 

(目次)

はじめに

第1部 生産的に働く ~楽に成果をあげるために“見直す”

やり方を見直す ~「ふりかえり」で抜本的に生産性を改善する
生産性を見直す ~「時間対効果」の高い仕事をする
タスクを見直す ~「タスクばらし」で小口化する
やる気を見直す ~無理に上げない、なくさない状況をつくる
信頼関係を見直す ~「心理的安全性」を生み出す環境
会議を見直す ~口を動かすだけでなく、いっしょに手を動かす
雑談を見直す ~ホウレンソウから「ザッソウ」へ
社内業務を見直す ~人手に頼らない「業務ハック」で改善を続ける
価値を見直す ~受託脳よりも提案脳で考える

第2部 自律的に働く ~人を支配しているものを“なくす”

管理をなくす ~セルフマネジメントで働くチームをつくる
階層をなくす ~「ホラクラシー」組織を実現する仕組み
評価をなくす ~個人の成長と会社の貢献の「すりあわせ」をする
数字をなくす ~組織のビジョンよりも自分のためならがんばれる
組織の壁をなくす ~信頼しあえる企業文化の育て方
急募をなくす ~仕事があっても、いい人がいなければ採用しない
教育をなくす ~自分の頭で考える社員の育て方
制度をなくす ~本質ありきで考える「そもそも思考」
通勤をなくす ~働く場所に縛られない「リモートチーム」

第3部 独創的に働く ~常識や慣習に従うことを“やめる”

既存のビジネスモデルに従うのをやめる ~納品のない受託開発
顧客を説得する営業をやめる ~対等な関係を作るマーケティング
新規事業の指示命令をやめる ~部活から生まれるイノベーション
規模を追求することをやめる ~組織の大きさもコントロールしない
会社らしくすることをやめる ~文化をつないでいくコミュニティ

おわりに

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

安宅和人 『イシューからはじめよ――知的生産の「シンプルな本質」』 (英治出版、2010)

2020-05-04 07:30:01 | 

コロナウイルス感染防止の巣ごもり生活で不自由な日々が続いていますが、買ったままになって読んでない本が優に1年分はあるので、まだまだドンとこいです。本書は10年近く前に購入したものですが、今も本屋さんで売っていますので、ビジネス書としてはなかなか長寿です。

いわゆるクリティカルシンキング、ロジカルシンキングといった思考法についてのハウツー本です。書かれているノウハウの多くは、既刊の類似書でも記載されていることですが、本書の特徴は、表題にある通り、思考の最初の一歩となる「イシューの設定」の重要さを特に強調しているところです。「まずすべきは本当に解くべき問題、すなわちイシューを『見極める』」(p45)ということです。

従って、本書の特徴は第1章「イシュードリブン 『解く』前に『見極める』」にあるといって良いでしょう。良いイシューの特定のために、「具体的な仮説を立てること」「良いイシューの条件」「イシュー特定のための情報収集の方法やコツ」が解説されます。

個人的になるほどと思ったのは、情報収集の仕方のノウハウ。集中的に一次情報を取りに行く期間を設けることや「コールドコール(知らない人に電話でインタビューを申し込むこと)ができるようになると生産性は劇的に向上する」(p79)といった点は、具体的で参考になりました。

まあ、あらゆるノウハウ本がそうですが、こうした本はゴルフの技術書と同じで読んでいるだけでは決して身につきません。書かれていることを「いかに普段の仕事の中で活用するつもりか」、「手と頭の両方を使ってとことん考え抜けるか」にかかっています。私も、この機会に改めて基本に返って意識して実践していきたいと思います。

本書は類似書の中では抜きんでて、必要事項を簡潔かつ分かりやすく記述しています。それが長寿の所以でしょう。本書を読んで、自ら汗をかく覚悟と実践があれば、間違いなく仕事の生産性と質をワンランク上げてくれる本だと思います。

(目次)

はじめに 優れた知的生産に共通すること
■序章 この本の考え方―脱「犬の道」
■第1章 イシュードリブン―「解く」前に「見極める」
■第2章 仮説ドリブン(1)―イシューを分解し、ストーリーラインを組み立てる
■第3章 仮説ドリブン(2)―ストーリーを絵コンテにする
■第4章 アウトプットドリブン―実際の分析を進める
■第5章 メッセージドリブン―「伝えるもの」をまとめる
おわりに 「毎日の小さな成功」からはじめよう


 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

藤井保文、尾原和啓 『アフターデジタル オフラインのない時代に生き残る』(日経BP社、2019)

2020-05-01 07:30:00 | 

非常に示唆に富む一冊である。アフターデジタルとは、「モバイルやIoT、センサーが偏在し、現実世界でもオフラインが無くなるような状況になり、『リアル世界がデジタル世界に包含される』という図式に再編される現象の捉え方」(p46)を言う。デジタルやオンラインを「付加価値」として活用するのではなく、「オフラインとオンラインの主従関係が逆転した世界」となるということだ。

本書では、そうした世界を今の中国に生まれているサービスやビジネスモデルを例にとって紹介し、思考法としての「OMO(Online Merges with Offline)」、すなわち「オフラインが存在しない状態」を前提としてビジネス展開を考えていくことの重要性が解説される。そしてその構成要素としてのユーザーエクスペリエンス、エコシステム、行動データ、状況志向、(バリューチェーンから)バリュージャーニーと言ったキーとなる考え方が、簡単な事例も併せて紹介される。

平易に書いてあるので、表面的に読むのと真の意味するところは理解できないままに終わるだろう。実は昨秋に読んでいたのだが、その時もそれなりに理解したつもりにはなっていたものの、今回再読し、読み過ごしていたところが多くあったことに気づかされた。「ぼーっと、読んでんじゃないよ」ということだ。

この発想の転換は、従来のプロダクトアウト、属性マーケティング的な考え方に染まった私世代のビジネスパーソンにはかなりハードルが高い。理解はできるのだが、実用に持って行くのは相当、手を動かし、頭に汗をかかないと、染みついたシミは取れないだろう。だが、世の中は確実にこの世界観にシフトしているのは肌感覚としても間違いない。

個人的には、この世界観が対法人ビジネスをどう変えるかということを考えていきたい。コンシューマ向けのダイレクトマーケティングが分かりやすい事例として出てきやすいが、法人ビジネスも確実に変えていくはずだ。

1年経ったらこの世界が当たりまえになっていて、更に新しいコンセプトが生まれている可能性もある。私たちは、好むと好まざると、こういう世界に生きている。

 

目次
第1章 知らずには生き残れない、デジタル化する世界の本質
 1-1 世界の状況、日本の状況
 1-2 モバイル決済は「すべての購買をIDデータ化する」
 1-3 シェアリング自転車は「生活拠点と移動をデータ化する」
 1-4 行動データでつなぐ、新たな信用・評価社会
 1-5 デジタル中国の本質 データが市民の行動を変え、社会を変える
 1-6 大企業や既存型企業の変革好事例「平安保険グループ」
 1-7 エクスペリエンスと行動データのループを回す時代へ

第2章 アフターデジタル時代のOMO型ビジネス~必要な視点転換~
 2-1 ビフォアデジタルとアフターデジタル
 2-2 OMO:リアルとデジタルを分ける時代の終焉
 2-3 ECはやがてなくなっていく
 2-4 転覆され続ける既存業態
 2-5 日本企業にありがちな思考の悪例
 2-6 企業同士がつながって当たり前 OMOの行き着く先の姿

第3章 アフターデジタル事例による思考訓練
 3-1 GDPR vs 中国データ共産主義 ~データの取り扱いをめぐる議論~
 3-2 「レアな接点」に価値がある時代
 3-3 技術進化による「おもてなし2.0」
 3-4 高速化・細分化・ボーダレス化する、これからのものづくり
 3-5 不思議で特異な日本の強み

第4章 アフターデジタルを見据えた日本式ビジネス変革
 4-1 次の時代の競争原理と産業構造
 4-2 企業に求められる変革
 4-3 日本企業が変わるには
 4-4 つながる世界での私たちのポテンシャル

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする