1年前、研修でお世話になった講師からのお勧めで購入したのですが、パラパラっとめくって、ちょっと私の職場には合わないと感じ、積んでおいたままになってた一冊です。この連休中に改めて手に取ってみたのですが、このコロナ期やafterコロナの時代に必読の一冊であることに気づかされました。
書かれている施策だけを表面的に見ていると現実離れしているように感じます。「組織の階層をなくす」、「評価をなくして、ボーナスは山分けする」、「教育は無くして、育つ環境を整える」などなど、積読になってしまったのも、筆者のような中小規模の会社ならともかく、一定規模以上の企業では「無理でしょ~」と思ってしまったところにありました。
しかし、改めて「はじめに」から丁寧に読んでいくと、一つ一つの施策がしっかりとした考え方や経営方針と結びついていて、合理的かつ論理的であること、そして今の若い人の感性や時代の方向とも合っていることが良く分かり、目から鱗が落ちる感覚でした。
筆者は「組織として圧倒的な成果を出すことと、そこで働く個人が圧倒的に楽しく仕事をすること-その両立こそが、実現したい組織の姿」(p9)として、そこに至るまでの3つのステップを置きます。第1段階として「生産的に働くこと」、第2段階として「自律的に働くこと」、そして第3段階として「独創的に働くこと」です。そのうえで、夫々の段階で、必要となる考え方や施策が語られます(エッセンスは下の目次をご覧ください)。
私の昨年の目の通し方のように、個々の施策、打ち手に目を奪われるのではなく、全体としての考え方やマインドをしっかり理解することが大切だと思います。なので、とっても平易で分かりやすい文章ですが、サーっと表面上を読み流すのではなく、底流に流れる発想や環境に思いを馳せて読むのが良いと思います。
そのうえで、細部としては、会議を情報共有の場でなく問題解決と設計や生産の場と捉えて、会議の中で成果物を一緒に作り上げる「協働作業」の場としていくという考え方や、「ホウレンソウ」よりも「ザッソウ」(雑談と相談)を大切にするという、生産性向上の考え方はとっても参考になりました。また、自律的に働く組織となるために必要な「信頼関係の構築」や「個人のモチベーションと会社への貢献を一致させることの重要性」は(グーグルの人事管理ノウハウとしても耳にしたことがありますが、)今までの昭和的マネジメントスタイルから抜けられない私世代の管理者は特に心する必要があると思います。
それにしても、米国でも最近取り入れられ始めているという「ノーレイティング」(評価無し)のやり方はもう少し深堀してみたいです。自分の経験においても、ルーティン化しがちな半期ごとの部下との目標設定や査定、そして組織内の評価調整にかける稼働・エネルギーは膨大なものがあります。そして本書にも指摘がありますが、それが社員の中長期のモチベーション向上や会社の業績向上に役立っているかと問われれば、無駄になっているとしか言いようがないのが私の現実の世界です。もちろん、評価を無くすという施策だけの話はないのですが、調べてみたい題材です。
一見、流行りもののハウツー本に見えますが、これまでのマネジメントの考え方に染まった管理者の人に一読を強くお勧めいたします。
(目次)
はじめに
第1部 生産的に働く ~楽に成果をあげるために“見直す”
やり方を見直す ~「ふりかえり」で抜本的に生産性を改善する
生産性を見直す ~「時間対効果」の高い仕事をする
タスクを見直す ~「タスクばらし」で小口化する
やる気を見直す ~無理に上げない、なくさない状況をつくる
信頼関係を見直す ~「心理的安全性」を生み出す環境
会議を見直す ~口を動かすだけでなく、いっしょに手を動かす
雑談を見直す ~ホウレンソウから「ザッソウ」へ
社内業務を見直す ~人手に頼らない「業務ハック」で改善を続ける
価値を見直す ~受託脳よりも提案脳で考える
第2部 自律的に働く ~人を支配しているものを“なくす”
管理をなくす ~セルフマネジメントで働くチームをつくる
階層をなくす ~「ホラクラシー」組織を実現する仕組み
評価をなくす ~個人の成長と会社の貢献の「すりあわせ」をする
数字をなくす ~組織のビジョンよりも自分のためならがんばれる
組織の壁をなくす ~信頼しあえる企業文化の育て方
急募をなくす ~仕事があっても、いい人がいなければ採用しない
教育をなくす ~自分の頭で考える社員の育て方
制度をなくす ~本質ありきで考える「そもそも思考」
通勤をなくす ~働く場所に縛られない「リモートチーム」
第3部 独創的に働く ~常識や慣習に従うことを“やめる”
既存のビジネスモデルに従うのをやめる ~納品のない受託開発
顧客を説得する営業をやめる ~対等な関係を作るマーケティング
新規事業の指示命令をやめる ~部活から生まれるイノベーション
規模を追求することをやめる ~組織の大きさもコントロールしない
会社らしくすることをやめる ~文化をつないでいくコミュニティ
おわりに