その後の『ロンドン テムズ川便り』

ことの起こりはロンドン滞在記。帰国後の今は音楽、美術、本、旅行などについての個人的覚書。Since 2008

映画 「イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密」 (監督モルテン・ティルドゥム 2014年)

2016-02-27 08:00:00 | 映画


 「第2次世界大戦時、ドイツの世界最強の暗号エニグマを解き明かした天才数学者アラン・チューリングの波乱の人生を描いた伝記ドラマ」(Yahoo映画より)

 私好みの映画だった。第2次世界大戦という大きな歴史的うねりの中での天才の人生というドラマ性、コンピュータや暗号の歴史的一面、戦時下の英国社会、同性愛の社会史といった、多面的要素を織り交ぜた興味深い作品だった。私の好きなつくりの映画。

 実在の人物の伝記に基づいた話だが、どこまでが事実で、どこが映画の中のフィクッションなのかはわからないが、少年期の戦前、エニグマを解き明かすミッションを課せられた戦中期、そして不幸の戦後の3つの時期を、行き来する物語は、見ていて集中が途切れることがなく、映像に引きつけつづけられる。

 各俳優陣の安定した演技、落ち着いて美しい映像、映像効果を高める音楽など、完成度の高い映画。お勧めしたい。


原題
THE IMITATION GAME

監督
モルテン・ティルドゥム
製作総指揮
グレアム・ムーア
原作
アンドリュー・ホッジェズ
脚本
グレアム・ムーア
音楽
アレクサンドル・デスプラ


キャスト

ベネディクト・カンバーバッチ:アラン・チューリング
キーラ・ナイトレイ:ジョーン・クラーク
マシュー・グード:ヒュー・アレグザンダー
ロリー・キニア:ロバート・ノック刑事
アレン・リーチ:ジョン・ケアンクロス
マシュー・ビアード:ピーター・ヒルトン
チャールズ・ダンス:デニストン中佐

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ジョン・P・コッタ― 『実行する組織 大企業がベンチャーのスピードで動く 』 (ダイヤモンド、2015年)

2016-02-24 19:32:10 | 


 ハーバード大学ビジネススクールの教授で、リーダーシップ論の世界的大家であるジョン・コッター氏の最新著作。原題は、”Accelerate: Building Strategic Agility for a Faster-Moving World.”。コッター教授のリーダシップ論は、以前から随分お世話になってきたし、サブタイトルの「大企業がベンチャーのスピードで動く」というのも、旬をとらえた関心のあるテーマなので、期待大きく読み始めた。

 本書の課題設定は、「俊敏かつ創造的に行動して機会をつかむには組織としてどうしたらよいか?」(p1)。そして、本書ではその解決方法として「デュアルシステム」を提唱する。デュアルシステムとは「階層組織とネットワーク組織の二重構造」(p33)を有する組織のことである。そして、本書はその組織をどう作っていくかが解説される。

  が・・・、読後感はもう一つ。期待外れと感じたのは、あまりにも「デュアルシステム」が概念的、抽象化された概念だったからだ。事例も一応紹介されているのだが、一般化がされてすぎていて現実感がない。残念ながら、現場の苦労のにおいがしないのである。

 パート、パートでは参考になるところはある。たとえば、デュアルシステムの肝は、「両方(階層組織とネットワーク組織)のシステムに所属する人員を通じて階層組織とシームレスにつながっている」(p34)ことと書かれているが、ネットワーク型の組織は専担社員で構成された方がより効果的と考えていた私には新しい発想だった。また、プロジェクトの推進には上から目線的なビジョン、戦略目標を提示よりも、まずは「大きな機会を」を示すことが大切という。チームの視線を外に向けるべき(p138)というのも、首肯できる。

 が、全般的には、コッター氏の過去のリーダーシップ論の焼き直し的なところも多く、私にとっては残念な一冊になってしまった。私からは、お勧めとは言い難い。


目次

はじめに

第1章 階層組織の限界
組織にとって最も根本的な問題
ネットワーク組織から階層組織へ
階層組織の限界
新しい道「デュアル・システム」
本書の構成

第2章 デュアル・システムとは何か
高業績企業は実施していた
デュアル・システムの構成
デュアル・システムを成功に導く五つの原則
八つのアクセラレータ
ネットワーク組織の波及効果
推進力を生むために

第3章 失敗事例に学ぶ、企業が陥りがちな罠
P社の事例――新しいCEO、新しい戦略
人事情報システムを開発する
はたして、プロジェクトの価値は
暗礁に乗り上げる
思い込みの罠

第4章 リーダーシップの本質と企業組織の進化
ベストプラクティスの限界
マネジメントとリーダーシップの違い
多くの企業がたどる、組織のライフサイクル
いま必要なのは、原点回帰アプローチ

第5章 成功事例にみる「五つの原則」「八つのアクセラレータ」
デュアル・システムをうまく回すには
業績が伸び悩むT社の挑戦
デビッドソン、五つの原則を肝に銘じる
アクセラレータ1 危機感を持ち、機会の実現をめざす
アクセラレータ2 コア・グループを形成する
アクセラレータ3 ビジョンを掲げ、イニシアチブを決める
アクセラレータ45 志願者を募り、イニシアチブを進める
アクセラレータ678 最初の成果を上げ、さらに成果を上げ続ける
誰もが驚いた二年後の成果
その他にも成功事例はある

第6章 真の危機感をいかに醸成するか
組織は本来的に自己満足に陥る
自己満足と偽の危機感
心を開き、外の現状に気づかせる
トップがロールモデルになる
成果を祝い、前向きのエネルギーを生む
いつでも、どこでも、誰に対しても

第7章 大きな機会、大きな可能性
なぜビジョンではなく、「大きな機会」なのか
ビジョン、戦略目標のデメリット
大きな機会を伝わりやすく示すには
ケース1 製造サービス会社の成長の加速
ケース2 サプライチェーンの改革
ケース3 医療関連企業の営業改革
ケース4 軍隊の組織改革

第8章 デュアル・システムを巡る「よくある質問」
多くの人の不安と疑問に答える

終章 企業の未来とデュアル・システム
変化は加速し続ける
戦略は大きく進化した

資料A 従来の変革手法はまだ通用するか
資料B いまデュアル・システムを導入すべきか

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リバプール国立美術館所蔵 英国の夢 ラファエル前派展 @文化村 ザ・ミュージアム

2016-02-20 09:00:00 | 美術展(2012.8~)

《このポスターは名古屋開催のもの》

 美術展は2月ぶりぐらい。

 英国リバプールにあるいくつかの国立美術館からラファエル前派の絵60数点を集めた見ごたえたっぷりの美術展。リバプールには、在ロンドン時に一度週末旅行で出かけたが、この時はビートルズ縁の地巡りの旅だったので、ウォーカー美術館等の存在は知っていたものの、足を運ぶ時間を取れなかった。

 ラファエル前派の絵はそれなりに見てきたつもりだったが、予想以上にラファエル前派を広くカバーした展示で、今回観た絵はほとんどが初めてだった。好きなジョン・エヴァレット・ミレイやジョン・ウィリアム・ウォーターハウスを初め、アルバート・ジョセフ・ムーアやジョージ・フレデリック・ワッツもあり、うれしい限り。私にはあまり馴染みは薄かったエドワード・ジョン・ポインターやジェイムズ・ハミルトン・ヘイと言った画家陣の絵も好みで、新しい発見もあった。


ジョン・ウィリアム・ウォーターハウス 《デカメロン》 1916年 油彩・カンヴァス


アルバート・ジョゼフ・ムーア《夏の夜》1890年に最初の出品 油彩・カンヴァス


エドワード・ジョン・ポインター《テラスにて》1889年に最初の出品 油彩・パネル


ジェイムス・ハミルトン・ヘイ 《流れ星》 1909年


 ラファエル前派やイギリス美術が好きな人は必見。時間が許せば、もう一度見に行きたい。3月6日まで。
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映画 「マイ・インターン」 (監督ナンシー・マイヤーズ 2015年)

2016-02-17 07:00:00 | 映画


 劇場公開中に見逃したのでDVDで視聴。肩の力が抜いて楽しめる佳作。ベンチャーのネット・アパレル会社を立ち上げた女性社長(アン・ハサウエイ)と、社会貢献施策として雇った70歳のシニア・インターン(ロバート・デニーロ)との交流を描くハートフル・コメディ。

 アン・ハサウエイ目当てに見たいと思った作品だったのだが、ロバート・デニーロの存在感に圧倒された。私のデニーロは、「タクシー・ドライバー」であり「ディア・ハンター」であるのだが、そのデニーロがこんな役柄をやるようになるとは・・・。驚くと同時に悲しいとことでもあるのだが、それでもデニーロはデニーロだった。人生の年輪を重ね、甘いも辛いも噛分けた熟(老)年の男性を見事に演じている。こんな70歳の高齢者になれたらなあと心底思う中年は私だけではないだろう。

 会話の小気味よさは脚本の良さか。「ハンカチは自分のために持つのではなく、人に貸すために持つんだ」なんてセリフには思わずにんまり。良質のアメリカ映画だ。


スタッフ
監督ナンシー・マイヤーズ
製作ナンシー・マイヤーズ、スザンヌ・ファーウェル
製作総指揮セリア・コスタス
脚本ナンシー・マイヤーズ

キャスト
ロバート・デ・ニー:ベン
アン・ハサウェイ:ジュールズ
レネ・ルッソ:フィオナ
アダム・ディバイン:ジェイソン
アンダース・ホーム:マット
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西田 宗千佳 『ネットフリックスの時代 配信とスマホがテレビを変える』 (講談社現代新書 2015)

2016-02-15 07:00:00 | 


 昨年9月に日本上陸した米国のネット動画配信会社ネットフリックスをきっかけに、日本のTV業界、視聴者の楽しみ方、生活がどう変わってきているかをレポートする。キーコンセプトはSVOD(Subscription Video On Demand:月額固定料金での見放題映像配信サービス)。

 日本のテレビは、ここ60年余りの間に、地上波放送、衛星・CS放送、ケーブルテレビ、デジタルテレビと変化を遂げてきたが、このSVODはさらにその変化を加速させそうだ。書籍、物販、IT、通信、音楽・・・デジタル化の波は、大きく既存の産業構造を変えてきたが、TVの世界にもいよいよそれが本格化するかもしれない。これまで、テレビの世界は、デジタル化とは言っても既存秩序の中の技術革新に過ぎなかった面があるので、このネットフリックスの流れは、業界秩序そのものを揺るがしてくれるのではないかとの期待がある。

 本書はそう言った業界、視聴者の動きを、わかりやすく、フェアに記述しているので、入門書として優れている。私自身は、それほどTVを見ないので、良質なプログラムが見たい時に安価に見れれば良い。これからの動きが注目される。


【目次】
第一章 ネットフリックスの衝撃
第二章 迎え撃つ「ニッポンのSVOD」
第三章 「テレビを見ない」時代と「イッキ見」
第四章 音楽でなにが起こったか
第五章 データがテレビを変える
第六章 「イッキ見」と「放題」で変わるコンテンツ

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N響 2月定期Cプロ/ 指揮:パーヴォ・ヤルヴィ / ニルセン 交響曲第5番ほか

2016-02-13 22:29:30 | 演奏会・オペラ・バレエ・演劇(2012.8~)
先週に引き続きN響定演。今日の東京は20℃を超える陽気で、風が強かったもののコート不要はもちろんのこと、ジャケットを羽織るのも暑いぐらいでした。どうなってんだろ、最近の天気は。

 今日はジャニーヌ・ヤンセン嬢(?)お目当てなのか、チケットは完売。やっぱり、完売の演奏会は良いですね。外の陽気以上に、ホール内も熱気でむんむんしてました。

 冒頭からブラームスのヴァイオリン協奏曲という大型プログラム。ヴァイオリン独奏のヤンセンさんはN響とは何度も共演しているようです。私は5年前にロンドンでダニエル・ハーディング/LSOとの共演で、同じブラームスのヴァイオリン協奏曲を聴いて以来です。指揮台にのぼったハーディングよりも背の丈が大きかったのが強く印象に残ってましたが、久しぶりに目にした彼女はやっぱり長身でした(KLMのフライトアテンドさん達が、皆飛行機の天井に頭がぶつかるんではないかと思うほど長身揃いだったのを何故か思い出した)。ただ、幅は当時よりも相当スマートになった感じ。

 演奏は安定感に溢れ、かつ情熱さと冷静さを併せ呑むようなバランスの良さを強く感じました。大きな音ではなりませんが、芯が強く、軸がしっかりしていて、音が3階席にもクリアに響いてきます。前回はどちらかというとパワフルさが印象に残ったのですが、芸風が変わったのでしょうか?音もスマートになった気がしました。N響の演奏はスケール大きく鳴らしてましたが、ヤンセンさんとの調和もしっかりとれていて、均整のとれたレベルの高い演奏でした。

 休憩後は、ニルセンの交響曲第5番。私は全くの初めてで、前日にユーチューブで1回聞いただけ。なので、あまり語る言葉を持たないのですが、すさまじい爆演でした。曲自体も、いろんな仕掛けが施されていて奥が深そうですが、クライマックスの弦のうねった演奏には鳥肌たちまくり。全編通して、木管、金管、打楽器の見せ場も多く、ダイナミックにまとめるパーヴォさんの捌きを堪能しました。爽快。終演後は、ものすごい拍手。明らかに先週のブルックナーより大きかった。

 余談ですが、カーテンコールの中、いつも私の横に座っている老婦人から初めて声をかけられました。「お兄さんはこの音楽お好き?毎回、来てるけど、この曲は全くわかりませんでしたわ。」とのことで、そそくさと帰られました。まあ、いろんな感じ方があるのでしょうね。

 パーヴォさんにも慣れましたが、どの演奏会もプログラムの趣向が違うのも面白いですね。それにしっかりついて行っているN響も大したものだと思います。春シーズンはパーヴォさんの登壇は無いようですが、次回の9月定演にますます期待が膨らみます。



《風は強いがポカポカ陽気》


《ヤンセンさんのアンコール曲》



第1830回 定期公演 Cプログラム
2016年2月13日(土) 開場 2:00pm 開演 3:00pm

NHKホール

ブラームス/ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 作品77
ニルセン/交響曲 第5番 作品50

指揮:パーヴォ・ヤルヴィ
ヴァイオリン:ジャニーヌ・ヤンセン

No.1830 Subscription (Program C)

Saturday, February 13, 2016 3:00p.m. (doors open at 2:00p.m.)
NHK Hall Access Seating chart

Brahms / Violin Concerto D major op.77
Nielsen / Symphony No.5 op.50


Paavo Järvi, conductor
Janine Jansen, violin
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映画 「アンコール!!」 (監督ポール・アンドリュー・ウィリアムズ、2012年)

2016-02-10 20:00:00 | 映画


 劇場公開されている時に気にはなっていたのだが、結局見過ごしたので、DVDを借りてみた。町のコーラスグループで歌う老夫婦の物語。イギリス映画らしい、派手さはないが、身近で心温まる人間ドラマ。

 前半は、見ていて他人ごとではないような気がして怖かった。主人公の常時不機嫌で頑固な老人アーサーのことである。最近、加齢とともに妙に気が短くなって、怒りっぽくなってきている覚えがある私には、年齢設定的には数十歳年上である老人アーサーが、何か私の将来を暗示しているようにも思えてしまったからだ。 ああいう老人にはなりたくないなぁって。でも最終的には、アーサーは自分の殻を破って、一歩前に出る。人間この気持ちがいくつになっても必要だ。

 映画は、主要俳優陣の演技がしっかりしているのでとても安心感、安定感がある。アーサーの奥さん役のバネッサ・レッドグレーブはベテランの味たっぷりだし、コーラスのインストラクターを演じたジェマ・アータートンがかわいい美人で、聞き取りやすいイギリス英語が嬉しい。ストーリーも起承転結がはっきりしていて、飽きさせない。

 素直に楽しめる佳作。
  

スタッフ
監督ポール・アンドリュー・ウィリアムズ
製作ケン・マーシャル、フィリップ・モロス
製作総指揮アリステア・ロスタラ・モロス

キャスト
テレンス・スタンプ アーサー
バネッサ・レッドグレーブ マリオン
ジェマ・アータートン エリザベス
クリストファー・エクルストン ジェームズ


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N響 2月定期A 指揮:パーヴォ・ヤルヴィ /ブルックナー交響曲 第5番ほか

2016-02-08 21:00:00 | 演奏会・オペラ・バレエ・演劇(2012.8~)


 冬の定期を締めるのは主席指揮者パーヴォ・ヤルヴィさん。このポストに就任してまだ半年もたちませんが、もうすっかりN響の顔として定着した感じがします。今回も期待大。

 マーラーの「亡き子をしのぶ歌」のバリトン独唱はマティアス・ゲルネさん。一昨年のN響定期で、ワーグナーのプログラムで聴いています。今回も、彼の渋く深みのある歌声が、この悲しい曲にマッチしていて心打たれました。オケのサウンドも透明感あるもので、美しかった。感傷的な歌詞ですが、演奏は淡麗としたもので、それにゲルネさんが色を加えるという印象でした。惜しむらくは、この曲にはNHKホールは大きすぎ。ゲルネさんの微妙なニュアンスが、私の3階席までは十分届いていないのではないかと感じました。こじんまりとしたホールで、しみじみと聴ければ、もっと深く胸に響くのではと思ったりしました。

 後半のブルックナーの交響曲第5番は、パーヴォさんとN響のコンビの素晴らしさが十二分に表れた演奏でした。パーヴォさんが振ると、どんな難しそうな曲でも、一本の光の筋がスーッとできて道が開けるように、見通し良く聞こえるから不思議です。今回のブルックナーもテンポよく、サクサクと進んでいきました。金管が気持ちよく鳴らしまくっているのが印象的でしたが、弦や木管とのバランスもしっかりとれていて、音楽としてのまとまりが決して崩れません。「こりゃあ、凄いわ~」と感心しながら聞いていました。

 ただ、私がブルックナーの交響曲は7番、9番以外は、あまり聴き慣れていないこともあって、この5番はまだ手に余る感じ。正直、途中、この曲ちょっと長すぎと感じてしまいました。ブルオタさんには怒られるかもしれませんが、三分の2ぐらいに、うまくまとめられないのかしら?

 割れんばかりの終演後の拍手の中、この演奏会をもって、定年で退団されるトランペットの佛坂さんに花束が贈呈されました。お疲れ様でした!

 次の土曜日も楽しみです。


《快晴のNHKホール前》


《終演後の原宿駅前。陽も随分長くなりました》

第1829回 定期公演 Aプログラム
2016年2月7日(日) 3:00pm
NHKホール

指揮:パーヴォ・ヤルヴィ
バリトン*:マティアス・ゲルネ

マーラー/亡き子をしのぶ歌*
ブルックナー/交響曲 第5番 変ロ長調(ノヴァーク版)


No.1829 Subscription (Program A)
Sunday, February 7, 2016 3:00p.m. (doors open at 2:00p.m.)
NHK Hall

Mahler / Kindertotenlieder*
Bruckner / Symphony No.5 B-flat major (Edition by Nowak)

Paavo Järvi, conductor
Matthias Goerne, baritone*
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柿崎 明二 『検証 安倍イズム――胎動する新国家主義』  (岩波新書、2015)

2016-02-07 07:30:00 | 


 安倍首相の考え方をその公式発言から読み解いた本。安倍さんが、経済の成長戦略を国家主導で強く推し進めていることは周知であるが、これらの諸施策(金融緩和、賃金、女性政策、人口対策)や教育、安保、歴史認識の諸分野について、その背景にある「国家観」について検証している。

 特に、何か新しい事実や情報が提示されているわけではないが、改めてこうして整理してもらうと、安倍さんの根本的な発想が良く理解できる。安倍さんにとっては、敗戦から1952年にサンフランシスコ条約で主権を回復するまでの7年半は、日本が日本でない断絶の時代(戦後レジーム)であったこと。そして、現在のほとんどの政策は、「強い国家」、「善意の国家」、「関わっていく国家」の文脈で理解できること。さらに、敵対的国家観や計画的自立経済といった考えは祖父の岸元首相の考えを受け継いだものであることなどである。

 岩波新書ということもあり、安倍さんへの批判的検証というスタンスはあるものの、公平かつ客観的に書かれていると思う。例えば、安倍さんの集団的自衛権容認はアメリカの要求によるものと私は思っていたが、時系列をたどるとそうではなく、安倍さんが自民党幹事長時代から集団的自衛権の行使については積極的肯定意見を述べているようだ。岸首相との相違点であるという、天皇制に対する考えや、より情緒的である国家観といった解説も興味深い。

 読みやすいし、分かりやすく書かれているので、安倍さんの政策の根本理解したい方にお勧めしたい。


目次

序章 国家性善説から国家先導主義へ
第1章 始まっている国家先導(賃金引き上げ 「瑞穂の国の資本主義」へ
  「女性の活躍」 経済的視点からの成長戦略
  人口政策 一億人超を目指す?l異次元緩和「関わっていく政治」の序章
  旅券返納事件と拉致被害者滞在延長 主体化する国家)
第2章 何を「取り戻す」のか(二つのメッセージ 「美しい日本」観の発露
  集団的自衛権 首相による解釈改憲こそ「王道」
  歴史認識 東京裁判は「勝者の断罪」
  教育改革と憲法改正 失われた「損得を超える価値」)
第3章 「国家」とは何か―祖父・岸信介と政治改革という二つの源流(国家と個人は「父と子」
  岸イズム
  「強い国家」を支えるもの 政治改革と内外の変化
  安倍は保守主義者か)
終章 国家先導主義の行方(積極的平和主義と対米従属
  「国民のため」から「国家のため」へ 反転の危険性)

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映画 「ブレイブハート」 (監督:メル・ギブソン、1995年)

2016-02-05 12:00:00 | 映画


 スコットランドを旅したとき、いろんなところで出会うのが、英雄ウィリアム・ウォレスの銅像、肖像画、碑文。そのウィリアム・ウォレスの生涯を描いた歴史映画である。1996年の第68回アカデミー賞で、作品、監督、撮影、音楽、メイクアップ、音響効果の6部門を受賞しているが、私は見るのは初めて。

 ハリウッドらしい人・物・金をかけた大作。今回はDVD視聴だが、映画館で観れば迫力が全然違っただろう。ハイランドの険しい風景(ロケは殆どアイルランドらしいけど)、ローランドの荒野などむき出しの自然が良く捉えられていてスコットランドの空気を感じることができる。音楽も映像にマッチしていて効果を高めている。

 ウィリアム・ウォレスを演じたメル・ギブソンはいかにもスターで貫禄抜群。イングランドの国王、エドワード1世のパトリック・マクグーハンなど、脇役陣も重厚。歴史のお勉強題材としてはフィクション部分が多いようだけど、スコットランドが国として全くまとまっていなかったこと、イングランドに対するスコットランドの立ち位置などが理解できる。

 あえて難点を言うと、戦闘における殺戮シーンや処刑場面など、結構目を背けたくなるシーンが多いのが、緩い映画好きの私には結構つらかったことかな。3時間近くの長い映画ということも加わって、見終わった後はぐったり。


スタッフ
監督メル・ギブソン
脚本ランダル・ウォレス
製作総指揮スティーブン・マケビティ
製作メル・ギブソン
アラン・ラッド・Jr.

キャスト
メル・ギブソン William Wallace
ソフィー・マルソー Princess Isabelle
パトリック・マクグーハン Longshanks-King Edward the 1st
キャサリン・マコーマック Murron
ブレンダン・グリーソン Hamish

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尾原 和啓 『ザ・プラットフォーム―IT企業はなぜ世界を変えるのか?』 (NHK出版新書、2015)

2016-02-03 08:00:00 | 


 アップル、フェイスブックなどのIT企業が作るプラットフォームの特徴を解説したものとしては、平野カール敦志さんの『プラットフォーム戦略』という本を読んだが、本書も似ており、昨今のプラットフォームビジネスについて紹介してくれている。

 内容の多くは、Webマガジンなどいろんなところでいろんな人が書いている記事とダブルところがあり、既視感があるのは事実。その中で、私にとって目新しかったのは以下の3点かな。

 「悪いほうに傾くことがあるプラットフォームの問題を「ビジネスモデルの重力」と呼ぶ。ユーザが声をあげることで、自然に悪いことは修正されていく。」私としては簡単には首肯はしがたい楽観論だが、見方としては面白い。

 「日本型プラットフォームはB2B2C型。リクルートやiモードや楽天がこのモデル。」これは確かに、ユーザとのダイレクトな関係性を構築する傾向のある米国ネットビジネスと比較すると、日本の特徴といえるだろう。

 「日本はコミュニケーション消費大国。着メロ、着うた、装飾メール、待ちうけ、着せ替えなどコミュニケーションを活性化させる能力に長けている。」確かにね。

 気安く読める一冊なので、すきま時間に読むのに適した一冊。特に、プラットフォームビジネスについて具体例を踏まえつつ、概論的に学びたい人、知りたい人向け。



目次

第一章 プラットフォームとは何か?
――IT企業、国家、ボランティア活動

第二章 プラットフォームの「共有価値観」
――グーグル、アップル、フェイスブックを根本から読み解く

第三章 プラットフォームは世界の何を変えるのか?
――3Dプリンタ、教育、シェアリングエコノミー

第四章 プラットフォームは悪なのか?
――ビジネスモデルの重力、ネットの倫理、現代のリベラルアーツ

第五章 日本型プラットフォームの可能性
――リクルート、iモード、楽天

第六章 コミュニケーション消費とは何か?
――ミクシィ、アイドル、ニコニコ動画

第七章 人を幸せにするプラットフォーム

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