その後の『ロンドン テムズ川便り』

ことの起こりはロンドン滞在記。帰国後の今は音楽、美術、本、旅行などについての個人的覚書。Since 2008

バイエルン国立管弦楽団/指揮:キリル・ペトレンコ/ワーグナー 楽劇「ワルキューレ」第1幕ほか @NHK音楽祭

2017-11-30 08:00:45 | 演奏会・オペラ・バレエ・演劇(2012.8~)
もう2か月前だし、沢山の方々が「名演!」を連呼されていたので、今さら感たっぷりだが、一応個人的記録として。

素晴らしい公演だった。サプライズばかり。

マーラーの「こどもな不思議な角笛」が始まって驚いた。オケの音がとっても柔らかい。いつも聴いているN響の音も柔らいかいけど、さらにその上を行っている。その上、音がきらびやかで、キラキラしてる。ゲルネはN響でも聴いているが、表現力豊かで、味わい深い。

後半のワーグナー「ワルキューレ 一幕」は更にインパクトのあるパフォーマンスだった。凄いのを聴いた。ジークムントを演じるフォークトの透明感あふれるテノールには終始痺れっぱなし。ジークミントのバンクラトヴァも、甲高くなく、自然体で美しいソプラノ。フンディング役のツェッペンフェルトも存在感たっぷりだった。

オケがこれまた素晴らしい。超自然体で、歌手を引き立てつつも、伴奏ではない。徒に大きな音を出すわけでもなく、しっかり自己主張してる。個々のパートもチェロを始め、木管・金管陣も心憎いほどうまい。NHKホール慣れしてない外国オケをこのホールで聞くと、いつも欲求不満が残るのだが(一昨年のロンドン響とか。このホールでの響かせ方はやっぱりN響がホームグランドとして世界一上手いと思ってしまう)、この日のバイエルン管はとてもアウェイとは思えない鳴らし方だった。質量のバランスが絶妙で、音が心にストレートに響いてきた。よっぽどペトレンコのバランス感覚が優れているのだろう。

終演後の大喝采はわたしのNHKホール史では最大級のもの。2年前のパーヴォさんのマーラー1番の時もすごかったが、勝るとも劣らない。私としては、今年No1を競う公演だった。胸がいっぱいになるという久々の体験だった。


バイエルン国立管弦楽団
指揮:キリル・ペトレンコ

2017年10月1日 NHKホール

マーラー/こどもの不思議な角笛
バリトン:マティアス・ゲルネ

ワーグナー/楽劇「ワルキューレ」第1幕 演奏会形式(ドイツ語上演)

ジークムント:クラウス・フロリアン・フォークト
ジークリンデ:エレーナ・パンクラトヴァ
フンディング:ゲオルク・ゼッペンフェルト

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シルヴァン・カンブルラン/ 読響/ メシアン:歌劇「アッシジの聖フランチェスコ」(演奏会形式/全曲日本初演)

2017-11-27 08:00:00 | 演奏会・オペラ・バレエ・演劇(2012.8~)


 14:00に開演し、終演は19:40過ぎ。35分の休憩が2度入るとはいえ、まさに日曜日の午後半日かけての壮絶な宗教体験だった。

 メシアンは一度だけ「トゥーランガリラ交響曲」を聴いたことがあるけど、正直私の理解の範疇を超えていた。そのメシアン唯一の歌劇で、全曲演奏は日本初演。しかも指揮はこの曲を世界で一番数多く振っているカンブルランということで、話題性に魅かれてやって来た。正直長かったけど、感動の観点からも、希少性と言う意味でも、来てよかったと思わせてくれた演奏会だった。

 演奏、独唱、合唱どれも良かったけど、印象に残ったのはまずは独唱。聖フランチェスコ役のヴァンサン・ル・テクシエは終始出ずっぱりだが、落ち着きがありながらも起伏に富んでドラマティックなバリトンは全幕を通じて、揺るぎない軸となって、劇そのものが非常に安定感のあるものに感じられた。また、天使役のエメーケ・バラートが実に透明感に溢れ、かつ静謐なソプラノで、彼女の声がホールに反響するとまるで天上から天使の声が響いてくるかのよう。また、皮膚病患者のペーター・ブロンダーの美しいテノールも良く響く。

 演奏も、一体何人の奏者が出ているのか数えるのも難しいほどステージに一杯のフルオーケストラが、カンブルランの統率の元、一糸乱れね素晴らしいものだった。特に、パーカッション部隊が大活躍。緊張感一杯に舞台を盛り上げてくれた。

 正直、前半は曲の雰囲気に慣れるのに精一杯なのと、どうも冗長に聴こえるところもあり辛いところがあった。が、2幕以降、どんどん緊迫感が増し、第2幕の鳥の合唱は様々な音の組み合わせが実に雄弁だったし、第3幕はクリスチャンではない自分が、これが法悦と言うものではなかろうかと思うほどの、圧倒的な演奏・合唱・独唱の迫力に覆われ、言葉を失う。

 音楽以外で思ったのは、やはりこのキリスト教という宗教の持つ力はとてつもないということ。ユダヤ教にしても、イスラム教にしても、これが宗教というものなのかもしれないが、神の万能さ、イエスの偉大さ、人間の罪深さという基本思想をこういう音楽にして植え付ける。もちろんメシアンが凄いのだろうけど、そこにネタを与えてるのはキリスト教。なんちゃって仏教徒の私なんぞには、ちょっと世界が違いすぎる。

 こんな曲を、この高いレベルで、日本で聴けるというのも驚きだ。しかもホールは満員である(少なくとも開演時は)。終演後の拍手ももちろん大きなもので、カンブルランさんには一般参賀付き。カンブルランさんも満足そうであった。何人かの人がツイートしていたけど、日本のクラシック史上に残る演奏会であったことは間違いない。


《カンブルランさんはお辞儀中》


《一般参賀》



読売日本交響楽団 第606回名曲シリーズ
2017 11.26〈日〉 14:00  サントリーホール

指揮=シルヴァン・カンブルラン

天使=エメーケ・バラート(ソプラノ)
聖フランチェスコ=ヴァンサン・ル・テクシエ(バリトン)
重い皮膚病を患う人=ペーター・ブロンダー(テノール)
兄弟レオーネ=フィリップ・アディス(バリトン)
兄弟マッセオ=エド・ライオン(テノール)
兄弟エリア=ジャン=ノエル・ブリアン(テノール)
兄弟ベルナルド=妻屋秀和(バス)
兄弟シルヴェストロ=ジョン・ハオ(バス)
兄弟ルフィーノ=畠山茂(バス)
合唱=新国立劇場合唱団
びわ湖ホール声楽アンサンブル
(合唱指揮=冨平恭平)

メシアン:歌劇「アッシジの聖フランチェスコ」(演奏会形式/全曲日本初演)

Popular Series No. 606
Sunday, 26 November 2017, 14:00 Suntory Hall

Conductor=Sylvain Cambreling

L' Ange=Emőke Baráth
Saint François=Vincent le Texier
Le lépreux=Peter Bronder
Frère Léon=Philippe Sly
Frère Massée=Ed Lyon
Frère Élie=Jean-Noël Briend
Frère Bernard=Hidekazu Tsumaya
Frère Sylvestre=Zhong Hao
Frère Rufin=Shigeru Hatakeyama
Chorus=New National Theatre Chorus & Biwako Hall Vocal Ensemble
Chorusmaster=Kyohei Tomihira

Messiaen: Saint François d'Assise (concert style, Japan premiere)

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身につまされて笑えず: 作・演出 野田秀樹/ 「表に出ろいっ!」English version ”One Green Bottle”

2017-11-25 08:00:00 | 演奏会・オペラ・バレエ・演劇(2012.8~)


2012年2月にロンドンで”THE BEE"を観て以来の野田さんの英語劇を鑑賞。THE BEEでも共演したキャサリン・ハンターとグリン・プリチャードが出演というのも嬉しい。

 イヤホンで大竹しのぶさん、阿部サダヲさん、野田さんが日本語で出演してくれているので、最初はイヤホンをつけて見始めたけど、英語と日本語のセリフのタイミングがずれるのと、両言語を追いかけるのがつらくて10分もせずにイヤホンは外してしまった。英語は100%聞き取れているとはとても言えないが、ハンターとプリチャードの英国アクセント英語が妙に懐かしく、自分がロンドンの劇場に居るのかと錯覚するほどだった。

 THE BEEが「報復の連鎖」を描いた作品だったが、本作は「不寛容の激突」とでも言うのだろうか。現代人の弱みを、コメディタッチで描いた佳作である。なのでパーツ、パーツはコミカルで面白いが、全体を通すとシニカルな一面を持っている。私なんかは、描かれているシーンで他人事とは思えない様な場面がいくつもあり、実は全然笑えなかった。ちょっと怖いぐらい。

 もともと日本語での原作(日本語版のキャストには黒木華が出ていたらしい)をわざわざ英語に翻訳して講演するぐらいだから、当然、世界を睨んだ芝居である。東京公演の後は、ワールドツアーに出るらしいので、大成功を祈念したい。


「表に出ろいっ!」English version”One Green Bottle”
英語上演・イヤホンガイド(日本語吹き替え)付
11月5日 14:00開演

日程
2017(平成29)年11月1日(水)~11月19日(日)
会場
シアターイースト
ストーリー
これは、父、母、娘の三人家族の物語。その夜、三人はそれぞれ絶対に外出しなくてはならない理由があった。しかし、飼い犬が出産間近とあって、誰かが家に残り、面倒を見なくてはならない。嘘、裏切り、あの手この手を使って、それぞれが他の二人をあざむき、なんとか家を抜け出そうとする。やがてそれぞれの「信じるもの」が明らかにされ、互いの中傷、非難、不寛容が、事態を思わぬ方向へと導いていく。
果たして彼ら三人に、救いはもたらされるのか?
作・演出 野田秀樹
英語翻案 ウィル・シャープ

出演
父 キャサリン・ハンター
“Father” Kathryn Hunter
娘 グリン・プリチャード
“Daughter” Glyn Pritchard
母 野田秀樹
“Mother” Hideki Noda

演奏 田中傳左衛門

スタッフ
作・演出:野田秀樹
英語翻訳:ウィル・シャープ
美術:堀尾幸男
照明:クリストフ・ワーグナー
衣裳:ひびのこづえ
作調:田中傳左衛門
サウンドデザイン:原摩利彦
音響:藤本純子
ヘアメイク:赤松絵利
バック・トランスレーション:常田景子 ピーター・マーシュ
演出助手:ラガ・ダール・ヨハンセン
プロダクション・マネージャー:ニック・ファーガソン

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「ゴッホ 最期の手紙」 (監督ドロタ・コビエラ/ ヒュー・ウェルチマン)

2017-11-23 08:00:00 | 映画


前知識ゼロで観に行ったら、ゴッホの絵をベースにしたアニメーション映画だったのでで驚いた。中身はゴッホの自殺の謎を解きほぐしていく話で、ストーリー的にも面白く、不遇なゴッホの半生が実感を持って分かったので、見て良かったと思わせてくれる映画だった。

私がこれまでに読んだ数冊の「西洋美術史」概説的な本からの記憶では、「ゴッホの死は精神の病がもとでピストル自殺した」とのことだったので、実はその死を巡っても謎があることは初めて知った。(ただ、どこまで映画に出てくるエピソードが、どこまで実際の検証に基づいたものなのか、それとも全くの作り話なのかの区別がつかないので、私にはよくわからない。)

また、これまで、ゴッホの絵は、いろんなところでそれなりに観ている(ついこの間も『郵便配達人ジョゼフ・ルーラン』がボストン美術館展で来日していた)ので、一つ一つの風景や人物が思い当り、今まで見た絵に更に奥行が出来たような気になる。もう一度、其々の絵を見てみたいと思う。

絵画好きの人には自信持ってお勧めできる一作。


スタッフ
監督ドロタ・コビエラ ヒュー・ウェルチマン
製作 ヒュー・ウェルチマンイバン・マクタガードショーン・M・ボビット
製作総指揮 デビッド・パーフィットシャーロッテ・ウベンラウリー・ウベンガード・シェパーズクローディア・ブリュームフーバーエドバルト・ノルトナー
脚本ドロタ・コビエラヒュー・ウェルチマン
撮影 トリスタン・オリバーウカシュ・ジャル
美術 マシュー・バトン
衣装 ドロタ・ロクエプロ
編集 ユスティナ・ビエルシンスカドロタ・コビエラ
音楽 クリント・マンセル

キャスト
ダグラス・ブース アルマン・ルーラン
ジェローム・フリン ガシェ医師
ヘレン・マックロリー ルイーズ・シュヴァリエ
クリス・オダウド ジョゼフ・ルーラン
シアーシャ・ローナン マルグリット・ガシェ
ジョン・セッション ズタンギー爺さん
エレノア・トムリンソン アドリアーヌ・ラヴー
エイダン・ターナー 貸しボート屋
ロベルト・グラチーク フィンセント・ファン・ゴッホ
ピョートル・パムワ ポール・ゴーギャン

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観てから聴くか、聴いてから観るか? N響 11月定期Cプロ/ 指揮:トゥガン・ソヒエフ /プロコフィエフ(スタセヴィチ編)オラトリオ「イワン雷帝」作品116

2017-11-20 08:00:00 | 演奏会・オペラ・バレエ・演劇(2012.8~)


 今日はプロコフィエフ「イワン雷帝」の一本勝負。私は全く初めて聞く曲だが、映画音楽としてプロコフィエフが作曲した音楽だそうだ。演奏、独唱、合唱、語りのそれぞれが持ち味を十分に発揮し、それを見事に捌いたソヒエフの指揮で、実に充実した公演となった。

 N響は、いつもながらの高性能な弦楽器、管楽器に加えて、打楽器陣が大活躍。聴き応え満載だった。特筆すべきは、東京混声合唱団と東京少年少女合唱隊の合唱。つい先日、ウイーンの楽友協会のコーラスをブラームス「ドイツ・レクイエム」で聴いて感動したばかりだが、合唱の静謐さ、清らかさは、決して楽友協会に劣らない。ダイナミックに展開する物語の中心となる活躍だった。片岡愛之助の低い落ち着いた声域から発せられる語りは、声域とは異なる力のこもったものだった。片岡氏の語りについては、ツイッターには賛否両論あったようだが、私は物語を理解のためにはずいぶん助けになったし、音楽と多少かぶるところがあったにせよ、音楽の雰囲気を壊さずに場も盛り上げ、よかったと思う。

 これだけの大編成の舞台を、何ら迷いなく、メンバーを統率していくソヒエフさんの指揮は実に素晴らしい。まだ若いけど、本当にこれからが楽しみな人だ。おそらく同世代ぐらいだと思うのだが、私が注目しているヤニック・ネゼ=セガンと被るのだが、既に一定のポジションを確立していると思うが、今後のさらなる活躍を期待したい。 

 聴きながら、観たことのない映画のシーンが目に浮かぶ。このシーンはどう描かれているのか?自分が持つこの音楽のイメージと同じなのか違うのか?ぜひ、映画の方もを見てみたい。どうでもいいが、雷帝って、英語だと the Terribleになるんだ。歴史用語だろうけど、雷帝という日本語訳も面白い。
 


第1871回 定期公演 Cプログラム
2017年11月18日(土) 3:00pm
NHKホール

指揮:トゥガン・ソヒエフ
メゾ・ソプラノ:スヴェトラーナ・シーロヴァ
バリトン:アンドレイ・キマチ
合唱:東京混声合唱団
児童合唱:東京少年少女合唱隊
語り:片岡愛之助
 
プロコフィエフ(スタセヴィチ編)/オラトリオ「イワン雷帝」作品116

No.1871 Subscription (Program C)
Saturday, November 18, 2017 3:00p.m.
NHK Hall
Tugan Sokhiev, conductor
Svetlana Shilova, mezzo soprano
Andrei Kimach, baritone
The Philharmonic Chorus of Tokyo, chorus
The Little Singers of Tokyo, children's chorus
Ainosuke Kataoka, narrator
 

Prokofiev / Stasevich / “Ivan the Terrible”, oratorio op.116
 

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「遥かなるルネサンス 天正遣欧少年使節がたどったイタリア」展 @東京富士美術館

2017-11-18 09:00:00 | 美術展(2012.8~)

《ビア・デ・メディチの肖像》
1542年頃 油彩,板 64×48cm
ウフィツィ美術館
© Gabinetto Fotografico delle Gallerie degli Uffizi

 知人から招待券を頂き、八王子の奥深いところにある東京富士美術館に行ってきた。訪れるのは2回目。創価学会の美術館だが、常設展示も西洋絵画の凄い作品が揃っていて、学会パワーを感じる美術館。館内はゆったりした空間で、都心の美術館には無い、落ち着いた良さがある。

 今回の企画は、1582年(天正十年)に、宣教師ヴァリニャーノが伊東マンショら4人の日本人少年をヨーロッパへ送り出した天正遣欧使節の足取りを追い、訪れたイタリア各地の都市の美術を訪問順に紹介したもの。日本史好きの私には興味深い切り口。

 展示は当時のイタリア・ルネサンス期の絵画やタピスリー、工芸品が中心。中でも、ポスターにもなっているブロンズィーノの《ビア・デ・メディチの肖像》はひときわ光を放っていて圧巻だった。気品にあふれた姿で、絹のような白く柔らかで潤いを感じる肌や貴族の子女らしいドレスと装飾品が、濃いブルーの背景から浮き上がって見える。人物全体とパーツの両方に目を奪われる。

 それにしても、戦国時代真っ盛りの日本から、ルネサンスのイタリアやポルトガル、スペインを訪れた彼らのカルチャーショックはいかほどのものだっただろうか。今のようにふんだんに情報が溢れている世の中でさえ、初めての異国経験の興奮や驚きは、人生の上でも何物にも代え難い。展示を見ながら、彼らが受けた衝撃を想像するのも楽しいものだった。

 東京富士美術館にて12月3日まで。



2017年10月8日 訪問

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こういうタイトルはやめてほしい! 木村泰司 『世界のビジネスエリートが身につける教養「西洋美術史」』(ダイヤモンド社、2017)

2017-11-16 08:00:00 | 


まず出版社にお願い。こういう恥ずかしいタイトルは止めて欲しい。内容的に買ってもいいかなと思っても、このタイトルでは内気な私にはとても買えない。

なので、図書館で借りて読んだ。とっても簡単に2500年の西洋美術の歴史がまとめてある。美術史鷲掴みという感じだ。初めから終わりまで、語り口が同じなので、同じトーン・視点で読める。ピカソなどのキュビズムやダリらシュールレアリズムに全く触れらていないのには驚いたが、近代絵画以前は必要最小限のことは網羅されている。政治史、社会史的な動きも踏まえているのも良い。私にはパーツ・パーツは既知の内容が殆どだったけど、全体を通して読むことで、改めて美術史全体を概観できたし、忘れかけていた知識を呼び戻すきっかけにもなった。

 なので、なおさらこのタイトルはもったいないなあ。このタイトルに魅かれて読む人よりも、このタイトルで避ける人の方が多いでしょう。一体、このタイトルに魅かれて読む人って、どれだけいるんだろう。

 あと本書とは直接関係ないが、私の限られたグローバルビジネス経験で言うと、ビジネスベースのパーティで欧米人と絵画の話をして盛り上がった記憶は1度もないし、社員の95%が欧州人だったロンドンの職場でも、絵について話ができた同僚は一人しかいなかった。IT系の会社と言うこともあるのだろうけど、ロンドンでもフランクフルトでもアムステルダムでもシリコンバレーでも・・・、経営者クラスのビジネスパーソンと話して、サッカーで盛り上がったことは数多いけど、絵の話題で盛り上がった経験は一度もない!(オペラは一度だけある)まだ日本の方が当たる確率は多い。よって、「教養」自身は私はとっても大切だと思うけど、それがビジネスの役に立つとか、ビジネスエリートのための必要条件とかいう論者には全く賛同できない。「教養」はほんと自分の楽しみのためだけに身につけるものだと思う。それだけで「教養」は何より十分に楽しい。



【もくじ】
はじめに 美術史とは、世界のエリートの「共通言語」である

第1部 「神」中心の価値観はどのように生まれたのか?
なぜ、古代の彫像は「裸」だったのか?/ローマ帝国の繁栄と帝国らしい美術の発達/キリスト教社会がやってきた/フランス王家の思惑と新たな「神の家」

第2部 絵画に表れるヨーロッパ都市経済の発展
西洋絵画の古典となった3人の巨匠/都市経済の発展がもたらした芸術のイノベーション/自由の都で咲き誇ったもうひとつのルネサンス/カトリックVSプロテスタントが生み出した新たな宗教美術とは?/オランダ独立と市民に広がった日常の絵画

第3部 フランスが美術大国になれた理由
絶対王政とルイ14世/革命前夜のひとときの享楽/皇帝ナポレオンによるイメージ戦略

第4部 近代社会は、どう文化を変えたのか?
「格差」と「現実」を描く決意/産業革命と文化的後進国イギリスの反撃/産業革命の時代に「田舎」の風景が流行った理由/なぜ印象派は、受け入れられなかったのか?/アメリカン・マネーで開かれた「現代アート」の世界
コメント (2)
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N響 11月定期Aプロ/指揮:マレク・ヤノフスキ/ ベートーヴェン 交響曲 第3番 変ホ長調 作品55「英雄」ほか

2017-11-14 08:00:00 | 演奏会・オペラ・バレエ・演劇(2012.8~)


 ここ数年、東京・春・音楽祭でN響と素晴らしい《ニーベルングの指環》を聞かせてくれた名匠ヤノフスキさんが、定演で振るとあって、とても楽しみにしていました。

 前半2曲のヒンデミットはの作品は初めてでしたが、オーケストレーションが楽しめました。2曲目の「木管楽器とハープと管弦楽のための協奏曲」では、第3楽章で、奥さんへの銀婚式へのプレゼントとして、クラリネットだけがメンデルスゾーンの《結婚行進曲》を演奏し続けるという仕掛けが織り込まれています。何と、ウイットと愛に富んだプレゼントでしょう。微笑ましいですね。

 後半の「英雄」は生で聴くのは随分久しぶりです。ベートーヴェンにしてはステージにやたら奏者が多いなあと思ったら、指揮者の方針で倍管での演奏とのことでした。ただ、演奏の方は人数にものを言わせてブイブイという類のものでは全くなく、むしろ抑制され、密度の濃いアンサンブルでした。ヤノフスキさんは、テンポや強弱を絶妙にコントロールし、立体感豊かにこの曲を聞かせてくれます。いつもながらですが、指揮者の指示に的確に反応している(ように見える)N響もさすが。第4楽章の颯爽とした流れなどは素晴らしく、名演奏であったことは間違いありません。

 ただ、全体としては、私の好みとは少々違っていた感じ。何が合わなかったのか、自分でもよく説明できないのですが、今回の演奏からは、私が勝手にこの音楽に期待しまっている喜怒哀楽的な人のエモーショナルな部分よりも、音楽的な上手さとか精巧さをより強く感じてしまったところがあったのかもしれません。まあ、ど素人のたわごとなのですが・・・

 それにしても、今回ヤノフスキさんはこの1プログラム2公演だけのための来日なんですかね~。何かとってももったいない感じ。もったいないと言えば、ヤノフスキさんで「英雄」なら、満員間違いなしなのかと思ったけど意外に空席がありました。私の後ろ一列は、前半は丸ごと空いてました。強力な裏番組があったのでしょうか。

 来年の東京・春・音楽祭の「ローエングリン」がヤノフスキさんでないのがすこぶる残念なのですが、また是非、来日ください。お待ちしています~

PS 紅葉が綺麗だったので、何枚かスナップを。








第1870回 定期公演 Aプログラム
2017年11月12日(日) 3:00pm
NHKホール

指揮:マレク・ヤノフスキ

フルート:甲斐雅之
オーボエ:茂木大輔
クラリネット:松本健司
ファゴット:宇賀神広宣
ハープ:早川りさこ

ヒンデミット/ウェーバーの主題による交響的変容
ヒンデミット/木管楽器とハープと管弦楽のための協奏曲
ベートーヴェン/交響曲 第3番 変ホ長調 作品55「英雄」

No.1870 Subscription (Program A)
November 12, 2017
NHK Hall  
 
Hindemith / Sinfonische Metamorphosen über Themen von C. M. von Weber
Hindemith / Concerto for Woodwinds, Harp and Orchestra
Beethoven / Symphony No.3 E-flat major op.55 “Eroica”

Marek Janowski, conductor

Masayuki Kai, flute
Daisuke Mogi, oboe
Kenji Matsumoto, clarinet
Hironori Ugajin, bassoon
Risako Hayakawa, harp


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フェドセーエフ指揮/ チャイコフスキー交響楽団 『エフゲーニ・オネーギン』  @2017NHK音楽祭

2017-11-12 08:00:00 | 演奏会・オペラ・バレエ・演劇(2012.8~)
 月並みですが「さすが本場もん」と思わせてくれる公演でした。『エフゲーニ・オネーギン』の実演は2回目。2010年にウイーン国立歌劇場でのオペラ初体験以来です(小澤征爾さん目当て半年前に取ったチケットだったのだけど、小澤さんの病気休養で、キリル・ペトレンコが代役だったという、記憶に残る公演でした)。物語は好きとはとても言えないけど、音楽の美しさは物語のしょぼさを補って余りあるものです。(プーシキンの原作を読めば、感動するのかな?)

 今回は、そのチャイコフスキーの名作品を、N響でおなじみのフェドセーエフ(私は勝手にフェド翁と呼んでます)さんが、1974年以来現在まで(何と43年!)音楽監督を務めているチャイコフスキー響でさばきます。さすが息の合い方が半端ない。これほど「手兵」という表現が相応しいコンビは滅多にないです。この作品のツボを押さえて、弦は厚くはあるが重くはなく、管は雄弁でキラキラした響きでした。

 歌手陣も一部の日本人を除いては、ロシア勢が主要役柄を固めます。タチヤーナ役のヴェロニカ・ディジョーエヴァは太めの芯のしっかりした歌声。オネーギン役のワシーリー・ラデュクもホール一杯に響く美しいテノールでした。人種が違うってこういうことなんでしょうねという感じです。

 一方で、日本人組も大活躍で、トリケ役の清水徹太郎さんの滑らかで清明なテノールは、ロシア組とは違った個性豊かなものでしたし、新国の合唱団はいつもながら透明感あふれるコーラスでした。

 残念だったのは、N響の定期演奏会では見たことのないような空席の多さ。2階、3階はかなり空席が目立ちました。オケの知名度なんでしょうか?価格だって外オケ、演奏会方式とはいえオペラという条件で考えれば決して高くはないですし、なぜなんでしょう?よくわかりません。

 ただ、終演後の拍手は、満員のNHKホールと変わらない大きなもので、ホール内が明るくなってからも、何度もフェド翁や歌手陣が呼び返されていました。



チャイコフスキー交響楽団(旧モスクワ放送交響楽団)
NHKホール
17/11/9 18:00開演

指揮:ウラディーミル・フェドセーエフ

タチヤーナ:ヴェロニカ・ディジョーエヴァ
エフゲーニ・オネーギン:ワシーリー・ラデュク
レンスキー:アレクセイ・タタリンツェフ
オリガ:アグンダ・クラエワ
ラーリナ:エレーナ・エフセーエワ
グレーミン公爵:ニコライ・ディデンコ
フィリッピエーヴナ:エレーナ・マニスティーナ
トリケ:清水徹太郎
ザレーツキー&中隊長:五島真澄

合唱:新国立劇場合唱団

曲目・演目:
チャイコフスキー/歌劇「エフゲーニ・オネーギン」全3幕
演奏会形式(ロシア語上演・日本語字幕付)


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ドゥニ・ビルヌーブ監督  「ブレード・ランナー2049」

2017-11-10 19:10:33 | 映画


 マニアというほどではないが、旧作「ブレード・ランナー」は、「未来世紀ブラジル」と並んで学生時代から大好きな作品の一つである。DVDも持っている。あの不思議で混沌とした未来都市ロサンジェルスや感情を持ち始めたレプリカント(アンドロイド)の衝撃は、今でも忘れられない。その続編がいよいよ制作されたということで、期待感一杯で出かけた。

 前作の世界観を引き継ごうとする意志は感じられたし、続編がオリジナルを超える出来栄えになることなど殆どないということも分かってはいるものの、内容は少々がっかりだった。描かれた世界や技術に新規性は感じられず、新たなサプライズがない。陳腐なアクションムービーになってしまっている印象を受けた。2時間40分の上映時間も冗長だ。

 今の我々の現代社会では、過去にさまざまなSF映画で描かれた未来技術や未来社会は、かなり現実味を帯びてきている。そんな中で、新規性を持つSF映画を創作することは相当難しいのだろうということが感じられた。ストーリーの軸も、前作が描いたような人間対レプリカントという構造ではなく、この作品はレプリカント対レプリカントだ。人間の出る幕はほとんどない。

 ネットの評判は驚くほど好意的なので、私の事前の期待値が高すぎただけかもしれないが、私には残念な映画となった。


スタッフ
監督ドゥニ・ビルヌーブ
製作アンドリュー・A・コソーブ、ブロデリック・ジョンソン、バッド・ヨーキン、シンシア・サイクス・ヨーキン

キャスト
ライアン・ゴズリング: K
ハリソン・フォード: リック・デッカード
アナ・デ・アルマス: ジョイ
シルビア・ホークス: ラヴ
ロビン・ライト: ジョシ


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秋真っ盛りの山中湖 (2017.11)

2017-11-08 08:20:00 | 旅行 日本
 3連休の前半。山中湖に紅葉を見に行ってきました。昨年は10月下旬に行ったのですが、紅葉には早すぎたので、今年は2週間遅らせて出陣。紅葉も後半という頃合いでしたが、天気にも恵まれ、日本の秋を堪能しました。

3年連続で訪れている「紅葉まつり」。ライトアップが美しいです。




《夕闇に浮かぶ富士山》

 ポケットカメラではなかなか綺麗に撮れないのが残念ですが、雰囲気だけでも。





 翌朝は朝食前に湖畔をジョギング。前週のフルマラソンの疲れがようやく抜けてきました。



 宿をチェックアウト後は、自転車を借りて湖畔をまた一周。秋の澄み切った空気が瑞々しいです。






《紅葉と湖と富士山》




≪落ち葉の絨毯の上を走ります≫


≪山中浅間神社の境内≫

2017年11月3-4日

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水戸 半日歴史ツアー

2017-11-05 10:25:32 | 旅行 日本
 昨年、水戸黄門漫遊マラソンで初めて水戸を訪れた際、念願の水戸室内管弦楽団の演奏会に行けたのは何よりの思い出ですが、水戸観光の時間は取れませんでした。今年こそはということで、前泊した土曜日の午後数時間を観光に充てました。

 ただ、生憎の台風で刺激を受けた秋雨前線の影響で雨。なので、行先は絞って室内系の観光スポットへ。まずは、マラソン大会本部と隣接している弘道館へ。1841年に仮開設された江戸時代の日本最大の藩校です。過激な尊王思想で有名な水戸藩士を育てたところであり、最後の将軍徳川慶喜も幼少時にはここで学んだそうです。今残っている建物(本庁、至善堂。どちらも重要文化財)は弘道館の一部ですが、それでも廊下は20~30メートルはあるように見えますから、相当の大きさがあります。


《弘道館 正門》





 地元の観光ボランティアのおばさまにご案内頂き、室内を見て回りました。学制が発布された1872年に閉鎖されてから150年弱しかたってないせいか、まだ藩士たちの勉学や武道鍛錬の熱気が残っているような気がします。「気」を感じるんですね。30分もかからない程度で見学できるだろうと思っていたのですが、思いのほか面白く、1時間弱も見ておりました。敷地内には立派な梅や桜の木が植えてあったので、花の季節に来れればもっと美しいかと思います。


《正面玄関から入った最初の部屋》


《廊下も長い》


《光圀が編纂した大日本史 教科書として使われていたのでしょう》

 その後、水戸光圀が大日本史を編纂した「彰考館」跡地へ。今は水戸二中となっていますが、記念碑がたっています。



 その後は、水戸駅からバスに乗って茨城県立歴史館へ。そこで開催中の特別展「志士のかたち 桜田門、天狗党、そして新撰組」を見学しました。尊王、佐幕に拘らず、幕末の志士たちの動きに光を当てた展示です。徳川斉昭、吉田松陰、西郷隆盛、近藤勇の直筆の手紙、大久保利通の日記など、生々しい史料は本物ならではの迫力があります。天璋院(篤姫)が使っていたという香炉とかもありました。


《銀杏並木が綺麗》



 私として目新しかったのは、旧水戸藩士らが起こした幕末の乱である「天狗党の乱」について詳しく知れたこと。乱そのものの存在は知ってましたが、1000名規模の武士が加わったものだったこと、300名以上の乱に加わった武士が切腹の処分を受けていることなどは知らず、勉強になりました。

半日足らずの駆け足観光でしたが、歴史好きの私には十二分に満足な観光となりました。



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第2回水戸黄門漫遊マラソン完走記:荒れ模様の天気の中のボランティア、サポーターの皆さんに大感謝! 

2017-11-01 06:32:35 | ロードレース参戦 (in 欧州、日本)


 昨年の第1回に引き続き、水戸黄門漫遊マラソンに出走。ただ今回は天候に恵まれず、前日午後から台風の影響で活発化した秋雨前線によりずーっと雨。前泊したホテルで5:45に目が覚めたが、冷たい雨が降りしきるどんよりした朝にがっかり。

 9:00スタートのレースにぎりぎりまで部屋で待機し、8:20にホテル出発。8:30にはスタートエリアには到着したものの、雨が強く店舗の下で待機。さすがに15分前にはスタートエリアに立つが、体が冷え辛い。ゲストの増田明美さんとランナーたちで、水戸黄門の歌を歌うが、あまりにも自虐的なシチュエーションで苦笑い。


《店舗前で待機中》


《幾分、人数少ない》

 9時にスタート。雨がランナーのかっぱに落ちる音と、雨合羽が擦れるシャ、シャという摩擦音が、コオロギの合唱のよう。靴がぬれると重くなるので、なるべく水溜まりを避けて走る。台風の予想に棄権が多いのか、コースはさほど混雑せず、走りやすい。こんな雨中に、道路脇は驚くほど応援団が一杯。昨年と変わらないぐらい。うれしくて涙が出てきた。


《いよいよスタート。どんなレースになるのやら》

 5キロは27分24秒。理想的な入り。雨は若干小降りになったかなと感じると、すぐにまた強くなる。周りで雨合羽を脱ぎ始める人が出る。脱ぐべきか、脱がないべきかが気になった。脱ぐとランニングシャツが濡れて重くなるし、脱がないと体の汗と熱気が内にこもってこれも気持ちが悪い。12時ごろにいったん雨が小降りになるとの予想もあったので、それまでは我慢して着ているのが正解だろうと思って着続けた(ただ、結局、雨は弱くならず、最後まで着通しだった)。とにかく、こんなコンディションの中のフルマラソンなので、慎重に走る。ペースは5k以降、キロ5分20秒ぐらいに少し上がった。ただ、これ以上は絶対あげてはいけないと自分に言い聞かせる。最後までこのレースに何が起こるか分からないから。

 10キロは54分で通過。昨年、茨城県庁近くにいた少年野球チームが見当たらずハイタッチできなかったのは残念だったが、12キロ付近のケーズデンキ水戸スタジアムの向かいで水城高校野球部員たちとハイタッチ。流石に、バットを振り込んでいるせいか、少年野球の選手よりも手が硬い。ハイタッチは本当に元気が出る。



 巨大スーパーのイオンの横がハーフ地点。タイムは1:53:30で通過。タイムは理想的だが、ここまでハーフとは思えない長さに感じた。後半分持つかなと心配がよぎる。とにかく30キロまでは淡々と何も考えずにマイペースで走るしかない。と言い聞かせる。30k過ぎまで来たらあとは気合だ。


《ハーフ地点を過ぎたところ》

 寒さのせいで20kくらいから尿意が気になってきた。トイレに寄ると2分近くタイムをロスするので、いつもサブ4を秒単位で争っている私としては、非常に重要な意思決定だ。あと2時間なら我慢できるかな?耐え切れず27k地点でトイレ。1分30秒のロスタイム。でも体が軽くなった感じがして、気分転換にはなった。このロスを入れても、トータルでキロ5分30秒ペースはオーバーしてなかったので一安心。

 30Kを2時間43分で通過。少しずつラップタイムが落ちてくる。雨が強くなり、気持ち風も出てきた感じ。さあ、あと10kちょっと。これからがマラソンの醍醐味。


《後半はアップダウンが結構あります》


《いよいよあと10k。市街地が近づいてきました》

 沿道の応援が殆ど途切れないのが素晴らしい。こんな雨の中、ずぶぬれになって水を渡してくれたり、給食を渡してくれる。ありがたくて、涙雨になる。エイドの数も多すぎず、少なすぎずでちょうど良い。乾燥梅、バナナ、納豆煎餅、饅頭。私設エイドも、エナジーゼリー、チョコ、などなど。いつもエナジーゼリーの摂りすぎでレース後に気分が悪くなるので、今回は非常用には持参したが、摂取は控え、栄養摂取はほとんどのエイドでの給食とした。

 公園に入ると黄門さま、助さん、格さんが出迎えてくれた。そして、千波湖。ここが長い。紅葉が綺麗だがとても感慨に耽る余裕なし。雨が強くなり、コースも場所によっては避けようのない水溜りになっている。帽子を脱いだらすごく重い。ランニングタイツの上にはいた短パンも重さでずり下がって来てる。普段よりも相当の重量を負って走ってるんだと実感。

 29キロ地点から長いトンネルに入るが、そこでの応援は嬉しかった。残り3キロ。いつもながら、サブ4は最後の最後まで一分一秒を争う。一番心配なのは足の痙攣。左ふくらはぎがピクピクし始めてる。40kは3時間43分。あとは足の釣りだけケアしておけばサブ4はいけそうだと、色気が出始める。

 最後の坂も何とかクリアし、花道を通って、ゴール!3時間57分台でした。


《ラスト30m》

 レースを振り返ってみると、雨が降り続いたのは最大の試練だったが、気温が上がらなかったこと(12時で15度)、慎重に走ったこと、コースが分かっていたことが、幸いし何とかサブ4を維持できた。が、最大の理由は、雨の中力強い応援・サポートを頂いたボランティア、サポーターの皆さんのおかげ。本当にありがとうございました!この大会は毎回出たいです。


《ゴール後に黄門さんがお出迎え》

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