その後の『ロンドン テムズ川便り』

ことの起こりはロンドン滞在記。帰国後の今は音楽、美術、本、旅行などについての個人的覚書。Since 2008

N響 9月定期Aプロ/ 指揮:ヘルベルト・ブロムシュテット/ ベートーヴェン・プログラム

2015-09-30 00:27:16 | 演奏会・オペラ・バレエ・演劇(2012.8~)


 毎年恒例の秋のブロムシュテット祭り。ただ今年はA、Bの2プログラムだけで、Bプロの会員でない私が聴けるのは残念ながらAプロのみ。プログラムはオール・ベートーヴェンです。

 N響の聴衆がブロムシュテットさんを迎える拍手はいつも大きく暖かいです。この日は残念ながら満員とはなりませんでしたが、9割方は埋まってました。ブロムシュテットさんは、とても88歳とは思えない軽快な足取りで登場です。

 前半は交響曲第2番。小編成のN響はステージの中央に固まり、ステージ半分ぐらいが余った形になっていました。が、この小さくまとまったオケから発せられる音が何とも無駄が無く、かつ溌剌として気持ちが良いものでした。ブロムシュテットさんの指揮は、この曲の瑞々しさ、端正さをいかんなく引き出して、聴く方は清々しい気分に浸れます。

 後半はピアノ協奏曲第5番。ピアノ独奏のティル・フェルナーさんは初めて聴くピアニストです。ピアノの音質は、柔らかく、優しいもので、男性的な力強さとは異なってました。曲の雄大さとは多少イメージは異なりましたが、逆に、こんなソフトな「皇帝」もあるんだと、新しい気づきが得られます。逆に、第2楽章の優美さにはうっとり。音は優しいのですが、一つ一つの音がとってもイキイキして、耳に飛び込んできます。オケは前半と同じ編成(だったと思う)で小ぶりですが、逆にピアノを補うように勇壮さを持ち、ピアノとの組み合わせの妙が楽しめます。管の音がはっきりと聞こえてくるのも印象的でした。

 派手さは無いけど、この日もじっくりと良い音楽を味あわせてくれたN響とブロムシュテットさん。来年の秋もまた宜しくお願いします!



第1816回 定期公演 Aプログラム
2015年9月27日(日) 開場 2:00pm 開演 3:00pm

NHKホール

ベートーヴェン/交響曲 第2番 ニ長調 作品36
ベートーヴェン/ピアノ協奏曲 第5番 変ホ長調 作品73「皇帝」

指揮:ヘルベルト・ブロムシュテット
ピアノ:ティル・フェルナー


No.1816 Subscription (Program A)
Sunday, September 27, 2015 3:00p.m. (doors open at 2:00p.m.)

NHK Hall

Beethoven / Symphony No.2 D major op.36
Beethoven / Piano Concerto No.5 E-flat major op.73 “Emperor”

Herbert Blomstedt, conductor
Till Fellner, piano

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FC東京 vs 松本山雅FC @味の素スタジアム

2015-09-27 10:37:01 | 日記 (2012.8~)
 今シーズン初のFC東京応援です。以前はホームゲームは毎シーズン少なくとも5試合ぐらいは行っていたのですが、ここ2-3年は2ゲーム程度。一応、15年来FC東京サポーターのつもりでいますが、返上せねばならぬかも。



 この日の対戦相手は松本山雅FC。今シーズンからJ1入りしたチームだし、下位争い中のようであるので、今日のスタジアムは閑古鳥かと思っていたら、凄い賑わいでびっくり。試合開始45分前には着いたのに、家人と一緒の席を見つけるのも難儀するほどでした。久しぶりの熱気と応援の音声に、お祭り騒ぎを楽しむどころか、ちょっと戸惑う程でした。

 試合は前半戦にFC東京が前田の綺麗なシュートで先制して、そのまま逃げ切ったものの、正直あまりエキサイティングな試合とは言えませんでした。こう言うと嫌われるのは分かっているのですが、プレミアリーグと比較すると、試合展開がスローなんですよね。あと、終盤はもう時間稼ぎ見え見えのプレイが続き、あれではファンとしてもちょっとフラストレーションがたまります。逆に松本山雅のほうが気迫を感じたなあ。特に後半は。

 試合内容はイマイチでしたが、スタジアムの熱気は凄いものでした。松本山雅もアウエー席一杯に揃ってたし、アウエー側2階席も結構、入ってました。入場者数は約36000名とのこと。スタジアムに行くのはこの雰囲気を味わうためのようなところもありますから、行ってよかった。

 年間順位3位のFC東京。さらに高みを目指して、がんばれ。


《松本サイドの応援もたいしたものです》

2015年9月26日

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グレッグ・マキューン (著), 高橋 璃子 (翻訳)  『エッセンシャル思考』 かんき出版

2015-09-26 11:00:06 | 


 ビジネス書として一時随分売れていた本だったので、図書館で予約してみた。自分に廻ってきたのに半年かかった。サブタイトルとおり「最小の時間で成果を最大にする」ための人生のノウハウ本。

 非常にわかりやすく書かれている。内容も、私自身が実践できるできないは別として、首肯できるところが多い(下に目次を付記しているが、目次だけで本書の内容はほぼ尽くされている)。ただ、ノウハウにおいて、本書が他と比べて目新しいところは無いような気がする。随分前に読んだ、既に古典と化している『7つの習慣』にも書かれていた気がするし。

 ただ、この手のノウハウは、常日頃から心がけてないと定着しない。読んでも時間とともに、行動は何も変わらないまま、結局何の変化も起らないことが多い。同じ内容であっても、時折、このような本に触れることで、忘れたものを思い起こす効果はある。

 さしあたって、この本を読んでこの1週間2つ行動を変えてみた。ひとつは、残業した後の自宅での過ごし方は、ビールも飲まず、SNSもやらず、睡眠を第一優先とすることにした。もうひとつは、この秋に少し考えていたとある研修プログラムの受講を止める決意をした。あれもこれもで中途半端にすべきでないと思ったから。はたして、何か成果はでるだろうか。



PART1 エッセンシャル思考とは何か
第1章 エッセンシャル思考と非エッセンシャル思考
第2章 選択──選ぶ力を取り戻す
第3章 ノイズ──大多数のものは無価値である
第4章 トレードオフ──何かを選ぶことは、何かを捨てること
PART2 見極める技術
第5章 孤独──考えるためのスペースをつくる
第6章 洞察──情報の本質をつかみとる
第7章 遊び──内なる子供の声を聴く
第8章 睡眠──1時間の眠りが数時間分の成果を生む
第9章 選抜── もっとも厳しい基準で決める
PART3 捨てる技術
第10章 目標──最終形を明確にする
第11章 拒否──断固として上手に断る
第12章 キャンセル──過去の損失を切り捨てる
第13章 編集──余剰を削り、本質を取り出す
第14章 線引き──境界を決めると自由になれる
PART4 しくみ化の技術
第15章 バッファ──最悪の事態を想定する
第16章 削減──仕事を減らし、成果を増やす
第17章 前進──小さな一歩を積み重ねる
第18章 習慣──本質的な行動を無意識化する
第19章 集中──「今、何が重要か」を考える
第20章 未来──エッセンシャル思考を生きる
最終章 エッセンシャル思考のリーダーシップ

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野川公園の彼岸花

2015-09-23 10:00:21 | 旅行 日本
 滅多にない秋の連休でこれは何処かに行かねばと思ったものの、交通渋滞予測や渋滞情報を聞いたいたら一気に思いはしぼみ、近所の図書館やジョギング中心のゆっくりモードの連休となりました。唯一のおでかけは、都内ではありますが、昨年もこの時期に訪れた野川公園、武蔵野公園界隈のウォーキング。半日かけて、家人と武蔵野の秋を楽しみました。

 空気こそ午前中は秋めいた爽やかですが、公園内は緑の色が濃く残っており、夏の名残を感じさせます。



 お目当ては、野川公園北側にある自然観察園内の彼岸花の群生。雑木林の中に忽然と現れる彼岸花の赤色に目を奪われます。







 この近辺は、東京とは思えないほど、ゆっくりと静かな気分に浸れる素晴らしい環境です。同じ都内の大きな公園でも、世田谷の砧公園、吉祥寺の井の頭公園とかになると、ちょっと人出が多すぎるぐらい賑わいますが、ここは場所柄か連休時でも不思議なほど落ち着きます。駐車場もあるので、車で出かけても大した渋滞なしに訪れることができます。お勧めですよ。

 9月21日訪問 

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小出伸一 『世界企業はここまでやる!』 (ゲーテビジネス新書) 幻冬舎

2015-09-21 20:45:10 | 


 図書館で何気なく手に取った一冊だったが、気づきが多い当たり本だった。IBMやHPの外資系企業でキャリアを積んだ筆者が、グローバル企業の考え方、ありようを率直に伝えてくれる。エッセイ風で気楽に読める本だが、私を含めてグローバル化を進めようとしている純日系企業に勤める人には大いに参考になる。

《目次》
第1章 世界企業のグローバル戦略
第2章 世界企業の先端IT戦略
第3章 世界企業の危機管理
第4章 世界企業のワークプレイス戦略
第5章 世界企業のスピード
第6章 世界企業の人材活用
第7章 世界企業の経営


(以下、個人的メモ)
・効率を追求できるところは標準化にこだわり、フロントエンドではローカライゼーションを追求。これを双方に思い切り振りきって実践するのがグローバル企業
・グローバル展開するときに、世界標準の仕組みを作りあげる。それにより効率化、合理化を図り、コストダウン、グローバル調達、優秀な人材を採用するなどのメリットが生まれる。
・日本のITは個別対応により、縦割りで別々のシステムを作る。グローバルでは、まず基盤となる標準化されたシステムを作り、その上にソフトウエアやアプリケーションが乗るように水平に作る
・今、世界のグローバル企業がやろうとしているのはデータを知識、知恵に結び付けるIT投資。
・日本はもっと日本の強みに気づくべき。会社に対するロイヤリティ、勤勉さ、チームワークなどのワークスタイルは日本にしかない価値
・社長がやらなくてはいけない重要な判断は2つだけ。5年後、10年後の判断と何かをやめる、捨てる判断。リスクがあるものしか上がってこない。戦略的リスクを取りながら、勝率が1%でも高いかどうかを見極めながらの判断
・日本の「会議」には、英語ではMeeting, Session, Workshop, Forumなどいろいろな呼び名があり、会議の目的や特性、スタイルによって使い分ける
・仕事に対して自分が心から満足でき、お客様からも評価されて、自分の成長が実感できる。そういう状況になって初めて、自分が所属する会社に対して尊敬の念や、いわゆるロイヤリティのようなものが生まれてくる
・仕事には「やりたいこと」「やるべきこと」「やれること」があり、この3つの円が重なることが理想だが、なかなかそうはいかない。だが、この3つの円を近づけるために、提案型、ネットワーク型の社会人になろう
・数字には皆が厳しくこだわり抜く。自分たちにふさわしい数字に、どこまで向き合えるか。(筆者は)マネージメントとしての数字の上積みに相当な勇気を持ってやる。自分たちにできる本当にぎりぎりの数字を出すことが、経営者である私の役割だと思っている。そして、それを頑張って達成した時の達成感はとても大きい
・M&Aの判断はシンプル。お客様から見て、HPのバリューを高めるか?自分たちの事業ポートフォリオをお客様の視点で見て、どう強化すべきかという視点でスタート

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映画 「アバウト・タイム ~愛おしい時間について~」 (監督:リチャード・カーティス )

2015-09-19 20:30:33 | 映画


 飛行機の中で視聴。「タイムトラベルの能力を持つ家系に生まれた青年が恋人を作るために繰り返しタイムトラベルを試みる」と書かれた作品紹介からは全く観る気が起らなかったが、「ラブ・アクチュアリー」のリチャード・カーティスが監督・脚本をしていることを知って、迷わず選択。「ラブ・アクチュアリー」風のライトタッチなラブコメディで、非常に良くできた佳作。見てよかった。

 ストーリーは現実的にはありえない話なのだが、登場人物の一人ひとりが個性的で人間味に溢れている。映像も主人公の故郷であるコーンウォールや、上京したロンドンの描写がさりげない中に綺麗なシーンを切り取っている。ヒロインのメアリーを演じるレイチェル・マクアダムスが何とも可愛らしい。

 笑い90%の中に、10%の悲しみを折込み、最後は「今」の大切さに気づかせてくれる。まさに原題のAbout Timeのとおり、時間がテーマの作品である。見て暖かい気持ちになれるので、お勧め。リチャード・カーティスが脚本や監督をやった作品はハズレがほとんどない。



アバウト・タイム ~愛おしい時間について~ (2013)
キャスト
ドーナル・グリーソン:ティム
レイチェル・マクアダムス:メアリー
ビル・ナイ:ティムの父親
トム・ホランダー:ハリー
マーゴット・ロビー:シャーロット
リンゼイ・ダンカン:ティムの母親

スタッフ
監督:リチャード・カーティス
製作総指揮:リチャード・カーティス
製作総指揮:ライザ・チェイシン、アメリア・グレインジャー
脚本:リチャード・カーティス
音楽:ニック・レアード=クロウズ

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須田 桃子 『捏造の科学者 STAP細胞事件』  文藝春秋

2015-09-17 20:23:15 | 


 STAP細胞スキャンダルを追ってきた毎日新聞の科学担当記者によるレポート。新聞等で断片的に読み聞きしていた情報が、本書を読んで、何が論点なのかが整理して理解できる。

 客観的で抑制され、かつ平明な文章が、冷静で論理的な筆者のパーソナリティを伺わせる。事実をベースに、論点、第三者の証言、筆者の意見が明確に区別されて記されているので、恣意的、感情的な誘導無しに、読者が自分の頭で考えることができる。

 このスキャンダルはあまりにも劇的であるものだから、下手なミステリー小説を読むよりよっぽど面白い。読み出したら止まらず、週末の1日半本書に掛かりっきりになってしまった。

 かなり整理されたのだが、それでも残るのは「何故、こんなスキャンダルが起きたのか?未然に防げなかったのか?」ということ。事件の核心である小保方氏についての記述が薄いのが残念だが、現実世界の複雑さ・不思議さを味わうのに、最適の一冊である。

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N響 9月定期Cプロ/ 指揮:広上淳一/ ドヴォルザーク交響曲 第8番ほか

2015-09-13 20:32:51 | 演奏会・オペラ・バレエ・演劇(2012.8~)
 2015ー2016シーズンのオープニングコンサート。毎年、この時期のコンサートは私にとっても特別な意味を持ちます。夏休み、甲子園、花火大会などなど夏の高揚感を落ち着かせ、自分自身を日常に呼び戻すイベントなのです。残暑が残る中、NHKホール周辺はいつもの喧騒は無く、オープニングコンサートに最適の静けさが漂っていました。

 この日の指揮は広上淳一さん。日本人指揮者の中でも最近特に注目度の高い方で、N響にも何度か登場しているようですが、私は初めてです。TVで何度か、大きな身振り、手振りでの指揮姿を見ていて、一度聴いてみたいと思っていました。

 前半のラフマニノフのピアノ協奏曲第3番は、ニコライ・ルガンスキーさんのピアノに痺れました。安定したテクニックはもちろんのこと、情熱と冷静さを兼ね備えた演奏で、音楽に身を委ね、楽しむことができます。オケの演奏とピアノ独奏が、ふわっとステージ上で融和するような響きで、その音に包み込まれる私は何とも幸せ気分で一杯でした。

 後半のドヴォルザークの交響曲第8番は広上節が全開。背中越しなので、あの顔芸を見ることは叶いませんが、広上さんのくるくる廻る腕や全身を使った指揮姿は、まるでそれが音楽の一部のよう。普段のN響以上に、オケの個々のメンバーから個性的な音が出ているのが印象的です。「こりゃあ広上音頭だなあ」と思わず、呟いてしまいました。

 比較的スローテンポなドヴォ8は、音楽の造形を浮き出たせます。民族的という以上に、雄弁で表情豊かな音楽でした。ただ、個人的には昨年2月に聴いたネヴィル・マリナーさん指揮の端正なドヴォ8のほうが好みかな。

 今シーズンのN響も期待大です!


《開演前のNHKホール前》

第1814回 定期公演 Cプログラム
2015年9月12日(土) 開場 2:00pm 開演 3:00pm
NHKホール

ラフマニノフ/ピアノ協奏曲 第3番 ニ短調 作品30
(アンコール: ラフマニノフ/プレリュード嬰ト短調 作品32 第12曲)
ドヴォルザーク/交響曲 第8番 ト長調 作品88

指揮:広上淳一
ピアノ:ニコライ・ルガンスキー

No.1814 Subscription (Program C)
Saturday, September 12, 2015 3:00p.m. (doors open at 2:00p.m.)

NHK Hall
Rakhmaninov / Piano Concerto No.3 d minor op.30
Dvořák / Symphony No.8 major op.88

Junichi Hirokami, conductor
Nikolai Lugansky, piano
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3年ぶりのイギリス訪問 (11) 最終回 《美術館いろいろ》

2015-09-11 23:19:52 | 旅行 イギリス
 だらだらと書いてきたイギリス旅行記も今回が最後です。余り珍しくないところばかりではありますが、訪れた美術館/博物館を記録用に。

【テート・ブリテン】
 イギリス美術の殿堂はやっぱり行かねばならないところ。トラファルガー広場界隈の美術館よりずっと空いているので、落ち着いて鑑賞できます。



 改めて、ここのラファエロ前派コレクションの凄さを再認識しました。日本にも来た「ラファエル前派展」がまだワールドツアー中だと、目玉作品も少ないのではないかと恐れていましたが、ミレイの「オフェーリア」を初めとする主要作品は全て鑑賞可能という嬉しさ一杯。


《この大部屋一面にラファエル前派》

 ワッツ「希望」、ウォーターハウスの「シャーロットの乙女」、ミレイ「マリアーナ」など好きな絵がそろい踏み。展示作品が頻繁に変わるテートブリテンで、ここまで好きな作品がそろい踏みしてくれたのは珍しい体験です。ターナー・コレクションや、日本で行われた個展で好きになったベーコンなどの作品も見られて大満足。


《ウォーターハウス「シャーロットの乙女」》


《ワッツ「希望」:この絵がなぜ希望なのかよくわかりませんが・・・》

【大英博物館】
 トラファルガー界隈の美術館の混み方に恐れをなして、自重していた大英博物館でしたが、自称「大英博物館フリーク」としてはロンドンに来たらやはり行かねばならないところ。帰国便が夕方出発なので、最終日の朝一番に突撃。さすがにまだ空いてましたが、博物館前には金属製の誘導フェンスが設置してあったので、きっと午後になると、そのフェンスに沿って並ぶ必要があるのかもしれません。






 大好きなアッシリアのレリーフを覗いたら、部分部分が貸し出し中で、ところどころが欠落していて全体を見ることができずかなりがっかり。追い打ちをかけたのがメキシコ室。「双頭の蛇」を見たかったのに、何と部屋自体が閉鎖中。ダブルパンチでした。



 それでも、大英博物館には見切れないほどのお宝揃いですから、ギリシャ彫刻やローマの遺品を中心にぶらぶらと2時間弱楽しみました。


【ウォレス美術館】

 最終日の昼食後、まだ2時間は時間があるいうことで、近場のウォレス美術館へ。セルフリッジデパートの裏という好立地にありながら、この邸宅美術館の落ち着いた雰囲気は以前から大好きです。絵はフランスロココ調のものが多く、必ずしも私の趣味ではないのですが、場の雰囲気に誘われます。久しぶりにハルスの「笑う騎士」とも再会しました。


《在住時はこの部屋で開催されたカクテルパーティに参加させて頂いたことも。右手前に「笑う騎士」》


 現地6泊(ロンドン5泊、コッツウォルズ1泊)のイギリス再訪は、思いのほかせわしくて、ダリッチ美術館、ケンウッドハウス、デザイン美術館など行きたかったけど、行けなかったところがいくつも残ってしまいました。それでも、久しぶりに前の職場の同僚たちにも会えたし、ロンドンのブログ仲間の皆さんとも旧交を温めることができたのは、訪れたスポット以上に有意義なものでした。超充実の夏休みにしてくれたイギリスに大感謝。今度行けるのはいつになるでしょうか?
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3年ぶりのイギリス訪問 (10) 《BBCプロムス PROM35 STORY OF SWING》

2015-09-10 23:54:49 | 旅行 イギリス
夏のロンドンと言えば、プロムスは欠かせない風物詩。でも今回のような短い滞在では日程が合わなかったり、是非聞きたいと思う演目は既に売り切れだったりで、半ば諦めモードでした。それでも、駄目もとでボックス・オフィスを訪ねたら、あまり注目はしていなかったもののWeb上では売り切れだったコンサートにリターンチケットが出ていて、迷わずゲット。滞在最終夜、アルバートホールに突撃しました。



3年ぶりのプロムスの雰囲気は全然変わってませんでした。綺麗な円形ホールが美しい照明に照らされ、お祭り気分満載の会場はその場にいあわせるだけでウキウキします。







演目はいわゆる協奏曲、交響曲といったクラシック音楽とは趣が異なり、ジャズバンドによるジャズ演奏です。ジャズ創生期から現代に至るまでのSwing系のジャズナンバーを、2つのバンドが左右に分かれて共演と競演をするというなかなかエキサイティングな企画です。曲は聴いたことのあるものとないもののミックスでしたが、どれもリズミカルかつ耳に馴染みやすいもので、楽しさ満載でした。前に座っていた女性は途中で立ち上がって、踊りはじめたりするほど。

 私は前半は頑張れましたが、後半は、旅行最終夜ということもあって音楽とともに旅の疲れがどかっと噴出し、完全に意識喪失。UKジャズ界では有名な方々の出演だったようなので、ちょっともったいなかったかな。

 欲を言えば、好きな楽団、指揮者で好きなクラシック音楽を聴ければベストではありましたが、プロムス体験ができただけでも良しとしましょう。




19:30 Tuesday 11 Aug 2015
Royal Albert Hall

Clare Teal vocalist/presenter
Jamie Davis vocalist
Elaine Delmar vocalist, Proms debut artist
Guy Barker Big Band
Guy Barker conductor
Winston Rollins Big Band
Winston Rollins conductor

West End Blues/ Strttin' with Some Barbecue
Sing Me a Swing Song (and Let Me Dance)
Sugar Foot Stomp
King Porter Stomp
Prisoner of Love
Lester Leaps In
It Got It Bad (and That Ain't Good)
White Heat
Smoke Rings
Marie
Let Me Off Updown
(I got a Gal in) Kalamazoo
Skyliner

Interval

Trumpet Blues and Cantabile
Why Don't You Do RIght?
Livin'in the SUnlight, Lovin'in the Moonlight
Opus One
Handful of Keys
Lover Man
What Is This Thing Called Love?
Song of the Volga Boatmen
Minnie the Moocher
Sing, SIng, Sing
Proms 2015 Battle Royal (medley)
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3年ぶりのイギリス訪問 (9) 《ロンドン テンプル教会》

2015-09-05 08:05:09 | 旅行 イギリス
 『古くからロンドンにあるテンプル教会は、クリーム色のカーン石で全体が作られている。強い印象が与えるその円形の建物は、ものものしいファザード、中央にそびえ立つ小塔、片側に張り出した身廊を備え、礼拝の場というよりも軍事要塞の趣を備えている。一一八五年二月十日にエルサレム総主教ヘラクレイオスによって献堂されて以来、ロンドン大火や第一次世界大戦といった動乱のなかを八世紀余りにわたって生き延びてきた。ただ一度、第二次大戦中の一九四一年にドイツ軍の空爆でひどい損傷を受けたが、戦後の修復によってその荘厳な外観を取りもどした。』 
(ダン・ブラウン著、越前敏弥訳『ダ・ヴィンチ・コード(下)』p59より)



 コッツウォルズから戻って、再びロンドン巡り。テンプル教会は、『ダ・ヴィンチ・コード』を読んで是非行きたかったところです。在住時に行こう行こうと思いつつ、週末は休みだし、平日も不定期な時間しか開いてなかったので、結局、行けずじまいだったのです。『ダ・ヴィンチ・コード』を持参して、念願の訪問となりました。



 私のほかには二組の観光客がいるだけでした。非常に簡素で、装飾を廃した内部は、教会としては際立った特徴は感じられませんでした。正面のステンドグラスは、フェアフォードで見たものよりも、細やかで色も艶やか。





 『ダ・ヴィンチ・コード』の舞台はむしろ後方にある円形の間。

 「十体の石の騎士。
 左に五体。右に五体。
 等身大の彫像が、仰向けの安らかな姿勢で床に横たわっている。騎士たちは鎧一式に盾と剣といういでたちで忠実に再現されており、まるで眠っている隙に何者かが忍び込んで石膏で固めたかのような、不気味な印象を与える。彫像はどれも風化が激しかったが、一体一体にはっきりした特徴があり、武具の細部や、腕と脚の位置、顔の表情、盾の模様などが異なっている。」
 
(『ダ・ヴィンチ・コード(下)』p67)


《石の騎士たち(1)》


《石の騎士たち(2)》


《上から見た円形の間》

 加えて、興味深かったのは、教会内で「マグナ・カルタ」から「権利の請願」、「権利の章典」、「アメリカ合衆国独立宣言」に至るまでの原典写しやその解説の展示があったことです。知らなかったのですが、今年は1215年のマグナカルタから800年の記念年なのですね。マグナ・カルタを突きつけられたジョン王にとっては、ロンドン塔が東の本部(Headquarter)であったのに対して、テンプルが西の本部だったそうです。それもあってか、テンプル教会は「LONDON MOTHER CHURCH OF THE COMMON LAW」とロンドンのコモン・ローの聖地を名乗っています。なので、こういった企画をやっているのかもしれません。錆びついた世界史の教科書の知識を思い起こしながら、展示を追うのは、ちょっと賢くなった気分にしてくれます。



 このテンプル教会があるテンプル地区は、極めて不思議なところです。ミドルテンプルとインナーテンプルという2つの法曹学院(Inns of Court)からなる特別地区らしいのですが、その敷地内に入ると、FleetStreetのバスや車の騒音が幻だったように、突然、静寂な空間が訪れます。こんなロンドンのど真ん中に、こんな静かなところがあるなんて、
まさに別世界。街中の喧騒につかれた時には是非、お勧めします。


《テンプル地区の地図》


《フリートストリートからの入口。狭いです。》


《法曹院の人たちのよう》

2015年8月11日



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3年ぶりのイギリス訪問 (8) 《コッツウォルズ フェアフォード》

2015-09-01 23:46:39 | 旅行 イギリス
 フランプトン・マンセルを出て、ロンドンに戻る道すがら、コッツウォルズ南東部にあるケルムスコット村に立ち寄るつもりでした。ウイリアム・モリスが、ロゼッティと住んでいたケルムスコット・マナーを訪ねてみたかったためです。しかし、その途中にフェアフォード(Fairford)という町を通ったところ、引き寄せられるものを感じ、衝動的に立ち寄りました。
 
 サイレンスターから東に10キロぐらい行ったところで、忽然と現れるフェアフォードは石造りの建物で統一された街並みが落ち着いた雰囲気を醸し出しています。人口も4000名ほどいるようですし、中心部には小さな銀行もありましたので、小さいながらも立派な町と言えるでしょう。近くには空軍基地があるようで、ググると7月に行われる国際エア・ショウの記事がたくさん出てきます。




《町の中心部のマーケットプレイスの前にあるパブ兼ホテルThe Bull Hotel》

 この町で一番魅かれたのは、中心部にあるセント・メアリー教会です。どうしてこんな小さな町にこれほどの立派な教会があるのかというほどの教会。1497年設立とのこと。



 素晴らしいのは、教会内のステンドグラス。中世後期のガラスのステンドガラスがそのまま残っているのは、イギリスの中でもこの教会だけだとか。ガラスは1500年~1507年に作られたものだそうです。聖書の物語を表すステンドグラスの見学には、入口でおばあさんが音声ガイドを貸してくれます。一枚一枚をゆっくり鑑賞していると、あっという間に1時間近くが過ぎてしまいます。


《旧約聖書より》


《キリストの復活の朝》


《甦ったキリスト》


《キリストの昇天と聖霊降臨祭》

 教会の近くには公園があり、長閑な雰囲気です。周辺には川が流れ、池もあり、ウォ―キングのコースもいくつかある様子。ただ、この日はあいにく、雨が降り始めていたので、ウォ―キングは断念。



 二時間程度の滞在でしたが、フェアフォードも個性的で魅力的な町でした。予想外の滞在にケルムスコット・マナー訪問は断念。フェアフォードもガイドブックではあまり見た覚えがないのですが、コッツウォルズにはそれぞれの個性を持った村や町がいろいろありますね。ここも泊まってゆっくりしたい町した。
 
(つづく)
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