その後の『ロンドン テムズ川便り』

ことの起こりはロンドン滞在記。帰国後の今は音楽、美術、本、旅行などについての個人的覚書。Since 2008

特別展「ほとけの国の美術」@府中美術館

2024-06-26 08:56:55 | 美術展(2012.8~)

(5月初旬に訪れた美術展の投稿忘れメモ)

会期最終日に府中美術館に特別展「ほとけの国の美術」に足を運ぶ。江戸時代の仏教関連の作品を中心にした展示である。

仏教関連の美術品は室町時代を境に、それ以降の品々にスポットライトが当たることは少ない気がするが、江戸時代は寺請け制度の下、表面的には「国民」皆仏教徒だったわけで、様々な仏教美術が残されていたようだ。

今回の展示では、来迎図、地獄絵、涅槃図が特に見ごたえあった。江戸時代のものなので、保存状態も良く、色彩も鮮やかだ。

土佐行広「二十五菩薩来迎図」(重要美術品 京都市・二尊院蔵)は優しい菩薩様が心を和ませてくれる。宇治の平等院を思い起こさせる。土佐行広はやまと絵の流派である土佐派の実質的な始祖である。

「地獄極楽図」(金沢市・照円寺蔵)は、地獄の様々なシーンが描かれる。子供の時に祖母が「悪いことすると死んだあと地獄に落ちて苦しむ」という話をやたら聞かされていたので、絵を見ながら祖母が思い出された。

「八相仏涅槃図」(名古屋市・西来寺(下の写真は絵葉書から))は個人的にも好きなテーマ。老若男女問わず、加えて動物も入って、仏様の他界を悲しむ世界観はとってもアジア的で、感覚的に馴染む。悲しい絵ではあるのだが、柔らかな温かさを感じるのが不思議だ。

過去に府中美術館で企画された「動物の絵」も多数展示されていた。徳川綱吉の絵もあった。日本の動物の絵は、西洋画のそれと違って昔から「かわいい」。画家の動物への愛がにじみ出ている作品が多く、ペットには縁がない私でも癒される不思議な力を持っている。

府中美術館の企画・展示は、国宝や重要文化財作品が満載ではないけども、公的な文化財指定は受けて無くても見どころある作品を興味部会切り口で紹介してくれるので、とっても楽しめる。各作品についた解説も適度に柔らかくて面白い。キュレーションの重要性を教えてくれる。

(2024年5月6日訪問)


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