その後の『ロンドン テムズ川便り』

ことの起こりはロンドン滞在記。帰国後の今は音楽、美術、本、旅行などについての個人的覚書。Since 2008

ローマの香りを嗅ぐ: 永遠の都ローマ展 @東京都美術館

2023-09-30 17:33:44 | 美術展(2012.8~)

2010年にローマを訪れたが、3日間の滞在中、多数の遺跡、充実の美術館・博物館に圧倒されっぱなしだった。そのローマのカピトリーノの丘に建つ、世界的にもっとも古い美術館の一つといわれるカピトリーノ美術館のコレクションが展示されるということで、早速訪れた。ローマ訪問時は、とにかく見どころばかりで、観光疲れで、カピトリーノ美術館は行けなかった。

建国神話から古代ローマからルネッサンスを経て17世紀にいたるまで、彫刻・絵画・コインなどの遺物(複製品も含まれるが気にならない)が展示されている。たっぷりとローマ世界に浸れる。私には、絵画よりも彫刻がローマらしく、強烈な引力に引き寄せられた。

中でも、目玉作品の一つである《カピトリーノのヴィーナス》の美しさは別格。初来日であることはもちろんのこと、海外に出て展示されたのは3回しか無いという逸品である。そのリアリティある豊かな肉感の美しさは格別。さらに、胸や恥部を隠す仕草が仄かに官能的。エロおやじに見られるのは癪だが、その場を離れることを許さないような磁力があった。この作品を見るだけでも、本展に来る価値があると思う。


(ポスターから)

歴代ローマ皇帝たちの彫像も素晴らしい。有名なヨーロッパの美術館に行けば必ず置いてあるものだが、久しぶりにアウグストゥス帝、カラカラ帝、ハドリアヌス帝らの再会は懐かしい。《コンスタンティヌス帝の巨像》もその大きさに圧倒される。貪って読んだ塩野七生さんの『ローマ人の物語』がまた読みたくなった。


(パネル)

トラヤヌス帝記念柱関連の展示も良かった。ローマで現物を見ているはずなのだが、とにかく遺跡が多すぎて、何をどこまで見たのか記憶がぼやけている。ジョヴァンニ・バッティスタ・ピラネージ《トラヤヌス帝記念柱の正面全景》のエッチングの精巧さは目を見張るし、トラヤヌス帝の偉業が彫られた柱の一部の複製展示も、彫り込まれたその時代の出来事に想像が及ぶ。


モエシアの艦隊(トラヤヌス帝記念柱からの石膏複製)


デケパルスの自殺(トラヤヌス帝記念柱からの石膏複製)

展示品の数は80程で、さほど多くはなく、金曜の夜間開館時間帯に訪れたので、とっても落ち着いて鑑賞できた。ローマ好き、イタリア好きの人には堪らない展示である。

2023年9月29日訪問


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終わり間近ですが、是非! テート美術館展 「光」 @国立新美術館

2023-09-26 07:00:29 | 美術展(2012.8~)

国立新美術館で開催中のTate美術館展に足を運びました。「光」をテーマにターナーから現代美術に至るまでの多種多様な作品の展示です。

ロンドンのTate Britainは大ファンなのですが、今回はTate Moern等の作品等も含め展示の半分は現代美術と聞いていたのと、2200円の入場料に少々尻込みをしていました。が、思い切って行って大正解でした。

前半は18,19世紀の絵画で、Tateらしくイギリス人画家中心の展示です。ターナー、ウイリアム・ブレイク、コンスタブルからミレイ、バーン・ジョーンズ、ハントなどのラファエロ前派などの作品が並び、見ごたえありました。私が好きなコンスタブルも、彼の原画を元にした版画((彫版(デイヴィッド・ルーカス))が展示されていて、イギリスの風景が懐かしかった。光と言えば、印象派は避けて通れないので、モネ、シスレー、ピサロなどの作品も展示されてあるのですが、脇役的な配置になっていたのは、Tateらしく苦笑い。


ウイリアム・ブレイク<善の天使と悪の天使>1795‐1805年頃 色刷り、インク、水彩/紙 43.2×59.4


ジョン・コンスタブル<ハムステッド・ヒースのブランチ・ヒル・ポンド、土手に掛ける少年>1825年頃、油彩、カンヴァス、32.7×50.2


ジョン・エヴァレット・ミレイ<霜に濡れたハニエダシダ>1889-90、油彩/カンヴァス、173.2×123

余談ですが、このコンスタブル原画の風景版画(↓)きっと、2011年12月に訪れたコンスタブル・カントリーの写真と同じ風景。200年近く立っても変わらない村の風景って、驚きです。


ジョン・コンスタブル<製粉所わきの小川>1831年刊、メゾチント/紙、14.1×19


詳細は、弊ブログ記事<コンスタブル・カントリーを歩く>2011.12.11投稿

現代ものは、リヒターなどの絵画に加え、写真やオブジェなど様々な表現形態の作品が展示されています。色付きの台車を並べただけに見えるデイヴィッド・バチェラー「私が愛するキングス・クロス駅、私を愛するキングス・クロス駅」とか正直、何故これが芸術なのか全く意味不明な作品もありましたが、これはこれで楽しめます。時間限定展示であるオラファー・エリアソン《黄色vs紫》はエンターテイメントとしての驚きもありました。


デイヴィッド・バチェラー「私が愛するキングス・クロス駅、私を愛するキングス・クロス駅」2002-2007

光と色彩が密接に結びついていて、モチーフをどう表現するか。自然の中の光や色と都会のそれらはどう違うのか。普段、考えることもない切り口です。芸術家たちの様々な創意工夫を凝らした作品を観て、驚かされたり、感心したり、はたまた理解不能で首を傾げたり、作品それぞれに自分の反応が違うのも楽しい。脳のいろんな領域がチクチクと刺激される感覚でした。Tate美術館はロンドン以外にもリバプールやコーンウォールとかにもあったのですが、現代もの中心だったので敬遠していたことを少々後悔。

一部の撮影禁止作品を除いては、基本撮影OK。8月に訪れた古代メキシコ文明展もそうでしたが、撮影OKは良し悪しあります。というのは、スマフォ撮影OKだとどうしても写真撮影に気を取られるところが出てきて、作品を目に焼き付けるぞ~という気合が弱まるんですよね。また、撮影する人に気を遣って、作品近くで鑑賞するのを遠慮してしまうのも、なんか違う感じがします。段々と新様式に慣れていくのかな。

東京では10月2日まで開催です。閉幕間もないですが、おすすめします。

 

2023年9月8日訪問


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名人トン・コープマンによるモーツァルト・プログラム:N響9月B定期 @サントリーホール 

2023-09-23 07:30:20 | 演奏会・オペラ・バレエ・演劇(2012.8~)

9月定期の最後を飾るBプログラム。トン・コープマンさんの指揮によるオール・モーツァルト・プログラムです。コープマンさんを聴くのは私は初めてですが、古楽の大家として知られる方のようです。

前夜が結構な深酒かつ寝不足。しかも曲が全てモーツァルトということで、睡眠警報が鳴っていました。睡眠対策で、コンサート前は夕食も軽食もとらず、コーヒー一杯飲んだだけで臨んだのですが、全くの無力。1曲目の交響曲29番は第1楽章でゲームオーバーとなりました。ごめんなさい。

気合を入れなおしての2曲目はフルート協奏曲第2番。ここは、ソロの神田さんの明るく、軽快で、澄んだフルート音色に聞き惚れます。小編成のオケのアンサンブルによる美音が柔らかくサントリーホールに充満します。眠気をかけらも感じることなく、うっとりと音楽に酔いしれました。

休憩後の交響曲39番は、キレと優しさが絶妙にミックスされた演奏でした。体に溜まった沈殿物が毛穴からすーっと抜けて、身体が浄化される感覚になります。3曲続けて、モーツァルトの長調の音楽を聴くって、その心身整え効果なるもの、どんなサウナも敵わないでしょう。

今回はP席ならではのお値打ちもありました。コープマンさんの指揮する表情の楽しそうなこと。心からモーツァルトの音楽を愛し、指揮を楽しみ、創造する喜びが表出されています。あんな顔を向けられたら、どんなしかめっ面の親父でも、顔の筋肉が緩むでしょう。そんな表情が楽員にも伝播して、それが音に現れてくる。そんな気配が感じられました。

名人による、幸せ気分一杯の暖かい充実の演奏会でありました。

 

定期公演 2023-2024シーズンBプログラム
第1991回 定期公演 Bプログラム
2023年9月21日(木) 開演 7:00pm [ 開場 6:20pm ]

サントリーホール

指揮:トン・コープマン
フルート:神田寛明(N響首席フルート奏者)

モーツァルト/交響曲 第29番 イ長調 K. 201
モーツァルト/フルート協奏曲 第2番 ニ長調 K. 314
モーツァルト/交響曲 第39番 変ホ長調 K. 543

[アンコール曲]
9/21:モーツァルト /歌劇「魔笛」―「恋人か女房が」
(フルート:神田寛明)

 

Subscription Concerts 2023-2024Program B
No. 1991 Subscription (Program B)
Thursday, September 21, 2023 7:00pm [ Doors Open 6:20pm ]

Suntory Hall

Mozart / Symphony No. 29 A Major K. 201
Mozart / Flute Concerto No. 2 D Major K. 314
Mozart / Symphony No. 39 E-flat Major K. 543

[Encore]
Sept. 21: Mozart (arranger: unknown) / Die Zauberflöte, opera (The Magic Flute) - Ein Mädchen oder Weibchen wünscht Papageno sich! (A Girl or a Little Wife)
Hiroaki Kanda, flute

Conductor: Ton Koopman
Flute: Hiroaki Kanda (Principal Flute, NHKSO)


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9月も渋谷らくごに行ってきた @渋谷ユーロライブ

2023-09-20 13:07:31 | 日記 (2012.8~)

8月に続いて、9月も渋谷らくごに行ってきた。
仕事帰りに火曜日20時から。

9月シリーズの最終日最終公演。真打ち4人組による古典4点セット。
わさびさんの「野ざらし」の釣り模様、文蔵さんの「試し酒」の呑みっぷりに大いに笑った。
日大スキャンダル、ジャニーズ・ネタ、処理水海洋放出など、時事トピックスを上手く取り入れたまくらも上手いし、楽しい。
まだ火曜日なのに、終演10時はちと遅いが、週中にこんな憂さ晴らしができるのは嬉しい。マイ月例イベント化しそう。

主催者発表によると来場者38名とのこと(確かにそのぐらい)。見る方は余裕があって良いけど、興行的にはきついだろうなあ。
落語家さんがとっても近いし、座席は寄席や市民ホールよりも段違いに快適なので、とってもお勧めイベントですよ~
落語お勉強中だし、長く続いて欲しいので10月も行くぞ。

渋谷らくご5日目
9月12日(火)20:00-22:00
「渋谷らくご」

柳家わさび-野ざらし
春風亭百栄-さんま火事
林家鉄平-品川心中
橘家文蔵-試し酒


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ルイージのワーグナー〈指環〉:N響9月Cプログラム @NHKホール

2023-09-17 07:24:20 | 演奏会・オペラ・バレエ・演劇(2012.8~)

Cプログラムの今シーズンオープニングは、ワーグナーの「指環」のディジェスト版(フリーヘル編)です。この曲、この夏のサマーミューザで、ヴァイグレ/読響の演奏を聴いたばかり。今回のN響もルイージとの看板ペアで、こちらも楽しみです。

このフリーヘルの編曲版は延べ15時間の「指環」を1時間の高速で駆け抜けますが、物語の流れを損なわず、聴きどころがしっかり抑えられています。ルイージさんの推進力とN響の個人技・合奏力が融合されたダイナミックな「指環」の世界を堪能しました。

終始、聴かせ処満載のホルン今井首席の美音を初め、金管陣の迫力ある演奏がスケール感一杯。「これぞ、ワーグナー」と聴いていて嬉しくなります。木管・弦・打楽器陣も併せて、ステージ一杯に広がった大管弦楽団から、乱れなくバランス取れた壮大な音楽を聴く快感は何物にも代えがたいです。

聴いていて、ヴァイグレ/読響との比較というよりも、東京春祭でのヤノフスキさんとN響の「指環」が想起されました。オペラそのもののヤノフスキさんと今回のダイジェスト版の単純な比較はできないでしょうが、ヤノフスキさんの時のキレキレで筋肉質な演奏と比べると、この日のN響はよりマイルドで全体としての総合力を感じた演奏です。

とってもハイレベルな演奏を、定期会員メンバーとしてルーティン的に聴かせてもらっているこの機会にとっても感謝です。会場は7割強ほどの入りで、私の周囲も空席いくつもありました。NHKホールという大きな箱なので、致し方なしなのでしょうが、せっかくの機会が勿体ない。勝手な感想ですが、色んな幅広い人が、こういう演奏に触れる機会を得て欲しいと感じます。

開演前の室内楽は、普段間に合わないことが多いのですが、今回は聴けました。クラリネットを主役にしたとっても美しいピースで、早起きならぬ、演奏会の早出は三文の得ですね。

第1990回 定期公演 Cプログラム
2023年9月16日 (土) 開演 2:00pm(休憩なし)

NHKホール

曲目
ワーグナー(フリーヘル編)/楽劇「ニーベルングの指環」-オーケストラル・アドベンチャー-

指揮 : ファビオ・ルイージ

開演前の室内楽
曲目:
ベールマン/クラリネット五重奏曲 第3番 変ホ長調 作品23─第2楽章*
(伝 ワーグナー/クラリネットと弦楽のためのアダージョ 変ニ長調)
ブラームス/クラリネット五重奏曲 ロ短調 作品115─第3楽章

Subscription Concerts 2023-2024Program C
No. 1990 Subscription (Program C)

Saturday, September 16, 2023 2:00pm [ Doors Open 1:00pm ]

NHK Hall

Program:Wagner / Vlieger / The Ring, An Orchestral Adventure
Conductor:Fabio Luisi

Pre-concert Chamber Music Performance
Wagner / Vlieger / The Ring, An Orchestral Adventure

Pre-concert Chamber Music Performance
Program:
Baermann / Clarinet Quintet No. 3 E-flat Major Op. 23—2nd Mov.
(Formerly Attributed to Wagner / Adagio for Clarinet and Strings in D-flat Major)*
Brahms / Clarinet Quintet B-Minor Op. 115—3rd Mov.


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第11回神田カレーグランプリ グランプリ決定戦予選に投票

2023-09-15 07:42:37 | 日記 (2012.8~)

今夏の記録的猛暑。少しでも食欲満たすべくカレー屋に過去にないペースで通いました。今週日曜日に締め切られた第11回神田カレーグランプリ グランプリ決定戦予選の投票。記録も兼ねて投票した店をご紹介します。

べっぴん舎御茶ノ水本店_赤のべっぴん薬膳カレー

写真の見た目よりずっと美味しいです。スパイス効いて薬膳という名にふさわしい体に良さそうなカレーでした。小さなアットホームなお店の感じもとっても好印象。

アーンドラ・ダバ@神田のビリヤニミールス。

スパイス一杯でとっても美味しい。本格の南インド料理屋さん。湿気で疲れた身体に喝でした。

 

ティーダイニング @小川町  かつカレー

カレー専門店ではなくとんかつなどのポーク料理屋さん。真っ黒なカレーにびっくりだったけど、味はマイルドでとっても丁寧な作り。いわゆるスパイシーとかエスニックなカレーの対極。三重県亀山市のファーム直送の豚は甘みがあって味わい深い。ホッと心温まる一皿でした。

9月末の結果が楽しみ。3店とも決定戦進出の20店に入ってほしいなあ。

 


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久しぶりの村上小説:『街とその不確かな壁』(新潮社、2023)

2023-09-13 08:03:03 | 

夏休みの読書として、今年4月に書き下ろしとして発刊された村上春樹の最新作を読んだ。久しぶりの村上小説。

大学生のころ、「羊」3部作の後に読んだ『世界の終わりとハードボイルドワンダーランド』には、その謎めいた世界観に強く魅かれた。その『世界の終わりと・・・』と「並列し、できれば補完しあうものとして」書かれた(あとがき)という本書の読書体験は、私にとっては若き頃の自分を訪ね、そこから現在を照射するようなプロセスだった。

対語や謎のメタファーがたくさん出てくる。「実際の世界」と「壁に囲まれた街」、「本体」と「影」、「影を失うこと」、「夢」、「単角獣」、「身体」と「意識」、「少年との一体化」・・・。それらの意味合いをぼんやりと考えながら、世界に浸るのが心地よい。夏休みのようなまとまった時間でないと、なかなか没入しにくい。

正直、私の読解力と筆力で、本書についての感想をまとめるのは、難しいし相当の時間がかかりそうだ。また、村上小説の楽しさは、感想をまとめるというアウトプット行為よりも、読み進めるインプットの過程そのものにあるとも思う。なので、言い訳めいているが、感想は気が向いたら書いてみたい。

第2部のクライマックスで、主人公は川を上流に向けて流れに逆らって歩いていく。上流に行けば行くほど肉体的に若返り、40代半ばの私から10代の私に戻っていく。作者自身の創作活動がそうだったのではと想像した一方で、私にとっても、本書の読書体験は、川を遡って感覚的に若返っていく経験だった。


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シーズン開幕は若き日のR.シュトラウス・プログラムで:ルイージ、N響、9月A定期

2023-09-11 12:19:52 | 演奏会・オペラ・バレエ・演劇(2012.8~)

N響の23−24シーズン幕開けは首席指揮者のルイージさんです。暦や仕事スケジュールと同様、毎年、N響シーズン開幕日は私にとって季節の節目になってます。夏の終わりであり、秋の始まりを告げる日です。

開幕演奏会は若き頃のR.シュトラウスからの3曲。冒頭の交響詩「ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら」以外は初めて聞く曲。なかなか無いユニークなプログラムだと思いますし、個人的な経験値も広がり有難いです。

交響詩「ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら」は15分程の小品ですが、物語に沿った変化があり楽しめます(岩波文庫の原作を演奏会3日前に図書館で借りたのですが、思いのほか分量あって断念)。主役の今井さんのホルンも冴えてました。

2曲目のブルレスケは全く未体験。ピアノ独奏のヘルムヒェンさんの演奏は軽快なタッチで気持ちいい。曲全体としては重厚な楽曲ですが、その分ピアノの音が飛び跳ねるように生き生きしています。(良い意味で)浮きたって聴こえました。アンコールはシューマンの「森の情景」から第7曲「予言の鳥」。こちらはしっとりと聴かせてくれました。

後半の交響的幻想曲〈イタリアから〉もお初。情景的でありながら、時として抒情性も感じる演奏でした。第1,3楽章は美しいアンサンブルが印象的。そして、第4楽章は体が動くような楽しさ。ヴェスヴィオ登山鉄道のテーマ歌《フニクリ・フニクラ》のメロディが軸になっているのですが、これは日本人なら誰でも知っているはずの「鬼のパンツ」。笑いをかみ殺しつつ、新たなトリビアでした。

会場は7割強ぐらいの入りに見えましたが、終演後の拍手はとっても大きいものでした。首席指揮者のポストも28年まで延長になったということで、しっかり腰落ち着けてもらい、今シーズンも大いに期待です。

 

定期公演 2023-2024シーズンAプログラム
第1989回 定期公演 Aプログラム

2023年9月10日(日) 開演 2:00pm [ 開場 1:00pm ]
NHKホール

  1. シュトラウス/ 交響詩「ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら」作品28
  2. シュトラウス/ブルレスケ ニ短調*
  3. シュトラウス/交響的幻想曲「イタリアから」作品16

指揮:ファビオ・ルイージ
ピアノ:マルティン・ヘルムヒェン

No. 1989 Subscription (Program A)

Conductor : Fabio Luisi
Piano : Martin Helmchen*

  1. Strauss / Till Eulenspiegels lustige Streiche, symphonic poem Op. 28 (Till Eulenspiegel’s Merry Pranks)
  2. Strauss / Burleske, D Minor*
  3. Strauss / Aus Italien, symphonic fantasy Op. 16 (From Italy)


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映画「市民ケーン」(監督:オーソン・ウェルズ、1941年)

2023-09-09 07:57:53 | 映画

映画史上高く評価されている作品で、いろんな映画ランキングにもいつも上位にランクされている。昔、米国でメディア論を履修した際にも、参考映画として挙げられたのも覚えている。以前より一度観たいものだと思っていたが、AmazonPrimeにあることを見つけ視聴。

アメリカの新聞王ケーンの生涯(新聞王ウィリアム・ランドルフ・ハーストがモデル)を死後から遡って追い、富と名声をなした人物の孤独が描かれる。オーソン・ウェルズの監督デビュー作である。 

Dying Words(臨終時の言葉)であった「バラのつぼみ(rosebudd)」の謎解きをベースに進む物語はスリリングで引き込まれる。ローアングル、アップ画像を多用した撮影も白黒映画ならではの効果も掛け合わせて映像も迫力満点だ。

自信家で傲慢な実業家ケーンを演ずる若きオーソン・ウェルズの演技も溌剌としていて、世界の覇権国となろうとする伸び盛りのアメリカの野心多き青年実業家ぶりを存分に見せつける。

ただ、正直言うと、十二分に引き込まれた映画だったが、映画素人の私にはなぜ史上ナンバー1アメリカ映画とまで評されるのかは分かりかねた。

 

スタッフ

監督・製作:オーソン・ウェルズ
脚本:オーソン・ウェルズ、ハーマン・J・マンキーウィッツ
撮影:グレッグ・トーランド
音楽:バーナード・ハーマン
編集:ロバート・ワイズ

キャスト

チャールズ・フォスター・ケーン: オーソン・ウェルズ
ジェデッドアイア・リーランド: ジョゼフ・コットン
スーザン・アレクサンダー: ドロシー・カミンゴア
バーンステイン: エヴェレット・スローン


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おもろい!: 新春ドラマスペシャル「タイガー&ドラゴン」(演出:金子文紀、2005)

2023-09-06 07:28:48 | 映画

絶賛落語勉強中ということもあり、落語に関連するものならダボハゼ的に食らいついている。AmazonPrimeで15年以上前の落語関連ドラマを見つけた。

子供の時から笑ったことのない「つまらない」ヤクザ虎児が落語の面白さを知り、組からお金を借りている落語家へ入門する。その師匠とのやりとりや、家を出てアパレルショップを始めた師匠の息子、「面白い」竜二との交流が描かれる。偶然発見のドラマだったが、期待以上に大いに笑った。

まず、設定が面白い。落語家とヤクザという、全く違う世界が交わる非日常的な設定。「あり得んだろう~」と思うところもあるが、その非日常があたかも日常の環境でドラマが展開していくのが何ともユニーク。

役者陣も良い。主役の長瀬、岡田が随分若くて笑ったが、二人とも活き活き、ドラマにリズムや勢いをつけている。そして、やっぱり凄いのは西田敏行。力が抜けた、円熟の存在感だ。若い二人をしっかり支え、ドラマの中心軸になっている。

そして、ストーリー展開が見事。ドラマで主人公のヤクザ虎(長瀬)が弟子入りする林屋亭 どん兵衛(西田)から習う「三枚起請」がアレンジされて、ドラマのプロットとして再現されているのである。良くできていて感心した。

本作は2時間ドラマだが、この後、シリーズものとして継続したようなので、そちらも観る予定。

 

脚本 - 宮藤官九郎

音楽 - 仲西匡

演出 - 金子文紀

出演

長瀬智也, 岡田准一, 西田敏行, 伊東美咲


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豪華メンバー!: 柳家喬太郎・柳家三三・桂宮治 落語三人会 @調布市グリーンホール大ホール

2023-09-02 11:56:41 | 日記 (2012.8~)

喬太郎さん、宮治さん、三三さんの3人会って凄くないですか。私的にはかなり興奮のランナップ。この日、仕事は早々に切り上げ、調布の市民会館へ。6時開演という早すぎる時間のせいか、まだまだ残暑が厳しい暑さのせいかはわからないですが、このメンツなのに会場は6割ほどの入りでした。

前座さんのあとにまず登場したのは三三さん。わたしはこの方の歯切れの良い話っぷりが大好きです。まくらの後、季節柄にあった幽霊もの。まくらが下げの伏線になっていたところも流石です。

宮治さんは笑点でお馴染みですが、ナマは初めて。イメージ通りの勢いとパワフルな話し方にぐっと引き込まれます。特に笑ったのは、3兄弟を描く「片棒」の顔芸と踊り。落語でここまでのパファーマンスがあるとはと唖然。

トリの喬太郎さんは脚の具合が悪いということで、上方落語風に机を置いて、座布団を丸めて脚に無理のない姿勢で。喬太郎さんは何度か拝見していますが、この方の落ち着いた語り口や芸の安定感はいつも感嘆させられます。今回は、地元・池袋のデパートのストライキという時事ネタを使ったまくら、また、今年還暦を迎えるご本人が実は春風亭昇太さんより4つ年下(だけどそう見えない)という自虐ネタも含めて、前半から大爆笑。首ったけでは、吉原の遊女さんの表現が名人芸でした。

今回の3人会、過去に観た3人会ではメンバーと言い、中身の充実度と言い、私の少ない落語鑑賞経験では一番と言っても良い会でした。落語にますます嵌っていきそうです。

2023年9月1日

 

転失気 さく平
質屋蔵 三三
仲入り
片棒 宮治
首ったけ 喬太郎


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