その後の『ロンドン テムズ川便り』

ことの起こりはロンドン滞在記。帰国後の今は音楽、美術、本、旅行などについての個人的覚書。Since 2008

山崎元『人生を自由に生きたい人はこれだけ知っていればいい お金で損しないシンプルな真実』(朝日新聞出版、2018)

2020-07-27 07:30:00 | 

お金への向き合い方を指南する入門書。とっても平易に分かりやすく書かれているので1時間程度で読み終わる。私のようなおじさんはもとより、お金についてあまり学ばせない日本の学校で育った10代後半から20代前半の若い方にもお勧めしたい。

投資・運用に縁遠い人を対象に書かれている故か、内容もとっても安全サイドによったアドバイスである。「リスク運用はインデックスファンド」で、「無リスク運用は『個人向け国債(変動10)』と言うぐらいである。若いうちは「稼ぐ能力」をみにつけよう」ということで自己投資を勧めるあたりは全くその通りだと思う。

付録の「運用をめぐる地雷リスト」もネガティブリストとして有用だ。1)毎月分配型の投資信託、2)外貨建て保険、3)ラップ口座、4)株主優待、5)無料相談、6)保険セールス、7)販売系のFP、8)銀行員の8つが上げられている。

人が豊かな人生を送る上で、「お金の運用・投資」はさほど決定的に大事なことではないこと、自分が負うリスクは自分で決めること、税優遇の器(Ideco、NISA)には、リスクを取る運用を集中させる、といった考え方、ノウハウも納得感ある。

お金の基本を押さえるのにとっても良い一冊だ。

 

【目次】
第1章 人生とお金で大事なことをざっくりおさえよう(若いうちは「稼ぐ能力」を鍛えよう
借金はできるだけしない
保険はできるだけ節約しよう ほか)
第2章 お金は、だまされずになるべく増やそう(運用の「俗説」を信じない
運用の判断を人に任せない
投資の本質をシンプルに理解する ほか)
第3章 未来のお金とどう付き合うか(「お金」と「価値」
割合確実な近未来
技術の発達が格差を拡大させる ほか)

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畠山 理仁『黙殺 報じられない“無頼系独立候補”たちの戦い』(集英社、2017年)

2020-07-24 07:30:00 | 

先日の東京都知事選挙で、普段は全く見ないテレビの政見放送をたまたま目にしたら、主要候補ではない候補者たちの八茶目茶なプレゼンにびっくりたまげた。今どきの政見放送は、カーセックスのコメディ風実況中継を演じたり、いきなり脱ぎ始めて上半身裸で話をしたりするのである。都知事「候補」ではあるものの、一体何を訴えようとしているのか、まじめに都知事になるつもりがあるのか、立候補の動機やモチベーションが理解できず、彼らのリアルを知りたく本書を手に取ってみた。

本書は、筆者が無頼系独立候補と呼ぶ、非主要候補者(通称、泡沫候補)を追いかけてきた取材レポートである。前半は筆者が長年追いかけてきたスマイル党総裁・マック赤坂についての取材報告。後半は2016年7月の東京都知事選挙に立候補した非主要候補者21名の選挙運動の軌跡である。

文句なしに、読んでいて面白く楽しい。まず候補者たちの変人ぶり、アク、キャラに圧倒される。アメリカには普通にいそうだが、同調圧力の強い日本にもこういう人たちがいるのだと驚かされる。世間的な常識や損得を遥かに超えた強い「個」に強力に魅せられる。

筆者の候補者たちを見る暖かい眼差しを感じるレポートでもある。ちょっと候補者たちの肩を持ちすぎではないかと思うほど、彼らに寄り添っている。それ故に、彼らも筆者に心を許し、気持ちを吐露するのだろう。

個人的には、今回の知事選の政見放送を見る限りは、真面目に政策を考えているとは思えない候補者、自らのYouTubeチャンネルへの誘因として政見放送を利用することしか考えてないと思える候補者もあり、必ずしも筆者の記述には賛同できないところもあった。ただ、そういったことも含めて、自由に個人の意見を主張する場が保証されているというのが民主主義なのだろう。

気楽に読め、新しい世界の見方を教えてくれる一冊だ。

 

(目次)

第1章 マック赤坂という男(踊り続ける男
「おれは変えたいんだよ、この国を」
ビジネスの成功者は下ネタが好き ほか)
第2章 選挙報道を楽しく変えてみた(選挙を楽しめない日本人
「泡沫候補」と呼ばれて
新聞が決めていた「泡沫候補」の基準 ほか)
第3章 東京都知事候補21人組手(5年半で4回の都知事選
政策論争なき選挙
小池百合子は最初に手を挙げていない ほか)

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東京街歩き 谷中銀座商店街

2020-07-20 07:30:00 | 日記 (2012.8~)

東京の外に出るのは、行く方も来られる方も気を遣うと思うので、安全に気を配りながら東京内をうろうろしてます。

この日は初めてやなか銀座商店街へ。この辺りのエリアは全く詳しくないので、とっても新鮮です。日暮里駅を降りて歩き始めると、昔からあるような佃煮屋さんやせんべい屋さんを覗いたり、落ち着いたお寺に立ち寄ったりで、ゆったりとした時間が流れてます。


<江戸時代の怪談とかに出てきそうな雰囲気の寺の入口>

観光ポスターにもなっている谷中銀座商店街の入り口の階段(夕やけだんだん)から見下ろす風景は壮観です。結構、「密」なのがちょっと気になりましたが、手作りマスクの出店や雑貨屋さん、甘味処から軒先でビール飲める飲み屋さんなど、そぞろ歩きが楽しいです。下町のレトロな雰囲気と軽井沢銀座的な観光地的な風情がミックスされた感じかな。


綺麗な夕焼けが見えるらしい「夕やけだんだん」

商店街を抜けて周辺をウロウロ。いろんなお店があって面白いのですが、特に受けたのは喫茶店「乱歩」の看板とお店。明智小五郎デビューの作品として有名な「D坂の殺人事件」のDってこのエリアにある団子坂のことだったんですね。ちょっと、お店の中に入る勇気はありませんでした。

周囲には幸田露伴の旧宅や谷中霊園等、見どころがいくつもあるのですが、残念ながら時間の関係で今回はパス。もっと時間に余裕をもって訪れれば良かったと後悔。まあ、都内ですのでまた来ます。

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東京街歩き 亀戸天神

2020-07-16 07:30:00 | 日記 (2012.8~)

 私用があって東京江東区の亀戸に行った。もうかれこれ40年近くを東京都内で生活しているはずだが、亀戸駅なるところで降りたのは初めてである。用を済ませた後、近くに亀戸天神なるものがあることを知り、立ち寄った。どっかで名前は聞いたことがあるのだが、お邪魔するのは初めて。天神様なので菅原道真公を祀り、西の大宰府に対して東宰府天満宮とよばれることもあるらしい。

大鳥居をくぐると最初の太鼓橋である男橋があります。太鼓橋には階段がかかっており、そこを上り下りするのはやや興ざめで残念。ただ、左手にはタワーがそびえ、ちょっとした奇観ともいえます。

男橋の頂上から本堂を臨む。梅雨空の雲が少し切れかかってきました。


本堂です。

境内の池。喧騒の都会の中にいるとは思えない静かな場所で落ち着きます。

流石、亀戸天神。池にはたくさんの亀がいました。

駅へ戻りすがら、もう一つ神社がありました。香取神社と言うことでかなり立派な風情です。時間の関係で境内には入らず、入口の鳥居からのぞき見しただけで終えました。

亀戸は駅前通りもまだ昭和の商店街を思わせる雰囲気が漂うところもあり街歩きが面白いです。下の写真は香取神社の参道内にある野外ビール飲み場所。この写真だとみにくいですが、丁度、屋台の奥に掛かったポスターがいかにも昭和チックで思わず写真撮っちゃいました。

東京脱出の旅行も自粛要請が出てますから、当面お預けです。

以上、東京レポートでした。

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山本貴宏 『セールス・イネーブルメント 世界最先端の営業組織の作り方』(かんき出版、2019)

2020-07-12 07:30:00 | 

欧米のグループ会社のGTMチーム担当(Go to Market、営業戦略チーム)がやたらとセールス・イネーブルメント(Sales Enablement)とわめくのだが、グーグル先生に聞いてもどうも腹落ちしない。そんな状況で手に取った一冊である。

本書にも書かれているが、会社によって定義は異なっていて、「現在のところ、ネーブルメントについて確固たる定義があるわけでないという状況」(p41)とのことである。文脈から察するにうちのGTMメンバーが言っているのはInsights社の定義「営業の成果と生産性を上げるための仕組み」に近い気がするが、ターゲティング等含んだハイレベルなマーケティング戦略の意味合いも含んでいる。本書では、「成果を出す営業社員を輩出し続ける人材育成の仕組み」と定義し、勘と経験に頼らず継続的に成果を出す営業組織・人材育成についてが解説される。

手に取ってページをめくってもらえればすぐ分かるが、本書の特徴は特筆すべき記載の平易さ、わかりやすさにある。しかも、重要なところはゴシック体で印刷され、しかも丁寧にアンダーラインまで引いてある。かといって、内容が軽いわけではない。重要なことがポイントに絞って書かれている。

成果(アウトプット)視点で育成を捉えなおし、「組織としてどのような成果を達成したいのか」を明確にしたうえで、「そのためにどのような行動をとれる人材が必要なのか」(行動)、そして「そのためにどんな知識やスキルが必要なのか」(知識・スキル)と3つのレベルでカスケードさせる「育成のフレームワーク」は基本的だがとっても大切だ。

また、営業プロセスの視点を自社視点から顧客視点に変え、営業プロセスの整合性を図ること。そして、顧客の意思決定状況をベースに会話をすることの重要性など、とっても基本的なことではあるものの、忘れがちな基本の基を思い出させてくれる。

そのほかにも具体的イネーブルメントの実施ステップや実際に取り組んでいる企業事例の紹介なども有用だ。

さっと読めば2時間かからないと思うが、流し読みは勿体ないので、じっくり考えながら読みたい一冊である。

 

目次

第1章 なぜ営業組織にセールス・イネーブルメントが求められるのか

  1. 日本の人材育成と営業教育の位置付け
  2. 欧米で注目されるイネーブルメントの動向
  3. 成果起点で考える育成のフレームワーク
  4. 本質的に取り組むべき課題の所在
  5. イネーブルメントの必要性
  6. イネーブルメントにまつわる情報整理
    など

第2章 顧客起点で営業プロセスを見直し、マーケティング部との溝を埋める

  1. 顧客視点での営業プロセス設計
  2. マーケティングと営業の溝
    マーケティングと営業の間の溝を埋める方法
    「インサイドセールス &システム」の組み合わせ
    案件創出の別アプローチ:新規ビジネス開発チーム
  3. 最適化された営業プロセスを支えるイネーブルメント

など

第3章 セールス・イネーブルメントの構築法
イネーブルメントの作り方の全体像
イネーブルメントで使うコンテンツの作り方
ハイパフォーマーはイネーブルメントに協力するのか?
イネーブルメントプログラムの具体例
育成テーマに応じてコーチ役を変える
ツール・ナレッジ化の例
イネーブルメント構築の5ステップ
フェーズ1:営業データの収集と整備
フェーズ2:兼任または専任人材のアサイン
フェーズ3:プログラムの開発と提供
フェーズ4:イネーブルメントデータの蓄積と営業成果との検証
フェーズ5:経営層とのイネーブルメント結果レビューサイクルの確立
企業規模別の進め方
イネーブルメント組織をどの部門に配置するか
イネーブルメントチームのKPI(評価指標)
「イネーブルメント進捗マップ」で自社の位置を確認 

など

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吉村昭 『黒船』 (中公文庫、1994)

2020-07-07 07:30:00 | 

江戸時代末期から明治にかけて活動した通詞(通訳士)堀達之助の一生が描かれる。

代々オランダ語通詞の家に生まれ、オランダ語に通じ、ペリー来航時には主席通詞として対応した。その後、ドイツ商人からの奉行あての請願書の扱いを誤り4年余り入牢。出所後は日本初の本格的な英和辞書「英和対訳袖珍辞書」を編纂するなど、振れ幅の大きな一生を送った。

職業専門家として歴史の大きな転換期に居合わせた主人公の生き様が、作者特有の乾いた文体で淡々と記述される。 本書の面白さは、堀のアップダウンある人生の追体験だけでなく、黒船来航以降の幕末維新の激動の日本が、通詞の目を通じて感じ取れることだろう。スペシャリストとしての立場からの時代観察や考察は、多くの歴史物語で描かれる志士たちの思想や理想と言った思いとは別の次元であり、客観性を帯び興味深い。

歴史小説好きの方に自信をもってお勧めできる。

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映画 「黄金のアデーレ 名画の帰還」(監督:サイモン・カーティス、2015)

2020-07-04 07:30:00 | 映画

ナチスに奪われたクリムトの名画「黄金のアデーレ」を、絵のモデルであったアデーレの姪に当たる老婦人が、オーストリア政府を相手に返還要求の裁判を起こした物語。実話に基づいている。

私の好きな「美術」「歴史」を題材としながら、「法廷モノ」の要素も加えて適度のエンターテイメント性も持たせた佳作である。見ごたえある一本だ。

マリア・アルトマンを演じた主演女優のヘレン・ミレンの演技が光る。ユダヤ人の上流階級の家に生まれ育ち、高い教養を身に着けたマリアが、アメリカで静かな老後を送りたいと願う一方で、亡き叔母を描いた名画を取り返すために裁判で戦う。難しい立場のマリアをヘレン・ミレンが地に足がついた自然に演じていた。

あえて言えば、テーマの硬さとエンターテイメント性が上手く両立しているとも言えるし、逆にナチスによるユダヤ人の迫害や資産略奪というテーマの重さがやや軽くなっている印象が無くも無い。

映画としての出来は間違いなく良いので、多くの人にお勧めできる一本だ。

 

監督:サイモン・カーティス
製作:デビッド・M・トンプソン クリス・サイキエル
製作総指揮:クリスティーン・ランガン ハーベイ・ワインスタイン ボブ・ワインスタイン サイモン・カーティス ロバート・ワラク
脚本:アレクシ・ケイ・キャンベル
撮影:ロス・エメリー
美術:ジム・クレイ
編集:ピーター・ランバート
音楽:マーティン・フィップス、 ハンス・ジマー

〈キャスト〉
マリア・アルトマン:ヘレン・ミレン
ランドル・シェーンベルク:ライアン・レイノルズ
フベルトゥス・チェルニン:ダニエル・ブリュール
パム・シェーンベルク:ケイティ・ホームズ

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