おっさんひとり犬いっぴき

家族がふえてノンキな暮らし

自己を知る

2019-01-15 11:12:36 | 日記

 NHKスペシャルで、登山家の栗城さんを取り上げていた。山登りをしない人には知名度は低いかもしれないが、山登りをする人たちの間では、叩かれ続けてきた人である。「無酸素・単独」を標榜しながらも、実際にはチーム栗城で現地に行き、苦しい時には他の人に荷物を持ってもらう。無酸素といっても、プロの登山家の間では標高8400メートル以上で酸素ボンベを使わないことを無酸素と呼ぶが、栗城さんの場合は最高でもそこまでの高さを登ったことがない。そういうことから、極めて評判が悪かったのだ。

 それなのにNHKでも何度も取り上げられているのは、今のようにユーチューバーという言葉がなかった頃から、カメラを持ち込み、自分の登山をネット配信するということを始めたからである。それにより、一時期は山登りなどしない人たちにも人気を博し、「勇気をもらった」とか「応援しています」といったコメントを、山登りのモチベーションとしていたのだ。

 栗城さんは、次第にネットでの人気が落ちるのに反比例して、難度の高い山登りを目指すようになる。普通なら失敗したら次は難度を下げるという選択肢もあるだろうが、栗城さんの場合は、失敗すると次はもっと難度を上げてしまうのである。エベレスト登頂を幾度となく失敗し続けているうちに、口の悪い人は彼を登山家ではなく下山家だと陰口を叩くようになる。そうして去年、一流のプロでも単独では誰も登頂を果たしていないエベレストの南西壁に挑戦したものの、途中で挫折して下山中に滑落して死んでしまったのだった。

 NHKは「なぜ彼は死ななければならなかったのか」と言う。おそらく彼の死は、事故ではなく、ある意味事件だと捉えているのは、そこにNHKも含めマスコミやネットの書き込みをする人たちに祭り上げられ、それをアイデンティティにしてしまった悲劇だと見ているのだろう。つまりは、最近インスタグラムやユーチューバーたちが、たくさんの「いいね」を欲するあまり、無謀な挑戦をして命を落としてしまう若者たちの姿を重ね合わせているのだろう。

 番組中、栗城さんをサポートしていた世界的なプロの登山家が、栗城さんにこんな忠告をしていた。「山を見て登るのではなく、自己を見て登りなさい」と。自分がどこまでやれるのか、自分の実力がどの辺にあるのか、それを知らずに冒険などはありえないのである。

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