おっさんひとり犬いっぴき

家族がふえてノンキな暮らし

片手落ちなマナー講座

2023-04-21 10:20:13 | 日記
 このところ少しずつ「大人のマナー講座」(著・日本マナープロトコル協会)というのを読んでいる。葬式や結婚式などに出ると、いつもフワフワした状態でいるので、この辺で一通りマナーについて頭に入れておこうと思ったのである。そうすれば、少しは堂々としていられるんじゃないかという、浅はかな考えからである。

 で、読み進むうちに、どうにも尻が落ち着かない気持ち悪さを感じるようになってきた。素直にマナーの話が頭に入ってこない。どうしてだか、ページを読み進みながら考えていたのだが、今朝、その気持ち悪さみたいなものの正体の片鱗みたいなものを発見した。

 そもそもマナーというのは、人間関係を円滑にし、社会を効率良く潤滑に動かすためのものである。社会人としてのマナー、大人としてのマナー、冠婚葬祭のマナー、外交儀礼という名のプロトコル。すべて人間を相手にしての立ち振る舞い方だ。

 僕が感じた気持ち悪さというのは、まさにそこで、人間社会だけにしか注目していない点なのである。文部省後援の「マナー・プロトコル検定」標準テキストと帯にあるにも関わらず、その世界観があまりに狭すぎるのだ。例えば、本文中に「海にゴミは捨てない」というようなマナーは書いていない。相手の気持ちを不愉快にさせない、相手にとって失礼になるようなことはしない、ということに関しては、事細かに注意するが、相手がいない自然に対してのマナーなどというものは、最初から念頭にないようなのである。

 18世紀半ばに始まった産業革命は、人間社会にとって効率的で便利な世の中をもたらした。が、それにより、多大な負荷を地球規模でもたらし、21世紀には地球温暖化が問題になっている。原子力発電も、人間社会にとっては快適な生活をもたらすはずのものだっただろう。が、そのために放射線漏れという重大事故を引き起こした。人間が人間のことばかり考え続けてきたおかげで、21世紀という時代は、そのしっぺ返しを受け、人類の破滅の危機さえ迫っている。

 日本が戦った太平洋戦争も、アメリカなどから石油の供給が打ち切られたため、日本国民の生活を守るために東南アジア方面へ石油を獲得に出かけた戦争だった。日本軍も日本の政治家も、世界を破滅させようとしたわけではない。おそらくプーチンさんのウクライナ侵攻も、ロシア国民のために正しいことをしているのであって、世界を破滅させようと考えて実行したわけではないはずである。それにもかかわらず、世界を破滅の道へと進めるのは、人間社会を超えた広い視野が欠落しているからだと僕は考える。

 日本国憲法は、戦後すぐに作られたせいもあって、国民の健康を守るための公衆衛生についての決まりはある。が、環境に関する記述はない。海外では今や世界的な課題となった環境問題について、憲法を改正してでも制定しているが、日本はいまだに公衆衛生法で誤魔化している。

 「海にゴミを捨てない」というマナーが、どれだけ重要なマナーなのか、現在の状況を見れば明らかだ。プラスチックゴミが海洋資源を減少させ、いずれ世界中の人間を飢えが襲うことになるかもしれない。喫緊の問題であるのは誰の目にも明らかなのに、いまだに人間に対するマナーだけが、「検定試験」で試されるようでは、日本国憲法と同じで、時代遅れもいいところなのである。

 人間社会を超えて地球規模でのマナーを扱わない検定教科書を作る人たちや、日本国憲法を改正して環境問題を取り上げようとしないで平気でいる政治家たちが、僕にはなんとも気持ちが悪いのである。
コメント
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