美しい朝

友達に事情があり(買え、と言えない事情があったのよ)貸していたさださんのアルバム「美しい朝」が帰ってきました。
考えてみればまあ、貸した友人は群馬から遠く離れた地にいたわけだから、このCDも随分遠い旅をしてきたんだなあ、と感慨は湧くのだが。

・・・どーするこれ？　売る？(マテコラ)

mixi日記時代にも買った直後の感想書いたと思うけど、久し振りで聞いてみても、やっぱりどーにも心に残らない。今作だけじゃなくて、ここ数作はほんとに気に入る曲がない状態がずっと続いていてねえ。長い期間置いたし少しは変わるかと思ったけれども、やっぱり変わらない。
ライナーノーツ(これほどライナーノーツ読ませる歌手は他にいないだろうけど)に書いてあることに共感が出来ない。もっと言っちゃえば作品世界(特に「ママの一番長い日」の展開)にどうしても共感できない自分がいるのね。

で、実はこのことの答えはさださん自身がライナー(そのママの一番長い日の)に書いていたりする。

(以下引用)・・・このような胸が痛くなるような設定にした理由は僕が歳をとったからだろう(引用終了)

ぬたりがさださんを聴き始めたのは高校生の頃。当時さださんは40そこそこ。ぬたりはファンになってから、さださんの作品を過去へ過去へ、若い頃へ若い頃へと遡って聴いていた。あ、こんな曲もあるのか、おいおいまだまだ俺好みの曲があるじゃねーか、と汲めど尽きせぬ泉の様な感覚で貪るように聴いていたものだ。それでファンになった部分はある。決してさださんがぬたりに合わせてくれた訳ではないが、そんな風にどんどんさださんの歌が身近になっていく気がしたものだ。
だが、当時から既に二十年ほどが経過している。さださんもまもなく還暦という歳になり、上記に本人が書いているとおり考え方も変化をしている。
ぬたりも歳を重ね、既に30台半ばであるが、歳を取ったとは申せ、流石に還暦近くになっての感覚というのは分かりようがない。そのあたりの差というものを、ぬたりが自覚し始めているから、最近のさださんの歌についていけなくなりつつあるのかなあ、とはなんとなく思っている。
その証拠に、さださんがぬたりの年齢の頃に作った歌を今聴いてみる。
これがやっぱりむちゃくちゃ良い。今のぬたりの年齢の頃だと「夢回帰線」や「風待通りの人々」の頃。今聴いてもこの頃のアルバムは心にきますね。

まあ、昔としてもぬたりとさださんの間の差というのはあったはずである。年齢差というのは増えもしなきゃ減りもしない。昔にしたって全く同じ方向を向いていたはずはない。さださんはぬたりを見て曲を書いているわけでもないんだから。
だが、昔の曲はその辺りが上手くぼかしてあった印象がある。昔も今も、さださんの歌の裏は「強いメッセージ」があるんだけども、昔はオブラートに包んであったものが、最近はストレートに出ている感じがするのね。だから昔はぬたりなりに「曲解」出来た部分があったんだけども、今はそんな感じはあんまりない。
その辺も「歳をとった」と言うことなのかもしれないし、逆にぬたりが「歳をとった」ということなのかもしれない。だから、原因がぬたりの側にしかなく、上記の分析もぬたりの独りよがりの考え、という可能性は否定できないんだが。
最近のさださんがどうこう言いたいわけではない。昔と今とでは、ぬたりの感じ方が変わってきてしまった、という話(これは間違いない)。さださんが変わったからなのかぬたりが変わったからなのか。多分両方なんだとは思うけどもね。
なんにしたって、20年もぬたりを追いかけさせ続けたんだから、さださんってのはすごい歌手なんだよ。

最後に「今のぬたり」として一言。
「何かを手に入れるためには何かを捨てなければいけない。今はとても生活が豊かになった。取り替えたんだね、僕ら豊かさと引き換えに何かを。」
上記のようなことをさださんはよくコンサートのMCで言う。それはそうなんだろうが、ぬたりはどこかで腑に落ちない部分を感じていた。
で、先日思いっきりすっきりした。以下のように歌ってもらえた方が、今のぬたりの感性に合うということなのね。

　♪新しい物を手に入れる度に　手放した物もあるけど
　　探したり　無くしたり　繰り返したからこそ　あなたに出会えたんだ♪
　　(虹の見える明日へ／奥華子)

豊かさと引き換えにぬたりも多分何かを失っている。
だけど、その豊かさが無ければ、今僕はここにいない。
さだまさしにだって、出逢えなかったかもしれないんだよ。