突然だが
スバルというのは群馬県の車好きにとって難儀なメーカーである。
スバル。正式社名を富士重工業と言うが(スバルは車のブランド)、ルーツを辿れば戦時中に軍用機を作っていた中島飛行機に遡ることの出来る、日本有数の、良く言えばテックニカルな、
悪く言えばオタクな歴史を持つ自動車メーカーである。
実際、水平対向エンジンを自社製作の普通乗用車に軒並み搭載するオタクぶりですしね。自動車メーカーでは全世界見てもスバルとポルシェしか作ってません、こんな変態エンジン。
実際車好きの間でもメーカーの立ち位置はかなりオタクちっく。まあそういうことが好きな方が選ぶメーカーということね。
他県の場合は。
ただし群馬の場合はちと状況が異なる。何しろ群馬県はスバルのお膝元であり、
スバル町なんて地名も実在するほど(人家は存在しない。工場のみ)。スバル自体の規模が小さいから、愛知県人みたいに「ト○タにあらずば車にあらず」と言うほど極端ではないにせよ、他県に比べればスバルというのはありふれたブランドである。車好きでなければどんな車か思い浮かべることも出来ない
トレジアなんて車(トヨタラクティスのOEM)でも、たまには見かけることが出来るほど。群馬県人にとっては、レガシィはカローラあたりと感覚的には大差ないのよ。ありふれてる車、って感覚。
ゆえにひねくれ者群馬県人のぬたりは正直スバルという車が選択肢に上がってくることはなかった。試乗だってほとんどしたことが無かったくらいだ。
そんなぬたりがまさか日曜のスバルのディーラーで2時間以上を過ごすことになるとは思わなかった。
そもそもは単なる物見遊山である。ぬたりのミニコンちゃんは今年車検である。現在買い換えるつもりはほとんどないが、さりとて「人が乗れない」「荷物が積めない」という不利点は時折ボディーブローのように響いてはいる。ましてや今は厳冬期。気持ちよくオープンで走ることは出来ず、最大の長所がスポイルされっぱなしの毎日なのである。春になって、ぽかぽか陽気の日にオープンで走れれば「こんな素晴らしい車を誰が手放すもんか」と思えるんだろうけど、この寒空ではねえ。
このため、必要以上に「乗れない積めない」の不利点に目が行き、次の車買うならこういうのを意識した車なのかなあ、と意識が動くわけ。故にちょっと前にアテンザワゴンに心ひかれるものを感じた訳でもある。
これらの不利点を意識した車となると、独身の男が乗るとなるとワゴンかSUVと言うことになるが、国産車のSUVでは一番モデルチェンジしたてなのがスバルの
フォレスター。ならまあ、そういう「乗る積む」を意識して現車を見ておくのも悪くはあるまい、と思ったわけ。それにアテンザワゴン見たところで、国産ワゴンのベンチマーク、レガシィ見て比べるのも悪くはないかと。そんな軽い気持ちでディーラーへ向かったわけである。
はい、以上が話の枕です。
駐車場に車を止めると営業さんが寄ってきた。フォレスターとレガシィを見に来たことを告げると、ちょうど今店舗前に試乗車が止まっている、とのこと。とりあえず運転席に座りシートポジションを調節する。その様子を見ていた営業さんが一言。
「じゃ、せっかくシート合わせましたから、このまま試乗行っちゃいましょうか」
はい?
確かにスバルは
「買う気がなくても、乗るだけOK」というテレビCMを流している。だが、ここまで気軽にホイホイさせていいんかいな。ガソリン代はディーラー持ちだぞ。つーか今日は試乗DAYじゃないよね。
で、この試乗したレガシィが非常に良くてね。コーナリングは安定してるし走りもなかなか。乗り心地は同乗者からの苦情が来ないギリギリのレベルでゴツゴツしてる感じで、タイヤからのレスポンスがきちんと体に伝わってくる感じ。それでいて適度に楽に運転できる。乗って車の良さが実感出来たって感じですね。これは試乗して良かったかもね。
群馬の工場でこういうきちっとした車が造られている、ってのは群馬に住む車好きとして素直に嬉しいなあ。ぬたりは過去のレガシィに思い入れもクソもないので(眼中になかったんだから)、「でかくなりすぎた」という従来ユーザーの反発とは無縁でいられるのも良かったのかもね。
試乗後はカタログを見ながらお話。一応情報は伝え、今年車検だけども買い換えるかどうかは分からんことも伝えておく。後は前述のように「群馬でスバルは
威張れんからぬたりのようなひねくれもんは少し抵抗があるね」とかもね。
とは言え試乗車のフィーリングが実に良かったことは事実。これで使い勝手もいいんだから、個人的には凄く印象がよいことも素直に伝えた。ところでいきなり試乗しちゃったから車の素性とかさっぱりわからんまんま運転しちゃったけど、あれ、どのグレードなん?
「はい、あちらは2リットル直噴ターボのモデルですね。カタログのプライスリストですと・・・こちらのグレードですね」
最上級グレードじゃねーか。
いや、そら走りはいいはずだよ。2リットル直噴ターボ300馬力、専用ビルシュタインダンパーに18インチタイヤ。車両本体価格は怒濤の359万円。総支払いでは400万に届こうかという車。つーか、そんなドーピングまがいの試乗車置いとくんじゃねーよ。ラーメン食いに来たお客に試食だからっつって満漢全席出すようなもんだそれは。
まあ楽しかったけどね。そんな車に乗る機会は滅多ないし、車についておしゃべりできる場って、日常にはそんなにないからね。だからついディーラーに長っ尻しちゃったわけさ。
ちなみに長っ尻の理由に担当についたのが
妙齢の女性営業さんだった、と言う事項は決して含まれていないのであしからず。
しかし、件のレガシィの最上級グレードは、それでもベンツCクラスの最廉価グレード(399万円)よりも数十万円安い、と言う事実に、あらためて国産車の魅力を見る思いだわなあ。