フィヨルドの変人 ~Odd person in fjord~

ぇいらっしゃ~い!!!

あるRPGシリーズの死 ~グランディアシリーズについて~

2020年07月25日 16時14分04秒 | ヲタネタ
まあ、久し振りのエンディング視聴を記念して手加減なしで本気で語ろうかと。好きなゲームは語ると長いぞ。

今現在Steam版をやっている(2週目のやりこみプレイ中)わけではあるのだが、ぬたりが過去にプレイしたRPGで最も好きな作品は「グランディア(初代)」である。これは他に比べるものもないくらい突出して好きである。
「初代」と書いたとおり、グランディアはシリーズ化されていて、ナンバリングタイトルは3まで、外伝的作品もいくつか発売されている。しかしながらナンバリング最新作の発売は2005年。以降ナンバリング作品は再販作品を除き発売されていない。

プレイステーションのファイナルファンタジー7に対抗してセガサターンはグランディアだ、と大々的に喧伝されて発売された初代作については、プレステやFF7との比較という意味においては敗北をしたわけだが、それでも多くのサターンユーザーの心を鷲掴みにしていた。実際その年のCESAゲーム大賞を受賞している(ちなみCESAゲーム大賞を受賞したサターンソフトはグランディアのみ)。
当時多く聞かれたこの作品評に「人間賛歌」がある。敵役は大型の飛行機や乗り物を使って世界を自由自在に移動しているが、主人公は基本徒歩で世界を西から東に移動している。機械に頼って移動した人たちではなく、どんなに深いダンジョンも、どんなに高い障壁も、自らの足で乗り越えた主人公が世界を結ぶ形になり、この行為そのものが多くを語るまでもなく最大の人間賛歌なのだ、と。
確かにそう言われて納得はできるのだが、この「人間賛歌」のキーワードがくせ者で、たぶんこれ開発側のキーワードの一つだっただけなんじゃないかと邪推する。当時を振り返るに、ぬたりがこの作品を面白いと思ったのは人間賛歌なんかじゃなかった。
ぬたりはこの作品に「冒険」を見出していたと思う。主人公自体が駆け出しの冒険者で、序盤から中盤は大それた思いとかはあまりなく「冒険をしたいから」旅をしている。遺跡があればその中には何があるのか、高い山があればその向こうには何があるのか、実際に見てみたいからという理由でそこに行く。ぬたりもそれに引っ張られていたような気がするのよね。主人公が冒険をグイグイ引っ張ってくれる感じ。だから最後の方は実は個人的には少し盛り上がりに欠けた。新しい世界を見るための冒険じゃなくて、ラスボスを倒すための冒険になったからね。終わりが見えちゃった。
そもそも言うまでもないが、ラスボスを倒してストーリーを綴るRPGにおいて、人間賛歌を謳わないRPGなんてたぶんない。かく言うFF7もそういうストーリーだったはず。感動のポイント自体は、実はありふれてベタだったと言えば言える。FF7はそれなりにストーリーに変化球を混ぜてはいたが、グランディアにそれはなく、割とど真ん中ストレートなストーリーで、驚きはそんなにないのかも。そのど真ん中を照れずに丁寧に語ったからこそ、響く人には響いたんだと思うな。それ以上に「ありがち」と思われちゃったのかもしれないが。
ともあれ得がたい経験をしたサターンユーザーにとっては当然続編を期待するところ。しかしファイナルファンタジーが7、8、9をプレイステーションで発売したのに対し、グランディアはセガサターンではとうとう続編が出なかった。そして時代は次世代機に移る。
ソニーに押されてサターンの販売がはっきり衰退したセガは、ソニーに先んじて次世代機「ドリームキャスト」を発売することになる。そしてこのキラータイトルの1つに「グランディア2」の名前があり、ファンは、と言うかぬたりは狂喜乱舞した。またあの世界に戻れると思えば体も軽やか。近くのゲームショップで限定版を予約してまで購入した。

で、ぬたりにとって、このグランディア2は分水嶺となってしまった。

面白いか面白くないかと言われれば、まあ面白いゲームであると言える。難易度はあいかわらずヌルめだけれども、ボリュームはたっぷりあるし、戦闘システムも練られていて工夫の余地はいくらもある。実際、ドリームキャストで発売されたRPGの中では有数の作品と言えると思う。
ただしそこまで。数ある優秀なRPGの中の1つ、という評価はできても歴史に残る有数の一本、という評価にまでは至らないというのが多くの人の本音だったんじゃあるまいか。俺がグランディアに求めるものはこんな程度じゃないんだぞ、という感じ。
簡単に言えば、グランディア2じゃないと体験できないものが少ない感じなのよね。キャラも割と類型的でどっかで見たことある感じ(金髪のショタ、心優しい大男、微かに覚えた感情に戸惑う少女型オートマタ等々)。せいぜい戦闘時に「これが欲しいんだろ!豚!」と言いながらハイヒールで敵を踏んづける特技を持つキャラが心に残るくらいか。いや、あれに関してはキャラも相まって実に素晴らしい要素だと思うが。
この作品のテーマもやはり「人間賛歌」だったみたいで、後半とかはそんな感じ。ただ繰り返し言うがストーリー型のRPGで人間賛歌のないものはそもそもほとんどない。その方向にストーリーを求めても、数あるRPGのワンオブゼムになるだけなんだけどね。あと、ありがち展開としてプレイアブルキャラが主人公達を逃がすために犠牲になって死ぬ。これもワンオブゼムな感じで、主要キャラを誰一人として殺さずに(反則的な場面も多々あるけど)ストーリーを紡いだ前作と比べるべくもない。ただ、前作でセガハード有数の大作RPGと大いに認知されてからのその続編製作という形なので、前作を発展拡大させようという意図は素直に伝わってくる出来ではあり、それなりの評価を獲得したことは事実。販売本数も20万本弱と前作から半分程度に大きく下げたが、ハードの普及台数の差もあるので(ドリームキャストは販売台数的には盛り上がらなかったし)、単純に比べられるもんでもないかも。いずれにせよ、セガハードユーザー希望の星であることは揺るがなかった。

ドリームキャストを最後にセガのゲームハード事業が終焉をむかえ、開発元のゲームアーツも会社的にも変革を経験し、開発スタッフの多くも退社していた。続編となる大作ソフトを作成するには微妙な会社体制とはなっていたんだが、そんな時期に開発の話が降って湧いたのがプレイステーション2で発売された「グランディア3」。そしてこれが事実上シリーズにとどめを刺した形になった。簡単に言えば大駄作だったわけ。
問題はいくつもある。消化不良と説明不足でわかりにくいシナリオ、感情移入できない、魅力のないキャラクター、棒読み過ぎる上に聞き取りにくい素人キャスト、広大さを感じられないワールド、戦闘システムの調整不足と後半部の敵の強さのインフレによる戦闘バランスの崩壊。問題点はあらゆる所に顕在化しており、熱狂的なファンが多かっただけに拒否反応はものすごいものがあった。元々一部のコアなファンが評価を支えていた部分のあったシリーズだけに、こういうファンの期待に応えられなかったのは残念だった。シリーズを知らない人の評価は全体的にはそれなりと言った感じではあるが、「グランディアってこんなもんか。大したことないな」で済まされてしまい、偉大な過去作への誘導を果たすこともできなかった。販売本数は25万本程度と前作より増えたが、それこそ当時のPS2の本体販売台数を考えれば、盛り上がり的には前作の遙か下。
この「3」。製作こそ会社は変わっていないのだが、販売に関しては実はあのスクウェア・エニックスが担っている。一説にはFFやドラクエの販売間隔が開くようになったことから、その谷間を埋めるため機種違いのライバルを取り込んだとも言われている。グランディアは散々「プレステだったら100万本を超えていた」とも言われていた(※)だけに、ことによったらスクエニも期待していたのかもしれず流通本数もかなり多かった印象。その体制からすれば25万本というのははっきり期待ハズレ。実際当時数多くのソフトがワゴンセールに突っ込まれていたのは覚えている。正直悲しかったな。
「鳥無き島の蝙蝠」とは言いたくないんだが、グランディアは1も2もセガハードの販売。ドラクエもFFもいない世界の話なので単純に比較できない部分があった。ところが3は同じハードで販売することになるから直接的な比較がされる。その際、ドラクエにもFFにもないもの、という点で相当に頑張らなきゃいけなかった訳だけれども、それは残念ながら目に見える形で表すことはできなかった。1で好評だった「冒険」に活路を見出した部分はあるようだが、それを引っ張る主人公のキャラ付けも、世界の広さの演出も、ともに失敗している。これでは多くの人にシリーズを印象づけられない。「大作RPGはドラクエとFFを待てばいい」と思われただけ。

何がナンバリングタイトルにとどめを刺したのかは、関係者でないぬたりには分からない。けれどもこの「3」を境にファンの間ですら話題に上らなくなったのは事実で、その後「グランディアオンライン」が開発されたが、いつの間にかサービスが開始されて終了している有様で、話題にすらならなかった。そして3の発売から相当な時間が流れた今となっては、もはや続編の発売はあり得ない。ゲームアーツのホームページを見ても、過去作の再販売の告知があるくらいで、新たなゲーム開発の情報はほとんど聞こえてこない(もちろんあれこれ開発は請け負ってるんだろうが)

長々と語ったけれども、ゲームのシリーズの死なんてありふれた話で、むしろ終焉を迎えたシリーズがほとんどで、長い間発売が継続されるシリーズの方が圧倒的に少ない。グランディアも流れだけ追えば「評判が良かった作品の続編作って失敗」ってだけで、こんな話はゲームに限らずいろんなジャンルで沢山起こっている。それを振り返ったところで大した意味はないし、いまさら続編とかFF7のようなリメイクとかは、今のゲームアーツの体制考えればむしろ出ない方が当時の思い出を壊されないからいい、というのが本音なんだけどね。実際、steam版もHD化してるとはいえベタ移植であるにもかかわらずバグが取り切れていない。もう当時の技術力はないと見たほうがいい。まあ当時のスタッフももういないだろうし。
でもまあ、ぬたりは忘れられない冒険を、このたった数千円のゲームソフトの中で体験して、その思い出は今後も一生持ち続けていく、ということ。
面白いゲームって、要はそういう経験なんだと思うな。テレビゲームやったことある人なら、そんなゲームの一つや二つあるんじゃなかろうか。呟いたところで詮無い新型コロナや政治の愚痴吐くくらいなら、みんなで面白かったあの頃のゲームの思い出でも語ったほうが有意義だと思いますよ。



散々言われたもんで、実はプレイステーションに移植されている。でも実売10万本程度なのではっきりと盛り上がりには欠けた。ただ、このプレステ版はグラフィックのリファイン等が行われていて、その後のダウンロード版とかの基礎になった。Steam版もセーブしようとするとメモリーカード選択画面が出るから、プレステ版のベタ移植ですねこれ。ソニーのゲームアーカイブス版の表示をHD化しただけだと思うな。
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