フィヨルドの変人 ~Odd person in fjord~

ぇいらっしゃ~い!!!

つまらんのは分かっているが、暑くて頭が回らん

2019年07月31日 15時53分20秒 | つぶやき
なんかとある大手芸能プロダクションで、会社側も意見を言う従業員もみんながみんな大層みっともない事態になっているところで、ちょっと思い出したエピソードを語る。アメリカのとある会社のお話。

今から20年以上前、当時アメリカで上位10社の大手航空会社の中では評判ぶっちぎり最下位、苦情件数ぶっちぎり1位というダメダメだったコンチネンタル航空でのこと。
当時再建途上にあった同社は、1994年冬、一つのボーナス提案を従業員に対して行った。
それは「1995年に毎月政府が発表する定時到着率が上位5社になれば、全従業員に65ドルのボーナスを支給する」というもの。ちなみに65ドルという数字にも根拠があり、定時到着が増えて苦情対応の費用が全体で半分になったとしたら、その浮いた費用を全従業員で均等に割ればその数字になるそうだ。
根拠のある数字、そして政府発表という誤魔化しのきかない数字のこと、従業員もやる気になったのか、1995年2月には早くも第4位にまであっという間に上昇し、とっととボーナスを従業員はゲット、3月4月は堂々の1位を獲得するなど、一気に定時到着率が向上。ちなみに「翌年は3位以内にハードルを引き上げる代わりにボーナスは100ドルに増額」と11月に条件を変更したら、12月には当たり前のように1位を獲得して、会社側が100ドル増額を1か月前倒ししたりと、社員は1年で一気にやる気になった。その裏には、ダイヤの改正や機体整備体制の強化など、会社側もただニンジンをぶら下げたわけではないのだけどね。要は「ちゃんとこっちも支援するから一緒に頑張ろう」という姿勢を見せたわけで、こっちの方が重要だったんだけどね。まあこっちの話は今は関係ない。
さて、本題はここからだ。
このボーナス、基準が定時到着率。一部の社員からこんな意見も上がったという。
「定時到着率向上の達成は、パイロットや客室乗務員、ゲート係や整備士など、現場で働く人間の頑張りによるものだ。なぜ事務方やチケット部門の人間までボーナスを受け取れるのか。彼らは向上に寄与していない。」
なるほどこれはもっともな意見に思える。その際、その質問を受けた社長は自分の腕時計を掲げてたった一言、こう言ったという。
「この時計で、どの部品が要らないと思いますか?」
目に見えて我々に時刻を知らせる針や羅針盤はもちろん、小さなねじ一本に至るまでたくさんの部品からなる時計には要らない部品は存在しない。ねじ一本でもなくなれば機能不全を起こす。定時到着率を上げようと現場がいくら頑張ろうとも、チケットを売ってくれる人がいなければお客さんが来ない。経理がいなければボーナスが出たってお金が手元にやってこない。全員がやる気になって仕事をしたからこそのボーナスなのである、と一言で示したそうで、文句を言った社員は二の句を告げなかったそうだ。
ぬたりの言いたいことはこれだけで分かってもらえると思うけどね。まあ、ギャラと言ってもそれが支払われるために目に見えない部分の動きがあるわけだ。その部分にきちんと還元されるのを、果たして一概に「ブラック」で片付けていいのですかね?


さて、ついでに関連のエピソードをもうひとつ。
実はこの臨時ボーナス。1995年の2-4月は順調に支給されていたのだが、5月6月と定時到着率が低下して支給されていない。これが実は一部のパイロットが組織する労働組合のストライキの影響によるもの。再建途上にあったコンチネンタル航空はボーナスが出たと言っても給与水準そのものが低く、組合としてもやむを得ない対応だったそうだが、いずれにせよ、従業員とすれば一部社員のおかげでボーナスを貰えなくなるし、会社側もせっかくの再建劇に水を差されるしで、多くの人に悪感情を植え付けた。
この時に会社の経営陣はどうしたか。とにかく粘り強く労使交渉を行ったのである。組合と他の社員の分断を図るようなこともせず、お互いに納得ができる点を交渉の中で突き詰めていった。そして交渉終了後も組合参加者を一切非難するようなことしなかった。パイロットの言い分にも一理はあり、これからもみんなが力を合わせて業務を行わなければならない、という事の意識統一を図った訳。経営再建の途上にあるコンチネンタル航空という会社は、一部の人間が勝って一部の人間が負けるということはない。勝つときはみんなの力で経営再建を成し遂げられる。負ければ倒産してみんなで路頭に迷う、の2者択一しかないよ、という考え方をみんなで共有したわけ。実際その後の影響は最小限に抑えられ、スト明け後も定時到着率は高い水準を維持したままにできた。
これもぬたりの言いたいことは分かってもらえると思うな。あれが悪いそれが悪い、なんて単純にギャーギャー言ってたら、かえって事態を悪化させるだけなのよ。コメント厨どもはそれでもいいけど、当事者は、ねえ。

まあ、コンチネンタル航空は稀有な成功例。滅多に出来ないから稀有たり得てるわけで、同じようにするのは相当に難しいんだがね。でも前例があるんだから、やれなくもないんで、まあ、経営陣も従業員も、お互いの否を認めるところから始めたらいいんじゃないかね、と無責任に言ってみたりね。だってぬたりはあそこのプロダクションの人全員が路頭に迷っても別に困らないもん。お好きにどうぞ。
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« つまらん! お前の話はつま... | トップ | 「二千一夜」の時さださんもト... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

つぶやき」カテゴリの最新記事