フィヨルドの変人 ~Odd person in fjord~

ぇいらっしゃ~い!!!

目先が変わったものと優れているものは必ずしも一致しないよ

2012年04月27日 20時22分04秒 | つぶやき
“うつにならない人間関係”の4つのポイント(新刊JP)

こういう誤解を招きかねない本を無意味に高く評価するから、うつ病に対する間違った認識ってのがなくならないんだよな。これ読んで鬼の首取ったように主治医のところに「薬を減らせ!」とか初診の時に「薬を出すなんてひどい!」なんて言う困ったちゃんが出ないことを願う。それにこの記事書いた奴、うつ病に対する知識はゼロだろ。

そもそも、本日の医療行為において、薬と言うのは欠くべからざる要素として確立しているわけで、なぜ精神科医療についてのみ、薬を用いない医療と言うのがこういう風に高く見られるのかぬたりには理解できん。皆さん風邪ひいて医者行って、薬(もしくは処方箋)出してもらえなかったらどう思う? そういう事。
で、「精神科の薬は一度飲むと一生飲まなきゃいけなくなる」なんて反論も良く聞くけど、高血圧の薬だって飲み始めりゃ一生もんだぜ。そういう薬は向精神薬に限った話じゃないんだよ。ちゃんとそういうこと理解してる?

さてさて、人間にはある程度の自然治癒力と言うものがある。実際これを意識した医療行為もあるんだから、この著者の「薬を使わないうつ病治療」ってのも一定の説得力はある。
が、あくまで一定しかない。カウンセリングで治療を目指すにしても、薬を服用させて症状を落ち着かせてからカウンセリングした方が効率はいいでしょ。そういう効率を考えた場合、薬を使った方がいいからほとんどの精神科医は薬を使うのである。軽い症状ならカウンセリングのみでも治るかもしれないけども、それを薬でやるときわめて短期間で軽快させられる可能性が高い。そういう効率性の話でしかなく、どちらが優れているという話では全くない。
薬をどうしても飲みたくない、という人もいるだろうから、薬を用いない治療もアリと言えばアリだとは思う。ただし、そのリスクはきちんと認識した方がいいと思う。ぬたりは総合的に見て薬を使った方が効率的だしリスクは少ないと思う。実際ほとんどの精神科医は処方箋を書くわけで、要はそういう事。うつ病は薬だけじゃ治らないぜ、という主張はまさにその通りだから、薬だけ出してはいおしまいという治療が問題外なのは確かにそうなんだが、だからと言って薬なんかいらない、ってのはちょっと危険な論理だとは思うよ。

で、色々と「うつ病にならないための考え方」とか書いてあるけども、「風邪ひきたくなきゃあったかくして寝ろ、糖尿病になりたくなきゃ暴飲暴食すんな」程度のアドバイスと思えばいいですこんなの。それを頭において、そういう考え方ができればいいけど、それができればうつ病にならないってわけじゃないし、そんな風に言われて簡単に人間の考え方なんか変わるわけがないです。このアドバイスを実行しようと無理して逆にストレス抱え込んだらまさに本末転倒甚だしいわけよ。
気をつけてたってウイルスが体内に入れば風邪はひく。痩せてたって体の中でインシュリンが作られなくなれば糖尿病になる。それと同じで、ストレスなんて感じてなくても、細胞内でセロトニンが作られなくなれば(※)うつ病にはなる(と考えられている)。

ぬたりはうつ病になる可能性なんか気にしない。日々をぬたりなりに生きてます。ある程度のストレスなんてあって当たり前だし、それがうつ病のリスク云々なんて頭は一切ない。自分で料理してて塩が多すぎたときに、それが高血圧のリスクだ、なんていちいち考えないでしょ。それと同じ。
うつ病になったら医者に行けばいい。それだけ。職務上とは言え、昔、精神疾患について学習したことがあるから、必要以上に怖がったりしません。

最後に言っておくけども、ぬたりは薬を用いないうつ病治療を否定はしないし記事中の「うつ病にならない考え方」も否定はしない。ただし薬を用いないことについては、方法論の一つであり薬を用いる治療より優れているものではないと思うし、考え方についても、まあそういう考えができればいいよね、とは思っている。
それがいかにも優れているよ、とか、これさえできればうつ病になんかならない! と大きく出ていることに首を捻っているだけだ。これで救われる人もいる可能性は否定しなが、その数はそれほど多くないだろう、と言いたいだけでね。



うつ病の原因としてのセロトニン欠乏説は現時点においてはあくまで仮説でしかありません。まあ、こういう要素はほぼ間違いなくあるよね、というくらいの有力な仮説ではありますが。
コメント (4)
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