フィヨルドの変人 ~Odd person in fjord~

ぇいらっしゃ~い!!!

Sound of Silence

2012年02月18日 14時44分01秒 | 日記
「ままどおる」が食べたかったんである(挨拶)

先日の日曜日の仕事の代休が金曜日にもらえたぬたりである。これで3連休にはなるわけなのだが、この日程は別にぬたりが希望したわけでもない。仕事の都合や他の係員の休みの状況を鑑み、係の都合優先で金曜日に固定された、という方が正しい。休んだってやることなんかないんだから、ぬたり的には3連休なんかこの時期いらない。
が、希望するしないは別にして3連休がもらえたことは事実。んなら3連休初日は多少無茶してもいいべさ、という判断で、挨拶の様な事をふと思いついたぬたりは「ままどおる」製造元三万石さんの御膝元、郡山市へ向かったわけである。
朝5時半発でね(また早朝発かよ)

今回はちょっと距離があるのでハナから高速利用。せっかくなので郡山駅前にある三万石の本店にお邪魔したわけだが、店に着いたのが営業開始の9時ジャストオンタイム。いやいや、高速使うと早いねえ。
ちょっと早くままどおるは購入出来ちゃったので時間にはかなり余裕ができた。後は酒場放浪記でるいるいが行った会津若松の馬肉料理屋でもお昼に行こうかとくらいしか考えてなかったために、正直時間を持て余す。そこで前日にネットであたっていて気になった郡山のスポットに行ってみることにした。
その名を高柴デコ屋敷
郷土玩具として有名な「三春駒」や張り子の民芸品をつくる家が数件集まっている地区であり、またどの家も相当に古いのでこんな感じに呼ばれている。
萌えフィギュア好きが高じてか、なんか最近こういう手作りの民芸品眺めるのが妙に楽しいんだよね。一つ一つ微妙に表情も違うから、どれがいいかなあ、なんて選んでいると実に楽しい。
そんなこんなでかわいかった猫とぬたりの干支寅を購入。

ぬたりとすると、寅を買った恵比須屋さんの建物が一番すごかったですわ。半端じゃない風格でした。金取っても惜しくない(見学は無料)レベルですよ、あれ。


自分へのお土産も購入し、以降の行程を考える。その時ふと思い出したのが、昨年の福島派遣だ。津波の現場を見たあの時の感じは今でも忘れられない。あそこは今どうなったんだろう?
幸いにしてまだ時間は早い。それほど近いわけでもないが、せっかくここまで来たんだから、とぬたりが見た現場に車を走らせることにした。カーナビの設定は「一般道距離優先」。
車は山間部の道を抜け、田村市と葛尾村の境界を越えた。
この瞬間が、ぬたりが今回のドライブを気楽に楽しめた最後だった。

葛尾村。
かつらおむらと読む。村内に海岸線はないので東日本大震災の津波の被害は受けなかったものの、地震と原発事故の被害は受けている。
震災発生2か月後の国会にて、「くずおむら」と読む某野党の国会議員と、それを誰一人として訂正しない他の議員の姿に、これがこの国の国会議員の姿か、個人的にものすごく業腹な気分を感じたものだが、その話は兎も角。
ぬたりが葛尾村に入って最初は、ちょっと道の除雪がぞんざいだなあ、程度の違和感だった。だが村に入って5分としないうちに最大の違和感に思い至った。

ここには、生活の匂いがしない。

全ての家に車が止まっていない。庭に積もった雪に足跡ひとつない。固く雨戸かカーテンを閉められたすべての家のすべての窓。物干し竿やベランダにもなにもかかっていない。
そして何より、人の姿を見かけることがない。そう、葛尾村は基本的に全村民が村外に避難している。
正直な話、違和感はほんのわずかなものでしかない。少し寒い地方の田舎に行ってみれば、人は籠りがちになるからそうそう姿を見かけることはない。震災前と見える景色が劇的に変わっているわけではないだろう。
だが、分かってしまえば違和感は強烈な存在感を持って襲い掛かってくる。庭のど真ん中に転がって、雪をかぶっているチリトリ一つをとってみても、誰も片づける者がいないという、その持つ意味の重さが胸を締め上げる。見かけたのはパトカーに乗った警察官の姿のみ。見かけた車は件のパトカーと広い役場の駐車場に2台だけ止められた公用車と思しき車のみで、一般車両の対向車はとうとうお目にかかれなかった。その苦しさに、ぬたりは多少我を失っていたと思う。
ナビが示すルートは葛尾村から飯舘村へ抜ける。それでも状況は変わらない。飯舘村も全村避難を行っている。雪道で道も狭い箇所が多く、なかなかスピードを出せないこともあり、ぬたりはその重苦しさに1時間弱苦しめられることになった。どれだけ大きな集落を通ろうとも、誰もいない、生活臭もしない、そんな家屋が、新しいものから古いものまで、全く音を発しないまま佇んでいるだけだった。

避難が行われていても、崩壊しているところ以外は道路は問題なく通行できる。通行が制限されるのは福島第一原発から半径20キロの範囲だけだ(侵入すると明確に罰則規定のある法律違反になります)。だから今回ぬたりが見た光景は現地に行けば誰でも見ることができる。
だからこそぬたりは「行くな」と言いたい。誰もいないゴーストタウンなんてのは割と小説とかでは語られるフレーズだけど、実際のそれは想像以上に重く苦しい。あんな思いはみんなはしなくてもいいしする必要もない。


そしてたどり着いた相馬市磯部の津波被害地区。震災から1年近くが経過しても、住民は帰ってきていない。しかしながら少しづつ復興は進んでいた。
前回来た時の写真を持っていかなかったので、厳密な定点観測にはなっていないが、いくつかご覧いただこう。

↑2011.6.3

↑2012.2.17


↑2011.6.3

↑2012.2.17


↑2011.6.3

↑2012.2.17


↑2011.6.3

↑2012.2.17


↑2011.6.3

↑2012.2.17

あえて多くは語らない。


車は福島市へ向かう。ぬたりが派遣されて働いていたところも見ておこうと思ってね。もちろん仕事で来てるわけじゃないからオフィスとかにずかずか上り込むことはできないのだが、見られる部分を見て回ると、既に震災時の体制の面影はほとんど残っていなかった。
朝には来るつもりもなかった福島市まで来てしまったので、せっかくだからなんかないかと地図を広げると、郊外に「文知摺観音」を発見。ああ、去年来た時も興味あったのよね。ぬたりが暗記する数少ない小倉百人一首の句「陸奥のしのぶもぢずりたれゆえに 乱れそめにしわれならなくに」にても歌われておりますしね。
門が締まっておりましたけどな。何故かお休み。
「やっぱりしのぶもぢずりは狭き門なのですね」「泣くな馬鹿者」
・・・オチもついたところで今日はこの辺で。
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする