海側生活

「今さら」ではなく「今から」

キレイごとだけでは苦痛

2018年11月04日 | 感じるまま

(銭洗弁財天/鎌倉)
高齢者は仙人のような境地で、すっかり何もかも枯れているに違いないと思っている人がいる。

自分もビジネスに夢中だった頃はそう思っていた。しかし自分が高齢者になり、さらに後期高齢者を近くで見るにつけ、これは完璧な誤解だと自信をもって断言できるようになった。

川端康成の「眠れる美女」という名作がある。67歳の老人が、眠った裸の美女と添い寝をする秘密クラブに入会し、何人もの女性とベッドを共にする。老人の若い女体への憧れや亡き母への想いなどが重なり、人間の心理の奥底が描かれているが、エロチックな文体に今でも多くの人が惹かれるに違いない。60歳を過ぎて発表された作品だが、性的な執着が艶めかしく表現されている。同じく「山の音」も、息子の嫁に対する性的執着が描かれている。
谷崎潤一郎の晩年の「鍵」や「瘋癲老人日記」などの老人の性的な欲望を赤裸々に描かれている小説もある。

これらの小説に描かれる老人たちの心理は特殊なものではないと、老人になった自分が強く感じる。欲望を表に出してトラブルにしてはいけないが、仙人のようでないからと言って、恥ずかしいこととは思わない。高齢になっても恋愛にドキドキし、心もトキメク瞬間がある。性的な衝動も覚える。思い切って行動を起こしたくなる気持ちも起こる。酒の力を借りて羽目を外したくもなる。大笑いや大泣きをしたくなる時もある。

綺麗ごとの中に高齢者を押し込めて邪な欲望がまるで存在しないかのようにしてしまうと、誰もが息苦しくなってしまう。
チョット不良で、チョットいやらしくて、チョットだらしない高齢者に見られても良いじゃないか。





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1 コメント

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かりんの実 (宮本靖夫)
2018-11-06 09:49:51


  老人の恋する勇気かりんの実    峨々

大いに賛成ですね。その勇気と気力がすばらしい。どんどん挑戦してください。そして、かりんの実のような味わいを味わってください。私はとてもまねが出来ませんが。実践するしないはともかく、こうしたことを考えるだけでも敬意をはらいます。
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