■化石の荒野 / しばたはつみ (日本コロムビア)
レコードでも映画でも、とにくか何でもサイケおやじが興味を抱き、実際に接した後に、これはっ! と強い印象となって、何時までも愛でる対象になっているものは本当に少ないです。
つまり、ハズレを引く確立が圧倒的に高くて、例えば映画は成人映画をどっさり鑑賞してきた代償として、大切な時間を闇の中に捨てて来た過去を拭い去ることは出来ないわけです。
しかし、そんなこんなの中に、ひとつだけでも良い場面があったりすれば、それはそれで満足してしまう事も確かにあって、特にビデオが普及していなかった頃には、その残像を大切にするために気持をスクリーンに集中していたものです。
さて、そういうところは一般映画にも当然ながら適用され、つまんねぇ~なぁ~、と嘆きつつも、主題歌が良かったすると、それほどソンした気分にはならないもんです。
例えば本日掲載したシングル盤A面曲「化石の荒野」は、昭和57(1982)年に制作公開された同名映画の主題歌として、しばたはつみ会心の名唱♪♪~♪
なにしろ本篇は西村寿行の原作を丸山昇一の脚本、長谷部安春監督の演出によって映画化し、出演者も渡瀬恒彦、浅野温子、夏八木勲、佐分利信、川津祐介、竹田かほり等々の豪華な顔ぶれなんですから、サイケおやじは相当に期待していました。
ところが終戦秘話と現代の不毛を密接に描いた原作のスケールの大きさに映画制作の諸々が置き去りにされたというか、失礼ながら、これは凡作……。
なによりも西村寿行特有の自然描写と人間界の宿業を対比融合させる作風が、やはり2時間ちょいのフィルムでは収めることが不可能であり、失礼ながら、それゆえに散漫な脚本、些か無理を承知の演出が、出演者のキャラを活かせない結果になったような印象でした。
ところが、これまたそれゆえといっては失礼でしょうか、しばたはつみが歌う主題歌が出色! もう虚ろな心に染みいる説得力が最高なんですねぇ~♪
サイケおやじが速攻で掲載のシングル盤をゲットした事は言わずもがな、彼女の歌を聴きつつ、映画本篇中の様々な場面を思い起こせば、なにかもう一度観たくなってくるのですから、これは案外と隠れ名作なんでしょうか?
しかし結果として今日までサイケおやじは、この映画「化石の荒野」を再鑑賞することが叶わず……。
しばたはつみの歌を聴きながら、シミジミとしているばかりです。
あぁ、イントロからの哀切のハーモニカ、じっくりと歌い込まれていくドラマチックな曲メロと刹那の歌詞♪♪~♪
う~ん、しばたはつみは、本当に上手いですねぇ~~♪
ちなみに作詞は阿久悠、作編曲は萩田光雄なんですから、楽曲の完成度はノー文句であり、これを別の歌手が歌ったら……!?
なぁ~んていう雑念は全く無用でしょう。
ということで、映画と音楽は相互作用的に存在しながら、独立した魅力があり、またそこから逆に相互作用へ戻る因果関係があるのでしょう。
所謂サウンドトラック盤というジャンルに確固たる需要があるのも、鑑賞する側各々の印象や思惑をさらに強くするための結果であって、軽く扱えるものではないと思います。
なによりも、ここでは「化石の荒野」という、しばたはつみが歌ってくれるドラマを楽しめる事が、本当に嬉しいのであります。