■Fox On The Run / Sweet (Capitol / 東芝)
世の中、「分かりづらさ」が最も嫌われる事は、今日の社会情勢を鑑みるまでもないと思いますが、それが「分かり易さ」に転じてみれば、これまた何かと批判の対象にされるんですから、難しいもんだと思います。
例えば本日ご紹介のシングル盤A面曲「Fox On The Run」を1975年に大ヒットさせたスイートは、モロに「分かり易さ」を前面に出したであろう方針をデビュー当時から貫きとおすイギリスのバンドなんですが、それゆえに今日でも軽く扱われているのが実情でしょう。
一番に拙いのは、シングルヒットはきっちり出しているのに、アルバムが売れないという、これが如何にも当時のバブルガムポップスと同類項を示しているのが、動かぬ証拠ってもんです。
しかしスイートには、どこかしら一筋縄ではいかない雰囲気が滲んでいるのも確かで、それは1968年頃の結成から、1970年代初頭のロンドンを中心としたグラム&グリッターロックのブームでブレイクするまでに培われた、ある意味での「根性」かもしれません。
掲載したジャケ写からも一目瞭然、ブライアン・コノリイ(vo)、アンディ・スコット(g,key,vo)、スティーヴ・プリースト(b,vo)、ミック・タッカー(ds) の4人組は、アイドルバンドとは絶対に呼べないほどの貫録というか、老成があり、それでいてやってくれる事は、極上のバブルガムポップスをハードロックに焼き直した(?)路線なんですから、これがウケなかったら不思議としか言えません。
実はスイートが売れた要因には、スージー・クアトロやマッドを大スタアに導いたニッキー・チン&マイク・チャップマンという優れたプロデューサー兼ソングライターの存在が大きく、また同時にメンバーの歌と演奏におけるダントツの実力がありました。
ですから、何時までも制作側のあやつり人形ではいられない!
そんな意気地があったんじゃ~ないか!?
と、サイケおやじは思っていますし、イギリスだけでなく、アメリカでも売れまくっていた時期に出した本日ご紹介の「Fox On The Run」が、グループ自らの作詞作曲、そしてプロデュースによって作られたという事実は侮れません。
曲メロはキャッチーであり、要所でサウンドの増幅に使われるシンセ、またギターやベースのコンビネーションからドラムスのリズムの出し方まで、これは過言ではなく、プログレバンドの如き味わいさえあるんですよねぇ~♪
つまりプログレを標榜するバンドの最大の悩み(?)は、シングルヒットが出せないことで、どんなに優れたアルバムを作ってみても、それなりにキャリアが無いバンドでは、速攻で売り上げに繋がらないというところでしょう。
そこで無理やりにシングルヒット狙いの楽曲をやっては、ファンから顰蹙という迷い道をやらかす事例は多々ありますからねぇ。
そのあたりのバランス感覚というか、「分かり易さ」を追求時には、妙な下心は厳禁!?
という事かもしれません。
告白するとサイケおやじは貰ったチケットではありますが、スイートが全盛期だった1976年の来日公演にいきました。そして演奏の半端ではない上手さに仰天させられましたですねぇ~♪
また同時に、明らかな若作りをしているメンバーの佇まいとは裏腹の、なかなかハッスルしたステージ進行にも驚きました。
そのあたりは掲載したジャケ写でも、それなりご推察願えるかとは思いますが、率直に言えば絶妙のダサい雰囲気がスイートの持ち味であり、もしかしたら全てが所謂そろばん尽くだとしたら、ますますスイートは凄いバンドだと思っています。
ということで、「分かり易さ」には様々な要素、光と影がつきまとい、なかなか上手くやる事は難しいというのが、本日の結論です。
しかし、ひとつだけ言えるのは、その点を蔑にしてしまっては、何事も人間社会では受け入れらないという現実です。
サイケおやじは常日頃から、そのあたりのバランスが実に悪く、天の邪鬼と回りくどさを武器(?)にする事が度々ですから、ちょいとスイートのベスト盤CDでもゲットして、反省する必要を模索しているのでした。