■恋は炎 c/w Honky Tonk Women / Humble Pie (A&M / キングレコード)
こう書いてしまっては失礼ながら、それにしても今回のオリンピックでの日本選手団は、それほど期待していなかった競技種目での活躍が目立ちましたですねぇ~♪
特にバレーボール、バトミントン、卓球、アーチェリーは女子が大活躍! また男子サッカーもメダルは逸しましたが、まさか準決勝まで戦えるとは思ってもいませんでした。
まさに嬉しい誤算!
と言ってしまえば、またまた失礼ではありますが、それゆえに国民の喜びも最高潮に達していたのは偽りのない事実だと思います。
さて、そういう点においては、ミュージシャンのライプステージも同様であって、まさに一期一会の場における悲喜こもごもに本当の価値があるはずです。
例えば本日の主役たるハンプル・パイが昭和48(1973)年5月に敢行した来日コンサートは真の大熱演でありましたが、少なくともサイケおやじは何の期待もしていたわけではありません。
というか、実はチケットすら事前に買っておらず、それはハンプル・パイには同じハードロック組でもゼップやディープ・パープル、グランド・ファンク・レイルロードやマウンテン等々の様な派手な人気が無く、また幾分マニアックな存在ながら、フリーやブラック・サバスのようなシングルヒットを放っていたわけでもないのですから、充実したライプアルバム「パフォーマンス・ロッキン・ザ・フィルモア」を出していたとて、その初来日は何かイマイチの盛り上がり……、と感じていましたからねぇ。
また、本音として、ハンブル・パイは乏しい小遣いからチケットを買うまでは……、という位置付けでありました。
ところが実際に接したライプステージは、驚愕的に最高の極み!
過言ではなく、しばらく「ハンプル・パイ熱」に魘されていたほどです。
それでは何故、サイケおやじはハンプル・パイの来日公演を楽しめたのか?
結論から言えば、ダフ屋から捨値のチケットを買わされるという、非常な幸運があったからなんですよ。
場所は新宿厚生年金会館、ちょうどその日、サイケおやじは友人と一緒に現場を通りかかった時、ダフ屋のおっちゃんが――
もう、始まっているから、5百円でいいよ。
――なぁ~んて、押し売り(?)されたのが真相で、しかし会場前のポスターには前座で日本の某バンドが出る告知があった事から、これはラッキ~~♪
速攻で友人と入ってみると、ちょうどこれからハンプル・パイが出る時間でしたが、これが英語のイントロダクションと唸るギターが重なるようにスタートする、思い出してもカッコ良すぎるオープニングから、後は最後の大団円まで、実にソウルフルなハードロック大会の決定版!
ちなみにこの時のハンプル・パイはスティーヴ・マリオット(vo,g,)、グレッグ・リドレー(b,vo)、ジェリー・シャーリー(ds) という結成以来のオリジナルメンバーに新参のデイヴ・クレムスン(g)、さらにはブラックベリーズと名乗る3名の黒人女性ボーカル隊が入っていたのには吃驚仰天しましたですねぇ~。
なにしろブラックベリーズがクラウディ・キング、ヴェネッタ・フィールズ、ビリー・バーナムと紹介されてしまっては、もはや説明不要というか、1960年代末頃からのスワンプロック業界では大活躍していたモノホンの黒人女性コーラス隊であり、メンバーの各々のキャリアには黒人R&B保守本流の仕事も山の様に残されているのですから、ある意味ではハンプル・パイ本人達よりも凄い存在なんですよねぇ~♪
当時のロック好きであれば、絶対に彼女達の歌声は自然に耳に入っているはずで、例えばストーンズの「メインストリートのならず者」等々の人気名盤のクレジットを確認してみれば、思わず唸る他はないでしょう。
もちろんサイケおやじは、それと知らずにライプの会場に入れたわけですから、舞い上がりも頂点に達してしまったですよ♪♪~♪
しかし肝心のハンプル・パイの演奏も凄まじく、ハイピッチでシャウトまくり、汗だらだらで激唱するスティーヴ・マリオットはギターも熱く、それに呼応するが如きエグ味の強いプレイを披露するデイヴ・クレムスン、どっしり構えてドライヴしまくるグレッグ・リドレー、そして極みつきだったのが、ドカドカ煩いジェリー・シャーリーの剛腕ドラミングでした。
あぁ~、思い出しても、この時のジェリー・シャーリーほどライプでストレートに爆裂なロックドラミングは聞いたことがありません。
それがハンプル・パイ&ブラックベリーズの歌と演奏を強引に引っ張り、押し上げていたと確信してしまえば、サイケおやじは以降しばらくの間、ディープパープルもゼップも、フリーもマウンテンもグランド・ファンク・レイルロードも、とにかくハードロック系のレコードが聴けなくなってしまったほどの放心状態でしたねぇ~~~。
そこでもはやハンプル・パイのレコードを買うしかない!
と、決意したのは当然の成り行きではありますが、経済的な理由から来日記念盤として華々しく売り出されていた最新アルバム「イート・イット」は買うことが出来ず、窮余の一策として掲載のシングル盤をゲットしたというわけで、特にB面には来日公演でもやっていたストーンズのカパー「Honky Tonk Women」がライプバージョンで収められているのが大いなる魅力♪♪~♪
既に述べたとおりのドカドカに炸裂するドラムスを要に熱いエモーションが噴出した歌と演奏は、最高ですよっ!
一方、A面の「恋は炎 / Get Down To It」はちょいとソウルフュージョン味も入った、ラスカルズがやっても不思議ではないブルーアイドソウルとはいえ、やはりスティーヴ・マリオットのドロドロに熱したマグマ的歌い回しが強烈!
実はこの両曲、前述したアルバム「イート・イット」からのシングルカットなんですが、それがLP2枚組とあっては、容易に入手出来るものではないという現実がありました。
しかし結局、このシングル盤にシビれてしまえば、万難を排してゲットさせられてしまったのがサイケおやじの宿業です。そして「イート・イット」が素晴らしい内容であったことは言うまでもありませんが、それはついては後日に書きたいと思います。
ただ、ひとつだけ結論らしきものを述べさせていただければ、そこではハンブル・パイとブラックベリーズのコラポレーションがジャストミートの名演名唱ばかりで、今となっては、この時期こそがハンプル・パイの絶頂期だったと断言して後悔致しません。
ということで、期待せずに接した事象が素晴らしい結末であった時、そこには言い知れぬ感動が揺るぎなく、何時までも心に残るのです。
今回のオリンピックの日本選手団の活躍は、ある程度予測出来た部分と嬉しい意外性が良い方向に作用した結果であって、中には裏切りに近い屈辱もありましたが、勝負は時のなんとやら!?
意想外の幸運に遭遇する事も、これまた時空の中の流れであれば、虚心坦懐に感情移入するのも自然の摂理かもしれませんねぇ。
最後になりましたが、掲載ジャケ写のステージライプショットは、これがほとんど日本公演に近い雰囲気が満点で、そのあたりからも楽しみが伝説化しているように思うばかりです。