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OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

ロイ・ヘインズの人気盤

2007-09-12 17:42:21 | Weblog

いやはやなんとも……。

相撲協会の理事長が見苦しい行動をしたかと思えば、ジョー・サビヌルの訃報が入ったり……。

そして究極の恥さらしが、総理大臣の辞意!

こんなに、やるせない気分にさせられたのは、久々です。

というわけで、本日もジャズ喫茶の人気盤でいきます――

Out Of The Afternoon / Roy Haynes (Impulse!)

4ビートからファンクまで、どんなスタイルの中で敲いても、常に自己を押し通してきた黒人ドラマーのロイ・ヘインズは、脇役でも強烈な印象を残してしまう人です。

例えばジョン・コルトレーンのバンドに助っ人で入ったライブ盤の「セルフレスネス」とか、チック・コリアと烈しく対決した「ナウ・ヒー・シングス~」あたりの名演は決定的でしょう。

しかし、こんなに脇役で目立ちまくる人が何故か、自分のリーダー盤だと共演者に花を持たせてしまうような雰囲気が……。

このアルバムは、当にそうした中の1枚で、結論から言うとローランド・カークの参加がお目当ての作品かもしれません。

録音は1962年5月16&23日、メンバーはローランド・カーク(ts,manzello,strich,fl)、トミー・フラナガン(p)、ヘンリー・グライムス(b)、ロイ・ヘインズ(ds) という強烈な面々! そして、繰り返しますが、どうしてもローランド・カークの正統派ワンホーン盤というイメージがあります――

A-1 Moon Ray
 オドロの思わせぶりから、ローランド・カークが車のクラクションみたいなアクセントを入れ、続いて哀愁のテーマメロディが流れてくるという、ニクイ演出が最高です♪ トミー・フラナガンの伴奏もメリハリが効いていますし、ロイ・ヘインズの大技・小技の冴えとヘンリー・グライムスの野太いスイング感も存在感がありますねぇ~♪
 もう、このテーマ部分だけでジャズ者は虜になるんです。
 もちろん得意の複数管同時吹きを出しまくるローランド・カークのアドリブは、歌心というか、メロディを大切にしていますので、決してゲテモノではありません。
 またトミー・フラナガンは黒いフィーリングを絶妙に入れた音選びが素晴らしく、しかもジェントルなスイング感も満点! どっしり構えたヘンリー・グライムスが居ますから、ロイ・ヘインズは単なるリズムキープを超越した自在のドラミングを聞かせています。
 ちなみにロイ・ヘインズは、約1ヵ月前にローランド・カークのリーダーセッションに参加し、それは名盤「ドミノ」となって世に出ていますが、この盤と共通する雰囲気も楽しめますので、機会があれば、聴いてみて下さいませ。ニンマリしますよ♪

A-2 Fly Me To The Moon
 ちょっと凝ったイントロから、ローランド・カークがキャバレーモードで良く知られたテーマメロディを演奏してくれますので、和みます。
 ところが、その直後から一筋縄ではいきません。千変万化のリズム隊に煽られたローランド・カークが、独自に開発した管楽器を駆使して摩訶不思議なアドリブ世界を作り出していきます。
 と言っても、それは難解なものではなく、案外と分かり易いフレーズを常套手段を選ばずに再構築したような按配です。そこには複数楽器同時吹奏とか、変則的な息継ぎ、さらに絶妙のタイム感覚がスリル満点という、あくまでシンコへーションを大切にしたのジャズの奥儀が楽しめるのです。
 またトミー・フラナガンが王道の正統派モダンジャズピアノを聴かせれば、ヘンリー・グライムスは最先端の異次元ベースソロでメリハリをつけています。
 そしてロイ・ヘインズのシャープなビート感が最高です。オカズが多くてメシが無いという、十八番のドラミングが冴えまくり! 軽妙でいながら力強いビートを出してきますから、たまらんです。

A-3 Raoul
 ロイ・ヘインズの作曲となっていますが、シンプルなリフを主体としたアップテンポの演奏で、実はこのパターンはローランド・カークが様々な場面で活用しているという真相も含まれています。
 しかし、まあ、そんな事はど~でも良いほどに爽快な仕上がりで、スピード感満点なロイ・ヘインズのドラミングに煽られて、メンバー全員が大熱演! 特にソプラノサックスと似た音色を出すマンゼロという楽器を操るローランド・カークが本領発揮です。

B-1 Snap Crackle
 これもロイ・ヘインズのオリジナルで、曲中での「ロイ! ヘインズ!」という掛声が楽しい演奏です。
 そしてアドリブパートではトミー・フラナガンが素晴らしく、ローランド・カークはフルートとハミングの二重奏という禁じ手寸前の妙技で楽しませてくれます。
 グルーヴィなウォーキングベースを聞かせるヘンリー・グライムス、その背後で暴れまくるロイ・ヘインズのドラミングも痛快の極みだと思います。
 
B-2 If I Should Lose You
 チャーリー・パーカー(as) が十八番にしていた歌物スタンダード曲ですから、ローランド・カークはアルトサックスに似た音色のストリッチという楽器で敬意を表した演奏を聞かせてくれます。あぁ、このテーマメロディの歌わせ方が絶妙なんですねぇ~♪ せつない気分とグルーヴィな高揚感が見事に合致した名演だと思います。
 もちろんロイ・ヘインズは小刻みなビート感を生かしたドラミングで緊張感を醸し出し、トミー・フラナガンは落ち着いた伴奏&アドリブを披露していますから、ローランド・カークもアドリブに入ってからは息継ぎが分からないほどの超絶吹奏で強烈に早いフレーズを積み重ね、圧倒的です!

B-3 Long Wharf
 これまたロイ・ヘインズのシャープなドラミングが冴えに冴えたオリジナル曲! そのスピード感溢れる展開は、当時の新感覚ジャズの魅力が存分に楽しめます。
 特にヘンリー・グライムスは、セシル・テイラー等のフリー系バンドでも活躍した名手だけに、ここでも単調なバッキングにみせかけてエグミを発揮し、またアルコ弾きのアドリブでは相等に過激なツッコミを聞かせています。
 しかし全体としては良く纏まった正統派のスタイルが固持されており、ロイ・ヘインズは敲きまくっていながら、基本のビートを完璧に守っている天才ぶりを披露しています。

B-4 Some Other Spring
 オーラスは和みのバラード演奏で、ローランド・カークはジョン・コルトレーンを痛烈に意識した吹奏を聞かせてくれますし、トミー・フラナガンは安心印の大名演ですから、目隠しテストでは間違いが頻発しそうな雰囲気でしょうか。
 バンドメンバー全員の間合いの取り方が最高だと思います。

ということで、全篇、ジャズ的なスリルとグルーヴィな雰囲気に満ちた演奏ばかりですから、人気盤となるのもムベなるかな!

オカズ中心で主要なビートを作り出していくロイ・ヘインズ独特のドラミングは、当にこの人だけの一代芸かもしれません。それが実に爽快なんですねぇ~♪

正直に告白すれば最初に述べた様に、ローランド・カークが聞きたくて買ったアルバムでしたが、聴くほどにロイ・ヘインズの良さに目覚める仕上がりだと思います。

う~ん、周囲に花を持たせつつも、リーダーとしての存在を堅持するという、これが「器」とか「貫禄」なんでしょうねぇ~。

我国の為政者・権力者達にも、こういう姿勢が望まれると痛切に感じるのでした。

コメント (2)
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