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サイケおやじの生活と音楽

クインシー・ジョーンズの共存共栄

2007-09-21 18:48:40 | Weblog

やれやれ、世間は明日から連休だというのに、私は仕事にどっぷり……。まあ、それも物欲に支配された己の運命と思えば、納得するしかありませんね。

ということで、本日は景気良くビックバンドを――

The Great Wide World Of Quincy Jones (EmArcy)

クインシー・ジョーンズは大衆音楽のプロデューサーとして、揺ぎない評価を得ていますが、駆け出し時代はジャズ系のトランペッターでした。しかもなかなかの学究派だったらしく、バークレイ音楽院で作編曲の勉強もしていたそうです。

そして二十歳頃からライオネル・ハンプトン(vib) のオーケストラに加わって欧州巡業に出たのが1953年で、もちろんこのツアーにはクリフォード・ブラウン(tp) やジジ・グライス(as) が一緒でしたから、親分に隠れて敢行されたパリセッションでも暗躍していたと言われています。

さらに帰国後は、ディジー・ガレスピー(tp) やカウント・ベイシーのオーケストラにアレンジを提供したり、再びパリに渡って音楽の勉強をしたり、さらにスウェーデンのジャズ界でも仕事をするという大躍進をみせるのです。

そうした経歴が真っ当に評価されたのが1950年代後半で、ついに自分のレギュラーオーケストラを持ったのが1959年! 若干26歳の時でした。

それは「フリー&イージー」というジャズミュージカルの欧州巡業で音楽を担当するチャンスを活かしたもので、集められた超一流のメンバーによるビックバンドは、かなり注目されていたようです。

このアルバムは、そのオーケストラが欧州巡業に旅立つ直前に吹き込まれた作品で、一説にはプロモーションが目的だったと言われています。

録音は1959年11月4、5&9日、メンバーはリズム隊がレス・スパン(g,fl)、バディ・ポウン(p)、バディ・カトレット(b)、ドン・ラモンド(ds) という個性的で堅実な名手揃い! そしてホーン&ブラス陣にはアート・ファーマー(tp)、リー・モーガン(tp)、ジミー・クリーヴランド(tb)、アービー・グリーン(tb)、フィル・ウッズ(as)、ポーター・ギルバード(as)、バド・ジョンソン(ts)、ジェローム・リチャードソン(ts,fl)、サヒブ・シハブ(bs,fl) 等々が参加しています――

A-1 Lester Leaps In (arr;Ernie Wilkis)
A-2 Ghana (arr;Ernie Wilkis)
A-3 Caravan (arr;Bill Potts)
A-4 Everybody's Blues (arr;Ernie Wilkis)
A-5 Cherokee (arr;Ernie Wilkis)
B-1 Air Mail Special (arr;Al Cohn)
B-2 They Say It's Wonderfull (arr;Al Cohn)
B-3 Chant Of The Weed (arr;Ralph Burns)
B-4 I Never Has Seen Snow (arr;Bill Potts)
B-5 Eesom (arr;Bill Potts)

――という上記演目は比較的良く知られたスタンダード曲やジャズオリジナルばかりですが、愕いたことにクインシー・ジョーンズがアレンジを担当した曲がひとつもありません!

う~ん、、これはいったい、どうした事だっ!

もちろん演奏は快演ばかりですし、アドリブ命のジャズ魂を活かしたスモールコンボ的なアレンジの妙は、クインシー・ジョーンズ独特の味わいがたっぶりと出ています。

ということは、後年顕著になるプロデューサー的な資質が、ここでもう既に発揮されているということなんでしょうか……? ちなみにジャケットには、特にプロデューサーの表記が見当たりませんから、タイトルどおり、これはクインシー・ジョーンズが自らの世界を表現する手段として、有能なメンバーを集め、その才能と共存共栄を図った成果なんでしょうか……?

肝心の演奏は全てが濃密な仕上がりです。

まずド頭の「Lester Leaps In」ではレス・スパンがギターとフルートで大活躍する♪ スモール・コンポ風のスタートからオーケストラ演奏に変化していくアレンジも冴えていますし、対してバンドが一丸となって猛烈にスイングしまくる「Air Mail Special」も、モダンジャズ時代のビックバンドは、こう在るべし!

またハードボイルドな名曲・名演となった「Ghana」や「Eesom」、ギル・エバンスっぽい「They Say It's Wonderfull」、凝っていながらグルーヴィな「Chant Of The Weed」あたりは、学生バンドもお手本にしそうな雰囲気の良さで、たまりません。なによりも荒っぽいリズム隊の存在感が、狙ったものなのでしょうが、個人的には大好きです。

気になるアドリブソロについては、ジャケットに詳しく表記されていますが、ジェローム・リチャードソンが良い味出しまくり♪

ということで、これは後々まで続くクインシー・ジョーンズの手法が、その初期段階から味わい深く楽しめるアルバムです。肝心のオーケストラそのものは、メインのミュージカルが欧州巡業で不評だったことから経営難に陥り、メンバー交代も頻繁にあったものの、1961年秋まで運営されました。

はっきり言えば、まあ失敗という部分もあるのですが、やはりクインシー・ジョーンズはビックバンドで聞かせてくれるアレンジが最高です。これは映画音楽や後のフュージョンでも本領が発揮される匠の技♪

またプロデューサーとしての手腕は言わずもがな、ビックバンドを解散した後は、ポップスの分野でもレスリー・ゴーア(vo) を筆頭に幾多の良い仕事を重ねていくのでした。

クインシー・ジョーンズは、最高だねっ♪ 

コメント
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