二十世紀初頭、 「砂漠の女王」「イラク建国の母」と呼ばれ、探検家、考古学者、詩人、登山家、諜報員など様々な顔を持つ英国人女性ガートルード・ベルの半世紀を、ニコール・キッドマンの主演で描いた大作である。
「アラビアのロレンス」(1962年)公開から半世紀を経て登場したこの作品は、アラビアの砂漠の地を旅したひとりの女性の壮大な大河ロマンだ。
主人公は、まさにもうひとりの「アラビアのロレンス」(女性版)と称される重要な存在となり、ドイツの鬼才ヴェルナー・ヘルツォーク監督は、過酷な運命に抗いながらも誇り高く生き続けた女の、愛と歴史のタペストリーとして紡いでいった。
鉄鋼王の家庭で何不自由なく育ったガートルード・ベル(ニコール・キッドマン)は、社交界でデビューするがその空気になじめず、叔父を頼りにペルシャへ出かけることになる。
砂漠を中心に約2500キロの旅を続け、各地の部族とも交流する。
ガートルード・ベルは砂漠に魅了され、愛し合ったヘンリー(ジェームズ・フランコ)やリチャード(ダミアン・ルイス)の死を乗り越え、不安定なアラブ情勢の中、時代に翻弄されながらも旅を続け、やがて大きな時代のうねりとともに、英国にとって欠かせない存在となっていく。
主演のニコール・キッドマンが、美しさとカリスマ性を兼ね備えた意志の強い女性を好演し、存在感を確かなものにしている。
ベルが、「アラビアのロレンス」で知られる、若き日のトーマス・エドワード・ロレンス(ロバート・パティンソン)と、シリアの遺跡発掘現場での運命の出会いを果し、彼とはその後も人生の節目節目で再会することになる。
ガートルード・ベルは彼よりも20歳年上、この女性がアラブ諸国建国の立役者となるには、彼女に多様な体験があったからで、そのことが作品にも厚味を与えている。
この時代に、こんな勇気と知性を持った女性がいたのだ。
そして、誰もがなしえなかったことを成し遂げた。
強固な意志は世界をも動かすのだ。
まあ、格好いいニコール・キッドマンの映画とはなっているが、この端正な歴史ドラマ、やや冗長な感じもする。
メロドラマ的な要素も取り入れているが、大きな感動的なドラマがあるというわけではない。
そこがちょっと・・・。
それでも、このアメリカ映画「アラビアの女王 愛と宿命の日々」では、ヴェルナー・ヘルツォーク監督が切り取った砂漠や渓谷など、4Kカメラを駆使した素晴しい自然描写に思わず見とれるシーンがいっぱいだ。
砂漠の中で紡がれた、鮮やかな運命のアラベスクとしても・・・。
[JULIENの評価・・・★★★☆☆](★五つが最高点)
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それでもやっぱり欧米側中心なのかも知れませんが。
日本の歴史でも世界の歴史でも、女性が大仕事をやっていますものね。