徒然草

つれづれなるままに、日々の見聞など、あれこれと書き綴って・・・。

映画「GIRL ガール」―本気で頑張る女たちの美しい輝き―

2012-06-22 06:00:00 | 映画


 女はつくづく生きにくい、という声を聞く。
 若さや自由を、思い切り謳歌できなくなる年代がある。
 そして、その時は確実に訪れる。
 恋愛も、仕事も、結婚も、育児も・・・。
 女たちは、日々人生の選択に迫られながら、それでも懸命に生きている。
 それが、現代の女たちだ。
 それも、29歳から36歳までといったら、女たちの悩める世代だ。

 女は、一体いくつまでガールでいられるか。たとえば、可愛い服を着られるのは何歳までか。
 いつまでもガールでいたい女たちが、可愛さを失わないで、社会で男性と肩を並べて頑張っていく。
 そんな女たちの応援歌だ。
 深川栄洋監督は、奥田英明の人気原作を得て、現代女性の悩みを、実にきめ細やかな心理で描き上げた。
 篠崎絵里子の脚本もよく練れている。
この映画、ドラマの隅々にまで女の感性が丁寧に散りばめられていて、思っていたよりずっと上質な作品だ。
      
      
由紀子(香里奈)、聖子(麻生久美子)、容子(吉瀬美智子)、孝子(板谷由夏)の4人は、仕事も境遇も違うが気の合う友達同士だ。

それぞれ、女として生きることに悩みを抱えていた。
大手広告代理店に勤める由紀子は、30歳を目前にして焦りを募らせていた。大學時代の友人・蒼太(向井理)とのときめきのない恋愛、若い恰好が年相応でないと指摘されたこと、仕事上ではクライアントとの対立があったりと、いつまでも“ガール”でいられないのかと、自分を見失っていた。
大手不動産会社に勤める34歳の聖子は、管理職に抜擢されたものの、新しく部下になった今井(要潤)は自分より年上で、事あるごとに露わになる彼の男性優位の考え方に怒りを爆発させる。
老舗文具メーカーに勤める34歳の容子は、恋とは無縁なずぼらな生活を送っていたが、ある日、ひと回り年の違う新入社員・慎太郎(林遣都)の教育係を任される。あっという間に女子たちから人気を集める慎太郎に、容子もまた惹かれていくが、自分の気持ちを押さ込もうとする。そんな中、実家では妹の結婚が決まり、両親には気を遣われる始末で、素直になれず悶々とする日々であった。
孝子は離婚を経て、6歳の息子を抱えながら、3年ぶりに営業職に復帰した。仕事でシングルマザーを言い訳にしないよう頑張り、息子のために父親代わりまで務め、シッターの帰る時間に間に合うよう急いで帰宅するという、息つく暇もない毎日だ。
彼女は、仕事も家庭も大事にしたいのに、空回りしている自分に虚しさを覚える。もう“ガール”ではないのかもしれない。
それでも、彼女たちは、懸命に女として人生と向き合っていた。

女たちは、誰もが悩みを抱えているが、いつも輝きを失わないところが素晴らしい。
生き方ということを考えれば、男性より女性のほうが選択の自由がありそうだ。
彼女たちは、よく喋り、着飾り、気持ちは素直に発散し、友情を確認し合って、それぞれのステージを懸命に生きている。
「60歳のラブレター」「神様のカルテ」深川栄洋監督は、どうも主人公たちに自身を重ねてみているようで、楽しくなる。

女の子と言ったらいいのか、やはりガールと言ったらいいのか、彼女たちは相応に年を重ねていくのだが、どうやら「女子」という言葉が嫌いなようだ。
本質的には、夢見がちな女の子なのだが・・・。
あなたの人生は何色かと聞かれれば、「女の人生は、ピンクが半分、ブルーが半分よ」と答える、このセリフが効いている。
やはり、、ピンクとブルーなのである。
深川栄洋監督のこの作品「GIRL ガール」は、、女性も男性も共感できるところが多い。
上滑りの多い最近の日本映画の中にあって、とくに女性の心理描写の細やかなところは好感が持てるし、リアリティもあって、観ている方も楽しくなれる。
何事も一生懸命で、ひたむきなところがまたいい。

登場人物たちのファッションには、目を奪われる。
女の子の部屋の中というのも、実にファッショナブルだし、実際にファッションショーのシーンもあり、面白い。
大人の服をまとって、大人の顔をして生きていても、みんな心の中に女の子がいるんだ。
男性の人生は足し算だが、逆に女性の人生は引き算だとは、よく言われることだ。

ドラマの中、たとえば職場での聖子と、男性で年上の部下・今井のセリフの応酬なども、なかなか痛快な対決である。
この作品を観ていると、男と女の違いもよくわかるというものだ。
女性は、女であることを自慢したくなるかも知れない。
多くの女たちが言うには、「100回生まれたって、100回とも女がいい」だ。
恋も仕事も、家庭も育児も、そして絶対欠かしてはならないお洒落も、女はすべてに愛を注ぐことを忘れない。
立場や境遇がどんなに違おうとも、女同士は合わせ鏡のようなものだ。
女性主役だから、これは女性映画だと決めつけるなどはとんでもない。男性上位の考え方はここでは通用しない。
でも、ここに出てくる男性は小さく見えて仕方がない。
強きものは、女なのだ。

奥田英明の原作短編の数編を、かなり忠実に一本の映画にまとめ上げたものだが、小説に登場するガールたちの、生き生きとしたキャラクターが何ともかっこいい。
彼女たちは、みな三十代の働く女たちだ。
それなりに社会で揉まれ、酸いも甘いも、人生の表も裏も知っている輝き(!)盛りである。
女たちは、職場での様々なトラブルに、あれこれ悩み、ときにはへたりながらも、まことにしなやかに、しかし敢然と(!)立ち向かっていく。
出演者、とくに女優陣には気負いもあり、それが気にならぬこともないが、深川栄洋監督の才気には拍手である。
清々しく爽快で、大いに楽しめる作品だ。
     [JULIENの評価・・・★★★★☆](★五つが最高点


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2 コメント

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ガール (茶柱)
2012-06-22 23:04:17
私なんかは「女性は一生ガールなんだ」なんて思いますけどね。
ちっちゃな幼稚園児から,お年を召された方まで・・・。

そんな事を言うと怒られてしまうかしら?
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正確なところは・・・ (Julien)
2012-06-24 20:30:22
ヤングやオールドの女性に聞いてみないとわかりませんが、「ガール」と呼ばれていたいという意見が、まあ多いようですね。
解りますねえ。その気持ち、とてもよく・・・。
アラサーでも、アラフォーでも、もっともっと上の年になっても「ガール」のほうがいいですものね。(笑)
でも、さすがに100歳(!)ではどうでしょうか。
男性は、いつまでも「ボーイ」というわけにはいきませんが・・・。(笑)はい。
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