徒然草

つれづれなるままに、日々の見聞など、あれこれと書き綴って・・・。

映画「コロンビアーナ」―激しくも哀しい愛と復讐の物語―

2012-10-08 17:00:00 | 映画


 それは、深い悲しみと怒りから始まった。
 一少女を、孤独な戦いへと駆り立てて・・・。
 女は、復讐のために生きる、美しき暗殺者だ。

 オリヴィエ・メガトン監督の、このフランス・アメリカ合作映画は、躍動感と緊迫感のあふれるアクションドラマである。
 南米コロンビアの、美しい国花と同じ名を持つヒロイン、女暗殺者のカトレアを演じるのは「アバター」でブレイクしたゾーイ・サルダナで、映画で見せる、そのスピーディーで優美な立ち回りもなかなかのものだ。









      
1992年、南米・コロンビア・・・。

マフィアの父を幹部に持つ少女カトレアは、9歳の時に、マフィアのボスであるドン・ルイス(ベト・ベニトス)によって、両親を惨殺された。
カトレアは、単身アメリカに渡り、叔父エミリオ(クリフ・カーティス)に育てられることになった。

それから15年、美しい女性として成長したカトレア(ゾ-イ・サルダナ)は、エミリオのもとで殺し屋としての日々を送っていた。
彼女は一流の殺し屋となって、いつか必ず両親の復讐を果たすことを誓った。
ドン・ルイスを挑発するかのように、標的を始末するたびに、その傍らにカトレアの花の絵を描き残していた。
それは、憎き仇を炙り出すためのアイテムだった。

やがて、マフィアが本気で彼女を追いこもうとしたとき、予期せぬ出来事が次々と起こる。
新たな悲しみ、新たな怒り・・・、カトレアの心に復讐の炎が静かに、激しく燃え上がる。
そんな時、唯一カトレアが安らぎを得られるのは、画家の恋人ダニー(マイケル・ヴァルタン)と過ごす、束の間の時だけだった・・・。

カトレアの花の絵をターゲットの傍らに残すシーンは、日本映画の「五瓣の椿」を思い起こさせるが、このドラマの方はやや一本調子だ。
スピーディーなアクションは見応えもあるのだが、殺し、殺しの連鎖だけではいかにも単調で、飽きるところだ。
ドラマ前半の、ヒロインの生い立ちや、その頃の家族惨殺事件など、もうちょっと掘り下げたドラマがほしい。
その後のカトレアの復讐事件に繋がっていく、大事な要素が薄っぺらだ。
簡潔、省略で済ませず、詳細な伏線と緻密な構成による盛り上がりを期待したかった。
主人公にももっと語らせて欲しかったたし、ドラマの作り手ももっと語ってしかるべき(描写すべき)で、概して説明不足につきる。
オリヴィエ・メガトン監督のフランス・アメリカ合作映画「コロンビアーナ」は、上げ底の弁当みたいで、見栄えは悪くないのだが、この種のドラマとしては作りも浅薄で、物語の展開も平凡の域を出ない。

・・・カトレアは23件もの殺人を犯した、連続殺人犯だ。
オリヴィエ・メガトン監督は、復讐に蝕まれたカトレアを、それでも思いやりを持つ人間として描きたかったはずなのだ。
女性として、カトレアが自分の人生で複雑な感情を示す相手は、彼女の叔父エミリオと恋人のダニーだ。
エミリオは彼女にとって、生き残っている唯一の家族だ。
その意味では、映画の中盤以降で二人が言い合うくだりは、少し感動的な部分かも知れない。
エミリオは、彼女のしたいようにさせたかったのだろうか。決してそうは思えない。
彼女の復讐計画に賛同していたわけではあるまい。

恋人ダニーとの関係はといえば、この物語の大切な要素でもある。
ダニーは、カトレアのことをほとんど知らないのだ。
カトレアが、自分の人生について語らないからだ。
彼女は、決して本当のことを言おうとしない。
しかし、カトレアは、自分の心が少しずつダニーに近づいていることに気がつき始める。
あげくに、彼女は復讐と愛情のはざまで苦しみ始め、その二重生活を続けていくことが次第に難しくなってゆくのだ。
この二人の関係がどうなっていくのかが、見ようによってはこの作品の一番興味深いところだ。
そうした葛藤を抱えながら、見どころ十分のカトレア(ゾーイ・サルダナ)のアクションが、複雑な感情の機微を少しく湛えていたことは、素直にうなずける。
     [JULIENの評価・・・★★★☆☆](★五つが最高点


最新の画像もっと見る

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
これは (茶柱)
2012-10-08 22:42:43
まあ,宣伝文句にもある「女殺し屋もの」なんでしょうね。
で,ニキータなんかは結構色々ドラマがあったような気がするんですけれども・・・。

恋人が殺し屋の素性を知らないとドラマがちょっと薄くなるかも知れませんね。
返信する
おっしゃる通りです・・・ (Julien)
2012-10-10 13:04:37
謎めいているのはいいとしても、何だか面白くなかったりなのです。はい。
ま、暇つぶし(!)の映画でしょうか。
返信する

コメントを投稿