それは現実なのか。狂気なのか。妄想なのか。
「ミッシング・パーソン」という言葉がある。
日本では、あまり聞きなれない言葉だ。
失踪、誘拐などの理由の判明しないまま、人が消えてしまう現象のことを、そう呼ぶのだそうだ。
全米では、実は毎年70万人以上が理由もなく姿を消しており、FBIには捜索専門の部署を設けるなど、大きな社会問題化しているといわれる。
エイトール・ダリア監督によるアメリカ映画だ。
この“人が消える”という不条理な現象は犯罪なのか、当事者の意思によるものなのか。
それとも、想像を超えた別の理由が存在するのか。
この事件は、証拠の見つからないある事件を通して描かれる、衝撃的な“ミッシング・スリラー”である。
オレゴン州ポートランドで暮らすジル・コンウェイ(アマンダ・セイフライド)は、時間があると森林公園を訪れていた。
一年前、ジルは家に押し入った何者かに連れ去られ、遺体の転がる穴に監禁されるという、忌まわしい体験をしていた。
必死になって逃げ出した彼女は、公園をさまよっているところを保護された。
そして、大がかりな捜査が行われたが証拠は見つからず、警察ではジルを彼女が昔から持つ精神病と断定し、事件の幕を閉じた。
だがある朝、妹のモリー(エミリー・ウィッカーシャム)が失踪し、ジルは戦慄する。
一年前の恐怖が甦ったジルは、すぐに警察に駆け込み、姿なき犯人を捕らえるように訴えたが、誰にも信じてもらえない。
モリーの恋人ビリー(セバスチャン・スタン)が妹と一緒でなかったことを知り、ジルは孤立無援の状況下で、決死の覚悟で妹の捜索に乗り出す決心をし、単身、恐るべき事件の真相に迫っていくのだった・・・。
こうして、ジルはどんどん暗闇に踏み込んでいき、彼女の心は混乱し始める、
真相に届くのか。それとも、あくまでも彼女の狂気なのか。
このリアルな難局に挑戦するのが「ジュリエットからの手紙」(10)、「親愛なる君へ」(10)、「レ・ミゼラブル」(12) のアマンダ・セイフライドで、彼女の意欲溢れるサスペンスが見ものである。
これまでの彼女の可愛らしさや朗らかさとはうって変わり、両親を失ったことで精神のバランスを崩している上に、警察から要注意人物の烙印まで張られている。
ドラマは、終盤に向かっていくにつれ、アマンダの鬼気迫る演技にも拍車が加わっていく。
一年前の事件による、トラウマを引きずるジルの振る舞いには危うさがあり、観ている方も現実と妄想の判別がつかず、絶えず揺さぶられながら、緊張感あふれるストーリーに引き込まれていく。
エイトル・ダリア監督のアメリカ映画「ファインド・アウト」は、暴力的なシーンは少ないにもかかわらず、思わずぞっとさせるような恐怖を演出し、新鮮でスリリングなドラマだ
人はこのスリラーを観て、誰の身にも起きている、現実と隣り合わせの恐怖を体験する。
ヒロイン、アマンダ・セイフライドの熱演が光る一作だ。
余談だが、ちなみに日本で警察に届けられる行方不明者の数は、1年間におよそ8万2000人だそうだ!
これも驚きだ。
[JULIENの評価・・・★★★★☆](★五つが最高点)
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まあ,中には自分から失踪した人もいるでしょうけれども,自分の意志に反して行方が解らなくなると言うのは何とも恐ろしい。
「ミッシング・パーソン」(失踪者)が、こんなに多いなんて・・・!
恐ろしい話です。
冗談ではありません。
これぞ、ゆゆしき問題ではないですか。