徒然草

つれづれなるままに、日々の見聞など、あれこれと書き綴って・・・。

映画「のんちゃんのり弁」―下町の人生喜劇―

2009-09-27 13:00:00 | 映画

アラサー女性の、人生リスタートを描いたドタバタ喜劇である。
何も考えずに生きてきた、31歳子持ちの女性のドラマだ。
その人生再スタートのきっかけが、お弁当だそうだ。
大いに楽天的、あけっぴろげな、あれやこれやの騒動劇なのだ。
入江喜和の漫画を映画化したのは、「いつか読書する日」の緒方明監督だ。

永井小巻(小西真奈美)は、下町育ちで、31歳の主婦だ。
生活力のない、年下のダメ亭主・範朋(岡田義徳)に愛想をつかし、離婚届を突きつけ、娘ののんちゃん(佐々木りお)とともに、母・原フミヨ(倍賞美津子)のいる実家へ出戻った。

のんちゃんを幼稚園に入れ、まずは仕事探しをはじめるが、長年主婦で、キャリアなし、職なし、お金なし、おまけに社会常識もないときている。
そんな小巻に、社会は甘くない。
受ける面接は次々と断られ、かつての同級生であり、のんちゃんの幼稚園の先生の紹介で、自給2000円で水商売のバイトをはじめても、早々にセクハラにあい、喧嘩の末にやめてしまった。
なけなしの貯金は底をつき、日々の生活は苦しくなるばかりだ。
小巻は、自暴自棄だ。

さらに、範朋が現われ、離婚には絶対に応じないと主張する。
一方で、小巻は、初恋の同級生と16年ぶりに再会し、互いに惹かれあっていくのだったが・・・。

そんな小巻の唯一の才能は、お弁当作りだ。
娘のために作ったのり弁が、幼稚園で大評判になり、大人たちにもお弁当を作るようになっていく。
自分の道を切り開きたい小巻は、以前立ち寄ったことがあり、サバの味噌煮の味に大感激した小料理屋の主人(岸部一徳)に、弟子入りを懇願する。
小巻は、主人の店舗を昼間だけ貸してもらうことになり、お弁当屋の開業に向けて人生の再スタートを切ることになった。
さて・・・?

お弁当から伝わる、温もりや喜びはよいとしても、いささかドタバタと騒々しい。
小西真奈美が、アラサー女性の心もとなさを丸ごと感じさせて好演、女の辛さみたいなものも伝わってくる。
でも、かなり気負いすぎの感がしないでもない。
彼女が、初恋の同級生と再会して、彼の家でいい雰囲気になっているところへ、突然父親が入ってきたりして、この場面はせっかくのムード台無しで、思わず噴き出してしまった。

しかし、いかにも漫画的な出来すぎのキャラクターがそろって、台詞で言われていることの論理にわかりにくいところもある。
いろいろドタバタやっても、決定性がなく、運命が見えてこない。
タイトルに名前が出ているのんちゃんに、子役なりの面白い芝居を引き出す場面もない。
30歳前後の女性が、見事な弁当の技を持っているあたりも驚きだ。
何も考えず生きてきたアラサー女だというけれど、彼女の作るのり弁は五重にもなっていて、かなり凝ったものだが、そんなにうまくできるものなのか。

緒方明監督映画「のんちゃんのり弁は、ドラマの展開に荒削りなところもあるが、人間のひたむきさ、可笑しさ、愛しさを描いた一応ハートフルな作品だ。
ラストシーンは、お弁当屋さん開店のシーンで終わるのだが、ドラマのこの先は、そのまま安易な生活の救済にはつながらないような予感もする。
小料理屋主人役の岸部一徳がいい。
分別ある大人たちは、みんなしっかり生きている。
それなのに、小巻をめぐる30がらみの夫や幼なじみも、どうも総じてだらしがない。

余談だが、この映画の製作会社(ムービーアイ・エンタテインメント)は、8月はじめに負債総額42億円で破産申請し、事実上倒産してしまったそうだ。
小西真奈美主演のこの作品は、一時お蔵入りが噂され、彼女もかなり落ち込んでいたそうだ。
結局は、別の配給会社で公開されることになって、ひと安心したいきさつがある。
でも、出演者やスタッフのギャラは支払われたのだろうか。
もしかして、タダ働き(?)ではないかと心配するむきもある。
洋画の配給に強いとされる、このムービーアイという会社は、最近の洋画不況の荒波にもまれ続け、赤字作品が続いていたようだ。

ヒロインの小西真奈美が、のり弁を持って(?)作品宣伝のために東奔西走なんていうことも・・・。
映画会社倒産の後遺症で、彼女には多くの応援と同情の声が寄せられているそうだ。


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2 コメント

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なんとも (茶柱)
2009-09-27 20:50:49
ノンフィクションな映画ですね・・・。

凝った映画がない代わりに「製作側の素」が図らずもでてしまったのでしょうか・・・。
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やたらと・・・ (Julien)
2009-09-29 16:26:28
テンションの高い演技を見せつけられると、しばしばとんでもない逆効果です。
上手い役者さんになると、むしろオーバーな演技を抑えて、巧みな表現力に感心させられるものです。
(抑えた演技の中に、喜びや怒り、悲しみをにじませて・・・)
それはもう、台詞なんかなくても、ちゃんと芝居になっているといったふうに・・・。はい。
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