徒然草

つれづれなるままに、日々の見聞など、あれこれと書き綴って・・・。

映画「約束の地」―消えた娘を捜して荒野を彷徨う父親の奇跡の旅路―

2015-07-01 13:00:01 | 映画


 古代から語り継がれる、豊饒と幸福の理想郷は何処にあるというのだろうか。
 アルゼンチン新鋭リサンドロ・アロンソ監督による日本公開作品だ。
 「ロード・オブ・ザ・キング」(3部作/01・02・03)のアラゴルン役で、世界的にブレイクしたヴィゴ・モーテンセが存在感たっぷりだ。
モーテンセンは、主演のほか製作・音楽も手がけ、娘を捜す父親の孤独な旅を、幻想的なタッチの中で演じている。
 登場人物の台詞はきわめて少ない。

 南米パタゴニアが舞台だが、神秘的な荒野も美しい映像となって、一種不思議な作品だ。
 そして四隅を丸くして、やや正方形に近い独特のフレームの画像は、何を意図したものだろうか。
 トリミングされていない未加工の状態の映像を見て、アロンソ監督は、これこそが自分の表現方法だと強調したそうだ。

 






1882年、アルゼンチンとチリにまたがるパタゴニア・・・。
デンマーク人のディネセン大尉(ヴィゴ・モンテーセン)は、アルゼンチン政府軍が仕掛けた先住民掃討作戦に加わって行軍中だった。
ある日、野営地にいた15歳の愛娘インゲボルグ(ヴィルビョーク・マリン・アガー)が、若い兵士と駆け落ちし、姿を消してしまう。
娘の捜索に乗り出したディネセン大尉は、荒野で瀕死の兵士を見かける。
どうやら姿を消した将校スルアガの仕業らしいが、娘は見つからない。

大尉は、岩と草だけの荒涼とした風景の中を、インゲボルクを追って馬を駆りたてるが、その馬も奪われてしまい広大な荒野で孤立してしまう。
彼は途中で出会った1匹の犬に導かれるように、異界とも幻覚ともつかない摩訶不思議な世界にさまよいこんでいくのだったが・・・。

荒涼とした自然の美しさは圧巻だ。
人工的な建物や登場人物以外に、動くものはない。
主人公のさすらいの中で、犬や人形などが、意味ありげに小道具として使われており、時空を超えた不思議な叙事詩を想わせる。
辺境をさまようディネセンが、洞窟で得体のしれぬ謎めいた老婆に出会ったり、意味深なシーンも・・・。
この映画「約束の地」は、静かなアートといった感じが強い。
アルゼンチン・デンマーク・フランス・メキシコ・ブラジル・オランダ・アメリカ・ドイツ合作作品で、映画ではスペイン語とデンマーク語が使われている。

変形スタンダードのスクリーンが、観客を夢幻的な世界へ誘っていくのだが、ひとりひとり誰もが全く違う解釈ができるような結末が待っている。
原始と文明、現実と幻想が合わせ鏡のように浮かび上がって来るのだ。
魔術的な語り口で・・・。
この映画は、これまで誰もたどりついたことのない伝説の地“ハウハ”についてのテロップから幕を開ける。
原題「Jauja」(ハウハ)は、神話の中で語り継がれる、豊饒と幸福の理想郷を意味しているのだが、娘への愛を貫こうとする父親は、前人未到の地上の楽園=約束の地を夢見て、その旅に身を委ねたのだろうか。
そうだとしたら、その約束の地は・・・?
奇跡の旅を描くロードムービーは、アロンソ監督の独創的な美学を見せつけられて、戸惑いを隠せない。
     [JULIENの評価・・・★★★☆☆](★五つが最高点


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