バツイチで恋人ナシ、高飛車で大酒飲みの女・・・。
そのくせ、お洒落な30女のみじめな悪あがきが、ちょっぴり妙にカッコいいのだ。
ジェイソン・ライトマン監督の、アメリカ映画だ。
そんな女を演じるのは、「モンスター」でアカデミー賞主演女優賞受賞のシャーリーズ・セロンだ。
彼女が、この作品でも、ハリウッドを背負って見事な演技力を発揮する。
いささか棘のあるのは仕方ないとして、心温まる(?)ヒューマンタッチのドラマでもある。
美しくて、才能もあるが、やることなすことが型破りである。
とても、30代の大人の女性とは思えない。
メイビス・ゲイリー(シャーリーズ・セロン)は、自称作家で、実はゴーストライーターなのだ。
現在執筆中の、ヤングアダルト(少女向け)シリーズは人気がガタ落ちで、終了間近だ。
このあとの新作の予定もない。
メイビスは見栄っ張りだから、自分が思う現実と他人が見た事実の間には、大きな落差があった。
唯一の恋人は愛犬ポメラニアンで、心の慰めはもっぱらアルコールだった。
要するに仕事はじり貧で、三十路のバツイチ女の、かつては“ミス学園”だった過去の栄光のかけらもない。
何でも俺様キャラというか、勘以外も人一倍だし、誰から見ても迷惑女なのだが、その彼女が自分に嫌気がさした。
そして、高校時代の元恋人バーディ(パットン・オズワルト)とヨリを戻し、かつての輝きを取り戻そうと考える。
バーディには、愛する妻子がいるというのに・・・。
メイビスの決意は固く、何年振りかで、突然故郷の小さな町に現れ、すったもんだの大騒動を展開する羽目になった・・・!
ジェイソン・ライトマン監督のアメリカ映画「ヤング≒アダルト」では、バーボンをストレートでぐいぐいと煽り、ヌーブラ姿で酔いつぶれて寝てしまったりといった、自堕落なシーンも、演技派シャーリーズ・セロンにかかっては、さすがに芸も細かい。
自分でも自分を美女だと思っているのか、性的にも奔放なところを見せて、でも、何故か自分を貶める役回りばかり・・・。
世の中の常識からは、かなりずれているのに、どこか憎めないヒロインの予測不可能な人生を描く、ジェイソン・ライトマン監督の感性は確かだ。
望まれないのに妊娠して、自ら里親を見つける16歳の少女を追いかけた「JUNO/ジュノ」のジェイソンは、ここにさらにパワーアップした規格外の主人公を登場させる。
人間の、真の幸せは何かというテーマにも踏み込んでいる。
今回、この映画の脚本も、あの「JUNO/ジュノ」のディアブロ・コディが担当していて、アカデミー賞脚本賞を受賞した人なんですね。
そうでしたか、やっぱりねえ・・・!
・・・ということは、オスカー受賞キャスト&スタッフによる完璧なコラボレーションですか。
いやいや・・・。
おっと、話をドラマのほうに戻しまして・・・。
いつでも、どこにいても、自分こそ主人公なのだという、あまりに身勝手な女の行動には、信じられないほど唖然とする。
そんな女が、様々な曲折の末に、結局たどり着いた境地は・・・?
三十路になっても、美貌は衰えず、才能も決して枯れることはないが、いつになっても、十代のモテ期のままだというダメ女が、急にイイ女に見えたりするものだ。
ビッグで、イタイ女とはよく言ったものだ。
「腐った魚の匂いのする、こんな田舎町は大嫌い!」と豪語する。
そんな捨て台詞を吐く女の、どこが面白いか。
それは、観てみないとわからない。
娯楽性十分、笑えそうで笑えない。
まことにふざけたドラマなのである。
ヒロインの執拗な(?)までのしたたかさが面白く、観ていて憎めなくなるところが、憎い。
・・・たまには、これでもいいか。(苦笑)
[JULIENの評価・・・★★★☆☆](★五つが最高点)
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まあ、別に目新しいことでもないようです。
大体、こんなものですって・・・。
ええ、普通なの(?!)かもしれません。はい。